52.脳筋少女、迷子と出会う。
「起きたのね」
緑色の髪の少女が目を開けたのを確認した少女は、振り上げていた手をおろしました。琥珀色の瞳でジッと少女のことを見ていた緑髪の少女は、アレをもう一度食らわなくてよかったと胸に手を当ててホッとします。
「……どうしてこんなところに倒れていたんだ?」
緑髪の少女の気持ちが痛いほどわかる盗賊Cは、優しく問いかけました。
答えることを少し迷っていた緑髪の少女は、盗賊Cを見てから隣の可憐な少女も見て、その手がゆるく握りこまれていくのを視界に入れた瞬間──怒涛の勢いでしゃべりだしました。
「えっと、あの、私は町の中にいたはずなのに迷子になってしまいましてですね、それで、もとの場所に戻ろうと歩いてみたのですが、さらに迷ってしまいまして、いやいや考えればわかりますよね迷っているのに動いたらさらに迷うなんて……そしてウロウロと慌てているうちに食料と力が尽き倒れてしまったのです!」
緑髪の少女は、ここまでを一息でしゃべります。
それにしても……なんということでしょう!
町の中からこんなところまで迷子になってしまうなんて。超絶迷子です。
よく息継ぎ無しでこんなにしゃべれるなーっと、あまりの迷子っぷりに軽く現実逃避しながら、盗賊Cはさらに問いかけます。
「そ、そうなのか。それは大変だったなー。……一人旅だったのか? それとも連れがいるのか?」
女の子の一人旅など危険です。仲間がいるとしたらきっと心配していることでしょう。
盗賊Cの問いかけに、緑髪の少女は笑顔で答えました。
「あ、一応仲間がいます!」
なんとも反応し難い返答です。盗賊Cの顔が引きつります。
“一応ってなんだ?”と思いながらも、訳アリかもしれないし……そこまで突っ込むのもなぁと逡巡する盗賊C。
しかし、そんな盗賊Cの配慮を気にかけない者がいました。
「一応ってなに?」
少女です。
パッと見では緑髪の少女を心配しているように見えなくもないですが、盗賊Cはわかっています。ただ思ったことを口に出しただけだということを。
「仲が悪いの?」
「お、お嬢…………」
普通なら聞きにくいことをスッパリと訊いてしまう少女に、盗賊Cは“さすがはお嬢”と妙に感心してしまいました。
ここまでスッパリと問われたことがなかったのでしょう。緑髪の少女は目をぱちくりとさせていました。
「どうしたの?」
「あ、いぇいぇ、仲が悪いというわけではないのですが、他の方とはなんか性格が合わないのですよね! それに、今回だけの仕事仲間ですので、多少合わなくても問題ありません!」
気弱なようでいて、中々はっきりモノを言う緑髪の少女です。
第一印象とは大分違う少女に、盗賊Cとクロはびっくりしました。
「──あれ? 儚げな美少女に見えたんだが……」
『──うむ。接してみねば、わからないものだな』
ぼそぼそと話し合う盗賊Cとクロを火竜の長は呆れたような目で見ていました。




