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45.脳筋少女、火竜と相対する。

 真っ赤に燃えるようなその空間。

 ソコに火竜はおりました。


 赤く紅く、様々なアカに彩られた緋色の竜。

 見上げるような体長は山みたいに巨大で、

 金を溶かしたかのような黄金の瞳はとろりと輝いていました。

 その巨体を支えることの出来る太い前足は、人など簡単に踏み潰せるでしょう。

 その火竜は、一目で上位だとわかる風格がありました。


 盗賊Cたちは、想像以上に強い火竜の威圧感に足を止めてしまいます。

 そんな盗賊Cたちを見下ろしていた火竜が口を開きました。


『人間たちよ。何故、この地に来た……』


 低く、重々しい声で火竜が問いかけてきました。

 あまりの重圧感に汗が吹き出てきます。

 盗賊Cと少年は歯を食いしばってその重圧に耐えました。


「これが、火竜」

「なんて威圧感なんだ……」


 少年と盗賊Cが(うめ)きます。


『……ん?』


 その時、盗賊Cたちと共にいたクロが訝しげな声を上げました。

 しかし盗賊Cたちにその事を気にする余裕はありません。

 火竜から発せられる重圧感に耐えるだけで精一杯だったのです。


『もう一度言おう。人間たちよ、何故この地に来た』


 火竜は黄金に輝く瞳を少し細めて再度問いかけます。


「それは……」


 その問いに少年が口を開いた、その時でした。


「あなたを倒すためよ!」


 今まで大人しくしていた少女が、問いに答えると同時に飛び出していきます!


「先手必勝ーーーーー!!!」


 風のように火竜に迫った少女は、油断していた火竜に思いっきり拳を振るいました。


「ふんっ!」


バキャァアアアア!!!


 岩をも砕く少女の拳です。

 命中した火竜は(たま)ったものではありませんでした。

 巨体が浮くほどの衝撃に、火竜の口から思わず悲鳴が漏れます。


『イヤぁん!! いったぁーーい!!!』


 重々しい声で紡がれた言葉遣いは、何故か女性的でした。


「はぁ? ……なんか、おかしな言葉が聞こえた気が……」

「僕もなんか……あれ? おかしいね」

『あぁ。やっぱりか』


 盗賊Cと少年は自分の耳に入ってきた言葉がイマイチ理解出来ませんでした。耳をトントン叩いています。

 しかしそんなことをしても意味はありません。

 耳は故障していませんでした。

 そして、火竜の言葉を聞いたクロはなにやら納得しています。

 うんうん頷き、少女に声をかけました。


『主よ。少し待ってほしい。その者は我の知り合いのようだ』


「え?」


 しかし少女は急には止まれません。

 追撃をかけようと、振り上げていた拳は、見事火竜の腹に決まります。


『グフゥ』


 火竜が倒れ、顔がちょうどよくクロの前にきました。

 盗賊Cと少年は顔をひきつらせます。

 クロは気にせず、二人の一歩前に出て火竜の瞳を見つめながら言いました。



『久しいな。火竜の長よ』



 どうやら、火竜はクロの知り合いのようでした。


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