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まとまらない連中

 

 仲間外れにされて泣いていたという獣人の子供を見つけ、俺は仕方なく保護して帰ることにした。

 まぁ、おそらくはガイのせいだろうから、知り合いのやったことだし何とかしてやろうかと思って、連れてきたわけだが、そうして帰ってきた酒場の廃墟では──


「ぐわぁ、やられた!」


 ガイが子供たちとチャンバラごっこをして負けていた。

 木の棒で子供に思いっきりぶん殴られたガイが地面に倒れこみ、降参のポーズを取り、それを見て、チャンバラをしていた子供たちは歓声をあげている。

 俺達以外に人の住んでいないゴーストタウンみたいな区画に子供を集め、躊躇なく人を殴ることに慣れさせるってのは教育的にどうなのかとか思いつつ、楽しく遊んでいるようなので、俺は少し離れた所から、それを眺める。獣人の子供が俺の隣で遊んでいる子供たちを羨ましそうに見つめているが、まぁそれは今は置いておこう。


「何やってんだ?」


 ガイが子供たちと遊んでいる所を眺めていたら、ほどなくしてマー君とゼティがジュリちゃんを連れて帰ってきた。


「こっちのセリフだっての」


 何をやってんだってのはこっちが言いたいね。

 なんで学院で戦闘してた俺の方が早く帰って来てんのかって話だ。

 お前らが遅いから、俺がガイの被害者になった子供の面倒を見なきゃならなくなってんだろうが。


「いや、三人でメシ食ってたから」


「は? なんで、お前らだけで行ってんの? 俺も誘えよ」


「やだよ。だって、テメェ絶対、店員と揉めるじゃん」


 まぁ、それは否定できないね。

 たぶん、「たいして美味くねぇなぁ、この店!」って店員に聞こえるように言うだろう。

 そんでもって揉めるね、間違いなく。


「まぁ、いいや。とりあえずマー君、ちょっとガー坊の所へ行って、子供たちを引き離してくれ」


 俺がそう言うとマー君は俺の隣にいる獣人の子供を見て、状況を察したらしく、遊んでいるガイのもとへ向かう。ガイはというと、お馬さんごっこをしているのか四つん這いになった状態で子供たちを背負いながらそこら辺を走り回っていた。


「えっと、何が起きてるんだろうか?」


 ジュリちゃんが初対面であるガイを見て、怪訝な表情を浮かべているが、まぁ、ジュリちゃんは気にしなくていいことなので、俺は何も言わない。

 ガイに関しては、あんまり関わらない方が良い輩だからね、紹介するのも避けたいくらいだからガイについて言及するのは最小限にしておきたい。


「そんなことよりさ、ジュリちゃんの方はどうだった? 他の学生に襲われたりとかは?」


「それは無かったよ。争いは学院の中だけみたいだったし、外に出れば何の問題も無かった」


 まぁ、そうだよな。

 俺を放っておいてメシを食いに行けるくらい余裕があるんだもんな。

 じゃあ、ジュリちゃんの方は問題なしで、問題があるとすれば──


「あーもう、面倒くせぇな。とりあえず全員、記憶を無くせ!」


 子供たちをガイから引き離したマー君が、どうして仲間外れはいけないのかと懸命に説いていたようだが、見た所、小学校低学年くらいの年頃の子供たちを説得するのは難しかったようで、強硬手段に出たようだ。

 マー君の指先から光が放たれ、子供たちはボンヤリとした表情になる。そして、そんな子供たちを引き連れ、マー君は仲間外れにされていた獣人の子供たちの所に行くと──


「お前も記憶を無くせ! ……よし、これでお前らの今日の記憶は無くなった。仲間外れにした記憶もされた記憶も残らず、お前らの関係は昨日までの状態にリセットされたというわけだ」


 マー君が「これでいいだろ?」と言いたげな表情で俺を見る。

 まぁ、仕方ないという顔で俺が頷くとマー君は子供たちを引き連れ、家に帰すためにこの場を後にした。帰り道に危険が無いようにって配慮をしたんだろう。面倒見が良くて素晴らしいね。

 残されたのは状況が分からないジュリちゃんと不満そうなガイ、あまり関わりたくなさそうなゼティと、そして俺。


「ジュリちゃんと話でもしようかと思ったけど、やっぱり今日じゃなくて明日にしてもらっても良いかい?」


「構わないけれど……じゃあ、また明日」


 ガイのことが気になっているようだが、ジュリちゃんはそう言って帰ってくれた。

 話が分かる奴は助かるね。で、話の分からない奴はというと──


「今の誰? 声は高いし、背も低くて女の子?」


「男の子だよ」


 見れば分かんねぇか?

