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第10章 剣王試験

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第10章 二学期 第331話 剣王試験編ー終章 空を翔ける箒星② オレは、己の信念を貫く剣士となる。


《グレイレウス 視点》




「【鋸挽き(デス・スパイラル)】!!!!!」


 クローディアはノコギリ刀をまっすぐと頭上に持ち上げると、叫び声を上げた。


 すると、その瞬間。ゴゴゴと地鳴りのような音が聞こえてくる。


「何だ、これは……?」


 オレが周囲を駆け巡りながら困惑の声を溢していると、闘技場の外に立っていたキリシュタットが怒鳴り声を上げる。


「おい、クローディア!! テメェ、そいつは使うなって言っただろうが!!!!」


「あひっ、うひっ、いゃははははははははははははははははははははははッッッ!!!! うるせぇなァ、キリシュタットォ!! こいつはあたしの獲物だァ!!!! ふひっ、こうなったらもう止まらないぜぇ、グレイレウス!! いいねぇ、楽しくなってきたよ!! お前、いいよ、すごくいいよ!! お前みたいなイキッた奴を挽肉にするのが、あたしの愉しみだァ!!」


「……いったい何をする気なのかは知らんが、今のお前は隙だらけだ。手早く、片付けさせてもら――――――ッ!?」


 オレは即座に身体を逸らす。


 すると、オレの真横を、鉄製のレンガが通っていった。


「何……?」


 レンガは、奴が掲げたノコギリに飛んで行くと、ガシッとノコギリへと引っ付いた。


 背後を振り返る。どうやらあのレンガは……中庭にある闘技場の周囲を取り囲んでいる、建物の屋根から剥がれて飛んできたようだった。


 だが、それはおかしい。奴の磁力の範囲はせいぜい5,6メートルといったほど。


 あんな遠くにあるレンガが飛んでくるはずが――――――。


 オレが屋根を見つめていると、ガタガタと屋根のレンガが震え始め――――無数のレンガがオレへと向かって飛んできた。


 レンガだけではない。闘技場の外に置かれていたありとあらゆる金属で作られているものが、奴が掲げているノコギリに目掛け、飛んできた。


 鉄製の門、手すり、柱、観客が持っていたであろう杖、聖騎士たちの剣。


 オレは走りながら、その全てを最小限の動きで避けてみせるが……四方から飛んできた物に当たり、オレが作り出していた影分身たちは全て消滅してしまった。


 その光景を見て、クローディアは耳障りな声を上げる。


「これで隠れん坊はできなくなったなァ、グレイレウス!! これがあたしの最大の力……【鋸挽き(デス・スパイラル)】だ!! 闘気を全身に纏うことで加護を強化して……発動に至る大技……!! 磁力の力を広げ、周囲にある、ありとあらゆる金属をあたしに引き寄せるのさァ!!!! もうこれでお前は挽肉確定だぜぇぇぇぇ!!!!! ファァァァァック!!!!」


「……闘気を全身に纏うことでしかできない大技、か。ならば、発動時間も限られていそうだな。闘気を全身に纏い続ければ、お前は自動的に疲弊し、いずれ闘気の底がつく」


「そうだねぇそうだねぇ!! だけどォ!! そうはいかないのよォ!! この磁力の世界で、あたしの前に立っていられた奴は殆どいない!!!! あたしの右手のノコギリィと、左腕に撒いている鎖ィは、永遠に周囲から金属を集めていく!! そしてェ!!!!」


 クローディアは身の丈以上ある巨大なノコギリをブンと振り回すと、構えてみせた。


 そのノコギリは―――周囲から引き寄せた大量の金属類がくっついてあり、まるで地獄の鬼が使う棍棒のような様相へと変わっていた。リーチも、ただのノコギリであった時よりも、遥かに伸びている。

 

「磁力であらゆるものを引き寄せたあたしのノコギリ刀は威力を増し、全身に闘気を纏っていることで、あたしは、常に無敵状態。分かったかい、童貞坊やァ? お前がどんなに【瞬閃脚】モドキを使ってすばしっこく動いたところで、あたしに傷を付けるのは無理ってわけなんだよォ!!」


「時間稼ぎをして、お前の闘気が底をつくのを待つ手もあるが?」


「試してみるかい? この磁力の嵐の中で……!」


 その時。オレの背後から、鉄の槍が飛んできた。


 オレは即座に身体を逸らし、回避してみせるが……【縮地】を発動させ、クローディアがオレの目の前に現れた。


「ヒィハァァァァァァァ!!!! 脳漿ぶちまけろッッ!!!! 【石打ち刑(ハンマー)】!!!!」


 飛んで来た槍をも吸収した後、オレに目掛けて、巨大な棍棒が振り降ろされる。


 オレはそれを難なく、後方へと下がり避けてみせる。


 するとクローディアが、クイッと、左手の指を二本、動かした。


「【磔刑(シュート)】」


 その瞬間、背後から飛んできた釘が、オレの左手の甲を貫いた。


(建物に打ち込んでいた釘が、どこからか飛んできたのか……)


「【腰斬刑(ブレイク)】」


 クローディアが、突如、回転を始める。


 そして、奴は遠心力を利用して、オレに斬りかかってきた。


 オレは【瞬閃脚】を発動させてその場から逃げようとするが……再び、四方から、金属部品が使われているベンチや、ランプなどの、ガラクタが飛んで来た。


「チッ……」


 退路はない。ならば……!!


