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【コミックガルド配信中】最強の剣聖、美少女メイドに転生し箒で無双する  作者: 三日月猫
第3章 第3章 オフィアーヌ家の過去/魔法兵隊の団結
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第80話 元剣聖のメイドのおっさん、駄々をこねる。


 夕食後。


 食器を洗い終え、皆で机を囲んで雑談をしていると、突如オリヴィアが衝撃的な提案を満月亭の女子たちに投げて来た。


「そうだ! ルナティエさんが入寮したことを歓迎して、今日は満月亭の女子全員でお風呂に入りませんか~? その後、私の部屋でパジャマパーティーしましょう! 女子会です!」


「・・・・・・お風、呂・・・・?」


 俺はその言葉に数度目を瞬かせてしまう。


 そんなこちらの様子を無視して、彼女たちはどんどん話を先へと進めていく。


「いいんじゃない? あたしは別に構わないわ」


「うん、私も別に良いよ」


「う゛ぉぇぇ・・・・わ、わたくしも構いませんが、ちょ、ちょっと、先ほどの料理で胃にダメージが・・・・」


「それじゃあ、決まりですね! 私、一度、お友達とお風呂に入ってみたかったんですよ~! あと女子会も! 一期生のみんながこの寮に来るまで、女子は私ひとりだけでしたので・・・・女の子同士で遊ぶのが、夢だったんです~!!」


 そう言ってキラキラと目を輝かせるオリヴィア。


 俺は恐る恐る挙手をし、そんな彼女に青ざめた顔を向ける。


「も、申し訳ございません。わ、私は参加を辞退させていただいてもよろしいでしょうか」


「えっ? 何でですか、アネットちゃん?」


「え、ええと、何と言いますか・・・・止むを得ない、説明の難しい事情があると申しますか・・・・」


「説明の難しい事情とは、いったい何ですか?」


「あの・・・・ええと・・・・」


 ど、どう説明すれば良いんだ? 


 「俺、実は前世では男だったんです、あははは」なんて言えるわけはねぇし・・・・。


 というか、説明したところで誰も信じはしねぇだろうな。


 俺の中身があの髭面の剣聖だったなんてことは、けっして。


 クソッ! 上手い言い訳が何も思いつかねぇ!!!!


 こうなったら、しょうがない------最終手段、プライドを捨てる手を使うとするか。


 





「アネットちゃーん、いい加減覚悟を決めてください~」


「嫌です!! 離してください、オリヴィア!!」


「もうっ! 駄々をこねないでくださいっ! 身体を見られることが嫌なら、タオルで隠せば良いじゃないですかっ! 入寮したばっかりのルナティエさんの交流会を目的とした女子会なのですから、我儘言っちゃダメですよっ!」


「で、ですから、駄目なんですって!! 私が、皆さまと、お、おおおおおおおお、お風呂に入るだなんて、許されることじゃないんですって!!!!!!!!」


 そう叫び、俺は床に膝を付き、椅子の背もたれにギュッとしがみつく。


 だが、【怪力の加護】をその身に宿すオリヴィアの腕力に俺が敵うはずがなく。


 俺は椅子を抱いたままそのまま持ち上げられ----ヒョイと、軽々と背中からオリヴィアに抱っこされてしまった。


「さぁ、行きましょうね、アネットちゃん~」


 穏やかな微笑みを向けてくるオリヴィア。


 だが、何としてでも俺は彼女の手から逃れなければならない。

 

 このままでは俺は、漢として不埒な行いを・・・・満月亭の女子生徒全員と、お風呂に入ってしまうことになるからだ!!!!!


「嫌だぁ!! お嬢様ぁ、助けてぇ!!!!!」


 必死の形相で、ロザレナへと視線を向ける。


 すると何故か俺のご主人様は、鼻血を垂らしながら、こちらをジッと見つめてブツブツと何かを呟いていたのだった。


「お嬢様?」


「・・・・・アネットの裸、アネットの裸、アネットの裸・・・・・」


「お嬢様ッッ!?!?」


 駄目だこのお嬢様、煩悩に支配されていやがる!! 使い物にならねぇ!! 


