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【コミックガルド配信中】最強の剣聖、美少女メイドに転生し箒で無双する  作者: 三日月猫@剣聖メイド1〜4巻発売中!
第10章 剣王試験

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幕間 新たなる剣王たち


《アネット 視点》



 深夜二時。剣王試験終了後。


 俺は、満月亭の裏山……いつもの訓練場にロザレナ、グレイレウス、ルナティエの三人を集めていた。


「剣王試験、お疲れ様でした、皆さん」


 俺はそう言って、三人に声を掛ける。


 するとグレイは目をキラキラとさせて、拳を握り締め、口を開いた。


師匠(せんせい)! オレが優勝する姿、見ていただけましたか!」


「あ、あぁ、見ていたが……グレイ。そろそろ服を着ないと風邪を……」


「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっっっ!!!! これも全ては今まで師匠(せんせい)に剣を教えていただいたおかげです!! これからも師匠(せんせい)に恥じない人間にならなければ!! うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!!!!!! 師匠(せんせい)は神だあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 腕を目元に当て、男泣きするグレイ。


 俺がグレイの姿にどこか引いていると、ぶすーっと頬を膨らませて、ロザレナが口を開いた。


「……ぶーっ。納得いかない」


「フン。お前がいくら不満を露わにしても、オレの勝利は揺るがない。剣王最強は、このオレ、グレイレウス・ローゼン・アレクサンドロスだ!! フハハハハハハハハハハハハハ!!!!」


「うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!! あれは僅差の勝負だったんだから!!!! 場外ルールが無かったら、間違いなくあたしの勝ちだった!! もう一回勝負よ!! こんな上裸マフラー変態男に負けたとなったら、末代までの恥だわ!!!!!!」


「フン。良いだろう。来い。何度来ようが、オレの勝ちは揺るがない」


 ロザレナとグレイはお互いに睨み合い、バチバチと火花を散らす。


 そんな二人の頭を小突き、ルナティエはやれやれと肩を竦めた。


「まったく。いつまでやってるんですの、貴方たちは。剣王になったのですから、少しは落ち着いてくださいまし」


「いたっ!」「む!」


 ルナティエに頭を叩かれた二人は、頭を撫でながらルナティエに不満そうな目を向ける。


 ルナティエのその目は、赤く腫れ、泣いた跡が残っていたが……その様子を見るに、もう立ち直ったようだった。


 俺はルナティエのその姿を見てクスリと笑みを溢した後、開口する。


「剣王試験、決勝しか私は見ていませんが……それでも、三人とも、素晴らしい成長を遂げていました。私が想像していた何十倍も、貴方たちは強くなっていた。その理由は、私が課した修行以外でも、貴方たちは自分で考え、新たな力を手にいれようとしていたからです。そう―――この先は、自分の剣を見つけなければ、上へ行くことはできません。私が教えることも、そろそろ少なくなってきましたからね。自分自身で自分の道を切り開く時が、やってきたのです」


「自分自身で、自分の道を切り開く……」


 ルナティエのその言葉に、俺は頷く。


「そうです。何と言っても、貴方たちがこれから先目指す場所は、真の英雄の領域……【剣神】の座、なのですから。はっきり言いましょう。【剣王】と【剣神】の実力差は、天と地ほどあります。一流が人生を賭けて努力の果てに到達できる領域が【剣王】、そして、その一流の中でもごく僅かな突出した怪物だけが足を踏み入れることが許されるのが、【剣神】です。彼ら剣の神は、皆、破格の力を持った本物の怪物たちです」


「そういえば、あたしの【覇剣】を、ジェシカのお爺ちゃんは蹴りだけで空中に飛ばしていたわね……あれが【剣神】の実力、というわけね……」


「そうですね。貴方たちは【剣王】上位三人ですが……それでもまだ、【剣神】の座は遠いと思います」


 俺のその言葉に、ゴクリと唾を飲み込み、緊張した面持ちを浮かべる三人。


 俺はそんな三人に、優しい笑みを浮かべて、口を開く。


「これから剣の頂点を目指す貴方たち3人に、私から、二つ名を授けます。もうすでに、一人、本人に伝えてはありますが……まずは、ルナティエ」


「は、はいですわ!」


 ルナティエはまっすぐと背筋を伸ばして、俺の顔を見つめる。


「ルナティエ。貴方は努力の天才であり、優れた頭脳と、多種多様な技を使うオールラウンダーです。その剣には、無限の可能性が宿っている。黄金でも銀の聖剣でもない。私は貴方に、何色にも染まらず、何色にもなれる、【色彩剣】という二つ名を授けます」


