[3-11]馬車の中の女(?)三人
前回までのあらすじ:ジョバーニがいなくなって、豪華な馬車が迎えに来た。
さてここからは馬車の旅だ。
なんかものすごく豪華な馬車がきた。VIP待遇である。
そこへ私とエルシュとゾルトが乗り込んだ。
ゴンズがいなくなって、私とエルシュのイチャラブ旅!
と、思ったら、なんでこの魔法騎士が付いてくるのだろうか。
護衛よりも、必要なのはかわいいメイドなのでは。
あっ、今メイドなのは私だった。
「黄金の天使さま、暇ですね」
私は奴隷メイドのペリエッタ。いつもどおり黄金の天使の膝の上に座っている。
膝クッションは素晴らしいぞ。
「そうですね。外の様子も見られないですし」
馬車は窓の閉められた薄暗い閉鎖空間。
窓は鋼鉄製で鍵が閉まっている。
天井にはほんのり薄暗く輝く魔法水晶が取り付けられている。
「…………」
ゾルトは何も話さない。
「えっと、ゾルトさんはずっと同行されるんですか?」
黄金の天使が私をぎゅっとしながら尋ねた。
「ああ」
とだけ答えて、目をつむりじっとしている。
なんだこいつコミュ障か。馴れ合い禁止か。
そう思いながらじーっと見てると、ゾルトから話しかけてきた。
「ところでそこのチビメイドは……えっと」
「ペリエッタ」
「そう、ペリエッタは……何者なんだ?」
「奴隷メイドですわ」
見ての通りですわ。
「誘拐犯をしめていた時が本性なのだろう?」
なんと!? バレていたとは!
「本性とはなんのことかしら。おほほ」
「ペリエッタはいつもこんな感じですよ」
そうそうこんな感じですのよ。
ゾルトの眼光が輝く。
「二人はどんな関係なのだ? ただの主人と奴隷ではあるまい」
「黄金の天使さまは私の嫁ですよ。言いませんでした?」
「言ったが……奴隷と主人では婚姻にはなるまい」
「なるほど」
なるほど。盲点だった!
つまりエルシュは私の嫁と言っていたのは勘違いだったのか!
そんなまさか……嫁ではなくただの奴隷と主人の関係なだけだったなんて……。
私は泣いた。人生五度目の涙だ。
今日という日を忘れないだろう。
「くすん」
「ペリエッタを泣かせないでください」
黄金の天使が私の頭をなでなでした。
いっぱい悲しい。
「えっとつまり、愛玩奴隷ということでいいのか?」
「いいです」
たしかエルシュは雑用を目的とした奴隷だったはずだが、愛玩という部分もあったはず。
だから嘘ではない。
「その……女同士でも……あるんだな」
「?」
何を言っているのだろう……。
もしかしてあれか?
えっちなことを聞いているのか!? やはりこいつは変態か!
「ペリエッタとは一緒に寝ているだけですよ」
あれ? そうだっけ?
なんかもっと色々楽しんでいたような……。
うっ記憶が……記憶が失われている……。
なでなでとかなめなめとかしたような……。
いやないか? なかったな。
勘違いだった。
「私は抱きまくらにされてるだけです。変な想像でもしましたか?」
「へ? 抱きまくら? あ、そういう……。あはは」
ゾルトは顔を赤くして頭をかいた。
珍しく油断した表情だ。
「ところで女性にそういうこと聞くのは男としてどうなんだ。セクハラだぞ」
私はビシッとセクハラ男に指をさした。
「おと……ああそれなんだが、俺は女だぞ」
「え?」
何そのカミングアウト。
男の格好をしているのに女?
いや待てよ。騎士だから?
騎士だから男の格好に見えるだけ?
そういえばおっぱいがあったな。
おっぱいがある男じゃなかったのか?
「おっぱいがある男じゃなかったのか?」
「うん? ああいや、そういう病気の男もいるようだが、俺は元から女だ」
いやでも『俺』とか男言葉を使っているぞ。
まあ私も一人称以外はほとんど男言葉だけど。
これはこう意識してるだけで、本当は違いますのよ?
「実は私も女の子ですのよ」
間違われるかもしれないから言っておこう。
口調で生意気ショタっ子と思われてしまうかもしれないからな。
「そ、そうか」
黄金の天使がなぜかもぞもぞしている。
「あのわたくしは――」
「わかっている二人は女性だ。だからこそ女の俺が同乗しているのだが」
「あ、はい」
本来は別の人が乗る予定だったということか。
だから王城から来た人が外で馬に乗ってるのね。
「それで話しは変わるが、気づいていたと思うが俺はペリエッタを警戒していた」
「ぷるぷる」
とりあえずぷるぷるしておいた。
「君は魔力の欠片も感じられない。隠しているのだろう?」
「魔法が使えないだけです。ぷるぷる」
「いいや、使っていたではないか。髪の色を変えていただろう?」
なに!? バレてた!
「あの……わたくしはどう見えるのですか?」
「黄金の天使様は治癒魔法を使った時だけ見えた」
ほう……そう見えるのか……。私からはいつでも金ぴかキラッキラだけどな!
「それですぐに信じて貰えたのですね」
「ああ。幻術の類ではないと判断した」
ゾルトがまた私の方を見ている。ぷるぷる。
「さて本題だ。ペリエッタは水魔法の幻術、黄金の天使様は治癒魔法と怪力の力だろう?」
あら、エルシュの怪力もバレてる。片手で人間ぶら下げてたからか。
「俺は火魔法と剣が使える。これが私達の戦力だ。それを確認しておきたかった」
「つまり?」
「率直に聞こう。君たちはこの馬車が真っ直ぐ都に着くと思うか?」