 仕方ない、ロザレナに救援を求めるのは諦めて、次だ、次!! 


「ル、ルナティエ様、お助けを!!!!」


「う゛ぇ゛ぇぇっ・・・・・もう、オリヴィアさんの料理は食べたくありませんわぁぁ・・・・うぷっ」


 そうだった、ドリルティエ様はすでにうちの寮のボスにキルされていたんだった!! 


 諦めて他の寮生に助けを求めよう、次だ!


「---で、では、ジェシカさん!!」


「えー、別に一緒にお風呂入るくらい良いじゃん、アネッ----はっ! ま、まさか、このサキュバスメイド、最後の砦である私を・・・・お風呂で誘惑して襲う気なんじゃ!? あ、あわわわわわ・・・・」


「前々から気になってたんですがそのサキュバスメイドっていったい何なんですか!? ちょ、本当に待ってください、オリヴィア! 私のような人間が皆さんと一緒にお風呂に入っては絶対にダメなんですって!!!!」


「何で、駄目なんですか~?」


「そ、それは・・・・・・私が、その、私の中身が、その・・・・」


「アネットちゃんの中身? うーん、綺麗な身体なんですから、もっと自信を持った方が良いと思いますよ?」


「そ、そうじゃなくてですね!?」


「はい、問答無用です♪ では、行きましょう~!!」


「ちょ、待っ・・・・!! くそっ、この手は使いたくなかったが、仕方がない!! 俺の切り札、最終兵器グレイレウス!! 窮地に陥っている師匠を助けるのはお前しかいない!!」


「---フッフッフッ。残念だったわね、アネット」


「!? お嬢様!?」


「女子全員でお風呂に入らないかって話題が出た時に、貴方が拒否するのは目に見えて分かっていたからね。グレイレウスに助けを求める未来を予測して、事前にあの男には『食後にトレーニングでも行ってきたら?』って言って、先んじて外に追い出しておいたわ。あのマフラー男は今頃、裏山の修練場でバカみたいに剣でも振っていることでしょうね! フッフッフッフッフッフッ!!」


「なっ、何故、そんなことを!?」


「決まっているじゃない。貴方の裸を拝むためよ!! ・・・・あと、今日の献立にあたしの嫌いな葉物野菜を大量に入れた罰よ!! これであたしの恨みを思い知ったかしら!! あははははは!!!!」