「……!! はい!! わたくし、必ずや師匠がくださった【色彩剣】という名に相応しい剣士になれるよう、精進致しますわ!! わたくしは……光り輝くお婆様とは異なる道を歩む。わたくしの歩む道は、色に囚われない、色とりどりの道。この無限の剣で、必ずや、才能のない剣士でも頂点に立てるのだということを証明してやりますわ!!」


 ルナティエのその宣言に、ロザレナとグレイは笑みを浮かべて、拍手を鳴らす。


「あんたが、才能無いわけないじゃない。そんな風にあんたを馬鹿にする奴がいるんだったら、あたしがぶっ飛ばしてやるわ。これからもよろしくね、【色彩剣】」


「フン。師匠(せんせい)が名付けてくださった美しい名に恥じぬよう、せいぜい励むことだな」


「オーホッホッホッホッ!! これからはもう、貴方たちお馬鹿さんには負けませんわよぉぉぉぉ!! 師匠! 【色彩剣】ルナティエ・アルトリウス・フランシアの活躍をご覧になってくださいましね!! オーホッホッホッホッホッ!!!!」


「何ですって!?」「何だと!?」


 高笑いするルナティエに、ロザレナとグレイレウスはジト目を向ける。


 何だか……いつもの三人が戻ってきたようだな。ルナティエも回復したようで何よりだ。


「さて、それでは、次。グレイですが……」


「はい!! 待っていました、師匠(せんせい)!」


 目を輝かせてワクワクした表情で詰め寄ってくるグレイ。


 そんな彼に対して顔を引き攣らせていると、後ろにいたロザレナとルナティエが口を開いた。


「【変態マフラー剣】でしょ」


「【変態剣】ですわ。それか、【露出剣】」


「ふざけるな、貴様らぁ!!!! 師匠(せんせい)が名付けてくださる瞬間なのだぞ!? そのふざけた態度は、万死に値する!! 剣を抜けぇ!!!!」


「だって、この人、満月亭に帰る途中で剣王試験の賞金が貰えないからって、王都で上裸のまま『ルクスはどこだー』って暴れていたんですのよ? 街中では新たに生まれた剣王が、露出狂なんじゃないかって噂でもちきりですわ」


「うわー……こんな奴が仮にも剣王最強とか、嫌なんだけど……やっぱり後でもう一回決闘を挑んで、あたしがトップになろうかしら……」


「フン。噂などどうでも良いことだ。好き勝手に言わせておけ」


「少しくらいは他人の目も気にした方が良いですわよ、貴方……もう剣王なのですから……」


 ルナティエのツッコミにも我関せずなグレイ。


 俺はそんなグレイに短く息を吐いた後、開口した。


「グレイ。貴方は、姉の想いを継ぎ、首狩りに復讐を誓った……弱者が虐げられることのない世界を目指す、信念を貫く剣士です。肉体的素養など気にもせず、ただ速度だけを極めた貴方の剣は、いずれこの世界に名を届かせることになるでしょう。貴方の生み出した剣技と共に、貴方が背負うべき二つ名を授けます。それは―――【瞬迅剣】。いつか誰もが追いつかない瞬迅の剣となり、復讐を遂げ、速剣型の頂点に立ちなさい。グレイレウス・ローゼン・アレクサンドロス」


「何と美しい名なんだ……! はいっ! 師匠(せんせい)の命名に恥じぬ男になってみせます! この【瞬迅剣】グレイレウス、箒星の二番弟子として、必ずやご期待に沿ってみせましょう!」