 オレは敢えて奴の元へと、向かっていく。


 そんなオレの姿を見て、クローディアは目を見開き、笑みを浮かべた。


「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!! 馬鹿かァ、お前ェ!!!! 速剣型のお前が剛剣型のあたしの剣を、受け止められるはずがねぇだろうがぁぁぁぁ!!!」


「……最初からお前の剣を受け止める気などはない」


 オレはクローディアが振ってきた剣とタイミングを合わせて跳躍すると、奴の棍棒に足を載せ……そのまま三度蹴り上げて【瞬閃脚】を発動させた。


 クローディアが振った棍棒の威力により、オレは、空へと吹き飛ばされるが……無傷。


 オレは空中で回転して、地面へと着地した。


 そんなオレを見つめて、クローディアは笑みを浮かべる。


「器用な奴だ。だけど、これで分かっただろォ? お前はもう、終わりなんだよ!! この磁力の嵐の中では、お前が歩法を使用する度に、四方から攻撃が飛んでくる。下手に動けば動くほど、身を危険に晒すってワケだァ!! あひゃひゃひゃひゃ、ベロベロブァァァァァ!!!!!」


「……」


 オレは無表情で、クローディアに視線を向ける。


 そんなオレを見て、クローディアは首を傾げた。


「おい……おいおいおいおいおいおいィ!! なんだそのシケた面はァ!! もっと絶望して、慌てふためけよォ!! あたしはお前のそういった表情が見たいんだァ!!!!」


「何故、オレが慌てふためかなければならない?」


「はぁ?」


「オレは別段、この状況を窮地だとは思っていない」


「…………はぁぁぁぁ?」


 オレの発言に、クローディアは心底意味が分からないと眉を顰めた。





◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇





「どうやら、勝敗はついたようだな」


 そう言って、ルクスは、フッと笑みを浮かべる。


「あのマフラーの男が、【瞬閃脚】と口にした時は驚いたものだが……あんなものは【瞬閃脚】ではない。剣神たちが使う本当の【瞬閃脚】は、あの程度のスピードではないからだ。フッ……クローディアから奥の手を引き出したことは褒めてやりたいところだが……あいつのせいで会場内が混乱してしまっている。詰所の屋根も剥がれ落ちてしまった。後で隊員総出で補修しなければいけないな」


「……」


「さて、後はお前と私で、残りのロザレナとルナティエを倒せば、全て終わりだな。どれほどのものかと思ったが、所詮、この程度か……ん? キリシュタット? どうした? 黙り込んでしまって?」


「……あいつはちゃんと、地面を三度、蹴り上げていたぜ。あれは間違いなく【瞬閃脚】だった。だが、お前の言う通り、あのスピードは何だ? 確かに【縮地】よりは速いが……あれは【瞬閃脚】の速さではなかった。その理由は……?」


「いったい何を言っている、キリシュタット。アレが、あいつの才能の限界なのだろう。理由などはない」


「……ルクス。俺は見誤っていたかもしれない。あの3人の中で一番やばいのは……恐らくあいつ(・・・)だ」


「は?」



 


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 

「……勝負あった、な」


 ハインラインはそう言って髭を撫でて、笑みを浮かべる。


 そんな彼に同調するように、背後に立ったジャストラムは頷いた。


「そうだね。多分勝者は、戦う前から決まっていた。何故、彼があんな真似をしていたのか、私には分からないけど」


「まぁ、大方、別に本気で戦いたい奴がいたのじゃろうな。……って、ジャストラム、その気配を消してワシの背後に立つ癖はやめろ。心臓に悪いわい」


「ごめん。子供のころからの癖」


「まったく……それで? 弟子の様子はどうじゃった?」


「弟子じゃないけど。メリアなら大丈夫。バルトシュタイン家の娘がかなり優秀で、容態は安定した。まさかゴルドヴァークの孫が、あんな、医療の知識がある子だとは思わなかった。時代は変わるものだね」


「え、あの乳のでかい黒髪清楚な子、ゴルドヴァークの孫なのか? えぇぇ……? どうやったらあの筋肉達磨からあんな子が産まれて来るんじゃ……ヴィンセントは顔がそっくりで、キールケとかいう娘はなんとなく性格に近しいものはあったが、あれはちょいと雰囲気からして違うんじゃないかの?」


