第10章 二学期 第314話 剣王試験編ー㉜ 【覇王剣】VS【覇王剣】/第二次試験の合格者たち
時間は、四時間程前に遡る。
キールケは、ロザレナとアネットと別れた後、一人、試練の部屋へと入った。
そして彼女は石碑の前に立ち、そこに書かれている文字を読み上げる。
「―――汝、石碑に手を当て、己の過去と向き合え。最高潮の実力を持った過去の自分と向き合い、打ち勝つことができたのなら、山頂への道が開かされるだろう……ね。ふーん」
キールケは、石碑へと手を当てる。
すると周囲に紫色の煙が舞い始めた。
「これ、妨害属性の……幻惑魔法の類のようね。過去の自分を幻で投影させて戦わせる、とでもいった感じ? ふざけた試練」
キールケがそう呟くのと同時に、煙の中に、人影が現れる。
キールケは右腕にクマの人形を抱き、左手で針の剣を構えると、笑みを浮かべた。
「キールケちゃんは、自分の能力の強さも弱点も知り尽くしているの。影の領域範囲も、己の足の遅さも、ね。だから、こんな試練、さっさと乗り越えてみせ―――」
『ぐすっ、ひっぐ』
煙の中から現れたのは、目を手で隠し、泣きじゃくる幼いキールケだった。
その姿を見て、キールケは硬直し、目を見開く。
「…………は?」
『誰も……誰も、私を見てくれない。私だって、バルトシュタイン家の娘なのに。お兄様やお姉様のように、特別な力を持たない私は、どうすればいいの? ねぇ、フレイヤ、教えてよ……私を見捨てないで……フレイヤ、貴方だけなの……裏切ったら許さないから……寂しい、寂しいよぉう……くまさんを奪わないでお父さん、ごめんなさい、ごめんなさい……つよくなるから……』
キールケは幼い自分の発言に、憤怒の表情を浮かべる。
「これ……は……私が、禁書を持ち出して、『影の支配者』と契約を交わす時の……何で、ここでこの時の私が出てくるというの!? だって、この時の私は、召喚した『影の支配者』をコントロールできず、ただ、いいように身体を乗っ取られて――――」
『ケケケケ』
幻影体のキールケは顔を上げ、不気味な笑みを浮かべる。
その姿を見て、キールケは、目を細めた。
「……そういうこと。『影の支配者』に身体を乗っ取られた時の幼い私が、自分史上一番強かった時、と―――あぁぁぁぁ!! イライラするぅ!!!!! 情けない自分をもう一度見せられるなんてぇ!!!! 『影の支配者』!!」
「ケケケケケケ」
キールケの足元で妖しく光る二つの目が見開き、影の領域が展開される。
そしてキールケは針の剣を構えると、口を開いた。
「悪魔憑きの自分の方が強かっただなんて、許せない!! 過去の情けない自分は、絶対に殺してやるんだから!!!!」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ロザレナは、アネットとキールケと別れた後、試練の部屋の中へと入った。
そこで彼女は、キョロキョロと辺りを見回しながら――――中央にある石碑の前へと立つ。
「なにこれ」
古代文字など当然ロザレナは読めないので、眉間に皺を寄せ怪訝な表情を浮かべる。
「これって……手形のへこみに手を当てろって……そういうことなのかしら?」
ロザレナは恐る恐ると、石碑に手を当てる。
するとその瞬間、周囲に紫色の煙が舞い……煙の奥から、人影が姿を現した。
ロザレナは即座に背中の大剣を抜き、声を張り上げる。
「そこにいるのは、誰!」
『……』
目の前に現れたのは……もう一人のロザレナだった。
その姿を見て、ロザレナは驚きの声を上げる。
「なっ……誰よ、あんた!? なんで、あたしが、そこに……!?」
もう一人のロザレナは、背中から大剣を抜くと、全身に闇属性魔法を纏い始める。
『【闇夜の衣】』
そして、闇属性魔法を発動しまま、ロザレナへと向かって走って行った。
ロザレナは大剣を構え、幻影体ロザレナの大剣を受け止める。
だが、大剣に漂っている漆黒のオーラ……闇属性魔法に接触することで、ロザレナの闘気はどんどんと減っていっていた。
「こいつ……!」
『あははははははははははははははははははは!!!!!』
幻影体ロザレナは嗤い声を上げると、ガンガンと、ロザレナに向けて大剣を振り放ってくる。
連続して振るわれる攻撃を、ロザレナは全て大剣によって防いでいった。
しかし、打ち合う度に、ロザレナの闘気と魔力は、幻影体に奪われていく。
その状況に、ロザレナは奥歯を噛んだ。
「自分の能力を使われるとなると、厄介極まりないわね……!」
『あはははははははははははははははははははははははははははははは!!!!』
狂ったように嗤い声を上げ、迫り来る幻影体。
その姿を見て、ロザレナは額から汗を流した。
「これが……この悪魔みたいな奴が、あたしだっていうの?」
ロザレナは、考える。
この自分は、過去の……ベルゼブブと戦った時の、自分ではないのかと。
【闇衣】を使用したのは、ベルゼブブ戦の一回のみ。