 そう口にして、グレイは地面に膝をつくと、頭を下げて忠義の礼を取ってきた。


 そんな彼を見て、ロザレナとルナティエは呆れた様子を見せる。


「本当に、こいつは最初からずっと変わらないわね」


「ある意味では信念を貫いていますわね、このお馬鹿さんは」


 二人の言葉に「あはは」と笑った後、俺は最後に残ったロザレナへと目を向ける。


「お嬢様」


「待ってたわ! さぁさぁ! アネットはあたしにどんな二つ名を付けてくれるのかしら! 楽しみね!」


「【脳筋剣】ですわね」「いや、【ゴリラ剣】だな」


「そこの馬鹿二人! ふざけたことを言っていると、ぶっ飛ばすわよ!!」


 ガルルルルとルナティエとグレイに唸り声をあげるロザレナ。


 そして彼女は腕を組んで、俺の前で仁王立ちをする。


「さぁて、アネット! あたしに二つ名を名付けてちょうだい! うんとかっこいいのをお願いするわ!」


「……」


「? アネット? どうしたの?」


 俺はロザレナを見つめながら……首を捻った。


「……【殲滅剣】?」


「かっこいいじゃない! 強そうだわ!」


「そ、そうですの? 何か物騒じゃありません?」


師匠(せんせい)が付けられる名は全て、素晴らしい……!」


「えぇ……?」


 グレイにドン引きするルナティエ。


 俺は続けて、口を開く。


「いや……【破滅剣】?」


「強そうで良いわね!」


「そ、そうですの? 破滅って何か不吉な感じしますけど? というかロザレナさん、貴方、強そうだったら何でも良いんですの?」


師匠(せんせい)が付けられる名は全て、素晴らしい……!」


「えぇ……?」


 グレイにドン引きするルナティエ。


 俺は再び腕を組んでうーんと唸った後……ロザレナに向けて口を開いた。


「……すみません、お嬢様。お嬢様の剣に二つ名を名付けるのは、まだ現時点では難しいです」


「どういうことよ!?」


「お嬢様の剣は……まだ完成形が見えていないからです」


「え?」


 キョトンとした表情を浮かべるロザレナ。


 俺は続けて、開口する。


「ルナティエは、多種多様な技と戦略を用いて戦う剣士。グレイは、速度と影分身を使って戦う剣士。ですがお嬢様の剣は、ただ闘気を相手にぶつけているだけですので……名付けるのが難しく……というか、まだ成長過程と申しますか……」


「何でよ!? アネットだって【覇王剣】でばーんって、闘気をぶつけてるじゃない!」


「それは、そうなんですが……お嬢様の【覇剣】と私の【覇王剣】は、似ているようで、何処か異なる技だと思うのです。直感ですが、恐らく、お嬢様の【覇剣】が最後に至るのは私の【覇王剣】ではないと思うのです」


「そう……なの?」


「……はい。着地点が見えていない状況なので、現状では二つ名を名付けるのがかなり難しく……ですので、今は【覇剣】と名乗っていただけたらと思います。果たして覇王となるのか、それとも別の何かになるのか。改めてお嬢様が成長なされた時に……そうですね、【剣神】へと到達し、どのような剣士になったか分かった時に、改めて名付けさせていただこうと思います」


「むー。まぁ、いいけど。じゃあ【剣神】になったら、うんとかっこいい二つ名付けてよね。期待してるから!」


「はい」


 俺はコクリと頷いた。


 これで……弟子たちに二つ名を授けることができた。


 覚悟を持つ【覇剣】に、信念を持つ【瞬迅剣】に、努力を持つ【色彩剣】か。


 我ながら、良い名前になったんじゃないかな。


 ロザレナは次に持ち越しだが、二人には相応しい名前を授けることができたんじゃないかなって思う。


 ―――……ん?


