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ちんちくりん魔法使いと黄金の天使  作者: ななぽよん
黄金の天使編っぽい
48/66

[3-19-2]錯綜で錯乱

 奴隷商館副店長サドレーの元にいくつもの情報が渡ってきた。

 まず流れてきたのは、フニャシア公国が謀反により帝国領となったこと。

 そして、フニャシア公国の新領主のラディウスが、臣下のニコラエによって刺されて倒れたということ。

 これにより王国は慌ただしく動き始めた。

 フニャシア公国は、王国にとって帝国や各国家との緩衝材の地域だ。

 必ず取り戻さなくてはならない。元より帝国へ戦争を仕掛ける準備をしていたところだ。


 そこへ次に来た早馬は、ラディウスが黄金の天使による治癒魔法で回復したということ。

 さらに、ラディウスの従妹のテイサ・フランシシュカとニコラエが王都へ向かっているということ。


 情報が錯綜している、とサドレーは考えた。

 意図的か、そうでないのか、嘘なのか。

 一番の眉唾の部分は治癒魔法の回復の部分だ。ここは嘘と考える。

 と、すると刺されたという部分は信憑性が増す。刺された事を隠すための安易な嘘と考えられるからだ。

 それに、ラディウスの従妹のテイサ・フランシシュカが王都へ向かっている事を本当とすると、これは交渉のためだろうと思われる。

 しかし、それに付いているのが、ラディウスを刺したニコラエだという。

 王都で安全と地位を得るために逃げてきたということだろうか。

 すると、テイサ・フランシシュカも領主殺しの共謀者なのだろう。

 彼らは戦争を止めるための交渉に来るのではない。

 彼らは戦争でフニャシア公国を王国へ取り戻すために来るのだと考えられる。


「もう一つの懸念はかの方の事ですね……」


 ペリータを捕らえて、エルシュを王都へ連れ戻す計画は失敗となった。

 そして行方もわからなくなったのだ。

 ならば、帝国へ付いたと考えるべきだろう。

 責任のとり方を考えなくては、とサドレーは人差し指で机を叩き続けた。

 逃げる手はない。

 ならば、代替の手柄としてテイサ・フランシシュカを取り入れる事くらいだろうか。

 サドレーは、テイサ・フランシシュカを王都へ手引きするために、文を飛ばした。

 そして、帰ってきた返事は予想だにしない内容だった。


「ペリータ!? エルシュの金貨の46枚の支払い!?」


 ニコラエからの王都入場の協力の要請の感謝と共に、別の内容の紙が巻かれていたのだ。

 そしてそれは行方がわからなくなっていた、ペリータから「お金返しにいくねー」というものだった。


「かの方が王都へ帰ってくる……? テイサ・フランシシュカとニコラエと共に……?」


 一体これはどういう罠か。

 つまりこれは、幻術でペリータがフランシシュカに、エルシュがニコラエに化けているということだろうか。

 しかし、それならばこの手紙を添付する意図がわからない。

 思えば、ペリータの思考はサドレーには一切わからなかった。


「そういえば死んだ〈虫〉も関わるなと言ってましたね」


 王都の裏家業の仕事人にして、金貨1000枚でも割が合わないと言われるほどの女。

 思えば、それに関わったことからしてすでに失敗だったのかもしれない。


「まあ今更ですがね」


 そして新たな情報、「テイサ・フランシシュカは黄金の天使である」という内容で、サドレーはさらに頭を抱えたのであった。

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