表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/66

[4-9]死して生きるもの

前回までのあらすじ:王都炎上、師匠登場、雨。予知夢と状況は違いながら、予知夢とどこか同じような部分がある。師匠は予知を「虹」と言った。ペリータ達は王を降伏させるため、王城へ乗り込む。

 王城と言うからには、そこにも城壁が存在する。

 王都の壁はまず、外壁、そして街中に一つ、そして城を囲むように壁がある。

 大分ぼろぼろになった石玉をみんなで転がして運び、再び投げつけ壁を破壊した。

 城壁では、平野から戻った魔法使いや兵によって抵抗があった。

 構わず石玉を投げつけ、エルシュとフランシシュカで突撃する。


「ペリータ! 脅しに一発雷をお見舞いするといいですわ!」


 とフランシシュカにそそのかされたので、雷魔法を一発王城にドォオオオオン! と落としてあげた。


「いまごろ王はチビっているな」


 ゾフィアは高々と笑った。


「さて、ここからは二人でいくのか?」


「わたしも行きますわ!」


「シュカはお留守番をお願い」


「私達が戻らなかったら突撃してほしい」


「むぅ……わかりましたわ」


 フランシシュカが来たら暴れてこじれそうだからひとまず置いていく。

 それに城を攻略するのに一つ考えがあった。

 私はまず水をたぷんこ出した。

 温泉宿で覚えた水昇降魔法で私とエルシュが昇っていく。

 あっという間に城の頂上に着いた。


「楽しいですねこれ! あっ頂上のここ少し落雷で崩れてますね。ペリータ様の雷の威力凄いです」


「ふふーん」


 水魔法も落雷の魔法も使えるなんて実は私は凄いのではないだろうか。なんたって大魔法使いだからな!