そして、傷だらけの幻影体の姿を見るに……ラヴェレナから闇属性魔法の知識を受け継いだ後のようだと、ロザレナは推察した。
「もしかして、これは……過去の自分を投影して、戦わせる試練……のようなものなのかしら?」
『あはははははははははははははははははははははははははははははは!!!!』
「あたしは……あたしの中にある闇は、こんな……こんな、姿だというの……?」
『あはははははははははははははははははははははははははははははは!!!!』
闇を纏い、爛々と紅い目を輝かせる、血に飢えた獣。そう表現する他ない出で立ちのロザレナ。
その姿は、ロザレナが目指す理想……アネットのような剣士とは、かけ離れた姿だった。
ロザレナは、嫌な想像してしまう。
アネットに倒される……悪鬼と化した自分の姿を。
『あはははははははははははははははははははははははははは!!!!』
一瞬気が緩んだせいで、ロザレナは、幻影体に顔を蹴られてしまう。
即座に体勢を整えたロザレナだったが、目の前には、上段に剣を構えた幻影体の姿があった。
『【覇剣】!!』
ロザレナに向けて放たれる斬撃。
その光景を見て……ロザレナは、ニヤリと、笑みを浮かべた。
「過去を投影したとしても、その頃のあたしが……今のあたしに勝てるとでも思っているの?」
ロザレナは素早く横に逸れ、ギリギリのところで、【覇剣】を回避する。
そして地面を蹴り上げ、即座に幻影体へと接近すると……上段に剣を構えた。
「今のあたしは……もっと強くなっているのよ!!!! 【覇剣】!!!!」
速度がない幻影体は、ロザレナのその【覇剣】を回避することができず。
そのまま青い斬撃に飲み込まれ……消えていった。
ロザレナはふぅと深く息を吐くと、額の汗を拭う。
「……大丈夫よ。あたしは……闇になんて飲まれていない。闇属性魔法は使っていないし、もう、ラヴェレナの知識を継いでコントロールもできている。あたしがアネットの敵になるだなんて……あり得ない」
そう呟いたのと同時に、扉が開く。
ロザレナはもう一度深呼吸をすると、背中に大剣を納刀し、扉の奥へと進んでいった。
ロザレナが試練の部屋を抜け、山頂に辿り着くと、そこにはグレイレウスの姿があった。
腕を組み、崖の下に広がるフィアレンスの森を見つめるグレイレウスに、ロザレナは声を掛ける。
「グレイレウス、あんたが一番乗りってわけ?」
そう声を掛け近付くロザレナに、グレイレウスはチラリと視線を向ける。
「ロザレナか。フン。悪いが、第二次試験の最速クリアは、オレがいただいた」
「ムカツク。第三次試験は、絶対に敗けないんだから。それで、ルナティエは?」
「まだだ。お前が二着だな」
「そう。まぁ、あたしたちなら、この程度の試験、乗り越えて当然よね。ルナティエもそろそろ来る頃合いでしょう」
そう言って短く息を吐くロザレナに、グレイは静かに口を開く。
「随分と、疲弊しているようだな。そんなに、最後の試練は大変だったのか?」
「まぁ、ね。過去の自分と戦わされたからね。少しだけ、疲れたわ」
「過去の自分……? オレが体験した試練とは、どうやら別のもののようだな。ルートによって、待ち受けている試練は違うということか……。それよりも、ロザレナ。師匠はどうした? 一緒だったはずだろう?」
「先に着いているものばかりだと思ってたけど……あたしが二着ということは、もしかして、アネットはまだ山頂に来ていないの?」
「あぁ。師匠の姿は見ていない。それにしても、過去の自分と戦わされる試練、か……その試練はどうやら、強者ほど、苦難を強いられるもののようだな。師匠程の実力者ならば、弱点など殆どないだろう。時間が掛かって当然……――――む」
グレイは、遠くから、キリシュタットがやってくるのを確認する。
その光景を見つめた後。グレイは、ロザレナに声を掛けた。
「―――ロザレナ。剣王たちには気を付けろ。奴ら、我ら箒星の背後にいる存在に注目し始めている。オレやルナティエ以外の前では、師匠はただのメイドとして扱え。良いな? 絶対に、彼女が我らの師であることを気取られるな」
「そんなこと、貴方に言われなくても分かっているわよ。というか、今まで一番、他の人間にアネットのことをバラしそうになっていたの、貴方だったじゃない……何、急に偉そうになっているのよ」
「来るぞ」
「分かってるわよ!」
そうして、二人の元に、キリシュタットが現れる。
「レティキュラータスの娘、ネックレスは持ってきたのか?」
「ええ。持ってきたわ」
そう言って、ロザレナはキリシュタットにネックレスを三つ渡す。
それを受け取り、懐に仕舞うと、キリシュタットは目を細めた。
「やるじゃねぇか、レティキュラータスの娘。俺はてっきり、お前のような夢見がちなガキは、足元掬われて早々に退場するとばかり思っていたぜ?」
「あんたの予想なんて、知ったことじゃないわ。あたしはただ、あたしの夢のために前に進むだけ。あたしは【剣聖】になる女。こんなところで、退場なんてするはずがないわ」
