閑話.引きこもり魔女の独白。
読まなくても大丈夫です。
わたしは白薬樹の魔女。
一部では引きこもり魔女とか呼ばれているわ。まったく失礼よね!
わたしが生まれたのは北の寒い国だったわ。
一年の半分は雪に閉ざされているような豪雪地帯。
だからわたしの生まれた村では念入りに冬支度をして、
雪に閉じ込められている間に手仕事で色々なものを作るわ。
雪が溶けたときにガッツリ売って、また冬期への備えをするの。
私が家に籠って仕事をするのが苦にならないのは、このせいね。
……まぁ、多少人見知りなのもあるかもわからないけれど。むぅ。
家族は両親と姉、妹の五人家族。
家族仲は……悪くはないけど、微妙だったわ。
なぜなら、私の髪が白くて、瞳が緋色だから。
家族はそれはもう美しい銀髪に蒼い瞳だったわ。
別に母が浮気したとかじゃなく、突然変異だと魔女様が言っていた。
でも閉塞的な村だったし、村人も家族もわたしには腫れ物を触るようだった。
魔女様にはとても感謝しているわ。
今わたしが生薬術師として生きているのは、
魔女様が色々教えてくれて、魔女協会に推薦してくれたから。
魔女様には絶対にご恩返しするわ!
***
わたしがあの娘に出会ったのは、まだお師匠様に師事して修行していた時だったわ。
淡い金色の髪に晴れ渡った空の様な瞳。
第一印象は華奢で可愛い子……ってだけだった。
だけどすぐにその印象はぶち壊されたわ。あの娘自身に。
薬の素材を買いに市場へ来ていたんだけど、そこで厳つい傭兵の男に絡まれてしまったのよね。
この白い髪が珍しくてか、気味悪いからか……髪を引っ張られたの。
市場にはそれなりに人がいたけど、流石に傭兵から身を張って助けよう、という人はいなかった。
警邏に連絡はしてくれたみたいだけど。
痛みで呻いた時、あの娘が現れた。
華奢な少女の登場に、わたしのほうが焦ったわ。
だってこんな少女では男には勝てないし、逆に男に酷いことをされるかもしれない。
なのに────
わたしの髪を握っていた男の手を手刀で一発。
「ゴキャ」って音がしたわ。人体からあんな音を聴いたのは初めてだった。
聞き苦しい悲鳴を上げる男が手を離した瞬間。
メキャァァアア!!
あの華奢な体のどこにあんな力があるのかわからなかったけど、抉り込まれるように殴られた傭兵の男はぶっ飛んでいたわ。
……人が飛ぶのも初めて見た。
少女に「大丈夫?」って聞かれたけど。体は無傷で大丈夫だったけど!わたしの頭が大混乱だったわ!!
助けてくれた少女にお礼をして、その日は帰って……寝た。
後日、また市場で少女に出会った。どうやらこの町にお金を稼ぎに来ていたらしい。
改めてお礼をしたかったので、お茶に誘ったわ。
そこで、人見知り気味なわたしが珍しくこの少女と意気投合したのはいいんだけど、助けてくれたお礼に奢ると言ってしまったのはちょっと後悔したわね。
そこの喫茶店の全メニューをたのんでくれたの。二回も。
流石に三回目は止めたわ。お金的な問題で。「まだイケるわよ?」の言葉にわたし涙目。お願いやめて。
その後も、遊んだり騒動に巻き込まれたり家の扉壊されたりお師匠様に紹介したり、色々あった。
食いしん坊で、手が早くて、あんまり深く考えないで、でも困ってる人を見ると無視せず助けて。
普段は脳筋のくせに、肝心なところでは外さない。
『だって、薬に必要なんでしょ?』
ええ、そうよ。重い病気の患者なの。
わざと軽く言ったけど、素材が足りなくて、かなり焦っていたのよ。
でも、患者さんも大事だけど、わたしにとっては貴女だって大事な友達なのよ。
だから、ねぇ、無事に帰ってきなさいよ。
待ってるから。
読んで頂きありがとうございました。
拙い小説ですが、文字数が2万超えました!
こんなに書いたの初めてです。
長編小説を書いている作者様を改めて尊敬しますね!!