「鼻血を出しながらキメ顔をしないでください、お嬢様!!!!!」


 こうして俺は、まんまとロザレナの策略に嵌り、満月亭の女子全員でお風呂に入ることになってしまったのであった。


 ・・・・ちなみにマイスは食後は早々に部屋に戻ってしまったため、この場には居なかった。


 まぁ、あいつがここに居ても何の助けにもならなかっただろうけどな・・・・はぁ。


 本当に、どうしよう・・・・。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




「あら? 思ったよりも広い大浴場ですわね。まぁ、フランシア家のものと比べれば全然、大したことはないのですけれど! オーホッホッホッホッ!!」


「ちょっとルナティエ! 胃痛から復活したのは良いけど、ここで高笑いはやめなさいよ! 声が響くから耳にキンキンと響いてうるさいったりゃありゃしないわ!」


「みんなでお風呂入るって初めてだから、何だかドキドキするねー! って、うわぁ!? オリヴィア先輩、胸、でっか!!!!」


「そ、そんなに見られると、恥ずかしいですっ! ジェシカちゃん!」


 キャッキャッウフフと大浴場で楽し気にはしゃぐ満月亭の女子生徒たち。


 そんな彼女たちの声を聞きながら、俺はタオルで身体を隠し、大浴場の入り口にある床のタイルを暗い顔で見つめていた。


「そんなところでどうしたんですか~、アネットちゃん~?」


「何だか暗い顔しているけれど・・・・大丈夫?」


 オリヴィアとジェシカのその声にこくりと頷き、俺は恐る恐る足を一歩、前へと進める。


 どうすれば、どうすれば良かったのだろうか・・・・。


 強引に逃げる手もあったが、それをやってはルナティエがみんなと交流するこの場を台無しにしてしまいそうな気配があったし・・・・。


 あからさまに拒絶したら拒絶したらで、かえって不審にも思われそうだったし、ううむ・・・打つ手がない、な。


「どうしたんですの、アネットさん」


 ぺたぺたと足音を立てて、俺の視界にルナティエと思わしき細くて長い綺麗な足が現れる。


 絶対に上を見ないように心がけて、俺はルナティエの足の指に視線を向け、そのまま口を開いた。


「す、すいません、ルナティエ様。私、人に身体を見られるのが慣れていなくて、その・・・・」


「そうなんですの? 別に貴方、何処もおかしくないと思いますけれど。--あぁ、もしかして、身体に大きな傷でもありまして?」


「いいえ。そういうことではないんです・・・・はい・・・・」


「? 変な方ですわね。わたくしを見習ってもっと堂々とした方がよろしいんじゃありませんの? このルナティエ・アルトリウス・フランシア、自分の身体に恥ずべきところなどひとつもありませんわぁ!! わたくしの均整の取れたこのプロポーションは、王国の至宝の芸術と呼ばれてもおかしくないと、自負しておりますから!! オーホッホッホッホッ!!!!!」


「まぁ、確かにあんたの身体は綺麗だとは思うけれど・・・・なーんか、面白味ないのよねぇ。胸も普通サイズだし」


「うるっさいですわねぇ、この貧乳!!」


「貧乳じゃないわ!! 揉めるだけはあるもの!!」


「オーホッホッホッホッ!! 雑魚が苦し紛れの言い訳をしていますわねぇ!! この寮で一番、胸が無いのは貴方なのではなくってぇ? ロザレナさん~?」


「そんなことはないわ!! あたしより下はいるもの!! ほらそこに!!」


「・・・・・あのさぁ、ロザレナさぁ、そこで私を指さすのはやめてよ・・・・確かに私、お子様体型だけどさ・・・・気にしてるんだから!!」


「む、胸だけが女性の価値ではありませんからね! ジェシカちゃんの体形は、その、とっても女の子らしくて可愛いと私は思いますよ!」


「オリヴィア先輩・・・・そのフォローは、貴方の胸の前だと悲しくなってきますよぉ・・・・ぐすんぐすん」


「な、泣かないで、ジェシカちゃん!!」


 何やら胸の話題で盛り上がる皆の会話を耳にしながら、俺は身体を流すべく、シャワーコーナーへと歩みを進める。


 今の俺は影に徹する者だ・・・・気配を消し、誰にも注意を向けられない、忍ぶ者。


 何、生前は魔物蔓延る薄暗い森の中で三日三晩、潜伏し続けた経験があるのでな。


 誰にも気取られずに行動するなんてことは、お手の物よ。


 さて、さっさとシャワーを浴びて、湯舟には入らずにこの場をおさらばするとしようかね。


「そうだ。胸と言ったら・・・・アネットの胸って、オリヴィアさんの胸とどっちが大きいのかしら?」


 シャワーを浴びる俺の背中に向かって、一斉に視線が向けられた気配がする。


 やめてくれ、お嬢様。その話題は俺に効く。


「アネットさんの胸のサイズって、どのくらいなんですの?」


「それが、あの子、頑なにあたしにスリーサイズ教えてくれないのよね。でも、あたしの予想だと・・・・Dカップはあると見ているわね」


「うわっ、やっぱりアネットって大きいんだ・・・・」


「アネットちゃんは私なんかよりもずっとずっと、綺麗な身体だと思いますよ~? 以前、怪我の手当した時、女性の目で見ても惚れ惚れするくらいすっごく綺麗な身体だなって、驚いたんですから~」


