[6-2]結婚式の日
ふと思った。この三人の身長差、私は二人の子供に見えるのではないかと。
試しにフランシシュカに「ママ」と冗談で呼んでみた。
そしたら「どうしたかしらペリちゃん」と優しい声で返してきた。冗談に乗るんじゃねえ! ぺちぺち。
フランシシュカが正室で、私が第二夫人になるようだ。
これが王族の力か……ぐぎぎ……。
いいもん。私に取ってエルシュが正室だもん。
式はフニャシア王国の王都で行われる。
あ、そうそう、ラディウスは王となって、フニャシアは王国となっていた。
エルシュが「帝国の属国になってからフニャシアは王国ですよ」と言っていた。
よくわからんがそういうことらしい。早く言ってよ。
そして私達は私の故郷の村で住むのだ。
式をここでやっているのは、フランシシュカの建前というか、なんか色々あるようだ。
まあ有力者を辺境の村に連れてくるのはできないしね。
私達が村に住むのは、王都……と言うと今は紛らわしいな、トラヴィニア王国の新王都を監視する意味でもある。
まあ、王はゴンズだから裏切りはないだろうけど、王子になったらわからないしね。
しかしエルシュとフランシシュカの二人が住むだけで、戦力としては大きすぎる気がする。
他の戦力がいらないという意味でも正しいのだろうけど。
さてはて、そんなこんなで私達はドレスに着替えさせられている。
エルシュは成長期で寸法が合わなくなっており、この数日間で急きょ調整されている。
今ではもう抱きつくとそこが腰なんだが。
「エルシュ大きくなりすぎ」
「わたしも大きくなりましたわよ!」
「無駄に肉付け過ぎ」
「んな! 無駄ではありませんわ!」
フランシシュカは胸をぽよんぽよんさせた。
ぐぎぎ……それは私達にはないんだぞ……見せつけるな……。
「そもそもわたくしがドレスを着るのがおかしいと思うのですが……」
「エルシュは花嫁だからな」
「お似合いですわ兄様」
私達三人とも白の裾の長いドレスだ。
腕には長い白い手袋をはめている。
「しかし柄とか色とか少ないドレスだなこれ」
「帝国で流行っているウェディングドレスですわ!」
「地方色ではなく、帝国文化を取り入れていく姿勢を見せるようですね」
「ほーん」
まあこれはこれで清楚でかわいいから良いとしよう。
もちろんかわいいのはエルシュだ。
フランシシュカの胸は下品だ。
「帝国では3人で結婚式とかするんだな」
「帝国ではしませんわよ。この地域では、力が強い者が沢山の妻を娶るのは普通ですわ!」
「それなら私達以外にも増やさないとな」
「そうですわね!」
「え?」
故郷の二代目水姫の泡姫もエルシュと結婚させよう!
そしたら私の勢力が強くなるぞ! よし!
「ペリータ様はもっと独占欲が強いのかと思ってました」
「私は大人だからな。ふふーん」
過去の私なら確かに独占欲が強かったと思う。
しかし今は第二夫人とはいえ、エルシュと一緒にいられればいいし、他に嫁が増えるべきだと思っている。
エルシュの素晴らしさは独占するものではなく、共有するべきだと思っている。
独占しても幸せだと思うが、幸せを分かち合うともっと幸せだと思う。
そうか、今は私は幸福なんだ。
「あれ? どうなさいましたペリータ様」
「泣いてますの? 化粧が崩れますわよ!」
「な、泣いてなんかいない!」
フランシシュカとエルシュが私にハンカチーフを差し出した。
「うあ! 何をする!」
そして二人に抱えられ、子供みたいに私はあやされてしまった。




