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49.脳筋少女、ナンパ男に再び出会う。

「あぁー!? キミこの前の!!」


 南の町に着いた途端、少女たちに声をかけてくる人がいました。

 青年というよりは少年といった方がしっくりくる十代半ばくらいの男の子でした。


「……誰? 知り合い?」

「知らん。俺は見たことないな」


 少年は盗賊Cに知り合いか確認します。ですが、盗賊Cにも見覚えはありませんでした。二人は少女に馴れ馴れしく声をかけてきた男の子を上から下まで眺めます。

 チャラチャラした格好のイマドキの若者です。変わっているところといえば、黒髪黒目であるところでしょうか。この辺では見かけない顔立ちです。

 どう考えても知り合いではないので、視線を少女に向けました。少女の知り合いなのかと思ったようです。ですが、少女は近くにある露店の焼き菓子を見ていて黒髪の少年のことなど目に入っていません。

 駆け寄ってきた黒髪の少年は少女の前に立つと、早口でまくし立てました。


「ねぇねぇ久しぶりだね! あ、おれのこと覚えてるかな。

 実はあのあとキミのことを捜してたんだけど、全然見つからなくて困っちゃったんだよね。でもこんなところで逢えるなんてもしかして運命かも!?

 うん。おれとキミは運命の赤い糸で結ばれていたのかもね。あのとき見つからなかったのもここで再会するためとか……くぅ~燃えるっ!!」


 ここまで一息にしゃべります。

 いきなり出てきて訳のわからないことをまくし立てる黒髪の少年に少女以外ドン引きです。

 唯一、少女だけは興味のない顔で黒髪の少年を見ていました。


「……でさでさ、今度こそおれとお茶しない?

 この町での人気店もばっちりリサーチ済みだからさ! ね、いいでしょ?」


 断られると微塵も思っていないのか、黒髪の少年は自信満々に少女をお茶に誘います。

 盗賊C、天才剣士の少年、クロ、火竜の長は黒髪の少年の勢いにのまれていました。少女がなんと答えるのか、静かに成り行きを見守ります。

 一瞬の静寂。

 少女が口を開きました。


「あなた、誰?」


 どうやら、黒髪の少年のことを覚えていないようでした。



***



 黒髪の少年が一生懸命少女に自分たちの出会いを語ります。しかし、少女は半分以上聞き流していました。

 少女の視線は先程とは反対側の露店で売っている焼いたお肉に釘付けです。どうやら少女はお腹がすいているみたいでした。

 一方、強制的に話を聞かされ続けた盗賊Cたちは黒髪の少年に対してドン引きしています。

 お団子の串を刺してきた女の子に運命を感じるだなんて変態です。少女から引き離した方がいいか、コソコソ話し合っています。


「お嬢から引き離すか?」

『いやいや、コヤツでは主に絶対勝てないだろう?』

『でも気持ち悪いワァー』

「そうだよ。彼の存在自体が気色悪いよ」


 黒髪の少年の評価が散々です。


「……んじゃ、話をぶったぎって逃げるか」


 全員の意見をまとめる盗賊C。

 黒髪の少年から少女を引き離すことが決定したその時、第三者の声が響きました。



「やっと見つけましたわ!!」



 声がした方へ顔を向けると、新たに三人の少女がこちらへやって来ました。


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