「ではここから入りましょうか」


 そういってエルシュは下に向かってパンチをした。

 ズドンッと音を立てて、城の頂上が崩れる。

 うん。エルシュパンチの方が凄すぎるな。


「あれ? いませんね」


 そこは街を一望できる間だった。


「ここは最上階だから、玉座は下じゃないかな」


「なるほど! わかりました!」


 エルシュは右足を上げ、地面に叩きつけた。

 バガァアアン! と音を立て、床が崩れさる。

 うん。エルシュの足踏みの方が凄すぎるな。


「ぬぁ!?」


 王と側近、護衛と、そして肥えた男が、天井から現れた私達にたじろいだ。

 上で物音がすると思ったが、まさかそこから現れるとは思わなかったのだろう。


「ごきげんよう、皆様方」


 エルシュの背中越しに挨拶した。

 王の護衛はそれを無視し、私達に氷魔法の氷の槍を発射した。

 エルシュは難なくそれを掴み、氷の槍を投げ返した。


「ぐえー!」


 護衛の一人の氷魔法使いの顔にそれが突き刺さって倒れた。

 今度は槍を持った二人がエルシュにそれを突いた。

 エルシュは穂先が腹を突かれる前に、槍の柄をそれぞれ両手で掴みへし折った。

 そしてその穂先を投げ返した。


「ぐえー!」

「ぐえー!」


 槍の護衛二人の顔に、槍の穂先が突き刺さって倒れた。

 豪華な鎧兜を着た側近が、豪華な両手剣を抜き、エルシュに上段から斬りかかった。


「キエエエエエエ!」


 鶏のような声を出し、エルシュの頭に両手剣を振り下ろす。

 エルシュはそれに引かず、左足を一歩前に出し、兜を被った顔に右のパンチをぶち当てた。


「ぐえー!」


 側近の顔に、エルシュのパンチが突き刺さって倒れた。


「な、なんなんだお前たちは……」


 この残虐を眺めていた王は失禁してぷるぷると震えている。


「王に降伏勧告に来ました」


「ふん、王国は帝国なんぞに負けんよ。儂が死んだとしてもな」


「エルシュ、そこの剣で王の首を斬って」


「はい」


 王の首に、豪華な剣が振り抜かれ、綺麗に分かれた。

 王の首は玉座から転げ落ちた。

 肥えた男がそれを拾い上げ、そしてナイフで顔の皮を剥いだ。

 そして肥えた男は白い煙で揺らぎ、その姿は王の姿となった。

 王は手に持った王の首を投げ捨てた。


「あれ? どういうことですか?」


「あれはゴンズだ」


「へ?」


 城の階下からバタバタと兵が現れた。

 そして私達を取り囲む。


「みなさんには会っていただきたい方がいらっしゃいまして。師匠! 準備はいいんですか師匠!?」


 私の影から黒い濁流が現れた。

 それは倒れた人間、王の体と首、兵達を飲み込んで黒く染め上げていく。

 それらは意識を失い、倒れた。


「娘よ。これで良いのか?」


「あと私達が城から降りた後に、城全体にぶちまけちゃってください」


「それが望みか」


「はい。師匠も綺麗になりますよ」


 私は水魔法を使い、エルシュと王と共に城を降りた。


「王を捕らえましたの!?」


 そして間もなく王城が黒い塊で覆われた。


「一体何が起こっておりますの!?」


「話しは後だ。とりあえず、王」


「我が国はフニャシア公国に全面降伏する」


「だ、そうだ」


 みんながポカンとしている。


「へ? 終わりですの……?」


「終わりだ」


「呆気ないですわ! つまんないですわ! 王なら最後まで抵抗してみせなさい!」


 こらこら剣抜かないで。この王は本物じゃないんだから!

 偽王も本気でビビっちゃってるから!


「街のみんなを起こして王都から出してくれ。王都はこのあと呪われる」


「のろわれ……?」


「頼んだぞ」


 やがて、街中から爆音が鳴り響いた。

 街のみんなを王都から避難させたのち、師匠が王都を真っ黒に染め上げた。

 王が王都から出た王都市民に、公国に降伏したことを宣言した。

 そして王都は呪われたこと。王都を捨て、スレメボの町を新都にし、全員で移住することを伝えた。

 新都の拡張の人員や足りない食料は、公国から借り入れる事となる。

 王都民は呆然としながら、公国魔法兵と共に新都に向かった。




「死んでも負けない、か。そうですね死ねなかったですね」


 王が最後に見た予知は、死んでも王国は帝国に屈しないものだったのだろう。

 ゴンズが王と成りすましているから、王は死んでいない。

 王国は公国の属州、つまり帝国の一部となるだろう。


 さて私達にはまだやることが残っている。


「うわっ師匠の本当の姿気持ち悪いですね」


「……」


 ずりっずりっとグールをぐちゃぐちゃっとした感じの物が目の前に存在している。


「師匠はこれからどうするんです?」


「我は戦場後へ行く。洗浄せねばならぬ」


「戦場で洗浄ですか。ダジャレですか?」


「……」


 魔力が黒い塊ではなくなって、無色になっているため師匠の感情がわからない。

 よく見ると白くぶるぶるっとしているのかもしれない。


「師匠の願いって何なのですか?」


「我か。我の願いは浄化だ」


「なんとなくわかります。魔法後を綺麗に掃除していたんですよね。仕組みはわかりませんけど」


 師匠は二つある頭でゆっくり頷いた。

 あ、いままでそういう動きをしてたんだ。


「娘、願いは」


「私ですか。私はエルシュとずっと一緒にいることです!」


「ペリータ様っ!」


 エルシュは恥ずかしそうに両手を頬に当てた。


「プロポーズだぞエルシュ!」


 私は背伸びをして隣のエルシュにんーっとキスをしようとした。

 圧倒的に背が届かない。

 エルシュは私を抱き上げた。

 そしてキスを……してくれなかった。


「そういうことは大人になってからです!」


「大人って言ってるじゃないか!」


「ほら、師匠も困ってますよ」


「……」


「あ、師匠。私達の結婚式には来て下さいね!」


 師匠はゆっくり頷いた。


「その姿を人前に出すのは無理では……」


「あっそうか……」


 私は一つ閃いた。


「それなら師匠に治癒魔法をかけてみたらどうだろう!」


「え、ええ……。アンデッドにかけて平気なのですか……」


「我はアンデッドではない」


 師匠は首を横に振った。


「なら溶けて無くなったりはしないでしょう。やってみよう!」


「うっうう……」


 エルシュは顔を背けて師匠の体に触れた。

 そういえば初対面はゲロ吐くほどの衝撃だったっけか。


「いきます」


 エルシュの魔力の黄金がさらに輝き、師匠を包み込んだ。

 やがて顔は一つに戻り、腹に刺さった腕は消え去った。

 グールのぐちゃぐちゃっとした存在が、一人の人間の姿になっていく。

 それはまるで――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