「ハッハッハッハッハッハッハ!! この俺の前で、また、【剣聖】になると吠えやがったか!! 前にも言ったが……俺はお前みたいな夢見がちな剣士を、何人も潰してきた。剣王最強の座というのは、謂わば、剣聖や剣神に続く最後の門番だ。俺は何年もこの座で、夢を見て登ってくる奴を叩き伏せてきた。その殆どが……心が折れ、剣を持つことができなくなる。良いか? 分相応の立場で満足する奴は長く生き残ることができるが、自分の器を理解していない夢見がちな馬鹿は、すぐに退場する。それが、この世の摂理ってもんだ」
「だから、貴方の持論なんて、知ったことではないわ。あたしは【剣聖】になる。絶対にね」
「せっかくこの俺が自ら、アドバイスしてやっているというのに、理解しないとはな。下手に才能を持っている奴ほど、自身の器を見誤る、ということか。……お前はどう考える? グレイレウス・ローゼン・アレクサンドロス」
キリシュタットの言葉に、グレイレウスは目を伏せ、フンと鼻を鳴らす。
「愚門だな。常に上を目指し続ける者と、現状に満足する者では、実力に差が出るのは当然のことだろう。お前が戦った連中が心を折ったのは、ただ、覚悟が足りなかったせいだ。オレは誰に敗北しようとも、命がある限り挑み続ける。それが、箒星の門下の在り方だ」
「生意気な奴だ。……お前はどうだ? ルナティエ・アルトリウス・フランシア」
キリシュタットの背後から現れたのは、アルファルドに肩を貸して歩くルナティエだった。
ルナティエはキリシュタットを睨み付け、口を開く。
「わたくしは、そこの馬鹿二人とは違い、自分という人間を理解していますわ。自分の限界も、自分の立ち位置も、最初から理解しています。わたくしは、【剣聖】や【剣神】に立つことのできる、本当の天才ではない。わたくしはただの凡人ですわ」
「ハハハハ! お前は見どころがあるようだな、ルナティエ・アルトリウス・フランシア!」
「テメェ……!」
アルファルドが、何を情けないことを言っているんだと、ルナティエを睨み付ける。
だがルナティエは気にも留めず、続けて口を開いた。
「ですが……自分の立ち位置を自分で決める気はありませんわよ。わたくしは、わたくしなりに、凡人でも天才に届く方法を模索しています。わたくしは、努力の天才だと、師から教えていただきましたから……オーホッホッホッホッホッ!! わたくしは、誰に才能がないと言われようとも、進み続けますわよ!! ルナティエ・アルトリウス・フランシアという人間が、頂に名を刻む、その日まで……!!」
ルナティエは、自分とアルファルドの分のネックレスを六つキリシュタットに渡すと、ロザレナとグレイの横に並んだ。
その姿を見て、キリシュタットは不愉快そうにチッと舌打ちを放つ。
「馬鹿どもが。上を目指すということは、お前らは【剣王】になった瞬間、俺とルクス、クローディアに潰されるということになる。俺たち3人は、現【剣王】のトップ3だ。自分の立ち位置を崩す気がある【剣王】がいるなら、容赦なく叩き伏せる。俺たちに従順な態度を取っているのなら、末端の席に迎い入れてやったものを……馬鹿なルーキーたちだぜ」
キリシュタットがそう言うのと同時に、彼の背後に、ルクスとクローディアが現れる。
ルクスは「ルナティエ……まさかお前が第二次試験をクリアするとは……」と口にしてルナティエを睨み付け、クローディアは「グレイレウス・ローゼン・アレクサンドロス……師匠が殺した……弟……」と、グレイを意味ありげに見つめた。
そんな3人の剣王に対して、ロザレナは前に立ち、背後にグレイとルナティエが立った。
「どのみち、あたしたちは止まることはないわ。上に進む以上……あんたたちを斬って進むのみ! 誰かに媚びへつらうのなんて、嫌だもの! あんたたちの代わりに、あたしたちが上に立つ!」
「フン。リーダー面をするな、ロザレナ。だが……お前の言う通りだ。どのみち、剣王の上位3人は、オレたちの目指す場所を阻む障害でしかない。【剣王】上位3人は……オレたち箒星がいただく……!」
「オーホッホッホッホッホッ!! ようやく、わたくしたちが表舞台に立つ時が来ましたわねー!! よろしくってよ。これも、この国を変える初めの一歩……ルキウス。貴方の代わりに、わたくしが、ルクスを権力の座から引きずりおろしてあげますわ!!!!」
ロザレナはキリシュタットと睨み合い、ルナティエはルクスと睨み合い、グレイレウスはクローディアと睨み合う。
第二次試験をクリアをした箒星の門下生たちは……早々に、剣王たちに喧嘩を売るのであった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
四時間後。アネットとアーノイックが戦っている、現在に戻る。
《アネット 視点》
意識を集中させろ。
アーノイックを倒すには……過去の自分相当の闘気を引き出し、【覇王剣】を放つ必要がある。
背が低くなり、筋肉量も落ち、肉体的には弱体化したのは当然かもしれないが、闘気は……闘気だけは、変わらないはずだ……!