 何か他に、誰かを忘れているような……。


師匠(マスター)〜〜〜〜!! 酷いのじゃぁぁぁ〜〜!! 何で妾を奈落に置いて行ったのじゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


「ん?」


 振り返ると、俺の元へ猛スピードで走って来る何者かの姿があった。


 そして、その謎の人物は跳躍すると、俺の腹に向かって頭突きしてくる。


 俺はそれを、サッと反射的に避けてしまった。


 すると弾丸のように飛んできた謎の影は……背後にいたルナティエの腹に突き刺さったのだった。


「どぅわぁぁぁ!? 痛いですわぁぁぁぁぁ!? なんなんですのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?!?」


「痛いのじゃあ!? 師匠(マスター)の胸で優しく受け止めて欲しかったのじゃぁぁぁぁぁ!!!! 何故、避けたのじゃ師匠(マスター)ぁぁぁ!!!!」


 ドシャァァァンと地面に倒れ込むルナティエ。


 そんな彼女の上にのしかかっていたのは……白い髪に白い肌(化粧)をした、フランエッテだった。


 その姿を見て、ロザレナとグレイが同時に口を開く。


「あ、手品師」「鳩女。生きていたのか」


「いたたたた〜〜! って、誰が手品師&鳩女じゃ!! 妾を誰と心得る!! 妾は【剣神】、闇の姫君にして冥界の邪姫、最強の魔法剣士フランエッテ・フォン・ブラックアリア様じゃぞ!! 崇め奉れ、人間どもよ!!」


 ルナティエの上で片目に手を当てポーズを取るフランエッテ。


 そんな彼女の背中を押し、ルナティエが怒りの声を上げる。


「ちょっと! いつまで乗っているんですの!」


「あばばばばっ!」


 ドミノ倒しのようにコミカルに地面に倒れるフランエッテ。


 ルナティエは起き上がると、眉間に皺を寄せた。


「まったく、何なんですの、このトップレベルのお馬鹿さんは。こんなのが【剣神】とか、世も末ですわね」


「まったくだ。こんな雑魚から称号を奪っても何の足しにもならん」


「同意するわ」


「ぶえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!! いじめられているのじゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! 師匠(マスター)ぁぁぁぁぁ、妾、今回はすごく頑張ったのにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!! あいつら、酷いこと言うのじゃぁぁぁぁぁぁ!!」


「はいはい、今回は本当によく頑張りましたよ、フラン」


「ママぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」


「誰がママだ」


「ぶべし!?」


 俺は抱きついて泣きじゃくるフランの背中を優しく撫でていたが……ママ呼びされたことに腹が立ち、思わずフランの頭にチョップを叩き込んでしまった。


 たんこぶを作りながら、俺の足元に倒れ込むフラン。


 可哀想だが、俺はけっしてママではない。俺は男でオッサンだ。ここ重要なので忘れないように。テストに出ます。


「フランエッテ。そういえばお前……アルザードの奴に追いかけられていたよな? あいつはどうしたんだ?」

 

 グレイのその言葉に、フランは後頭部を撫でながら顔を上げ、口を開く。


「妾は、奴に何とか大ダメージを負わせることに成功したのじゃが、結局、最後は……」


 俺はフランが最後まで言い終える前に、続きを口にした。


「フランは、奈落の掃き溜めで人々を苦しめていたアルザードを、きっちり討伐しましたよ。彼女は、身体をボロボロにしてまで……民のために剣を振っていました」


「マ、師匠(マスター)!?」


 俺に驚きの目を向けるフラン。


 結局最後は俺がアルザードを仕留めたが……あそこまで追い込んだのはフラン自身の功績だ。


 俺は、アルザードの奴を甘く見ていた。


 まさかあの男が、魔術師としてあそこまでの強さを持っているとは思っていなかたからだ。


 奈落に行って、街がアンデッドだらけになっていた光景を見た時には、フランのことが心配でならなかった。


 だがいざ俺が現場に到着してみれば、フランは屋上の上で、アルザード相手に持ち堪えていた。


 彼女は、逃げることもできたはずだ。


 それなのに、わざわざ奈落にまで行って、奈落の民を助ける方を選んだ。


 普通の人間が持つ勇気の範疇を超えている。


 本人は弱くても、その勇気は、剣聖にも並ぶほどのものだ。


 暴食の王を相手に逃走したとされる元剣神ルティカとは、真逆の精神性を持った存在と言えるだろう。


 強さとは何も……肉体的部分だけではない。


「フン。自身に降りかかった火の粉を、自分の力で払い除けたというわけか。一応、お前が箒星の弟子の一人であることを認めてやろう、フランエッテ」


「なぬ!? 妾まだ、弟子として認められていなかったのか!?」


「まぁ、及第点ですわね。ですが、民を守った点は評価してあげてもよろしくってよ」


「何か上から目線じゃなこのドリル娘!?」


「ふーん? あんた、ホラ吹きの嘘つき手品師ってだけじゃないんだ? まっ、アネットが認めた弟子なんだし、見どころはあるんでしょうね。これからよろしくね、フランエッテ」


