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ちんちくりん魔法使いと黄金の天使  作者: ななぽよん
黄金の天使編っぽい
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[3-17]婚約決闘

前回までのあらすじ:エルシュの兄でありフニャシア公国の現領主のラディウスが刃物で刺されたと聞き、ペリータとエルシュは城へ押し入った。治癒魔法をかけて回復し、話しの流れでエルシュが実は男だったという事を知る。失意の中、ペリータはエルシュを嫁にすることをラディウスから許可を得る。改めて書いてよくわからない話しの流れである。

 ラディウスは病室のために使われた部屋から、寝室へ移された。

 ひとまず治癒はしたものの、安静するべきとラディウスは寝かされている。


 さてはて、ここは応接間。

 今ここにはメイド、それにラディウスの弟のエルシュ、エルシュと婚約の許可を得たペリータ、エルシュの護衛として付いていた魔法騎士のゾルトことゾフィア、さらにペリータより頭ひとつ分ほど背の高いクリーム色のウェーブ髪の少女が一人いた。


 そしてその少女は、「兄様が婚約などありえませんわ!」と、プリプリしている。


「何者なのよそのちっこいの! 私が兄様の婚約者ですのよ!」


 少女は両手を腰に当ててペリータを見下した。

 ちなみに胸も手のひら分くらい大きい。

 むむむとペリータが対抗しようとしたところで、エルシュに抱きかかえられた。


「おあっ、何をするっ」


従妹いもうとに水魔法しちゃだめですっ」


「あっ! 抱っこずるい!」


 エルシュの従妹がエルシュの足にしがみついた。


「だめです! 兄様はわたしだけを愛するべきです!」


「ねえちょっと、妹の教育どうなってるの」


「あはは……」


 エルシュとの婚約戦争勃発である。


「ゾフィアも何とか言ってやりなさい!」


 ふいに振られて魔法騎士のゾフィアも困り顔だ。


「俺にはお嬢の事には何も言えませんです」


「何よ。フニャシー家のために力を尽くすべきでしょ!」


 部屋を移る前にこっそり聞いたところ、ゾフィアはフニャシー家の遠戚のようだ。

 ラディウスとは面識はあったが、エルシュはあまり知らなかったとのことだ。

 幼い頃のフニャシー家の元第二王子と黄金の天使は結びつかなかったのかもしれない。


 そして先程から騒いでいる少女は、エルシュの従妹であり、婚約者であったらしい。

 エルシュが末っ子と言っていたのに妹がいると言っていたのは、コレの事のようだ。

 名は……なんだったかな。


「兄様から離れなさいちんちくりん! それにわたしを見下すのは許さないわ!」


 エルシュに抱きかかえられているので、今は私の方が頭ひとつ分ほど高い。

 ここは私の定位置だぞ。

 ふふーん。


「こうなったら兄様を賭けて決闘よ!」


 決闘?


「いやです。こわいですぷるぷる」


「テイサ家の名に賭けて、フランシシュカはあなたに決闘を申し込むわ!」


「なんで二回言ったの。いやです。ぷるぷる」


 魔力の色は鮮やかなオレンジだもの。

 絶対にいじめられてしまうわ。


「むぐぐ……腰抜け……!」


「ぷーん」


「チビ! えーっと……チビ!」 


 罵倒バリエーション少ないなこの少女。


「※※!※※※!※※※※!貧乳!!!!」


 フニャシア語で連続で罵倒された。最後の貧乳だけ聞こえたぞ! この! 


「シュカ、ペリータ様は凄いんですよ!」


 エルシュがぷらーんぷらんと左右に振った。


「ねっペリータ様」


「えっ」


「だからシュカの事もあっという間に倒しちゃいますよ」


「えっ」


 なぜか戦わせようとしてない?

 戦闘狂の血統のせいで決闘がお好き?


「むがああああ! いますぐ中庭に来なさいちんちくりん!」


 ええええええ。








「ええと……テイサ・フランシシュカとペリータ、フニャシー・エルシュの婚約を賭けて決闘を執り行う」


 見届人はゾフィア。

 おかしいな。なんでこんなことに?


「ふふんっ真っ二つにしてあげるわ」


 フランシシュカの手には少女の丈と同じほどの大剣が握られ、片手でブンブンと軽々と素振りされている。

 しかも刀身には火魔法が付与され、炎の軌跡が宙に円を描いた。


「ならお返しに水魔法でぶくぶくにしてあげるわ」


 ペリータはくっくっくと悪役のように笑った。


「ふふんっ。やれるものならやってみなさい!」


 フランシシュカが大剣を横薙ぎに振るうと、炎が飛びペリータに襲いかかった。


「(いきなりか……!)」


 ペリータは手を前に突き出し、水魔法で水の壁を作り、炎を防いだ。

 しかし炎と共にフランシシュカが前へ飛び出していた。


「(こいつ戦い慣れている!)」


「獲った!」


 フランシシュカの上段に大剣が振りかざされる。

 しかしその瞬間、フランシシュカの足元がズブリと沈んだ。

 フランシシュカは一瞬バランスを崩すが、準怪力者の肉体強化の力を使い、踏みとどまり、そのままペリータに向かって大剣を振り下ろした。


 ズバン!


