[3-7-3]鳥と鼠と虫
僕は鳥使いの荒い人間は嫌いだ。
しかしこいつは金をくれるから我慢するしかない。
僕の鳩に手紙を括り付け、遠くの街まで飛ばせと言う。
すでに僕は女二人を監視する仕事をしているというのに。
頼み事をするなら、忙しい僕の代わりに、僕の子どもたちに、餌を買って、餌を与えるくらいしてもいいと思う。
しかしこいつは金だけを置いていく。
こいつは金は食えないということを知らないようだ。
僕が他のことをしている時は、頼まれた監視ができないということを知っているだろうに。
これだから馬鹿な奴は嫌いだ。
鳥のように賢くあってほしい。
僕は言われた通り、愛鳩の一羽に渡された手紙を足に括り付け飛ばした。
鳩が来た。
鳩の足には手紙が括り付けられていた。
私がそれを取り外すと、鳩はバッと飛び立っていった。
私は誰にも見つからぬよう、手紙を開いた。
┌────────┐
鳥より鼠と虫へ
報酬は金貨50
毒で金と桃を離せ
桃を王都へ運べ
金には関わるな
└────────┘
次の日、〈金〉と〈桃〉と〈虫〉が来た。
飲み物に遅効性の麻痺毒を盛る。
〈虫〉に指令を渡す。
一日経ったが麻痺毒は効果が出ていない様子だ。
黄金の天使の力のせいかもしれない。
お嬢様に、黄金の天使と街へ遊びに行くことを提案する。
あとは他の〈鼠〉と〈虫〉に任せる事にする。
屋敷の庭にて、ジョバーニに赤髪のメイドが近づいてきた。
「従者はあなたですね?」
「へい。左様でござます」
ジョバーニは馬の首をポンポンと叩き、メイドへ振り返った。
「黄金の天使様は屋敷で泊まります。あなたはこれで街の宿を取ってください。小銀貨が20枚入ってます。中身を確認してください」
赤髪のメイドは無表情でジョバーニに革袋を手渡した。
革袋からはチャリンと硬貨が擦れる音が鳴った。
「ありがとごぜやす」
ジョバーニは無表情で革袋を開けた。
「いーち、にーぃ、さーん……にじーう。あい、確かに入ってますあ」
「宿の場所を書いた紙も入っています」
「へい、助かりますあ」
ジョバーニは指定された宿の部屋へ入った。
男が三人座っていた。
ヒョロいのと、デブと、チビだ。
赤髪メイドが集めたであろう、裏稼業の男たちだ。
ジョバーニは後手で部屋のドアを閉めた。
「仕事は」
「誘拐だ」
ヒョロいのが答え、チビが質問した。
「何ができんだ新入り」
ジョバーニは一瞬だけ考えて答える。
「眠りの魔法だ」
「ヒュゥ。今回の仕事にうってつけじゃねえか」
「リーダーは?」
「オレだ」
ヒョロが手を上げた。
「土魔法。名は〈モグラ穴〉だ」
次にデブが答えた。
「怪力者でぶぅ。〈熊の手〉でぶ」
最後にチビが答えた。
「オイラは火魔法だ。〈爆炎〉と呼ばれてる。アンタの名は?」
ジョバーニは頭をかいた。
「俺か。俺は〈水影〉だ」




