58.脳筋少女、聞き込みをする。
「情報……あ、ありがとう……ね。はは」
緑髪の少女は治療所にいるという情報を教えて黒髪の少年とは別れました。
最初は嬉しそうに少女の食べっぷりを見ていた黒髪の少年が、最後の方では魂を飛ばしていたことを思えば、どれ程少女が食べたのかわかるというものでしょう。
「お嬢……どこでそんなやり方を覚えたんだ」
「そうね。友達がやっていたのを思い出したのよ。“相手に貢がせるには色々なやり方があるから、実践して教えてあげる”って言いながら教えてくれたわ」
「だからなんなのそのお嬢の友達」
「とても物知りだったわ。愛の奴隷と愛の下僕をたくさん作って楽しく暮らしていたわね」
「なにそれ怖い」
愛の奴隷と愛の下僕の違いは何でしょう?
盗賊Cは頭痛を堪えるような顔で詳しく聞くことはやめることにしました。
「……じゃあ、俺たちも人探しを始めるか」
「そうね。行きましょう」
“黄金の筋肉亭”の主人から聞いた店員の特徴は、
・常に半泣きの顔で、すぐに泣く。泣き虫。
・年齢は二十歳前後。青色の髪に水色の瞳。
・気が弱くて泣き虫なのに料理のことになると妥協せず見境がなくなる。料理大好き。
だそうです。
この特徴を頼りに、少女と盗賊Cは聞き込みを開始しました。
盗賊Cは、いくら特徴的な人物といえど人探しは難航すると思っていました。ですが、意外と覚えている人がいたみたいで、色々な人から情報が集まりました。
まず、宿屋で聞き込みをしました。何軒か訪ねると、宿泊していた宿が判明しました。泊まっていた宿屋では
『“活力のキノコ”がほしいんだけど、売っているところが無いか聞かれたわね。私も最近は見かけないって言ったら、泣きそうな顔をしたんで屋台の人に聞いたらいいんじゃないかって教えたよ』
という情報が集まり、
屋台では
『あの兄ちゃんな。“活力のキノコ”が手に入るか聞かれたな。採取できる場所はわかるが、今は魔物が出る可能性が高くて行くやつが少ないって話をしたら、半泣きの顔で考え込んでいたな』
という情報が集まりました。
そして屋台の情報をもとに門番たちに話を聞いてみると
『あぁ……あの大荷物の青年か。この先は魔物も出るし一人では危険だと忠告はしたが、「大丈夫です! アレを手にいれるまで帰れません!」と目に涙を浮かべながら行ってしまった。……やはり引き留めた方がよかったか?』
という情報が聞けました。
夜まで聞き込みを続けた結果、青年の足取りがほぼつかめました。最後に話を聞いた門番によると、戻ってきたところは見ていないようです。盗賊Cは少女に確認しました。
「お嬢、どうする?」
「もちろん明日の朝になったら探しに行くわ」
少女は言い切りました。
盗賊Cもわかっていたので、一つ頷くだけで終わります。
「だよな……わかった。じゃあ、今日はもう寝るか」
「そうね。おやすみ」
「あぁ。おやすみ」