「しかも多分、【怪力の加護】の継承者」


「……遺伝子というのは、よく分からんのう」


「ハインラインからジェシカが産まれてきたのも、よく分からない」


「アホ。ジェシカはどう見ても亡くなったワシの妻似じゃろうが」


 ジャストラムはそのまま、ハインラインの隣の席へと座る。


「……あの子、すごいね。あの年齢で【瞬閃脚】を会得できるなんて」


「あぁ……きっと、血の滲む努力を重ねてきたのじゃろうな……」


「上にあがってくるね」


「間違いなくな。しかも、双剣使いだというのに、剣一本であやつをいなしておる。そのことに気付いていないのは、クローディア本人と観客くらいのものじゃろう」


 ハインラインとジャストラムの会話にチラリと視線を向けた後、リトリシアは、グレイレウスを睨み付ける。


「……いったい、誰が、彼に【瞬閃脚】を教えたのでしょうか」


「そうじゃな……【瞬閃脚】を使用できるのは、剣聖・剣神クラスのみ。教えることができるのは、ワシらか、元剣神の首狩り……いや、首狩りは、あのクローディアとかいう娘の師じゃからのう。それはない、か」


「私たちが知らない、剣聖・剣神クラスの実力者が、この王国には潜んでいる、と?」


「それが妥当な線じゃろうて」


 ハインラインの言葉に、リトリシアは眉間に皺を寄せて黙り込む。


 そして、ポソリと、静かに口を開いた。


「どうして……? どうして、あの少年の【瞬閃脚】を見ていると……お父さんの【瞬閃脚】を思い出すの……?」




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




《グレイレウス 視点》




 ――――オレが剣士を志した理由は……いったい何だったのだろうか。


『……お姉ちゃーん、待ってよー!』


 幼い頃。オレは、騎士の仕事へと向かう、颯爽と歩く姉の後ろをついていった。


 遠い背中。どれだけ走っても、それだけ手を伸ばしても、あの背中には届かない。


 姉は首から垂らしているマフラーを揺らして振り返ると、しゃがみ込み、オレの頭を撫でてくる。


 彼女のマフラーについている『剣王』の紋章がすごく綺麗だったのを、今でもオレはよく覚えていた。


『グレイは本当に泣き虫さんだねー。お姉ちゃんがいないと、お留守番もできないの?』


『だ、だってぇ……! 僕、お姉ちゃんがいないと何もできないから……近所の子にも、虐められちゃうから……!』


『グレイ。お姉ちゃんはね、正義の味方として日々、悪い奴をばっさばっさ倒しているのだ。残念ながら、お姉ちゃんの手では、守ることができる人が限られているの。お姉ちゃんが騎士をやっている間は、グレイを守ることができないんだ。仕方ないよね』


『えぇ~!! だったら、僕は、どうすれば……!!』


『私みたいに強くなりなさい、グレイ。そして、今度は、お姉ちゃんの背中を守ってよ』


『え? 僕が……?』


『うん』


『僕に……できるのかな』


『できるよ。だってグレイは、いずれ剣神になる、この私の弟なんだから』



 場面が変わる。



『一本、そこまで! 勝者、アルファルド・ギース・ダースウェリン!』


 孤月流の道場。ダースウェリン家の嫡子に負け、オレは無様に膝を付く。


 アルファルドと呼ばれた少年はケッと声を溢し、オレに一瞥することもなく、その場を後にしていった。


 その後、オレは他の貴族の嫡子たちと何度も組手を行ったが、一度も勝利を納められることはなく。


 十戦十敗したその時、絶望した顔で立ち尽くすオレの肩を、教師はポンと叩いて来た。


『グレイレウスくん。君は確か……アレクサンドロス家の養子で、帝国出身の出だったね?』


『え? う、うん、そうですけど……?』


『見たところ、同い年の子供たちと比べて体格も小さく、腕も細い。明らかに、君は剣士の身体ではないよ。どんなに努力したところで、身体は作り直すことはできない。残念だが……これからどんなに努力したところで、君が剣士として大成することはないと断言できる』


『……え?』


 顔を上げ、瞠目して驚いていると、教師は首を横振った。


『君はどちらかというと、魔術師(ウィザード)に向いている身体付きだ。今からでも遅くはない。ここは道を変えたらどうかな、グレイレウスくん』


『せ、せんせい! ぼ、僕には、魔法因子がひとつも無いんです!! 魔法因子が無いから、帝国の家から養子に出されたんだって……お姉ちゃんがそう言っていました! だからお姉ちゃんは、魔術師(ウィザード)ではなく、剣士になったんだ! 僕も……僕も、お姉ちゃんみたいな強い剣士になりたいんです!! お願いします、せんせい!! 僕、頑張りますから!! 僕に、強い剣士になるための指導を―――』


