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ちんちくりん魔法使いと黄金の天使  作者: ななぽよん
黄金の天使編っぽい
38/66

[3-10]誘拐は捕まらず

前回までのあらすじ:赤髪セミロングメイドを偶然論破した


【主観がいつも以上にころころ変わります】

「疑ってすまなかった」


 赤髪メイドは集まってきた衛兵に引き渡された。

 ゾルトが魔法騎士所属の証を見せて、状況を說明した。

 店内に眠りの魔法が使われ、屋敷の娘のマリシアが誘拐された事を聞くと、衛兵の一人が走って各地に伝えに行った。

 

「俺は君たちの護衛で残るが、先程の様子だとその必要もなさそうだな」


「誘拐、怖いです。ぷるぷる……」


 ぷるぷるしてみた。


「下手すぎる演技は不快だぞ」


「なっ」


 失礼な!


「それに君たちの関係も少し変わっているようだが?」


「ふむ……もう隠してもしょうがないか……黄金の天使は私の嫁だ」


「うん……うん?」


 ゾルトは首を傾げた。


「えっと……君は……ペリエッタは男なのか?」


「どう見ても美少女だろう」


「女同士で婚姻……うん?」


 エルシュがなぜかオロオロしている。


「私の村では、三日続けて肌を重ねて同じ宿に泊まったら、結婚となる」


「あ、ああ……」


「だから黄金の天使は私の嫁だ」


 ゾルトがわたわたしてるエルシュを見た。


「君はそれでいいのか?」


「えっはい。ペリエッタがそういうなら」


 やった! エルシュにも認められたぞ!


「まあ二人の仲がいいのはわかった。それで――」


 ゾルトの眼光が輝く。


「ジョバーニが誘拐に関わっているとはどういうことだ?」







「どういうことだ〈水影〉。失敗とは」


 怪力者の〈熊の手〉は間違いなく桃色の髪の少女を捕まえてきた。


「後はこいつを王都へ運ぶだけだろ? 本番はこれからじゃないか」


 俺たち裏稼業の四人〈モグラ穴〉、〈熊の手〉、〈爆炎〉そして〈水影〉に依頼された内容は『桃色の髪の少女を王都へ連れてくること』だった。

 ターゲットの入った店に〈水影〉が眠りの魔法をかけ、〈熊の手〉が店内に駆け込み桃色の髪を捕まえて戻ってきた。

 そして俺、〈モグラ穴〉の土魔法で土中移動をし、すばやく店の裏側へ移動。

 〈爆炎〉はそこをあらかじめ見張っていた。


 宿の裏に用意しておいた馬車まで裏道を通り、桃色の髪の少女を樽に入れて後は脱出だ。


 〈水影〉は『用事がある』と言い残しふらりと出かけ、戻ってくるなり『依頼は失敗だ』と頭をかきながら言った。


「俺たちに依頼を告げた赤髪が捕まった」


「なにぃ!?」

「なっクソぅ、あいつ下手くそかよ」

「でぶぅ」


 3人が同時に声を上げた。

 首謀者がゲロったらその時点で終わりだ。


「今ならまだ間に合う。三人は何事も無かったかのように馬車を出してくれ」


「でももうバレてたら馬車は町を出る時に止められてしまうぜ?」


「ターゲットを置いて行けば、調べられても何も出ないだろう?」


 俺は驚愕した。まさかこいつ!