 大剣の軌道は手前に逸れたが、前面を人差し指ほどの長さを切り裂き、大剣は地面に突き刺さった。

 斬りつけは甘いが、致命傷だ。

 しかし斬られたペリータの姿は、ブワリと霧となって霧散した。


「幻術だ」


 ペリータは隙だらけのフランシシュカの額を見た。

 そして目に魔力を高め、高圧の水を発射させた。

 高圧の水の噴射はフランシシュカの頭部に直撃した。

 しかし、フランシシュカの姿はゆらりと揺れた。


「陽炎よ」


 お互いに本当の立ち位置は、半身分後ろにあった。

 間合いは、ちょうどフランシシュカの大剣ほどの距離。


「(次の一手は!)」

「(これ!)」


 二人が取った行動は、お互いに距離を取らせない手。

 近距離からの範囲魔法ぶっ放しだった。

 フランシシュカの手に魔力が高められ輝きを増す。

 そしてグォォォォとドラゴンの咆哮ごとき轟音をたてて放射状に業火が発せられた。

 ペリータも手から放射状に水を発する。

 水と炎、発せられた物が単純にぶつかるだけなら水が勝つ。

 しかし炎は触れるだけでダメージとなる。

 一方水はただの水だ。当たったからといって濡れるだけである。


「なっ!」

「ぐぅ!」


 水と炎が衝突し、軽く爆発が起こった。

 その衝撃で炎は大部分はかき消えるが、ペリータの周囲を囲むように地面に火種が描かれた。

 そして次はそこから炎が噴出した。

 噴出した炎はうねり、ペリータを包み込む。


 水魔法使いが水を操れるように、火魔法使いは火を操れる。


 ペリータは自分を水魔法で包み、熱から身を守った。

 そして同時に水と土の混合魔法で、ペリータの周囲の炎の噴出している地面を沼で沈み込ませた。

 ジュアアァァァと音を立てて、炎の噴出が消え去る。

 その瞬間、フランシシュカは大剣を突いた。

 ペリータを包んでいた水がうにょーんと伸びて、ペリータを宙に浮かせた。

 フランシシュカの大剣はペリータにかすらず、水を突いた。


「なにそれ!」

「私の勝ちだ」


 ペリータは伸ばした水の上に立ち、フランシシュカの上から水をバシャンをかけた。


「まだこれかモガモアモゴ……ムモモモモ――」


 ペリータによってぶっかけられた水が、フランシシュカの鼻と口を塞いだ。

 フランシシュカは慌てて水を取ろうとするが、顔に絡みついて離れない。


「そこまで! 勝者ペリータ!」


 ゾルトが声を上げ、ペリータは水魔法を解いた。


「グッゲホッゴホッ……卑怯よこんなの!」


「ふふーん」


 卑怯も何も、水魔法は普通、直接的な攻撃手段はない。

 絡め手で戦闘不能にさせるしかない。


「なんなの! その水の上に立つの! 見たことないわよ!」


「これ? なんか温泉でやってみたらできた」


 水の高度をにょにょにょと下げて、ペリータは地面に降り立った。


「楽しそう。わたしにもやってみて!」


「他人にやるのは初めてだけど」


 フランシシュカの下半身に水をドポポポと発生させて、うにょーんと上に伸ばしてみた。

 あ、できた。


「すごい! 楽しい!」


 フランシシュカは水のお立ち台の上でくるくる回った。







「と、言うことで、フランシシュカと決闘した結果、私がエルシュと結婚することになった! よろしく義兄さん!」


 さっそくラディウスの寝室にバーンと押し入り、エルシュの腕の中から宣言した。


「エルシュは帝国の貴族の嫁に出す」


「あれ?」


あれ?

 初めてのまともな対決です。

 ペリちゃん勝てるのかな? と思ったけどなんか勝てました。やったぜ婚約ゲットだ!


 お相手はテイサ・フランシシュカ。フランツィシュカ(フランシスカ)を微妙にもじってます。愛称は英語圏の「フラン」ではなく、他の国に多い後ろを呼ぶ形から「シュカ」にしました。ちょっとだけ紛らわしいかもしれないので補足でした。

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