『私はこの職に就いてから、今まで何人もの生徒を見てきている。だから、分かるんだ。……断言するよ。君は―――どんなに努力を重ねたところで、剣士として成功することはない』


『そん……な……嘘、だよ、そんなの……嘘だよっ!!』


 教師は涙をポロポロと流すオレに何も言わずに、気まずそうな様子でその場を後にした。


 そして、次にオレの傍に寄って来たのは―――同じ教室に在籍している貴族の嫡子たちだった。


 彼らは嘲笑うような笑みを浮かべると、オレの周囲を囲み、言葉を放ってくる。


『おいお前、そんなチビの癖して、何でこの教室にいるんだ?』


『十戦十敗なんて、この教室以来の快挙じゃないか? どれだけ才能が無いんだよ、お前』


『う……うるさいうるさいうるさい!! あっちいってよ!!』


『あれ? 泣いてるぞ、こいつ? 本当に女みたいな奴だな! なよなよしやがって! キモいんだよ、お前!』


『あぐっ!! や、やめてよ!! 蹴らないでよ!!』


 嫡子たちは寄ってたかってオレを小突いたり、蹴ったり、暴力を振って来る。


 オレは、そんな彼らに抵抗することもできず。そのまま、ボコボコにやられてしまった。



『ぐすっ、ひっぐ……うぅぅぅ……』


『見窄らしいですわね、貴方。それでも王国貴族の嫡子なんですの?』


 嫡子たちがオレをいじめるのに飽きて居なくなった後。


 その場で這いつくばり涙を流していると……いつの間にか目の前に、金髪ドリル髪の幼女の姿があった。


 彼女はこちらを心底馬鹿にするように笑みを浮かべると、懐からハンカチを取り出し、それをオレの目の前に落としてくる。


 そして、静かに口を開いた。


『それで顔でもお拭きなさい。まったく……貴方のような弱虫、わたくし、大嫌いですわ。他人に才能が無いから無理だと言われた程度で剣を折り、諦めるのならば、一生そうやって地面に這いつくばっていなさい。わたくしは、才能が無かろうが何だろうが、夢へと向かって前へと進む!! どんなに卑怯な手を使おうとも、勝ち続けてやる!!』


『うぅぅぅ……僕は……君みたいに強くはなれないよ……』


『あっそ。じゃあ、今後、わたくしの前に二度と顔を見せないでくださいまし。才能を言い訳にする奴は心底ムカつきますの。ごめんあそばせ』


 そう言って彼女は、オレの前から去って行った。


 オレは、少女に貰ったそのハンカチを握りしめ……再び大きく、泣き声を上げた。



 場面が変わる。



『うわっ、グレイ、ボロボロじゃん。どうしたのよ?』


『……え? お姉ちゃん?』


 剣術指南教室から帰って来た後。


 一人、御屋敷の屋根の上で泣いていると、姉が隣に座り、そう声を掛けて来た。


 三角座りをして塞ぎ込むオレに姉は笑みを浮かべると、オレの頭をそっと優しく撫でてくる。


『今日、初めて剣術教室に行ったって、お義父さんから聞いたよ。……あんたは誰よりも優しい子だから、人に対して剣なんて振れなかったんじゃないの?』


『……お姉ちゃんも、僕には剣の才能が無いって言うの? お姉ちゃんまで……僕には剣は向いてないって言うの?』


『そんなことはないさ。あんたは、この私……いずれ【剣神】になるファレンシア様の弟なのよ。優しすぎるところは確かに剣士にとっては欠点かもしれないけど、誰よりも優しい剣士が一人くらいいたって別に良いじゃない。ね?』


『お姉ちゃん……』


 ファレンシアはフフッと笑い声を溢すと、オレのおでこにデコピンしてくる。


 そして立ち上がると、空に浮かぶ星空を見つめ、大きく口を開いた。


『良い、グレイ! 私はね! 将来【剣神】になって、弱い立場にいる人たちを守れる人になりたいの!! それで、帝国に居るお母さんと妹を迎えに行くの!! 王国に二人を連れてきて、家族みんなで暮らすのよ!! これが、私の夢!!』


『……お母さんは、僕たちを捨てて、このアレクサンドロス家へ養子に出した酷い人だよ?』


『捨てたのはきっと、お母さんじゃないよ。帝国貴族であるお父様……だと思う。良い、グレイ。家族がいるのなら、大事にしなきゃ駄目だよ。お母さんには何か言いたい事もあるかもしれないけど……まだ見ぬ妹には罪はないんだから、優しくしてあげなさい。ね、これは、お姉ちゃんとの約束』


