[3-2]黄金の天使
前回までのあらすじ:最愛の天使に色目を使ったジョバーニ(ゴンズ)をうっかり殺しちゃった。
最初に私の脳裏に浮かんだのは村で見た予知夢のようなものだった。
あの時、未来の私は何を考えていたのか。
ゴンズを思わず殺した「てへぺろ」と思っていたような気がする。
「やはりお前を殺す運命は変わらなかったのか……」
私はジョバゴンズの前で合掌する。
嫌いなやつだったが、最後は私の沼の魔法で誰にも見つからないくらい深く埋めてやろう。
「待て、勝手に殺すな……痛っつつ……」
なんと死んだはずのジョバニンズが甦った。
これはまさか死霊魔法か! アンデッドか! おのれ悪霊退散!
悪霊には天使の力だ! 黄金の天使の輝きを食らうがよい!
私はささっとエルシュの後ろに隠れた。
「急すぎて反らすのが遅れたぜ……」
アンデッドジョゴバンズは頬に出来た傷を撫でて「うわっ血が出てる!」と騒いでいる。
何を騒いでいるんだ、アンデッドの癖に。
「あっあの……ゴンズさん。私が治しましょうか?」
「え?」
「え?」
何を言っているのだろう私の黄金の天使は。
「待て俺はジョバーニ……は、置いておいて、治すとはどういうことだメイドちゃん」
「えっ? そのくらいの傷でしたらすぐに治りますよ」
私のメイド天使が立ち上がり、ジョババンゴの頬に手を当てた。
「いたいのいたいの天使の羽で連れていけー」
と言うと、黄金の天使の黄金の魔力が手のひらに集まって輝き、ゴジョバーズの頬の傷がすっと消えた。
ゴジョンズは「んあっ!」と変な声を出して自分の頬をさすった。
「はい。治りましたよ」
「おっおい……なんだよこりゃ……」
そういえば私も疑問に思っていた事があった。
傷だらけだったはずの私の身体もいつの間にかきれいになっていたのだ。
黄金の天使には心だけじゃなくて身体の癒やしの効果もあるんだなーとか実は呑気に思っていた。
「えっ……と……傷を治す呪文ですが……。ご存知ないでしょうか」
エルシュはキョトンとしている。
「いやまあ……子供にする似たようなものはあるが……本当に治っているのだが……」
「ええ……治りますよね? 私も幼い頃に母からよく治して貰いました」
「待て、天使」
私はぎゅっとエルシュの身体を抱きベッドに戻……私の力では動かないのでエルシュは私を抱いて自分でベッドに戻った。
「(治癒魔法使い!?)」
私は興奮で顔を赤くし、ジョバゴンズは顔を青くした。
エルシュの黄の魔力は肉体強化の力だ。
言うならば、肉体に影響を与える力といえる。
その力は一般的には「怪力」と言われ、魔法が苦手な代わりに得られる力だと言われている。
しかし私には魔力が色として見えるので、怪力自体が魔法の一種だと思っている。
そしてその力は肉体を行使するため、肉体の強化とともに肉体の破壊をもたらす。
過度な力は骨や肉体や神経を破壊する。
それが並の力の「怪力者」だ。
上位の怪力者はそれに加え「自己再生」の力を持っている。
肉体への負担を再生で補っているのだ。
また、その際には痛みを消し、代わりに快楽をもたらしているとも言われている。
そのため、黄の魔力の者、怪力者には戦闘好きが多いとも言う。
黄の魔力が再生の力だとすると、治癒の魔法もあってもおかしくはないのでは、と私は考えた。
治癒魔法使いは昔話しには出てくるが、伝説的な存在だ。
なぜなら黄の魔力が他者に影響を与えるほど強くなくてはならず、そもそも「怪力者」として魔法が扱えない者という扱いなのだ。
他者の身体の傷を治せるとは本人も周りも思うはずがない。
「その力を知っている者は?」
「はい。えっと……両親と兄上と……あと従姉妹の妹でしょうか」
「それと私とジョバーニだな」
「はいそうです」
「なんてこった……」
ジョバーニゴンズはぷるぷるとしている……。
「とりあえず今まで黙っていたのは偉いぞ良い子良い子」
と言って私はエルシュの頭を撫でた。
「良くねえよ……なぜ俺を巻き込んだ……ああもう終わりだ……」
うるさい。静かにぷるぷるしていろ。
「なっなんか大変な事のようですね……」
当事者はキョトンとしている。
「なあジョバーニ。黄金の天使のこの力でフニャシー領へ正面から行けると思わないか? 言っていただろう? 医者なら中立の立場でいける、と」
「ああ……ああ……」
ジョバーニゴンゴンズはうつろの目のまま頷いただけだった。
補足:
「母から治して貰った」は勘違いで幼いエルシュは自己治癒で治していただけです。
治癒魔法のきっかけではあります。




