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閑話.火竜の長の独白。

 ワタシは火竜を束ねる火竜の長ヨ。

 ケンカ売ってきた四天王の氷竜の長をボッコボコにしちゃったので、ほとぼりが冷めるまで旅に出ることにしたの。

 あ、言っておくけど、オカマじゃないワヨ? ちゃんと雄なんだから!



 ワタシの一族はとにかく雌ばっかりが生まれる雌系一族なのヨネェ。

 ワタシは十一竜姉弟の六番目で、上に姉が五竜、下に妹が五竜いるの。

 だから初めは自分の言葉遣いがオカシイだなんて思ってもみなかったワ。お姉様たちもこんな言葉遣いだもの。


 言葉遣いがオカシイって気づいたのは他の複数の雄竜に会ったとき。「おまえ雌みたいな言葉をしゃべるんだな?」「雄……だよな?」と言われて初めてワタシの言葉遣いが雄竜っぽくないって認識したの。


 母竜に問い質したら「だって、火竜の雄竜はケンカっ早くてネェ。すぐに死んじゃうから、あなたのことは姉竜と同じように育てたのヨ。ちゃんと育って嬉しいワ」と言われたのヨォ。

 ……そう言われちゃうと、抗議出来ないわネェ。

 開き直ってこのまま生きていくことにしたワ。


 もちろんワタシのことを「カマ竜」って言ったヤツはボコボコにしてやったワヨ? ウフフ。



***



 最近、魔王サマを見かけないと魔物の間で密かな噂になっていたワ。

 噂では、人間との大きな戦争をするための準備をしているだとか、いやもう戦ったあとだとか、風邪を引いて療養中だとか言われていたけど……。

 だけど、クロの話を聞いてようやく真実がわかったワァ。


 ……魔王サマはクロとの戦いで負傷したのネ。


 しかもクロの話しぶりからすると、魔王サマは結構重傷なんじゃない?

 サラッと聞いちゃったけど、この情報って極秘の情報ヨネェ。さらには魔王の代替わりに四天王の力を借りていただなんて情報も極秘中の極秘……。

 ……ないワァ、クロはどうやってこの情報を知ったのよ?

 こんなことが前魔王派に知られたら、とってもヤバいワヨー。


 これでさらに戻りにくくなってしまったワネ。

 いやぁん困っちゃうワ。




 あの子に会ったのは、噴火しそうな山の力を抑えながら安全な力に転換していたとき。

 それまでも何度か人がやって来ていたんだけど、ここまで来れる人族はいなかったワァ。


 初めは最深部まできた人族を珍しく思いながらも追い返そうとしていたの。だって、まだ山の力を転換し終えてなかったから、邪魔されると困るもの。

 でも、そこで予想外のことが起こったのヨネ。

 人族の中でも弱そうな外見をしていたので、騙されちゃったワ。

 見た目と違ってスンゴイ強かったノヨ! あの、少しの間とはいえ竜をも気絶させる腹パンはヤバかったワネ!

 今より鱗がやわらかかった幼竜のころならまだしも、人族の作る武器すら弾く自慢の鱗がまったく役に立たないだなんて信じられなかった。

 感じたことのない程の衝撃と痛みに“この女の子……ホントに人なの?”って思っちゃったワ。


 目が覚めてからも信じられないことの連続。

 ……まさか、あの“孤高の黒狼”があちら側にいるなんて想像もしなかったワ。

 しかも何がすごいって、黒狼もあの少女に負けたってこと。そして──あの少女を主と仰いでいること。

 ありえない……ありえないって思ったワ。

 “孤高の黒狼”は魔王にすらなれるほどの強者。魔王にならなかったのはただ面倒臭いからと聞いたことがあるワ。そんな黒狼が人族と一緒に旅をして、主すら持つなんて。


 あの少女に興味が湧いた。

 だから誘われた手をとってみたノ。

 これからどうなるのか……ワタシにもわからないけど、とっても楽しそうだと思うワ。

 ウフフ。退屈だけはしなさそうヨネ!



 さぁ、この先どうなることやら。


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