 そう言って、ファレンシアは小指を差し出してきた。


 オレは不満げに唇を尖らせながらも、その小指に自分の小指を差し向ける。


『指切りげんまん! 嘘吐いたら……えっと、谷底にある魔物の巣に叩き落す、指切った!』


『それは流石に物騒だよ、お姉ちゃん……』


 オレと姉ファレンシアは顔を見合わせて、お互いにクスリと笑みを溢した。




 場面が変わる。




『お姉ちゃん!! 嫌だよ!! 僕を一人にしないでよ―――――っっ!!』


 棺桶に入ったその亡骸を前に、オレが嗚咽を溢しながら涙を溢していると……養父のアレクサンドロス男爵が、両手の上に畳まれたマフラーを乗せ、こちらに近寄ってきた。


 そのマフラーの上には、一枚の手紙が置かれていた。


 封筒には、『泣き虫小僧、グレイレウスへ』と書かれている文字が。


 オレは震える手でマフラーと手紙を受け取り、封を切って、その手紙に目を通す。


 すると、そこにはこう書かれていた。


『―――我が弟、泣き虫小僧へ。これを読んでいるということは、私が次の任務、『首狩り討滅作戦』の戦いに敗けて、死体となって家に戻って来た……ということだと思います。まずは、ごめんね。あんたを一人にしちゃって。幼い弟を一人残すとか、お姉ちゃん、姉貴としてはダメダメだったよねぇ。そこの点だけはマジで反省してる。不甲斐ない姉をどうか許してください』


 オレは「うぅぅぅ」と涙を流しながら、二枚目の手紙に目を通す。


『お姉ちゃん、悔しくて仕方ないなぁ。【剣神】になる夢も叶えられず、弟がどんな剣士になるのかも見られずに、こんなところで死んじゃって。ねぇ……グレイ、あんたは自分の夢を叶えなさいよ。あんたは以前の剣術指南教室がきっかけで、教師というものが嫌いになって、いつも一人で剣の練習をしていたけど……世界は広い。きっといつか、あんたが心の底から憧れ、あんたのことを真に想ってくれる素晴らしい師匠(せんせい)に出会えるはず。だからね、泣いてばかりいないで前に進みなさい。お姉ちゃんは、空の上であんたが夢を叶えるのをずっとずっと……見守っているから―――』


 オレはその手紙を読み終わった後、姉の形見であるマフラーを首に撒く。


 そして、棺桶の中にいる首のない姉に向けて、大きく口を開いた。


『お姉ちゃん!! お姉ちゃんの夢は、僕が代わりに継いでみせるからっ!! 僕は必ず、【剣神】になってみせる!! お姉ちゃんがお空の上で心配しないように、もう、泣き虫じゃなくなるから……っ!! 強い男になってみせるから、見ていてよ!! お姉ちゃんのお顔も……絶対に、僕が、取り戻してやるから……っ!! だから―――だから!! うぐっ、うぅぅっ……うぁぁああああああぁあぁぁぁぁぁんんん!!!!!!!』



 場面が変わる。



『クククク、なぁ、おい、ディクソン・オーランド。てめぇらの敗因はいったいなんだと思う?』


 王都端れにある倉庫街。


 大勢のゴロツキを前にしても、メイドの表情は変わらない。


 彼女は深い青い瞳で敵を見つめ、不敵な笑みを浮かべる。


『な、なんだ、いったい、どうして急にそんな乱暴な言葉遣いになった? まさか、そんなんで俺たちが怖がるとでも思っていやがるのか?』


『いいや、単に、てめぇら如きゴミクズどもに敬語なんて使う必要はねぇと思っただけさ。もう猫被るのは止めだ。マグレットも、お前らみたいな奴らに敬語を使う必要はねぇって、きっと理解してくれると思うぜ』


 そう言ってメイド――――アネット・イークウェスは、箒を上段に構えた。


『メイドの土産に教えてやるよ。てめぇらの敗因は――――――お前たちが俺たちを……舐めたことだッッッ!!!!!!!!』


 そう言って、箒を振り降ろした瞬間……メイドの少女は、全てを消滅させた。


 その光景を見て、戦慄を覚えた。


 オレは、畏敬の念を覚えた。彼女こそがまさしく、剣の頂に立つ存在だと。


 『これまでのご無礼の数々、誠に申し訳ございませんでしたッッ!!!!!!!』


『はい?』


 勢いよく頭を下げるオレの姿に、アネット師匠(せんせい)は瞠目して驚く。


 そしてオレは頭を上げた後、地面に片膝を付け、胸に手を当て、騎士としての忠誠の礼を彼女に対して行った。


『このグレイレウス・ローゼン・アレクサンドロス、今日この日より、貴方様の弟子としてアネット師匠に忠誠を誓いたいと思います。ですから、どうか! 今までのご無礼の数々をお許し頂ければ幸いです!! これからは親しみを込めて、師匠(せんせい)と、そうお呼びさせてもらっても宜しいでしょうか!! 我が師よ!!』