「え? え? 妾、まだ、三人に認められていなかったの? 仲間だと思っていたの、妾だけなの? グレて良いかのう?」


 三弟子に認められたフランは、起き上がると、複雑そうな表情を浮かべる。


 そんな彼女にクスリと笑みを溢した後、俺は、フランエッテの背中に向けて声を掛けた。


「フラン。今ここで、貴方に二つ名を授けましょう」


「む! 本当かのう! 師匠(マスター)!」


 振り返り、目をキラキラと輝かせるフラン。


 そんな彼女に、三弟子が開口する。


「【手品剣】ね」「いや、【鳩剣】だ」「【幸運剣】ですわね」


「少し、黙っていてくれんかのう!! 先輩がた!!」


 三弟子に怒りの声を上げるフランに、俺は、続けて口を開く。


「貴方は、己が弱いことを知っている。ですがそれでも、亡き友達との約束を守るために、そして、旅芸人として世界の人々を笑顔にするために、吸血鬼フランエッテ・フォン・ブラックアリアを演じ続けている。いつでもその在り方から逃げることはできたはず。それでも貴方は、フランエッテを演じ続け、どんな逆境の中でも剣を手放すことをしなかった。貴方の勇気は、伝説の英雄たちにも匹敵するものです」


師匠(マスター)……」


「私は、アルザードと戦う貴方の魔法を見て、驚きました。貴方のその魔法は、世界を変える力を持った魔法です。その姿を見て、私は、思いつきました」


「きっと、【邪神剣】だとか、【漆黒剣】だとか、【冥界剣】だとか……かっこいい名前を付けられるに決まっているのじゃ……わくわく」


「変成する魔法と、魔法剣をかけて……【変魔剣】と」


「【変魔剣】……?」


「はい」


「変な魔剣……?」


「いいえ、変成する魔剣です」


「【逢魔剣】に変えちゃダメかの……?」


「え? 嫌なんですか?」


「うん……」 


「……」


「……」


「……」


「……」


「……そ、それじゃあ、全員の二つ名も完成したことですし、今日は解散ということで! みなさん、もう寝ましょう! よく寝ないと良い剣士にはなれませんよ!」


「ふわぁ。そうね、連日拳王試験を受けていたし、もう疲れたわ。満月亭に帰って、あたし、さっさと寝るわ」


「そうですわね。夜更かしは美容の敵ですわ」


「おい、何をボーッとしている、変な魔剣。さっさと寮に帰るぞ」


「ま……待つのじゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! 変な魔剣はいやなのじゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! 師匠(マスター)、考え直して欲しいのじゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 【覇剣】と【変魔剣】は一時的な名前ということで……その場はお開きとなるのであった。


 良い名前だと思ったんだけどな……もしかして俺って、そんなネーミングセンスないのか……? アレス……助けてくれ……。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 ――――――――――――――――――3日後。


 王都の街の中を、新たなる剣王たちが歩いていた。


 道の端に集まった人々は、そんな彼らを見て歓声を上げる。


 剣王試験の壮絶な戦いは王都の人々の中でも話題となっており、剣王上位三名に決闘を挑み、新たなる剣王となった箒星の門下生三名は特に有名となっていた。


 剣王試験の翌日には新聞に大々的に新たな剣王の名が載り、その戦いが詳細に書かれていた。若干、派手な脚色が多かったようだが、そのほとんどは情報提供者である、彼らのファンになったヨーゼフのせいだという話なのは、ここだけの話だ。


