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ちんちくりん魔法使いと黄金の天使  作者: ななぽよん
いつか見た忘れられた未来
51/66

[5-2]あの時すでに失っていた

 あれは私の天使を見て「美味しそう」と言った。

 私は思い出す。あの時私はどうしていただろうか。

 気づいたら寝ていた。何かあったとしても何も気づかなかった。

 あの時すでにエルシュも混ぜられていたのか。

 絶対に許さない。

 私の中に、幾久ぶりの怒りの感情が湧いた。


 あれは、後処理のために必ず現れるはずだ。

 帝国が王都を焼くのに大魔法が次々と撃ち放たれた。

 当然王都からも反撃の魔法が放たれた。

 ここ一体はものすごい魔法跡になっており、魔力溜まりになっていることだろう。

 黒い塊は言っていた。後処理をする存在だと。

 今ならわかる。あれは残留した魔力を吸い続けた結果の存在だ。


 おそらく世界の秩序に必要な存在なのだろう。

 しかしそれは同時に、魔力を吸い、そして吐き出す、禍々しい存在でもあったのだ。

 あれは混ざりすぎて飽和ともいっていた。

 いつしか留めることができず放つようにもなったのだろう。

 黒い塊は私のが村へ放った沼の魔法の残骸を吸い、そして私に混ぜた。

 そして変わった私が今の私となったのだ。

 きっとそうに違いない。


 あれは、魔力を放つ事に対する影響を感じていた。

 魔力を吸い秩序を保つ存在なのに、放っていては魔力溜まりの処理ができないからだ。

 それならば薄めれば良い。

 エルシュの黄金の魔力を吸い、黒を返せば良い。

 それで黒が薄まっていたのではないだろうか。


「娘よ」


「師匠。エルシュに混ぜましたね?」


 私は怒りをこらえて対峙する。


「あれは、必要だ」


「エルシュは私のものです。師匠が世界意志の存在だとしても私のものです」


「そのような存在ではない」


「私は師匠を殺そうと思います。その前に師匠はどんな存在か教えてください」


「我の存在か。会った時に言わなかったか」


「言ってないです」


「そうか。そうだったか」


 黒い塊がずずっと動いた。


「私は私の意志だ。目的はない」


「魔力溜まりを吸収している理由は?」


「我のような存在を生み出さぬため」


「もう生み出してます。私にもエルシュにも師匠が混じってます」


「それは必然だ。必要だったはずだ」


「いらないです。返却します」


 私は魔法を発動する。

 黒い塊の下の地面がズンと沈んだ。


「娘よ」


「死んでください」


「それが理想か」


「今後に及んでも問いかけですか」


「我の存在が消えるのは構わん。だがそれは理想ではないはずだ」


「師匠に対して感慨はないです」


「我の魔力は、未だ留めていると言った」


 私は魔法の手を止めた。


「それが放たれる、と……?」


「ゆえに我は死ねぬ」


 私の忌むべき存在の黒い魔力が放たれる?

 それは当然私の理想ではない。


「ならば私は……」


 師匠は何も答えない。


「私の黒は死で返すしかないのですか?」

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