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47 残念令嬢の卒業式

 青空の広がる卒業式当日。


 濃いワイン色のアカデミックハットと同色のケープを羽織り、リリーは卒業式に挑んだ。


 女生徒はみなリリーと同じ色、男子生徒は濃い青色。皆が卒業後は各々の道に進んでいくのだ。それをひしひしと皆が感じながら式は厳かに進んでいく。


 一度だけ式典中にふと目が合い、何か言いたげな顔をしたのはルパートの方で、リリーは少しだけ目礼をしてすぐ視線を逸らし二度とそちらを向くことはなかった。


 卒業生代表挨拶はフィルバート王子が飄々と軽~くこなした。


 意外かも知れないが成績は常に優秀で3年間ぶっちぎりでトップを走り抜けたのである。


 軽薄で掴みどころがない彼だが、同性には意外と人気があったりする。



 人間何かしら取り柄はあるものだ。



 講堂から外に出ると在校生達が卒業生達に花を贈るために待ち構えていて、リリーは派閥の貴族女子達にあっという間に囲まれにこやかに会話をして過ごす。


 ここでも休み中に出席した茶会の影響もあってか、ドレス姿でも人気は衰えを見せず寧ろ今迄茶会でしか顔を会わせなかった別派閥の御令嬢達が同派閥の囲いの外側でウットリとした表情になり『美しい』『尊い』『お姉様が卒業してしまうなんて・・・』と嘆きと共に呟きが広がって行く。


 王宮の官吏より、リリーに対して接近禁止を言い渡されたルパートも同派閥の子女に囲まれて過ごしていた様だが例のプラチナブロンドの美少女が腕にぶら下がり、その取り巻きが更に周りを囲んでいたため互いに接近どころか姿さえ見えなかった。




 ×××




 夕刻。


 明るい夕暮れの朱色と薄闇の青が混ざり始める頃、続々と王城に貴族家の馬車が集まり列をなして門をくぐる。


 王城の大広間が貸し切りとなり、国王主催で卒業を祝う夜会が開かれる為である。


 既に婚約者が居るものは同じコサージュを胸元に飾り付けて同じテイストの衣装に身を包んで仲良く会場入りをしていく。


 そうでない者達も学友同士で、親子で、兄弟姉妹で王城で年に一度開かれるこの夜会を楽しむ為に次々に広間へと進んでいる。



 綺羅びやかなシャンデリアからキラキラと夢のように光が降り注ぐ王城のバル内はオーケストラの美しい音楽が奏でられており、気の早い者たちは思い思いに手を取り合い軽くドレスの裾を翻しながらパートナーに支えられて弾けるような、人によっては恥じらうような笑顔で踊っているのが見える。


 立食形式の食事が中央のダンスの場を邪魔しない程度に離れた場所に構えられ、その間を給仕の為の侍従達が銀盆に載った色とりどりのノンアルコールカクテルを見せては手にとって貰えるように、ゆっくりと練り歩く。


 そして夢のような煌めくパーティ会場に相応しく着飾った一組の男女が踊っているのが皆の目を引いているのが分かる。


 まるで御伽の国の王子様のようなサラリとした金の髪を一纏めにした美男子、ルパート・セイブリアン侯爵子息と、プラチナブロンドをくるくるとウェーブさせた髪を所々編み込みにして、緩くそのまま垂らし青い小花を散らした儚げな見目をした超絶美少女ルミア・フォルセット公爵令嬢である。


 彼らは同派閥の令嬢達から溜息と共に、まるで『物語の中のヒーローとヒロイン』ね、とか『真実の愛の前には政略結婚など無意味ですわ』とか、『美男美女で完璧ですわ』とかいう声があがっているようだ。


 しかし彼女達は、それを見ている周りの大人がものすご~く微妙な表情になっているのに気が付かない・・・



「おい、例の元家庭教師の令嬢の事聞いたか?」


「ああ、行方不明になったとか? それだろ?」


「そうらしいな、あの家の奴ら全員を最近見ないらしい」


「前侯爵が失踪したとか?」


「あの爺さんか?」


「なんでも、探すなっていう書き置きが見つかったらしいぞ」


「そんな殊勝なタマかよあの爺さんが」



 色々な会話がヒソヒソと飛び交っているが、総じて顔色が悪そうである。



「公爵家の花畑と堂々と踊ってるアレもなぁ」


「アレは女に誘われたらノーって言えないんだよ。ずっと観察してたがそういうことらしい」


「ただの優柔不断かぁ」


「誰だよアレを推したの?!」


「現●●侯爵と夫人」


「見る目が無かったんだな」



 その辺の集団が全員溜め息をついた。












 ルパートの株価大暴落中。


 

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