「ねえねぇ! どなたが、グレイレウス様なの!? イケメンって話題よね!?」


「え? あの人、全裸で街中を疾走したって話を聞いたぞ?」


「格好良ければ何でもいいわよ! グレイレウス様―――!」


「ロザレナ様―――! かっこよかったですよ―――!」


「俺は会場でルナティエ様の戦いを見ていて、思わず泣いちまったんだ……若い頃、周囲に才能ある人ばかりで、靴職人の夢を諦めていたけど……あの人の泥臭い戦いを見て、もう一度夢を歩み始めようって思ったんだ。ぐすっ、俺は大切なことを教えてくれたあの人を応援するぞ……!」


「いいや、ロザレナ様だってすごかったぞ!! 俺は、あの方が本当の剣王最強だと思っているね! 実際に戦いを見守ったヨーゼフの話だと、最後の戦いは僅差だって話だし」


「剣王最強のグレイレウス様が一番に決まってる! あんなに背が低いのに、強いっていうのが、格好いいよな!!」


 ざわめく群衆の中。新聞屋の記者が群衆をかきわけ、道の側へと出る。


 そして彼は、往来を闊歩する剣王たちを見て、笑みを浮かべた。


「まさか、黄金世代と呼ばれた過去の栄光から一変、弱体化の一途を辿っていた剣士の世界で、こんな盛り上がることが起きるとはねぇ。まるで、伝え聞く黄金世代、アーノイックやゴルドヴァーク、キュリエールがいた時代みたいだ。ワクワクするねぇ」


「おじさんおじさん! 新しい剣王様は、誰が一番強いの?」


 新聞屋の男の裾を掴み、目をキラキラと輝かせた少年がそう口にする。


 そんな少年に笑みを浮かべた男は、メモ帳をペラペラと開き、開口した。


 そして彼は、一番先頭を歩く、マフラーを首に巻いた青年を見つめた。


「そうだな。誰が一番強いと問われたら、まずは、新たに剣王最強の座に就いた男、【瞬迅剣】グレイレウス・ローゼン・アレクサンドロスの名をあげるのが正しいだろう!」


 そう言って彼は、メモ帳に目を通した。


【瞬迅剣】グレイレウス・ローゼン・アレクサンドロス 17歳


攻撃力―C 

防御力―D

闘気―なし

魔力―なし

体力―A

速度―SS


覚えている剣技・魔法

【黒影・裂波斬】

【黒影・烈風裂波斬】

【影分身】

【影鬼】

【縮地】

【瞬閃脚】

【瞬閃剣】

【瞬迅剣】

【明鏡止水】


「グレイレウスは、剣王にして【瞬閃脚】を使用できる本物の天才だ。彼を超えられる速度を持つのは、剣神しかいない。10人いる剣王たちの中で、もっとも剣神に近い人物と言えるだろうぜ!」


「すっごい! 剣王最強にして、最速の剣士なんだね!」


「あぁ。次に候補を挙げるとするのならば……【覇剣】ロザレナ・ウェス・レティキュラータスだ!」


 男はページを捲り、グレイレウスの横を歩き、彼と言い争いをしている女剣士へと目を向ける。


【覇剣】ロザレナ・ウェス・レティキュラータス 15歳


攻撃力―SS  

防御力―S

闘気―SS

魔力―D-

体力―A

速度―B


覚えている剣技・魔法

【覇剣】

【閃剣】

【縮地】

【心眼】

【焔剣】


「覚えている技は少ないが、単純な能力値だけで言えばトップクラスなのが、ロザレナだ。剣王二番手とされているが、世間のグレイレウスとの評価はほぼ同格で、この二人は実質剣王のトップとされている」


「どっちが強いのかわからないんだね!! わくわくわく!!」


 続いて男はページを捲り、剣王トップの二人の後を優雅に歩いている女剣士へと目を向ける。


「次、三番手が、【色彩剣】ルナティエ・アルトリウス・フランシアだ」


【色彩剣】ルナティエ・アルトリウス・フランシア 16歳


攻撃力―B  

防御力―B

闘気―B

魔力―B

体力―B

速度―B


覚えている剣技・魔法

【裂波斬】

【水流・烈風裂波斬】

【縮地】

【心月無刀流】

一の型『断崖絶波』

二の型『流星掌底』

三の型『燕返し』

水属性低五級魔法【ウォータリング】

水属性中三級魔法【アクアショット】

妨害属性中二級魔法【ファントムベイト】

情報属性中一級魔法【念話(コンタクト)