『え……? あの、嫌だけど?』


 そうしてオレは、我が師の弟子となった。



 場面が変わる。



 マリーランド。アンデッドとなった姉を倒し、オレは、砂と成りゆくファレンシアを胸に抱き、看取った。


『―――――私が生前に愛用していたこのマフラー……巻いてくれてるんだね』


『え?』


 ファレンシアはオレの首元から垂れている赤褐色のマフラーに手を伸ばし、懐かしそうな様子で撫でる。


『私はいつか、【剣神】になりたかった』


『あぁ』


『グレイは小さくて覚えていないだろうけれど、帝国のジャスメリー家から追い出され、養子として迎え入れてくれたアレクサンドロスの御屋敷に向かう道中。乗っていた馬車が盗賊に襲われたんだ。周囲を盗賊たちが囲む絶体絶命の窮地の中。颯爽と駆けつけてくれたのは、ジャストラム・グリムガルドという名の【剣神】だった』


『え?』


『彼女は一瞬にして盗賊たちを倒してみせてね。それからだった。あの方に憧れて、【剣神】を目指し、剣を握ったのは』


 そう口にした直後。ファレンシアの足先が、砂のように溶けていった。


『姉さん!?』


 オレは慌ててマフラーを撫でていた姉さんの右手を両手で握り締める。


 姉さんはそんなオレに優しく、微笑みを浮かべた。


『グレイ。貴方に私の夢、全部あげる。私の夢は、【剣神】になることと、帝国で生き別れになった母さんとベアトリックスを幸せにしてあげること。あと、マリーランドのスイーツを網羅することでしょう? あとは……』


 左手の人差し指を顎に当てると、うーんと、悩まし気な声を上げた後。


 こちらに顔を向けると、ファレンシアは満面の笑みを浮かべた。


『あとは、グレイ。貴方が幸せになること、かな』


『姉、さん……』


『グレイは多分、まだ許していないだろうけど……母さんとベアトリックスのこと、考えてあげてね。たった二人の家族なんだから』


『姉さん……ベアトリックスとは、会えたんだ……』


『え? 本当!? そっかぁ。私も会いたかったなぁ』


『だけど、オレは……ジャスメリー家と関わりのある、あいつのことは……』


『そう。まだ、蟠りがある感じなんだね。でも、そろそろ大人になりなさい。私が貴方を可愛がったように、貴方には可愛い妹がいる。今度はお兄ちゃんとして、貴方が頑張る番』


 そう言ってファレンシアは、右手でオレの頭を撫でてきた。


 もう彼女の身体は……胸から下が砂と骨に変わっていた。


『じゃあね、グレイ。貴方が立派な男の子になって、私は嬉しかった』


『姉……さん……』


『私はいつでもそこにいる。貴方の首に巻かれているマフラーと共に、貴方と一緒に夢を追いかけ続ける。貴方はいつまでも私の自慢の弟だよ、グレイレウス。それだけは……忘れないで』


 そう言って―――姉さんは砂となって消えていった。



 オレが剣士を目指す理由。それは、ファレンシアの意志を継ぎ、こんなオレを拾ってくださった我が偉大なる師に恥じない人間になるため。


 

 目を開ける。


 目の前に広がっているのは、磁力の嵐。様々な金属が宙を旋回して飛び交い、その中央にいる悪魔のような姿の出で立ちのシスター……クローディアが、オレを見て嗤っている。


「どうしたァ? ルーキィィィイ!? ビビッてんのかぁぁぁぁ!? だったらさっさと絶望した顔をあたしに見せろやぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 オレはマフラーに一度触れ……フッと笑みを浮かべた。


「――――――やれやれ。あいつらにも言った通り、ウォーミングアップのつもりだったのだがな」


 オレは制服の上着を脱ぎ捨てる。


 その瞬間、制服は磁力によって引っ張られていき―――クローディアのノコギリへとくっついた。


 その光景を見て、クローディアはポカンと口を開ける。


「は?」


「ワイシャツもいらんな」


 オレはワイシャツをビリビリと破いて、投げ捨てた。


 そのワイシャツも、クローディアのノコギリへとくっついていく。


 上裸になったオレを見て、背後にいる馬鹿二人が声を上げた。


「変態全裸マフラー再びだわ!!」

「変態全裸マフラー再びですわ!!」


「黙っていろ、馬鹿ども」


 コキコキと首を鳴らし、オレはふぅと短く息を吐く。


「本当だったら、お前などに全力を出すつもりなど無かったのだがな。認めよう。お前、強いな。本当は剣王三番手というのは、偽りの実力なんじゃないのか?」


「なっ……なんで、裸になった途端、イキがってんだぁぁぁテメェはぁぁぁぁぁ!! 変態かァ!?」


「誰が変態だ」


 オレはクルクルと小太刀を左手で回すと……逆手に持ち、構えた。


「もう、気付いているのだろう。今、お前に投げたのは、重りを仕込んだ制服だ」


「なっ……」


「オレは、マリーランドの修行の時から……【瞬閃脚】のトレーニングの時以外、一時(・・)も、重りを外してはいない」


「「は?」」


 オレのその言葉に驚き声を溢したのは、ロザレナとルナティエだった。


 オレは続けて、口を開く。


「とはいえ、ロザレナの身に付けている闘気石のような危険な代物ではなく、そいつはただの枷だ。重さも大したことはない。マリーランドの時と変わらず、ひとつの重しが3~7キロ程のものだ。これだけ筋肉を鍛えても……あの女のパワーには勝らないとは……フッ、剛剣型というのは本当に化け物だな」


