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ちんちくりん魔法使いと黄金の天使  作者: ななぽよん
黄金の天使編っぽい
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[3-15]入れない都

前回までのあらすじ:王国がエルシュを王都に置いておきたかった理由は『よくわからないのでは』という解決しない結論に達した。

 今日はなぜか早く目が覚めた。 


「すやー……ペリータ様そんなに魔法を使うと胸が縮みますよぉ……むにゃむにゃ……」


 なんだって!?

 しかし残念だったな! 最初から縮むだけの胸はないぞ!

 いや、それはともかく、黒いのが混じってる?

 エルシュは寝顔もキラキラして眩しい。

 暇なので、エルシュの全身を確認することにする。

 ふむ……いたって普通だな……。


 じぃー。

 つんつん。

 じぃー。

 つんつんつん。

 エルシュがぴくんぴくんと反応した。

 確認だぞ。ただの魔力の確認だぞ?

 衛兵に通報したりしないでほしい。

 そしたら私の未来は変わってしまうからな。


 つんつんつんつん。

 キラッキラッキラッキラッ。

 私は一つ気づいた事がある。

 エルシュをつんつんするとキラキラと輝く。

 輝きは魔力反応だから、私が触ったところに魔力が流れているようだ。

 楽しいなこれ。


 つんつんつんつんつんつん。

 私はエルシュの胸にハートマークを描いた。

 キラキラキラキラキラっとハート型に輝いた。

 エルシュアートだ……!

 私は魔力を使ってエルシュの身体にアートをする技術を覚えた……!

 この能力で私は一財産稼ぐ方法を考える。

 思いつかないな。

 二度寝しよ。







 さて、今日はついにフニャ都(フニャシア公国の都)に着く日だ。

 朝早くに出て、途中で昼食を食べて、そろそろお腹が空いてきてお菓子をぼりぼり食べたいなぁと思い始めた頃に門が見えてきた。

 この門は街道を見張る門であり、まだ街の門ではない。

 そこではなぜか人と馬車が集まっていた。


「なんでこんなに詰まってるんだ?」


 馬車の先を進んでいたヨーゼフが、馬上からその辺りにたむろしている人に尋ねた。


「俺らにもわからねえだが、怪しい奴は通さないとか言われちまってな。ここらでみんなキャンプの準備してるんだわ」


 離した男は怪しい奴、というほどではない。

 背にでかい荷物を抱えた、一見いたって普通の行商人だった。


「そうか、なら道を開けてくれ」


 諦めきれず門の前でギャアギャア騒いでいる男達を旗を振って追い払った。

 旗はフニャシー家の紋章が描かれている。

 なんだてめえといきり立っていた男たちも、その旗を見てスススっと脇に退いた。


「よお、何があったんだ?」


「私どもも詳しくは聞いていないのです。ただ通行を厳しく制限しろと」


「そうか」


 ヨーゼフは馬車の後ろにいた騎士のヨアヒムを呼び、「事件のようだ」と伝える。

 馬車は当然のように門を通る。


「ん? その男達はなんだ?」


 守兵がヒョロとチビとデブに槍を構えた。


「アネさんの子分です」

「そっす」

「でぶぅ」


「子分じゃねえ。こいつらは――」


 とゾルトは言いかけ、説明が面倒だなと気づく。


「俺の部下候補だ。賊から馬車を守るのに協力したので連れてきた」


「賊……ですか」


 こいつら自体が賊じゃないか? という疑いの目で見られている。

 しかし魔法騎士がそう伝えたので、守兵は通すしかない。


 かくして、街道の門は通り抜けたが、次は街の門が詰まっていた。

 ここもフニャシー家の紋章の力でスススっと先に進む。

 街の守衛も詳しい事を知らなかった。


「何かあったのは間違いない。城へ急ごう」


 観光もなく、馬車は真っ直ぐ城へ進んでいく。

 ペリータ達も何かあったとちらりと聞こえたが、外の様子はわからなかった。

 住民たちを立ち止まらせ頭を下げさせ、豪華な馬車は街中を急いだ。


「モグ、クマ、バクの三人は街の宿を取っておけ」

 城に入れそうもない三人は城へ向かう途中にヨアヒムと共に置いていく。

 ヨアヒムはもちろん監視役だ。



 城の門へ着いたがここでも馬車を止められた。

 領主の紋章の馬車を止まらせるなど、本来ありえないことだ。


「お前たち、この馬車を止めるという事がどういうことかわかっているのだろうな?」


 ヨーゼフの眼光がギラリと守衛を射る。

 守衛は臆することなく、ヨーゼフに耳打ちをし、先に城へ入れた。


「どういう事なのゾルトさん」


 ペリータはちょいちょいっと馬車へゾルトを呼び、問いた。


「俺たちが止められるはよほどの事です。中で王国派と対立して危険な状態なのかもしれません」


 フニャシー家は表向きは、息子のラディウスが領主スラローに謀反を起こし、王国領から帝国領へ寝返った。

 フニャシー家ではなく王国へ忠義があった臣下もいるだろう。

 この馬車が中に入れないのは、新領主に対立しているのかもしれないとゾルトは語った。


「ちなみにゾルトはどっち派?」


「俺はフニャシー家の魔法騎士だ」


 王国でも帝国でもないようだ。


「しかしすぐに入れないのか? 黄金の天使さまはお待ちかねだぞ」


 膝の下の黄金の天使はそわそわうずうずとしていた。


「話してみる」


 ゾルトが一旦離れ、守衛とこしょこしょと話し、すぐに戻ってきた。


「ダメらしい」


「諦めるの早いな!」


 ペリータはビシッとツッコミを入れた。


「そうは言われてもな……」


 そうこうしていると、ヨーゼフが早歩きで戻ってきた。


「何が遭ったのかわかったのか?」


「ああ。落ち着いて聞いてほしい」


 ヨーゼフは蒼白な顔に、口に手を添えてゾルトにだけ聞こえるように伝えた。


「ラディウス殿下が凶刃に倒れた」

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