[3-18]小さい子と結婚はできません
前回までのあらすじ:エルシュの婚約権を巡って、ペリータとエルシュの従妹であるテイサ・フランシシュカが決闘をし、ペリータが勝利した。しかし、エルシュの兄のラディウスは弟のエルシュを帝国の貴族の嫁に出すとか言い出した。
「俺を助ける際に使われたエルシュの力は、王国側、帝国側にも伝わるはずだ」
「なん……だと……」
そういえばエルシュは城に押し入ったのだ。
それに人払いをしたとは言え、急に刺し傷が治ったラディウスを見れば、治癒魔法とバレるかもしれない。
ややこしい事にならないように今まで隠してこようと思っていたのに、一番目立つ所でやらかしてしまったようだ。
「それに、メイド少女もシュカと中庭で激しく戦ったようだな?」
「ハッ!?」
ぷりちーな私の戦いっぷりも見られてしまったというのか。
なんという迂闊……!
このままではお金持ちに雇われるか、エルシュと結婚するしかない!
「それで、帝国貴族との結婚とはどういうことでしょう兄上」
「そうだそうだ! エルシュを嫁にするのは私だぞ!」
「帝国貴族に隠れるのが一番だと思わないか? 嫁に行く妹は実際には存在しないのだからな」
「つまり偽装ということですか」
ラディウスは頷いた。
どういうこと?
「貴族と結婚したということにすれば、わたくしはいなくなるのです。登記上には兄上に妹はいないのですから、実物がいなければ捕まえることはできません」
「つまり私とエルシュは結婚できるってことだな!」
「それはどうでしょう……」
あれ?
「ちょっと待ったですわ!」
メイドに扉を開けさせ、クリーム色のウェーブ髪をなびかせて、テイサ・フランシシュカがつかつかと部屋に入ってきた。
「誰も入れるなと言っておいたはずだが……」
「エルシュ兄様にはわたしがふさわしいですわ!」
「決闘はなんだったんだ」
「それはそれですわ!」
婚約を賭けた戦いではなかったのか。
「エルシュ兄様ほどの御方が、一人の妻だけ娶るなんてありえませんわ! ですから、あなたは第二妃にして差し上げましょう。もちろんわたしが正妃ですわ!」
「なんてわがまなな奴なんだ! エルシュは私のだぞ!」
むぐぐぐぐとお互いにエルシュの腕を取り合った。
「まあまあ落ち着いてください。二人共まだ結婚には早い歳なのですから」
「むぅ」
「え?」
まだ早い……?
「そうですわ! ちんちくりんのあなたより先に結婚することになるのは順番的にわたしになりますわね!」
フランシシュカはふふーんをエルシュ越しに顔を覗かせた。
「あの……私そんなに幼くないんだけども」
「え?」
「うそっ」
結婚できる年齢は定められていない。が、婚約は早ければ12歳頃に行われる。【※王国での年齢は数え年であり、新年に歳を一つ重ねる計算になっている】
そして実際に結婚する歳となると王国での成人の15歳頃になる。
「ちなみにエルシュはいくつなんだ?」
「わたくしは15歳ですよ」
「わたしは13よ!」
そっちは聞いてない。
「じゃあ私も同じくらいで……」
「え!? 13!? その大きさで!?」
「エルシュと同じ15歳ということで」
「ないないない」
「ペリータ様……嘘はだめですよ?」
う、嘘じゃないもん……。
ふえぇ……。
エルシュにいいこいいこと撫でられた。
「わかりましたから、すぐに大きくなりますから、ね?」
「そうよ! あと3年もすればわたしくらいになりますわよ!」
「そ、そうかな……」
多分おそらくきっと、大きくなることはないと思う……。
この格差社会はやはり大地神がロリ好きなのが原因か!
「しかしエルシュは私の奴隷だからな! 私のものだからお前にはやらん!」
「ええええー!」
ラディウスが思い出したかのように口を挟んだ。
「ああそうか、そうだったな。ならばまずはフニャシー家で買い取るとしよう」
「その前にまだ奴隷商館にお金を払ってないんだけど……」
エルシュは私の奴隷、となっているが、実際はまだ50分の4しか払っていないのだ。
「そうか……、ならば金貨を持たせて王都へ行ってもらわねばならぬな」
「金貨50枚も持って帰るの怖いよ。ぷるぷる」
「エルシュ自身が最高の護衛ではないか」
私はエルシュの顔をじーっと見た。
絡め手使われたら簡単に取られそうな気がする……。
「わたしも! わたしも兄様に付いて行きますわ!」
「なぬ!?」
「まあ良いだろう。身分は隠すんだぞ」
「良いの!?」
今後のエルシュとラブラブ旅に余計なものが!
「よろしくお願いいたしますわ兄様!」
「ぐるるるるる……ふしゃー!」
とりあえずこれ以上エルシュにひっつかないように私は威嚇した。
展開に迷って書き直してその間にストック無くなってしまったため短めです。
フランシシュカちゃん書きやすかったので続投させますわ!