「お、お前……じゃあ、あのボタンを外した動作は何だったんだァ!?」


「アレは、ただ、お前の能力を改めて再確認しただけのことだ。敵の力の範囲、その効果を深く理解していなければ、油断が産まれる。オレはどんな相手でも油断はしない」


「は、はぁ!?」


「そしてオレは師匠(せんせい)から教わったことは全て頭に叩き込み、継続させている。歩法、つま先立ちの訓練も、重しを付けての【裂波斬】の訓練も、【瞬閃脚】の訓練も……全て、記憶して、戦いの中で実践している」


「まさか、テメェ……このあたしで……トレーニングしていたというのかァ!?」


「いや。今からはトレーニングではない。今から行うのは己の実力を……試す時だ」


「舐めてんじゃねぇぞぉぉぉぉぉぉぉルーキィィィイイイイイイッッ!!!!」


 クローディアが、オレに目掛け、走って来る。


 オレはマフラーをギュッと締め直し、靡いた。


 脳裏に浮かぶのは、大森林で師匠(せんせい)が見せてくれた、美しき【瞬閃脚】。


 あの時の師匠(せんせい)のように―――――自由に、飛びたい。


 オレはずっと、長い間、そう思ってきた。




「【瞬閃脚】」




 オレは姿を掻き消し―――クローディアの目の前へと現れると、奴の顎を蹴り上げ、上空へと舞い上げた。


「かはっ!?」


 その瞬間。背後から、いつぞやか喧嘩を売った、剣神ハインラインの声が聞こえてくる。


「終わったな」



「―――――――――【瞬閃剣】!!!!!!」



 オレは地面へと着地するのと同時に、間髪入れず地面を蹴り上げ、上空へと舞い上がる。


 磁力によってレンガが飛んできたが、関係ない。


 身体を逸らし、全てを避けてみせる。


 そして、再び空中に浮かんだクローディアの元へと接近すると、小太刀で奴を斬りつけた。


「ぐがぁ!? テ、テメェ!?」


 ブンと棍棒と化したノコギリを振ってくるが、オレは姿を掻き消し、地面へと着地する。そしてそれと同時に上空へと舞い、再び、クローディアを空中の上で斬り上げた。


 その状況を見て、クローディアはようやく、自身の窮地に気付く。


「かはっ……!! 奴の斬りつける速度が速すぎて……落下……できねぇ……!!」


「これが、師匠(せんせい)から教わった、【瞬閃脚】を応用した剣技……【瞬閃剣】だ。上空へと打ち上げられたが最後、もう、お前は逃れることができない」


 地面へと落下した直後に間髪入れずに【瞬閃脚】を発動させることで、オレの速度はより上がり続ける。打ち上げられた剣士は、鳥についばまれるだけの餌と化す。


「うひ、あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃァ!!!! だけど、全然、ダメージを喰らってねぇぞ、チビスケェ!!!! あたしが全身に闘気を纏っていたこと、忘れたのかァ!? 童貞坊やァ!!!!」


「だから、どうした?」


 オレは地面に降り立ち、再び跳躍すると、上空にいるクローディアを斬りつける。


 傷は通らない。クローディアは笑みを浮かべる。


「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!! ばぁかッ!!!! 何度やったって、同じことよォ!!!! お前はただあたしの前をウロチョロするだけの蠅と化し―――」


 その瞬間、クローディアの肩が裂かれ、血が噴き出した。

 

 クローディアは「はい?」と、困惑した様子で、自分の肩に目を向ける。


「な……なんで? あたし、闘気を纏って……」


「オレの剣速は、速度を上げるのと同時に増していき―――威力が跳ね上がる」


「なっ……剣速、だけ、で……? お、おかしいだろ!! 速剣型の剣で、剛剣型の闘気を突破できるはずが……!!!!」


「確かにお前は強いが……ロザレナやジェシカ程の闘気を持っていない。お前、加護の力にかまけて、基礎トレーニングを怠っていただろ」


「は、はぁ!? あたしが、ルーキーどもに劣るはずがッッ……!! ぐぎゃぁあ!?」


 胸が切り裂かれたクローディアは、悲鳴を上げる。


 奴は必死の形相で、棍棒を振り回した。


「ふ、ふざけんじゃねぇ!! このあたしが、空中の上に浮かされて、何もできずに、こんなみっともない終わり方をするわけが……!! ぎぃあっ!?」


 足が切り裂かれる。クローディアは、咆哮を上げた。


「【磔刑(シュート)】!!」


 その瞬間、磁力によって、周囲から釘やレンガなどがオレに目掛けて飛んでくる。


 オレはそれを頭を動かすだけで全て回避してみせ、地面に着地すると、【瞬閃脚】を発動させてクローディアの前へと現れ、奴を斬りつけて、姿を掻き消した。


「あぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!? なんだよ、これェ!? つまらない……つまらないつまらないつまらないつまらないつまらないつまらないィィイイイ!!!!! こんなの、あたしが望んだ戦いじゃないィィイイイイイ!!!!」


