最低だ。
「ひーくんの馬鹿」
「夏美」
ひーくんの声じゃない。この声は、凛だ。
「凛」
「大丈夫?」
凛が私を抱きしめる。暖かくて落ち着く。
「凛……凛っ!」
「私はここにいるから大丈夫だよ」
「うん……っ、ありがとっ!」
凛は何も言わずに、ただ優しく抱きしめてくれた。
私は、凛を裏切ってしまったのに。
「瞳と一緒にいると胸が痛くなってくるしくなるの。私おかしくなったのかな?」
「夏美は、おかしく無いよ」
「でも、赤石さんとひーくんとの噂を聞いた時、凄い苦しくて、イライラして。絶対私おかしい」
「夏美が相川さんといてくるしいのなら、おかしいと思うのなら、夏美は私を、私だけを見ててくれればいい。そんなになる夏美はみたくないっ!」
初めて、凛は私に気持ちを伝えてくれた。
その事が、凄い嬉しかった。
「ありがと、凛」
「うん」
***
屋上のドアの前。
少し開けると声が聞こえた。
「夏美が相川さんといてくるしいのなら、おかしいと思うのなら、夏美は私を、私だけを見ててくれればいい。そんなになる夏美はみたくないっ!」
なんでそんなこと言うんだよ!
ああ、なんでこんなことになったんだろう。
俺はその場から立ち去るしかなかった。
知らない内に夏美を泣かして、傷つけて。
俺、本当に最低だ。