俺だって、元はあいつだったんだ。できねぇことはねぇはずだろ。
(衰えていた死ぬ間際の自分の闘気と、今の俺の闘気量は、大して変わらないはずだ。年老いた俺では、全盛期の闘気を引き出すことは無理だったと思うが……今の若返った俺なら……!)
『【覇王剣】』
「……ッ!! 距離を取ったら、すぐこれか!!」
俺は【瞬閃脚】でその場を離れる。
すると、先ほどまで俺が立っていた場所に……耳を揺らす重い爆発音が響くのと同時に巨大な土煙が舞い上がった。
「幻影だから、【覇王剣】を放っても、周囲の地形に変化はないようだが……もし実体のある本体だったのなら、ここは既に更地となっているだろうな……! 山をも割る闘気を圧縮した斬撃……! あのレベルの【覇王剣】を連発できるとか、過去の俺、どれだけ闘気を持ってるんだよ……!」
今の俺があのレベルの【覇王剣】を放てるのか、正直、自信はない。
完成された肉体に、全盛期の俺だったからこそ、放つことのできた剣の境地。
だが、一度は到達できた領域……! 不可能なんて、ねぇはずだ……!
『【瞬閃脚】』
腰に剣を当てたまま、幻影体アーノイックは【瞬閃脚】を発動させ、俺の元へと瞬時に接近してくる。
俺は瞬時に身体を逸らした。
『【閃光剣】』
絶空剣と変わらない威力の【閃光剣】が、俺の真横を跳んで行く。
俺は地面に箒丸を叩き付け、魔法を発動させる。
「氷塊よ、我が盾となれ―――【アイス・ウォール】」
幻影体アーノイックの前に、氷の壁を発動させる。
幻影体アーノイックは意にも介さず、左腕を横に振り、簡単に氷の壁を破壊してみせた。
しかし、俺は既にそこにはいない。
俺は氷の破片に身を隠しながら、アーノイックの傍へと近寄る。
そして、お返しとんばかりに、【閃光剣】を奴の身体へと叩き込んだ。
だが……アーノイックは、無傷。
勿論、それも予測済み。俺の目的は、奴にダメージを与えることではない。
奴の武器、青狼刀だ。
『……』
俺の不意打ちの閃光剣により、アーノイックの手に合った青狼刀は吹き飛んで行き、カランと、後方に落ちる。
ここだ。この隙に、闘気をチャージしていた俺の【覇王剣】を使う……!
俺は上段に剣を構える。
「【覇王―――」
「【千手観音】」
アーノイックは両手の拳を構えると、俺に向けて、とんでもないスピードで拳を放ってくる。
あれは……ゴルドヴァークの得意とした技。今の俺の身体では上手く使えない、格闘術。
圧倒的な筋肉と両の手に闘気を纏うことで発動することができる、拳術だ。
……そうだ。何を考えていたんだ、俺は。
アーノイック・ブルシュトロームは、剣などなくても、最強に等しい人物。
あらゆる武術を身に付け、あらゆる武具を使いこなし、結果、使い勝手の良い剣を選んだだけということ。
あいつは……武器など関係なくとも、十分、化け物だ。
『ウォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッッッッ!!!!!!!』
咆哮を上げ、俺に向かって飛んでくる、無数の拳。
その初撃を身体を横に逸らして避けてみせるが、すかさず、次の拳が俺に向かって飛んでくる。
左腕に闘気を纏い、ガードしてみせるが……拳が直撃した瞬間、俺の左腕はグニャリと折れ曲がってしまった。
「くっ……!」
やはり、一撃でも当たれば、即、大ダメージを負ってしまうか。
俺以外の人間がこの拳を受けたら……肉片となって、粉々に砕け散るんじゃねぇのか……? 【怪力の加護】が無くてこれとか、チートすぎるだろ……!