「お前が楽しかったのは、戦闘ではなく、他者を屈服させる瞬間だったのだろう。敗けるのがつまらないだと? くだらん。オレは今まで、お前が想像する何倍も……敗北してきている。その程度の相手に、オレが敗けるはずがない。敗北を忌避している時点で、お前は剣士失格だ」


「ど、どこだァァァ!!!! どこにいる、グレイレウスゥゥゥゥゥゥゥ!!!!」


 この速度の段階に入れば、奴の目にはもう入らないな。


 オレは地面に着地するのと同時に、クローディアの頭上へと舞い上がる。


 そして……剣を下方へと構えた。


「終わりだ、磁力の使い手……【断罪剣】クローディア・アイゼンスター」


 オレは、クローディアへと向けて落下し―――奴の背中に向けて剣を振り降ろした。


 するとクローディアはハッとして、こちらを振り返り、棍棒を横にして防御の構えを取る。


 オレはクローディアの棍棒に剣を突き刺し、そのまま落下していった。


「貴様の剣王の座、このオレが貰い受ける」


「ふざけるな……ふざけるなふざけるなふざけるなァァァァァァァ!!!! あたしは、あの地獄から、ようやくここまで上り詰めて来たんだァ!!!! もう、あの地獄には戻りたくない……落ちたくない……!! やめろ……落とすな……あたしを、落とすなァァァァァァアアッッ!!!!!!!」


「オレは、お前たちの先を行く」


 ドシャァァァァァァァァァァアンと、巨大な土煙を巻き上げ、地面へと落下していくオレたち。


 土煙の中。巨大なクレーターの中央で絶望した表情で気絶しているのは、クローディア。


 棍棒と化したノコギリに小太刀を突き刺したが、奴の身体へは切っ先は届いていない。


 この女が意識を失っているのは、落下した時の衝撃と、自身の棍棒に身体を押しつぶされた結果だろう。自分の能力にトドメを刺されるとは、何とも自業自得な結末だ。


 オレは奴の棍棒から、小太刀を引き抜く。


 するとその瞬間、奴の磁力の効果が切れ、棍棒に張り付いていたガラクタたちが一斉にバラバラになって地面へと落ちていった。


 そこで、カランと、オレのもう一対の小太刀が落ちてくる。


 オレはそれを拾い上げると、二本の小太刀を腰の鞘へと納めた。


 そして―――クローディアの修道服に付けられているバッジ―――【剣王】の称号を引きちぎると、それをマフラーへと取り付けた。


「これで、ようやく―――ファレンシアと並ぶことができたな」


 オレはマフラーを揺らし、踵を返す。


 それと同時に、唖然としていたヨーゼフが笑みを浮かべ……歓喜の声を上げた。


「勝者、グレイレウス・ローゼン・アレクサンドロス―――っっっ!!!!! 新たなる【剣王】の誕生です!!!!!!」


「やったぁぁぁぁぁぁぁぁ!! 変態マフラー全裸男が勝ったわよ、ルナティエ!!」

「ええ!! 変態マフラー全裸男が勝ちましたわね、ロザレナさん!!」


「誰が変態だ。あと、全裸ではない」


 ……フン。通過点だと分かっていても、嬉しいものだな。


 本当だったら、師匠(せんせい)に見て貰いたかったが……それは我儘、か。


 オレは、剣王たちの元へと向かって行く。


 すると、呆然としていた剣王たちは、ビクっと、身構えた。


 だがオレはそんな彼らを無視して横を通り過ぎ……クローディアが座っていた席へと座り、足を組んだ。


「さて……後はお前たちがこいつらの席を奪う番だ、ロザレナ、ルナティエ」


 オレのその言葉に、ルクスは憤怒の表情を浮かべ、キリシュタットは目を細める。


「いや……それよりも、服を着たらどうだ? グレイレウスくん……」


 アレフレッドの場違いなツッコミが聞こえてきたが、オレはそれを無視した。


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― 新着の感想 ―
どうも、秋告ウサギです メリアちゃん無事で良かった!彼女の対戦が中断されたのは残念だけど、箒星の大攻勢が始まって激アツです★ 圧倒の試合展開を見せた、グレイレウスがオチも付けて読むのが止まらない >……
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