 そりゃあ、美少女みたいな見た目だけどさぁ。


「子供扱いせず、男と言ってやれ」


 おっとゼティから、お叱りを受けてしまいましたよ。

 一緒にメシ食って仲良くなった? どうやら、俺を除け者にすると人間関係を筆頭に全てが上手く行くみたいだね。


「……なぁ、なんで、みんな俺の邪魔をするわけ?」


 ガイが俺を見ながら言う。

 ゼティは邪魔してないから、みんなってのは俺とマー君か。

 そんでもって、その邪魔ってのは──


「物事の分別ふんべつもつかない年頃の子供に差別主義を仕込もうとしてるのは流石に止めるだろ」


 ガイは人間びいきが過ぎるんだよなぁ。

 でもって、それを自分以外の人間にも押し付けるから性質タチが悪い。


「差別じゃなくて住み分けだよ。人間とそれ以外の種族は別々に暮らして関わらないのが一番。俺は人間が幸せに暮らせるようにより良い社会の在り方ってのを教えてやってただけだよ」


「子供に教えるのは洗脳と変わらないような気もするけどな」


「そうかな?」


 そうだと思うけどな。

 いい歳してガイの言い分を鵜呑みにするのなら、そいつ自身が置かれてる環境やら経験やらの色々の結果によるものだから、一方的に否定するのは正しくないと俺は思うね。ただ、何も知らない真っ白でどんな色にでも染められる年頃の子供を自分の思想の色で染めるってのは、俺はお行儀が良い行為だと思えないんでね。


「じゃあ、これからは皆のいない所でやることにするよ」


「そうしてくれ」


 俺の知らない所でやってる分なら、俺が知ることは無いだろうし、知らないってことは存在しないも同然だから、俺が口を挟むようなことじゃない。


「──よう、話は済んだか?」


 タイミング良くマー君が戻って来てくれたんで、この話は終わりにしよう。

 口を開いていないゼティが凄い目でガイを見ているし、これ以上は面倒くさいことになるだろうしさ。

 なので、話しを変えるために俺は──


「さっき、塔を守ってる使徒にあったぜ?」


 話題をセレシア・サングティスという使徒にあったという方向にシフトすることにした。


「セレシアって名前なんだけど、知ってる奴いる?」


 俺はゼティ、マー君、ガイの三人に聞くが誰もピンと来ない様子で──


「知らん」

「知らねぇ」

「知らない」


 頼りにならねぇ奴らだなぁ。

 他の使徒のこととか知らねぇのかよ。


「つーか、邪神のテメェが知らねぇってことは、一桁台シングルナンバーの連中が選んだ使徒じゃねぇか、俺ら知るわけないだろ」


 まぁ、そうだよね。


「誰が任命したんだ?」


 ゼティが気になるのは任命した使徒の存在。

 まぁ、誰が任命したかで性格とかヤバさも分かるわけで、ゼティが気にするのも当然か。

 というか、いま思い出したんだが、ゼティの野郎、古参の一桁台の癖に一人も使徒を任命してねぇな。


「アダム・アップルシード」


 俺が答えるとアダムを良く知っているゼティとマー君は何か察するものがあったようで、「あぁ、なるほど」と言いたげな顔で──


「揉めただろ?」


 確信を持って俺に向けて言う。


「いや、向こうから喧嘩売って来たんだけど」


 平和的にいこうとした俺に喧嘩を売って来たんだぜ?


「そんなわけねぇだろ。アダムの選んだ使徒が自分から喧嘩売るわけねぇって、お前が何かやったに決まってんだろ」


 信用ねぇなぁ、俺。

 まぁ、でもマー君だけだろ、こんなことを思ってんのはさ。

 他の二人は信用してくれてるよな。


「アダムって誰?」


「6位の使徒だ」


 疑問を口にするガイにゼティが教える。

 そう言えばガイの方は会ったことないんだったっけ?

 使徒同士が顔を合わせる機会が無いってのはやっぱり問題か?