「【色彩剣】ルナティエは、オールラウンダーであり、全ての型の技を使用できる。それに加え、剣技も格闘術も魔法もこなし、闘気操作もできるって話だ。能力値は平均値相当だって話だが、それでも多くの技と頭脳を使って格上の敵を翻弄するその姿は、民たちの心を惹きつける存在といえる。まぁ、上位三名の中で一番人気があるのが、この剣士だな」


「頑張って欲しいと思うような、剣士なんだね!」


「あぁ。それで、次は……」


 そして、新聞屋の男はページを捲り、ルナティエの背後を歩く角が生えた少女を見つめる。


「次は、四番手、【竜王剣】メリア・ドラセナベルだ。亜人ということであまり人気のない剣王だが、小柄で愛らしい見た目とは裏腹に、背中にある巨大な戦斧を使って威風堂々と戦う姿に惹かれた民たちがいるとかいないとか。期待のルーキーの一人だな。セレーネ教のお偉いさんがたは、良い顔をしていないみたいだが」


「あの子、見た目は僕みたいに小さいけど、強いんだ……」


【竜王剣】メリア・ドラセナベル 18歳


攻撃力―S  

防御力―S

闘気―S

魔力―なし

体力―A

速度―B


覚えている剣技・魔法

【龍閃乱舞】

【龍王戦槌剣】

【縮地】

【半・龍化】


「次、五番手が、【焔熱剣】ジェシカ・ロックベルト。ポテンシャルだけで言えば、剣王最強と呼ばれる一人だ。ただ……頭が弱く、日によって実力にムラがあるところから、まだ上位勢に組み込むことは難しいと言われている。だが、そのうち確実に上へ上がってくる一人と考えた方が良いだろう」


【焔熱剣】ジェシカ・ロックベルト 16歳


攻撃力―S  

防御力―S

闘気―SSS

魔力―なし

体力―SSS

速度―C


覚えている剣技・魔法

【気合い斬り】

【心陽残刀流】


「次、六番手、【呪殺剣】キールケ・ドラド・バルトシュタイン。魔法剣士として、剣王の中ではもっとも優秀とされている存在だ。ただ……性格がとても悪く、他人と馴れ合わないらしい。暗殺に特化した能力を持っているが、本人の希望で、暗殺者になる気はないらしい。バルトシュタイン家の問題児として有名な子でもある」


【呪殺剣】キールケ・ドラド・バルトシュタイン 14歳。


攻撃力―A  

防御力―C

闘気―なし

魔力―A

体力―D

速度―D


覚えている剣技・魔法

深淵なる影の庭(シャドウガーデン)

呪殺(カースヘイト)

影の戦刃(シャドウブレイド)



「次、七番手、【雷光剣】ヒルデガルト・イルヴァ・ダースウェリン。あの【剣神】迅雷剣ジェネディクトの弟子であり、彼のような雷属性魔法を得意とする稀有な剣士だ。その速さはとてつもなく、グレイレウスがいなかったら剣王の中では最速だったのではないか、という話がされている。ただ、彼女は魔法の力で素早いだけで、本人は速剣型の歩法も剣技も覚えておらず、経験不足が伺える。魔法剣士としてはAランクだが、速剣型としてはDランク、まだまだひよっこだ」


【雷光剣】ヒルデガルト・イルヴァ・ダースウェリン 16歳。


攻撃力―B  

防御力―C

闘気―なし

魔力―B

体力―C

速度―S


覚えている剣技・魔法

雷光(ライトニング)

【雷鳴斬り】

【サンダーボール】


「次、八番手、【断罪剣】クローディア・アイゼンスター。元剣王三番手が、八番手にランクインだ。ただ、この八番手という実力は、表の人格の時のもので定めているらしい。近頃彼女は裏人格を封じているらしいので……裏人格の能力は、おそらく上位に登るものだと思われる。狂った裏人格は、ガラの悪い反グレ連中から強い人気を集めている。表人格はヒーラーで、裏人格は戦鬪狂のサディストだ」


