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[4-8]あの日見た夢の現実

前回までのあらすじ:帝国へ寝返ったフニャシア公国を取り戻すために、軍を国境付近に集結させていた王国軍。それらをさっくり退けて、手っ取り早く王都を陥落させようと向かったところ、平野で大部隊とぶつかった。元々王国領の最前線を支えていた公国軍はわずか100名強ながら、被害なくそれを退けた。圧倒的な力を持つ、フニャシア公国新領主の弟のエルシュ、その従妹のフランシシュカが圧倒的な戦力で敵軍の前線を壊滅させた。そして王国領が故郷の冒険者ながらエルシュの元主人であり婚約者(自称)であるペリータが、雨雲の魔法から雷の魔法を使い、王国軍を恐怖で混乱させた。王国軍の本陣は強大な雷撃の一撃を食らい、王国軍は遁走した。

 ただいま王都。

 思えばここ最近、王国領を往復しすぎた私。

 どれもこれもエルシュと私の仲を邪魔をしようとした王国が悪い。王国を潰す。

 ということで、王都の外壁を破壊します。


「やっちゃえエルシュ」


 エルシュが9個の石玉を王都の外壁を投げつけた。

 兵士はいるが、平野にいた兵に比べると残り滓みたいなものだ。

 氷魔法で壁を作るような王宮魔法使いはいない。


「壊しましたペリータ様」


 あっという間に王都外壁の門が破られる。

 お手軽攻城だ。


「なんか静かではありませんの?」


 そもそも門に近づいて何もされないのがおかしいのだ。

 そして街から騒ぎもしない。

 街中には白い霧と甘い香りが漂っている。


「きっとみんな寝ているんだろう」


「あっ、これゴンズさんの眠りの魔法ですね」


 ゴンズには王都に残って工作してもらった。

 冒険者たちに、売り物の奴隷を他の町に運んでもらうよう、手はずしたのだ。

 これは王都での騒ぎに乗じて邪魔しようとするのを防ぐためだ。


「眠りの霧が晴れるまで暇だな……」


「火の魔法で飛ばせばいいんですわ!」


 さっそく予知夢を体現しようとする者がいた。

 それを防ごうと思ってやってきたのだが!?


「わかってますわ! 被害が出ない程度にすれば良いのでしょう? さあみんな行きますわよ!」


 フランシシュカと魔法騎士のゾフィア、それに続いて公国魔法兵が王都に突入して火魔法を発生させた。

 燃える王都。

 後ろに控える帝国軍。(ただし夢と違ってわずか帝国騎兵10名だけ)

 予知夢って結構当たるんだな……。

 ふと嫌な予感がして、隣のエルシュを確認する。

 いた、良かった。


「エルシュ」


「はい。なんですかペリータ様」


「抱っこ」


 私は両手を上げて、エルシュに催促した。

 エルシュはいつものように私を抱き上げた。


「エルシュ、実は私は大人なんだ」


「ふふっ、わかっておりますよペリータ様」


 子供みたいな事をしておいてなんだが、やっぱりわかられていない気がする。

 さて、予知夢通りになるなら、あれもそろそろ来るはずだ。


「いるんですか? 師匠」


「我を呼んだか」


 エルシュの影からずずっと黒い塊が現れた。

 エルシュは思わず私を落としそうになる。


「なんですか、そんな知らない影の魔法使って付いてきていたのですか師匠」


「娘よ。我を呼んだのはそちだ」


「来てくださりありがとうございます」


 師匠には事前に王都に来るように頼んでおいた。

 人の営みに関与しないと言っている師匠だが、すんなりと頼みを聞いてくれたようだ。


「師匠。師匠は予知を信じますか?」


「予知か。幻影。虹のようなものだ」


「あ、やっぱり何言ってるかわかりません」


 黒い塊はぞぞっとうごめいた。


「虹はある。見える。だが捕まえられぬ。動かせぬ」


「あ、ちょっとわかりました」


「娘よ。我がここに居るのは必然か」


「はい。ちょっと予知夢を見たので来てもらいました」


 黒い塊はゆらゆらっと揺れた。


「ところで師匠。エルシュにその黒い魔力を混ぜました?」


 これは私が夢の中で聞いていた事だ。


「あれは、必要だ」


 そして夢を同じ答えだ。


「それはなぜでしょう」


「力を貰い、そして与えた。それは必要だったはずだ」


 そのような事も予知では言っていたような気がする。


「しかし穢れてはいない。娘よ。それは予知での話しか」


 そうか、いつの間にか予知夢と現在を混合していた。

 エルシュの魔力は黄金の輝きのままで、ここに存在しているのだ。


「そういえば今は関係のない話しでしたね」


「娘よ。魔力とはなんだ」


「私にとっては輝きですね」


 私は人の魔力を色で見ることができる。

 その色の濃さや輝きによって、その魔力の強さもわかる。


「人の魔力とは力の大小、器の大小ではない。穴だ」


「穴……」


 またわけがわからないことを言い出した。


「いずれわかる」


「師匠みたいに化物になるほど生きないとわからないと思いますが」


 黒い塊は愉快そうにぞぞっと動いた。


「ペリータ様! ちょっと王都が燃えすぎていませんか!?」


 ふと王都を見ると火の手が明らかに大きくなっていた。

 やりすぎだ! もはや戦火だ!

 私は慌てて雨雲の魔法で雨を降らせた。


「ところで師匠。予知夢では師匠の黒い魔力を王都にぶっかけて綺麗になっていたのですが、どうします?」


「予知は虹だ。夢は現実ではない」


「でもちょっと助けてくれるとありがたいです。今から王に会いに行くので」


「興味はない」


「じゃあさっきみたいに影で付いてきて、合図したら出てきてください」


 黒い塊はぶるるんっと震え、影に沈んだ。

 師匠はこんなのだけど、頼めば結構いろいろ聞いてくれる。

 さすが師匠やさしいぜ!


「じゃあ行くかエルシュ! いっちょ王を降伏させに!」


「はい! ペリータ様!」

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