 この世界を脱出したら一度、ちゃんと使徒を集めた方が良いかなぁ。


「良い奴なの?」


「すげぇ善人」


 ガイの疑問にマー君が断言する。しかしガイは納得しかねる様子で──


「でもさぁ、そいつの選んだ使徒がこの世界にいるってことは、もしかしたらそのアダムって奴がアッスを始末するためにこの世界に送り込んだとか考えらんない?」


 そんなガイの推理だが、そうなると黒幕はアダムになるんだよなぁ。

 実際、アダムなら簡単に今の俺達が置かれてる状況は作れるんだけど──


「それは無いだろうなぁ」


 俺が否定するとゼティとマー君も頷く。

 アダムが俺を陥れることは無いってのは断言できるし、そんな俺の考えにゼティもマー君も同意している。

 ぶっちゃけ、俺も俺自身よりアダムを信用してるくらいだしな。

 でも、そんな奴の選ぶ使徒と俺の相性はどうしてか絶望的に悪いようで、ほぼ間違いなく喧嘩になるんだよなぁ。


「なんにせよ、このクソのせいで賢者の側にいる使徒は敵に回ったってことか」


 俺のせいなのかは分かんねぇと思うんだけどなぁ。

 まぁ、そうかもしれないし、一応、謝罪の気持ちも込めて忠告をしておこう。


「あいつは強いぜ。俺が何も良い所ないまま吹っ飛ばされて場外ホームランになるくらいだからな」


 見事に吹っ飛ばされたぜってことを言って、甘く見ない方が良いって言おうとしたんだが、ゼティたちは俺が何を言っているのか、その意味が分からないって顔で俺を見ていた。


「手を抜きまくっておいて、何も良い所が無かったって何を言ってんだ、テメェはよ」


「業術も瑜伽法も使った気配は感じなかった。それほど手を抜いていて、相手の実力が分かるわけがないだろう」


「つーか、アッスって初対面の相手だったら遊ぶじゃん。全力を出さないなら良い所なく吹っ飛ばされても仕方ないんじゃない」


 どうやら、俺の忠告はマトモに聞き入れてもらえないようだ。

 ……まぁ、手を抜きまくっていたのは事実だけどさ。


「──ということはそれのセレシアとかいう奴は、手を抜いているアッシュを一方的にぶちのめせる程度の強さを持っているってことか? スゲェ参考になるクソみたいな情報、ありがとうございます、おクソ様」


 煽ってくるなぁマー君。

 まぁ、でも俺が悪いところもあるし、ここは素直に謝っておこう。


「クソクソうるせぇんだよ、ウンコマン」


 ほら、謝ったぜ。

 ……おっと、謝ったつもりが悪態をついてしまったぜ。

 まったく、こういうことがあるから、俺は俺が信じられねぇんだよなぁ。


「喧嘩売ってんのか?」


「無料配布キャンペーン中だったりするんだよなぁ」


 無料100連ガチャ並みの大盤振る舞いだけどね。

 ゼティとガイはどうだい? 無料キャンペーンに参加するかい?


「なんで、この流れで揉めるんだ……」


「やめなよ、人間同士、争うのは良くないって」


 呆れてるゼティと止めようとするガイ。

 仕方ねぇなぁ、今日はやめておいてやろう。


「とにかく塔に行って賢者に会い、そして青神について知るというのは変わらないんだろう? その過程で使徒が立ちふさがることになるのが確実になっただけで、やるべきことは変わらないのなら、騒ぐようなことじゃないだろう」


 ゼティがそう言ってまとめる。

 まぁ、やることは変わらないんだけどね。


「でも、塔が消えちゃってるからね。どうすんの?」


 ガイが塔のあった方を見るが今は何も見えない。

 マジでどうするかね。今回は出てきたけど、すぐに出てくることってあるんだろうか?

 分かんねぇんだよなぁ。そうなると方針を立てるのも難しいんだよね。

 また出てくるまで待ってる? それもありだと思うけれど──


「どうしようねぇ」


 俺達は今後の行動について、どうしようかと考え込まざるをえなくなり、そしてそんな時──


「アッシュ・カラーズってのはどいつだ!」


 何の前触れも無くガラの悪い連中が俺の名前を大声で呼びながらやってきた。


 さて、何事だろうか?

 ガラの悪い連中が大挙して押し寄せてくるようなことをした覚えはないんだけどね。







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