33.脳筋少女、噂を聞く。
翌日の朝。
少女たちは、食堂で朝食を食べながら今後の予定を話し合います。
クロは少女の膝の上に乗って微睡んでいます。
「依頼を達成したが、このあとはどうするんだ? 向こうの国へ戻るのか?」
「いえ、折角来たのだから、こちらの国でしばらく稼ぎましょうよ」
「随分殊勝な態度だな? ……本音は?」
「おやっさん十選を食べたい」
「やっぱりか!」
まぁ、予想は出来たことでした。
この宿屋も食事が美味しいので、宿泊客以外に一般の人も食事を食べに来たりしているみたいです。
ガヤガヤと騒がしい食堂は、朝の活気に満ちています。
「そういやさ、聞いたかよ……」
「あぁ、あの“天才の噂”な」
ふいに聞こえた噂話に、盗賊Cは何となく耳を傾けます。
「そうそう。また大会で優勝したらしいぜ? あの“天才剣士”は」
「すげぇな。まだ十代の少年だろ? あんな若いのに……」
「どうやら南にある火山に棲む火竜退治を頼まれたらしい…………」
どうやら、“天才剣士”と言われる少年の噂話をしているようです。
この国では、年中色々な大会が催されているみたいです。
その中でも人気が高いのが、闘技大会という武技系の大会で、最近出場するようになった少年が連続で優勝しているらしいです。
どうやらその少年、剣技にかけては負け知らずの“天才”だそうです。
「ふーん、すごいわね」
「あぁ、そうだな。世の中には凄い人がいるものだな」
盗賊Cは少女のことをチラリと見て、“お嬢程凄い人間は見たことないが”と思っています。
クロも同意するかのように、尻尾をゆるりと一回振ります。
「まぁ、この国に着いたばかりだし、一日くらいお休みにしましょうよ」
「……そうだな。まずは街の地理も知りたいし、今日はうろうろと観光するか?」
「いいわね。ついでにおやっさん十選も食べましょうよ」
『……』
とりあえず今日は休養日にすることを決定して、一行はこの街を観光することに決めました。
まずは宿屋のおやじ十選を食べに行こう、と朝食のすぐあとなのに少女が言います。
クロも無言で尻尾をパタパタさせています。
盗賊Cはどうやって散財させないようにするか、今から頭を悩ませました。




