30.脳筋少女、国を出て第3の街に着く。
宿屋のおやじから依頼を受けてから一夜経ち……
少女たちは、宿屋のおやじから、小包を受け取りました。
ガッチガチに梱包されて、ものすごく厳重です。
どう見ても怪しい物体です。
盗賊Cは小包を見た瞬間、“これはやべぇな”と思いました。
しかし少女は、普通に質問します。
「おやっさん、これ、中身なんなの?」
「ひ・み・つ・だ」
宿屋のおやじはパチンとウインクしました。
盗賊Cは精神に1000のダメージを受けました。
一撃死です。
少女は盗賊Cを殴りました。
盗賊Cは再起動しました。
生き返った盗賊Cは体を両腕で抱いて戦きます。
「あ、危なかった……。俺は、この世の深淵を見た」
大げさです。
大げさですが、大げさじゃないかもしれません。
クロもシロくなっていました。
無事なのは、少女のみです。
***
さて、南西の国ですが、この町からは歩いて3日くらいです。
クロに乗っていければもっと早くに着くでしょうが、旅の準備を怠るわけにはいきません。
今回も盗賊Cが用意します。
クロも増えたので、雑貨屋さんで消耗品、食料品を多めに買います。
少女が“筋肉達磨”をカゴに入れます。
筋肉ムキムキの達磨なんて、誰得でしょう。
盗賊Cは無言でもとの場所に戻します。
少女が“カッコイイマント”をカゴに入れます。
格好いいですが、実用性はありません。
盗賊Cは無言でもとの場所に戻します。
少女が“鼻メガネ”をカゴに入れます。
なぜこんなものがあるのでしょう。
盗賊Cは無言でもとの場所に戻します。
こうして、盗賊Cの努力により旅の準備は整いました。
***
「じゃあ、いってくるわね」
「いってきます」
『わん!』
宿屋で昼食を食べたあと、少女たちは旅立ちます。
「おぅ! よろしく頼む!! 報酬は向こうが出すからな」
「わかったわ」
「おっと……忘れるところだった。これ、オレの“筋肉元気特製弁当”と、旅の路銀だ」
ネーミングセンスは酷いですが、お弁当からは凄くいい匂いがします。
盗賊Cはありがたくお弁当をいただきました。
***
町が見えなくなってから、クロにもとに戻ってもらいます。
『よし! 我の出番だな』
クロはドヤ顔です。
少女と盗賊Cは、そんなクロをわしゃわしゃ撫でます。
クロはすまし顔で撫でられていますが、しっぽはブンブン振られています。
少女たちは、笑いを堪えながら素知らぬ顔でなで続けます。
ひとしきり撫で終わったあとで出発します。
やはりクロに乗ると早いです。
人に見られるとマズイので、街道から外れた場所を走るのですが、景色がどんどんと変わります。
途中、野営をしたときに少女が夜食として半分の食料を食べたりとアクシデントもありましたが、順調に旅は進みました。
そうして、クロの活躍により大幅に旅程が短縮され、二日目の夕刻には国境を抜けて街に到着しました。
新たな街には何が待ち受けているのでしょうか?
一行は期待を胸に、街の門をくぐりました。




