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ちんちくりん魔法使いと黄金の天使  作者: ななぽよん
黄金の天使編っぽい
36/66

[3-8]男装は変態か

前回までのあらすじ:街を案内する屋敷の娘マリシア。護衛の魔法騎士ゾルト。お腹を壊したペリータはエルシュと共に店のトイレに駆け込む。うんこしている間に店内は眠りの魔法がかけられマリシアは誘拐されてしまった。ゾルトの胸当てを外しセクハラをしたら、なんとおっぱいがぽよぽよしていた。

 おっぱいの上におっぱいは創らず。おっぱいの下におっぱいは創らず。

 人は生まれながらにして、ぺたんこで平等である。

 しかし、確実に差は出てしまう。

 それは遺伝か環境か。

 それとも神が与えた運命なのか。


 私は泣いた。人生で四度目の涙だ。

 きっとこの日の事を一生忘れないだろう。

 私とエルシュは男のおっぱいにすら負けたのだ。


「切り取るか……こいつのこの無駄な肉を……」


 エルシュが慌てて私の身体を抱えて持ち上げた。


「ペリータ様、ゾルトさんは大丈夫なのでしょうか」


「ああ、綺麗な空気に移したからそのうち起きるだろう」


 眠りの魔法の毒は吸い続ける事で意識が落ちる。

 濃い毒をずっと吸い続ければそのまま二度と起きる事はないが、ただ眠らせるだけの濃度なので店の中にいる者たちも換気をしたのでそのうち起きるだろう。


「あら黄金の天使さま。どうなさいました?」


 屋敷にいた赤髪のメイドが手を頬に当てやってきた。


「マリシアがいなくなった」


「は? え? ええ!? どっどうしましょう」


 赤髪メイドは一瞬呆けた顔をした後、わたわたとし始めた。


「どうします? ペリエッタ」


「放っておけばいいのでは?」


「え?」


「え?」


 なぜか二人が私の顔を同時に見た。


「それより重要な質問がある。お前……」


 私は赤髪のメイドを睨みつけた。

 赤髪のメイドの頬につらりと汗が流れる。


「おっぱいのある男を……どう思う……?」


「え? はい……?」


「こいつの胸にはおっぱいが付いていた」


 私はゾルトを指さした。


「ええとそれは……彼女が女性だからなのでは……?」


「なんだと!?」


 つまりこいつは男の振りをしていたということか!?

 えーとつまり……?


「男装する変態……!?」


「あっあのぉ……」


 エルシュが私の肩をポンポンと叩いた。


「どうした?」


「いえ……なんでも……」


 冷静に考えて欲しい。女が男の格好をしているのだ。

 こんな私でも格好はぷりちーメイドだ。美少女としての尊厳は失ってはいない。

 女の子はかわいい服を着てこそ女の子なのだ。


 ではなぜこいつは女の癖に男の格好をしているのか。

 それは、男の振りをして女とイチャイチャするために違いない!

 女が男の格好をして女とイチャイチャするなんて、変態に違いないじゃないか!

 しかもこんなに胸に無駄な脂肪が付いている癖に!

 だったら胸を削れ!


 待てよ、胸が無ければ男装も許される……?

 その理屈で言うならば、エルシュも男装が似合うのではないだろうか。


「じーーー」


「な、なんですかペリエッタ」


 エルシュは背が高い。一般的な平民の女性より背が高い。

 きっと生まれが貴族で良いものを食べてきたからであろう。その割には胸はないけど。

 ゆえに男装が似合いそうだ。

 それにエルシュは騎士を目指していたはずだ。鎧姿も様になるだろう。

 長い髪をこう後ろで縛ったところを想像したりして……ふむ……。

 いける……。


「ちょっと男装してみないか……?」


「うっうん!?」


「いやなんでもない」


 おっとうっかり心の声が漏れてしまった。失敬失敬。


「さて、では帰るか」


「え?」


「え?」


「うん?」


 また二人が私の顔を同時に見た。なんだというのだ。


「えっと、マリシア様が拐われた……のですよね? でしたら一緒に探してくれませんか!?」


 ……なるほど、こいつが首謀者か。

 私は「拐われた」なんて一言も言ってない


「この女を捕らえろ」


「はっはいっ!」


 エルシュはダッと一瞬で赤髪メイドの背後を取って腕をひねり、組み伏した。


「ぐっ……なんですか急に!?」


 赤髪メイドの周囲に薄い水色のモヤの魔力が輝きを増した。


「折れ」


「はい」


 ボキッと音を立て、赤髪メイドの右腕が本来いかぬ方向へ曲がった。


「うがぁ! ぐはっ!」


「魔法は使わせん。余計な事は考えるな」


 私は赤髪メイドの顔にビシャンと水をかけた。


「ゲホッ……ハァ……ハァ……」


「人目が多いな。中に入れるか」


「はい」


 エルシュは赤髪メイドの足を掴んで持ち上げた。


「何を……している……?」


 そしてこのタイミングで、魔法騎士ゾルトが目を覚ました。

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