「・・・・ごくり。そ、そう言われると、どのくらい綺麗なのかが気になってきますわね」


「フフフ。さて、ついに・・・・アネットの身体を見させてもらう時が来たようね。・・・・やば、考えたら鼻血出てきた・・・・」


「何かひとり男みたいな反応してる人いるんだけど!?」


 そんな会話が聞こえた後、ぺたぺたと、複数名の足音がこちらへと近付いて来る気配を感じた。


 俺はシャワーで髪を流し終えた後、すぐさまシャワーハンドルを回し、水を止める。


 そしてタオルを手に持つと、足に力を込め、跳躍し---空中へと飛び上がった。


 大浴場の宙の上で綺麗な背面跳びを決めた後、くるくると回転し、俺は床に手を付いて、四人の背後へと無事着地する。


「は?」「へ?」「あれ?」「あら~?」


 一瞬で目の前から消えた俺に困惑の声を溢す満月亭ガールズ。


 だが俺はそんな彼女たちを無視して、即座に大浴場から脱出していった。


「お先に失礼します!!!!」


「あっ、ちょ、アネット!! 待ちなさい!!」


 ロザレナの制止の声を無視して、俺は大浴場から外へと出て、脱衣所へ向かう。


 今日はルナティエを逃がすために商店街を疾走したり、みんなの裸を見ないように思いっきり跳躍したりと、力を使う機会が多くなってしまったな・・・・。


 リーゼロッテに狙われてる状況だってのに、何やってんだ、俺は。


 この寮の平穏な暮らしのせいで、気が緩んでしまったのか?


 気を引き締めやがれ、アネット・イークウェス。


 この先、リーゼロッテが俺では無い誰かに攻撃を仕掛けるような素振りを見せた場合----俺は、奴と本気で殺し合いをする可能性だってあるのだから。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



《リーゼロッテ視点》



「・・・・はい、報告は以上です。今後も監視を続けていきたいと思います」


 そう口にしてリーゼロッテは念話の魔法を解くと、時計塔の上階にある学園長室の窓から、静かに眼下を見下ろした。


 そして人差し指で眼鏡のブリッジをクイッと上げると、ぽそりと呟く。


「今日一日学校で監視して見て、アネット・イークウェスには別段、目だった才能は無かったと思うが・・・・先代オフィアーヌ家の血族である可能性がある以上、ゴーヴェン様が執着する理由も分からなくはない、か。生き残りがいては王への忠義を疑われることになるだろうし、何よりこれから始まる王選で、四大騎士公の血族が多ければ多いほど邪魔になることは必然だろうからな」


 はぁと大きくため息を吐くと、リーゼロッテは窓に反射して映る自分を睨む。


「あのメイドの少女はただのバカ正直なだけの弱者だ。それは間違いようがない。ゴーヴェン様のご命令があれば、いつでも処分することは可能だ。しかし・・・・あの金髪の青年は何者なんだ? 私の放った『音斬り針』を、傘で防ぐとは・・・・何処からか私が彼女を狙うことが漏れていた? いや・・・・まさか同業者、か?」


 数秒、口元に手を当て思案した後、リーゼロッテは首を横に振る。


 そして耳元に手を当て、口を開いた。


「まぁ、今はあの青年のことはどうでも良いな。私の任務は学級対抗戦が終わるまで、アネット・イークウェスの人間性を理解し、監視し続けることだ。・・・・ただの少女相手に、少々、心が痛まないこともないが・・・・仕方ない。すべてはゴーヴェン様のため。----【念話(コンタクト)】」


 そうして、リーゼロッテは魔法を発動し、ある人物へと念話を放っていった。

第80話を読んでくださってありがとうございました!

続きは明日投稿する予定です!

いいね、ブクマ、評価、本当にありがとうございます!励みになっています!

また、読んでくださると嬉しいです!

三日月猫でした! では、また!

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― 新着の感想 ―
[一言] 一族…一族…愚かな一族…
[気になる点] 心が痛むのにオフィアーヌ家にやったことは正当だという矛盾、まさか副団長が関わっていないなんてこともないしなぁ それよりもマイク!やるじゃないか!
[一言] やはり百合にはさまる男には相応の理由がありそうだ というかお嬢様はとっくに覚悟完了してるから、それを止めてくれるはずが無いw
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