俺は何とか、連続して振るわれる拳を避けていく。
何発か拳が身体を掠り、骨が砕け散る音が聴こえてきたが……所詮、これは幻影。怪我を負っているのは、俺の脳内で造り出しているビジョンにすぎない。俺は激痛に耐え、アーノイックの猛攻を凌ぎ、隙を伺う。
(剣がない以上、奴は【覇王剣】を使用できない。それはこちらに対して、有利な状況となるはずだ)
「【心月無刀流】!」
俺は痛む左腕を無理矢理動かし、手のひらを広げ、闘気を纏う。
そして、流れるような動きで、アーノイックの拳を弾き飛ばした。
相手の攻撃の威力を殺し、跳ねのける格闘術……ルナティエに教えた【心月無刀流】。タイミングよく相手の拳打に合わせれば、格上の相手の闘気をも弾くことが可能。ただ……折れた腕を無理矢理に動かしている状態だ。幻とはいえ、拳を手のひらに受ける度に、激痛が俺の腕に走るのは免れない。
『……』
俺が拳を弾いたのを確認した幻影体アーノイックは、さらに拳打の速度を上げ……連続して拳を放ちつつ、俺に向けて蹴りまで放ってくる。
俺はそれらの攻撃を、箒丸と手のひらを使い、器用に防いでいく。
一歩でも間違えれば、闘気で身体を粉々にされてしまう状況。攻め手に回ることすら、できない。
「……畜生! 奴の攻撃を防ぐのに、無駄な闘気を使ってしまう……! これじゃあいつまで経っても【覇王剣】のために闘気をチャージすることなんて……!」
『【手剣】』
アーノイックは闘気を手に集めると、俺に目掛け手刀を放ってきた。
俺は即座に屈むことで、その手刀を回避してみせる。
手を横薙ぎに振っただけで、俺の背後にあった壁は、闘気の圧で爆発していった。
拳は防がれると考えて、闘気の刃で殺しにきやがったか……!
「我ながら、イカレてやがるな……! 剣が無い状態でもこれかよ……!」
『【手剣・連影斬】』
幻影体アーノイックは両手を手刀にすると、それを素早く、俺に向けて放ってきた。
無数に放たれる圧縮された闘気の刃。
俺はその光景を見て、ハハハと、引き攣った笑みを浮かべる。
「今の俺が使えない技ばかり、これ見よがしに使いやがって……!」
俺は箒丸を構え、闘気の刃を弾いて防いでいく。
だが、全てを防ぐことができず、闘気の刃が腹部に当たってしまった。
「かはっ!」
全力で闘気を纏いガードしたのにも関わらず、俺は血を吐き出し、背後にあった壁へと叩きつけられる。
朦朧とした意識の中。起き上がると、幻影体アーノイックは背中を見せ、背後に落ちている青狼刀を拾い上げた。
そしてヒュンと刀で空を切ると、こちらに、つまらなさそうな目を向けてくる。
あれが―――――歴代最強の剣聖、【覇王剣】アーノイック・ブルシュトローム。
武器などなくても、あの男は強い。人類史上、最強の生物。怪物と呼ばれた男。
かつては俺と同じ存在だったというのに、まるで、違う存在のように見える。
アネットに転生して弱体化しているのは分かっていたが……ここまで、全盛期の俺と実力差があったとは……!