「おめえ、俺たちを逃がそうっていうのか」


「でっでぶぅ……」


「ああ、俺ならなんとかできる。その間に逃げてくれ。マヌケのせいで俺たち全員が捕まる必要はないだろ」


「ちっ……カッコつけやがって……」


「でぶぅ……」


「いいのか? 本当に」


 〈水影〉は静かと頷いた。


「そうと来たらとっととずらかる準備だ! 〈熊の手〉、樽を降ろせ!」


「でぶぅ!」


 桃髪の少女の入った樽が宿の裏にドスンと降ろされた。


「生きて会えたらまた仕事しようぜ」


「でぶぅ」


「すまない、見知らぬお前に泥被りを任せて」


「いいんだ」


 俺は町の門へ向かって馬車を走らせた――








「さて、と」


 俺は樽を開けて、少女の幻術を解いてライトブラウンの髪に戻し、気付け薬を嗅がせた。


「ん……? ふぇ……? くっさぁあ!」


 少女がキョロキョロと辺りを見回した。


「え? なにここ? どこ?」


「はじめましてお嬢様。助けにまいりました」


 俺は胸に手を当て、礼をする。


「何があったのかしら?」


「お嬢様は悪者に誘拐されておりました」


「え!? 誘拐!?」


 少女はビクンと身体を震わせた。

 悪そうな奴はどこにも見当たらない。


「ありがとう。あなたが助けてくれたのね」


「左様です」


 俺は手を差し出し、少女は俺の手を掴んだ。

 そして少女を樽から引っ張り出す。


「ここは宿の裏通りになります。その小道を行けば大通りに出られますよ」


「一緒に来てくださらないの?」


「俺は誘拐犯を追います。それでは」


「あのっ! お名前を……!」


 俺は答えず、すっと姿を消した。








「それで、その褐色の男はいなくなったわけですね」


 屋敷の少女マリシアが宿の前で見つかり、衛兵が魔法騎士ゾルトを呼んだ。

 私とエルシュもそれに付いていき、ひとまず屋敷へ戻った。

 誘拐の事を聞いた屋敷の主人のガライ・メハイは、顔を真っ赤にして「誘拐犯を絶対に見つけ出せ!」と興奮したので、どうどうどうと安静して落ち着くようにメイドに退室させた。

 今は応接間にマリシア、ゾルト、エルシュとそれに座っている私、それに信頼できるメイドだけが部屋に残っている。


「はい、とてもかっこいい方でした。ぽっ」


「気の所為ですよお嬢様」


 あれはかっこいいと言われるような男じゃなかったはずだが。

 間違いなく怪しい下品な男だ。


「異国の佇まいと言いますか、憂いを秘めた瞳に確かな強さがあって、名乗らずに行ってしまいました。なんという方でしたのでしょう……」


「ジョバーニだな」

「ジョバーニですね」


「あらご存知ですの? ジョバーニというのですか。またお会いしたいですわっ」


 いや多分一生会えないだろうね……。赤髪メイドが接触した男とバレてるし。


「衛兵達と屋敷の私兵にお嬢様誘拐実行犯を命じております。その際に見つかるかもしれません」


 実行犯側として、とは言わない。


「そうですか。それならいつでも会えるように身支度をしておきませんと」







 赤髪メイドの吐いた情報では、実行犯は四人。


 土魔法の使い手、痩せ型の男〈モグラ穴〉

 怪力者、太った男〈熊の手〉

 火魔法の使い手、背の低い男〈爆炎〉

 水魔法の使い手、異国の褐色の男〈水影〉


 それを聞いて私は「うん?」と思った。

 ゴンズの奴、勝手に人の異名を使ってやがる!

 今度会ったら踏みつけてやる。



 そして一週間が過ぎたが、ジョバーニや他の実行犯が見つかる事はなかった。

 その日、フニャシー家の紋章が入った馬車が屋敷に前に止まった。

区切れ目で久々にあとがきっぽいあとがき。


 街中トラブルといったら誘拐だよね!と思って書いたのはいいのですが、主人公達に最適行動させたら事件になりませんでした!

 本当は違う展開を一度書いたのですが、「なんか違うなぁ」となって書き直したので、「え?これで終わり?」って感じになりました。相変わらず山場が来ない方たちです。


 登場人物が増えるとごちゃごちゃするので、これでジョバーニが一旦退場となります。

 代わりにゾルトさんが付いてきます。

 ゾルトさんもまた面倒くさい性格してるので、さてはてどうなることやら……。

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