【断罪剣】クローディア・アイゼンスター 17歳


攻撃力―C (裏人格はS)  

防御力―C(裏人格はB)

闘気―なし(裏人格はA)

魔力―S(裏人格はなし)

体力―C(裏人格はB)

速度―A (裏人格はA)


覚えている剣技・魔法

・表人格

信仰系中一級魔法【ミドルヒーリング】

信仰系上一級魔法【ハイヒーリング】

【縮地】

・裏人格

斬首刑(ブレイド)

絞首刑(チェーン)

処刑台(アクト)

鋸挽き(デススパイラル)

石打ち刑(ハンマー)

磔刑(シュート)

腰斬刑(ブレイク)

【縮地】

加護

【磁力の加護】


「次に九番手、【熱血剣】、アレフレッド・ロックベルト。ジェシカ・ロックベルトの兄であり、剣神ハインラインの孫だ。ただ、妹と異なり、その能力にあまり突出したものはない。けれど、その善良性で、民からかなりの人気を集めている。本人曰く、ロドリゲスのように剣王に相応しい人物にこの座を譲りたいとのことだそうだが……果たして、その人物は現れるのか……?」


【熱血剣】アレフレッド・ロックベルト 18歳。


攻撃力―B  

防御力―B

闘気―B+

魔力―なし

体力―S

速度―B


覚えている剣技・魔法

【根性斬り】

【熱血の拳】

【縮地】


「最後に十番手、【幻惑剣】、ラピス・ソレイシア。妨害属性魔法を得意とする、サポーター向きの剣士だが……本人の能力値が低く、今回はギリギリ、剣王の座に留まることができたらしい。巷の噂では、アグニス・イフリートやエリニュス・ベルの方が剣王に相応しいとの声もあるが、果たして……?」


【幻惑剣】ラピス・ソレイシア 19歳。


攻撃力―D  

防御力―C

闘気―なし

魔力―A

体力―B

速度―C


覚えている剣技・魔法

妨害属性中三級魔法【スリープソング】

妨害属性中二級魔法【ファントムベイト】

幻惑剣(ナイトメアソード)


「……以上だ。どうだ、坊主。新しい剣王の強さが少しでも分かって――」


「ぐかーぐかー」


「って、寝てるし!? 立ったまま寝るとか器用だな、お前!!」


 新聞屋の男は、少年の姿を見て驚きの表情を浮かべる。


 そして彼は、自分たちの前を通り過ぎ、小さくなっていく新たなる剣王10人の姿を見て、笑みを浮かべた。


「もしかしたら、あの中から新しい剣聖や剣神が生まれてくるかもしれないな。そう考えると、ワクワクしてくるぞ。新たな時代の幕開けが始まるんだ……!! これから剣士の世界は盛り上がるぞ……!」



  ―――剣王試験編 閉幕―――



これで剣王試験編終了となります。

長く読んでくださってありがとうございました。

次回からは第一部最終章が始まります。

また読んでくださったら嬉しいです。


よろしければ、いいねや★などよろしくお願いいたします。

書籍1~4巻も発売中ですので、WEB版継続のためにもご購入、よろしくお願いいたします。

近い内にコミカライズ版もコミックとして出ると思いますので、最後の続巻(作品継続)の頼みの綱なので、そちらも発売した暁にはどうぞよろしくお願いいたします。


ちなみにフランちゃんのステータスはこんな感じです。


【変魔剣(仮)】フランエッテ・フォン・ブラックアリア ???(秘密♡)歳。


攻撃力―E〜A(変化魔法で変動あり)  

防御力―E

闘気―なし

魔力―B

体力―C

速度―E

幸運SSS


フランちゃんの二つ名募集中です笑

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― 新着の感想 ―
運で未来を変える‥運来剣?笑 旅芸人として幸運を運ぶ、旅幸剣‥旅行券と掛けました笑
変魔剣はさすがにひどい…夢想剣でどう?
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