俺は箒丸を杖にして、立ち上がる。
ここでやられても、またリセットし直すだけ。
だから、もう、立ち上がらなくて良い。この戦いは無駄に闘気を消費した時点で、敗北は必至だ。諦めろ。次に備えよう。
そう……俺の中のもう一人が訴えてくる。
確かに、ここまでダメージを負ってしまうと、この戦いで勝利するのは難しいかもしれない。
だが――――――。
「一度敗けを認めてしまえば、一生、あいつに勝てることができない気がする。俺は……この先、みんなを守るために力が欲しい。お嬢様も、グレイも、ルナティエも、フランも――――レティキュラータス夫妻も、マグレットも、オリヴィアもマイスもジェシカもベアトリックスもヒルデガルトもアルファルドも――――このアネット・イークウェスに産まれてきてから出会ってきた全ての人間を、俺に良くしてくれたみんなを、守っていきたい」
『……』
「お前には、分からねぇことだろうよ、アーノイック・ブルシュトローム。お前は、俺とは違う。お前は、アレスやハインライン、ジャストラム、リトリシアにしか、心を開くことをしなかった。人々に怪物と呼ばれることに恐れを抱き、人間と関わることを避けてきた。お前は……人間が怖いんだろ、最強の剣聖。幼少の頃に母親代わりだったシエルを失い、その後、父親代わりだったアレスを失った。人と関わり怪物と恐れられるのが怖い、大事な人を失うのが怖い……だからお前は孤独を選ぶ。閉じこもっていれば、楽だからな……!」
『……』
「俺は、アネットに転生して、多くのことを学び、多くの人々と出会った。この身になってようやく、アレスが言っていた、世界を見て来い、人を愛せという言葉を、理解することができた。この世界は……捨てたものばかりじゃない。良い奴だって、たくさんいるんだ。こんな俺を受け入れてくた人だって、たくさんいるんだ……だから、俺は……お前に敗けたくない!! お前を乗り越えて、今の俺が正しいのだと、証明してやりたい……! こんな俺を慕ってくれた、あいつらの、師匠としても……!」
俺の咆哮に、幻影体アーノイックが、笑った……ような気がした。
アーノイックは上段に剣を構え、闘気を剣に集中させる。
凄まじい闘気の圧。周囲に暴風が吹き荒れ、ゴゴゴゴと部屋の中を揺らした。
「くるか……【覇王剣】が……!」
俺は額の汗を拭い、アーノイックを睨み付けた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「アネット……遅くない?」
時刻は深夜二時。未だ、山頂に、アネットは現れなかった。
現在山頂に到達し第二次試験をクリアしているのは、ロザレナ、グレイ、ルナティエ、アルファルドの四名のみ。
残る合格者の枠は五名。未だに、四人以外の誰も、山頂には到達していなかった。
不安そうに地下へと繋がる洞穴を見つめるロザレナに、グレイとルナティエが声を掛ける。
「心配なのは分かるが、師匠のことだ。必ず無事に戻ってくることだろう」
「そうですわ。今は、第三次試験に向けて、テントで休息すべきですわよ。合格者が集まり次第、そのまま第三次試験が始まるかもしれませんし」
「なんか……久しぶりに、ルナティエが優しいんだけど……」
「わたくしは、万全の貴方と戦いたいだけですわ!! 何を勘違いして……」
「それにしても、過去の自分と戦う試練か……やはり師匠にとっては、かなり難易度が高い試練なのではないのか?」
「え……? 過去の自分と戦う、試練……?」
グレイの言葉に、ルナティエは目をパチクリとさせる。
そして彼女はグレイの肩を掴むと、焦った様子で口を開いた。
「過去の自分と戦う試練って、それ、どういうことなんですの!?」
「い、いきなりどうした。ロザレナと師匠が受けた試練は、魔道具を使って、己の中にある自分と戦う試練だという話らしいが……そうだったよな、ロザレナ」
「ええ。あたしは、ベルゼブブと戦った時の自分と戦ったわ。多分、アネットも、過去の自分と戦っていると思うわよ」
「か、過去の自分……それって……いったい、どっちの……?」
「? どっちって何よ?」
「……ロザレナさん。アーノイック・ブルシュトロームの伝記では、彼の振る【覇王剣】は、海や山を割ったと……そう書いてありましたわよね?」
「え? うん。昔の話だし、眉唾な話だけどね」
「師匠が放つ【覇王剣】は……海や山を割れるとは思いますか?」
「いや、流石にあのアネットでも無理だと思うけど……あたしが見たあの子の【覇王剣】は、ジェネディクトのアジトを破壊したものくらいだし……マリーランドでは、使ったみたいだけど、近くでは見れなかったしね。確か、何件もの家が倒れたくらいじゃなかったかしら? それでも十分、すごいけど」
「オレは、お前の元手下の……何て言ったか……ディクソン?とゴロツキごと、倉庫を破壊したのは見たことがある。恐らく師匠の【覇王剣】は、家屋を破壊する威力を伴ったものなのだろう」
「わたくしは……マリーランドで師匠の【覇王剣】を直接見ましたが……伝記に記載されているレベルの威力ではありませんでしたわ……もしかして、師匠は弱体化している……? だとしたら……まずいことに……」
「? 何をブツブツ言っているのよ、ルナティエ。いったい、過去の剣聖とアネットに何の関係があるのよ? あ、やっぱりアネットって、アーノイック・ブルシュトロームの親族か何かで―――」
ロザレナが口を開いた、その瞬間。
ドゴォォォォォォォンという巨大な爆発音が鳴り響き、山が揺れたのだった。
「な、なに、これ!?」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
《アネット 視点》
「【覇王剣】」
俺に向かって飛んでくる【覇王剣】。
俺はそれを、【瞬閃脚】で回避してみせる。
集中しろ。できる限り闘気を温存し、【覇王剣】へチャージする。
イメージするんだ。過去の自分がどうやって、あの【覇王剣】を放っていたかを。
俺はここで、過去の自分を……乗り越える……!
「【瞬閃脚】」
覇王剣を放ち終わった後、俺の傍まで急接近してくるアーノイック。
そして彼は、両手に持った青狼刀に闘気を纏い、力いっぱいに振り放った。
「【気合い斬り】」
当時の全盛期のハインラインが放っていたものと相違ないレベルの、【気合い斬り】。
俺はそれを、ギリギリで身体を逸らし、避けてみせる。
すると俺の真横にスパンと斬撃が飛んでいき、巨大な土煙が舞い上がった。
幻影でなければ、俺の背後に、外が見える程の巨大な斬撃痕が残っていたはずだ。
まるで、細い糸を、何千キロも向こうにある小さな穴に通すかのような、ギリギリの攻防。一歩間違えれば、俺は一瞬にして消し飛ばされる。
これが幻影でなければ……俺はきっと、既に、この世界にはいないだろう。
命がひとつしかない状況で、アネット・イークウェスがアーノイック・ブルシュトロームに勝利できる要素は、何一つとしてない。
「【龍飛剣】」
アーノイック・ブルシュトロームは距離を取ると、剣に闘気を纏い、俺に向けて飛ばしてくる。
闘気は龍の形となり、無数になって俺に襲い掛かる。
あれは、ハインラインの技だ。懐かしいな……なんて、感傷に浸る暇はない。
「【覇王剣・零】」
俺は箒丸を横薙ぎに振り、龍を消し飛ばす。
その光景を確認したアーノイック・ブルシュトロームは、腰を屈め、青狼刀を逆手に持ち、構えた。
あれは……【烈風裂波斬】……? いや……!! あれは……!!
「【死閃】」
アーノイック・ブルシュトロームがクルリと回転すると、こちらに向かって、湾曲した黒い斬撃が飛んでくる。
あれは、ジャストラム・グリムガルドの剣技……!
あの剣技は、神秘の領域に到達していると言われている、即死効果が宿っている速剣技。
あの剣閃が放たれた後、狙われた者は、どう足掻いても……剣閃を避けることはおろか、闘気で防ぐことすらもできない。対象者にダメージを与えるか、発動者が意識を失わない限り、あの剣閃は一生、対象者の後を付け狙う。
【閃光剣】を超えた【絶空剣】、その【絶空剣】から派生したさらに上位の剣技。
それが――――――――【死閃】。
『死神剣』と呼ばれた、【剣神】ジャストラム・グリムガルドの奥義。
「くっ……!」
俺は即座に【瞬閃脚】を発動させ、壁伝いに、試練の間の外周を走り抜ける。
背後から迫る【死閃】は、延々と、俺を追いかけ続けている。
ギリギリ【絶空剣】は使用できるが、今の俺に【気合い斬り】や【死閃】を使用することはできない。この身体とは、相性が悪いからだ。
それなのに、全盛期の俺は、一目見ただけで相手の剣技を使用することができた。加護や魔法などとは関係なく、才能だけで、だ。
いや、今の俺でも、知らない剣技を一目見て習得することはできる。ただ、生前と比べて習得範囲に限界があるという話。
それらを鑑みて……確実に、アーノイック・ブルシュトロームの方が、俺よりも性能差は上だ。
(だが……!)
「【瞬閃脚】」
俺の進行方向の先に、アーノイック・ブルシュトロームが現れる。
俺は【瞬閃脚】で行先を変え、フロアの中央へと向かう。
その進行方向の先にも、【瞬閃脚】を発動させて、アーノイック・ブルシュトロームが現れる。
どこに逃げようとも、奴は現れる、か。
性能差は奴のが上……このまま逃げ続ければ、俺の体力切れで、戦いは終幕を迎える……。
いいぜ……そろそろ闘気も溜まってきた……勝負といこうじゃねぇか……!
俺は駆けながら、上段に剣を構える。
すると、アーノイック・ブルシュトロームも、上段に剣を構えた。
【覇王剣】VS【覇王剣】をするつもりか?
その戦いに乗ってやっても良いが……こちらの分が悪いことは既に理解している。
上段の剣に闘気を集めるアーノイック。
俺は、フェイントをかけ……箒丸を下に下げ、魔法を発動させた。
「氷塊よ、我が盾となれ―――【アイス・ウォール】!」
アーノイックの目の前に、氷の壁が現れる。
アーノイックはそれがどうしたと言わんばかりに、足で、氷の壁を蹴破った。
その隙に俺はアーノイックの横を走り、またしても魔法を発動させる。
「氷塊よ、我が盾となれ―――【アイス・ウォール】」
アーノイックの周囲を走って行き、奴の四方に、氷の壁を作って行く。
するとアーノイックは、四枚の氷の壁を、剣を振って、一気に消し飛ばしてみせた。
奴の足元に、氷の破片がキラキラと落ちていく。
これで――――――良い。
「遍く光の渦よ、聖なる加護で汝の眷属が征く道を明るく照らしたまえ―――――【ホーリーライト】!」
手のひらの上に光の玉を発動させると、氷の破片がその光に反射して、アーノイックの目を塞いだ。
眩しそうに目を伏せる、幻影体、アーノイック・ブルシュトローム。
俺はその隙に、箒丸を上段に構え――――――アーノイック・ブルシュトロームへと振り降ろした。
「――――――【覇王――――――ぐっ!!」
左腕が、背後から迫ってきた【死閃】にすっぱりと、斬り裂かれる。
地面に落ちる腕。大丈夫だ……あれは、幻影、だ……この痛みも、偽物、だ……!!
「ぐ、がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!! 【覇王剣】!!」
右腕のみで放った、【覇王剣】。
剣を構えていなかったアーノイック・ブルシュトロームに、直撃する。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッッ!!!!!!!!!」
力いっぱいに箒丸を振り降ろし、全てを消滅させる斬撃を放つ。
今まで放ってきた、何倍もの威力の【覇王剣】。これで、無理なら、もう……!!!!!
全てを出し切った後、ドゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォンと、山全体が揺れる感覚がする。
「はぁはぁ」と荒く息を吐き、煙の中に目を向ける。
すると、そこに……何者かが立っている影があった。
「うそ……だ、ろ……?」
全身ボロボロになってはいるが、アーノイック・ブルシュトロームは……その場に立っていた。
奴は、その顔に、初めて……笑みを浮かべていた。
「たのしい、かよ……こっちは腕を失っているっていうのによ……」
あいつの性格は、誰よりも分かっている。
あいつは、自分と同等に戦える相手を、ずっと探していた。
自分が人間である証明をしてくれる者を、死ぬ最後の瞬間まで、待っていた。
終ぞ、その人物は現れなかったが……今、この時代に、俺を超えると、そう言ってくれた剣士が出てきてくれた。
(お嬢様……)
お前の願いは、いつかきっと、叶えられる。
お嬢様だけじゃない。グレイもルナティエも、フランも……きっと、お前が楽しいと思える剣士に育つはずだ。
お嬢様に平和な暮らしをして欲しいと願うメイドの俺がアネット。
そして、お嬢様に、自分を超えて欲しいと願う剣士の俺が……あいつだ。
笑みを浮かべるあいつは、俺の剣士の部分、そのものなんだ。
「真っ向から、やりてぇんだよな。いいぜ。今度こそ……正真正銘の最後だ」
俺は上段に箒丸を構える。
すると、アーノイック・ブルシュトロームも、青狼刀を上段に構えた。
もう、闘気は全て使いきった。片腕もなくなった。俺に、勝機はない。
だけど、剣士としての性かな。
勝てないと思う戦い程……超えられないと思う山を見上げる程、ワクワクしてきやがる。
もう一度、さっきの【覇王剣】を……いや、あの【覇王剣】を超える威力を放つことができたのなら……あいつを倒すことができる。
全力の【覇王剣】を二度放たないと死なないとか、化け物すぎだろ、あいつ。
俺たちはお互いに武器を上段に構え、睨み合った。
何百、何千、何億と振り降ろしてきた上段の剣は、いつしか、覇王へと至った。
過去のお前の人生も、それは大変な道のりだっただろう。
そうまでして強くならなければ、いけない理由があったんだろう。
だけど、俺は未来に生きている。
いつまでも、昔の自分に、敗けてばかりでは……いられない!!!!
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
『うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!』
他の技を使えば、腕を無くして弱った俺など簡単に殺せるだろうに、わざわざ向かい討って出るか。殊勝な奴だ。
だが……これは好機ともいえる。
逆境こそが、もっとも盛り上がるだろう? 俺は、そういう人間だったはずだろう?
奇跡を起こせ!!!! ここで、奴を仕留めるために、魂に古くから眠っている――――――――前世の闘気を、引き出しやがれ!!!!!
自分がアーノイック・ブルシュトロームであることを、思い出せ!!!!!
「【覇王剣】!!!!!!」
『【覇王剣】!!!!!!』
そうして――――――――――――全てを消滅する剣は、衝突し、再び山を揺らした。




