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20.脳筋少女、第2の村に着く。

「……着いた」

「着いたわね」


 西の村に着いた少女と盗賊C。村に着いたのは、夕日が沈みかけ、もうすぐ夜になる時間帯でした。

 この2日の間に何があったのか、盗賊Cはぐったりしています。


「俺は正直、お嬢を舐めてた」

「? なによ突然」


 少女は首を傾げました。どうして突然 盗賊Cがそんなことを言い出したのか、わからなかったからです。

 盗賊Cは少女のその反応を見て、深く深ーく溜め息を吐きます。


「俺は、お嬢がここまで考えなしだとは思っていなかった……」

「なによ、失礼ね」


 少女は軽くムッとします。盗賊Cは諦めの表情で少女を眺めます。


「だってお嬢、2日分の食料を1日で食べちゃったじゃん!」

「あぁ、あれ? だから悪かったわよ。まさか食料があれしか無いなんて……」

「いやいやいやいや! お嬢には2人分の食料を用意したから!!」


 そう。盗賊Cは旅支度をするとき、少女の分の食料を2人分用意していました。

 しかし少女はそれを1日でペロリと消費してしまったのです。

 盗賊Cは野営の準備をしていたので、気づくのが遅れてしまいました。

 気がついた時には食料袋がぺしゃんこでした。


「あの時ほどお嬢から目を離したことを後悔したことはなかった」

「大げさね、あのあとちゃんと獲物を捕りに行ったじゃない」


 どうやら2人の間で、この話題は何度も出たようです。

 食料袋がぺしゃんこになっているのを見て、盗賊Cは少女にこの先の食料をどうするのか聞きました。


 そしたら少女は、


“無くなったなら、捕ってくればいいじゃない”


 と言って、横手にある森に入って行きます。

 引き止める間もなく森へ突進していった少女を盗賊Cは呆然と見送ってしまいました。



ドカーン!


グァァァァ!!?


バキィ!


ドシーーーン!!!



 森で不穏な音がします。


 しばらくすると……


「ふぅ。捕ってきたわよ!」


 少女がにこやかに帰ってきました。

 その手には獲物をもっています。

 盗賊Cは目を疑いました。


 少女が軽々と持っていたのは“大牙猪”という立派な魔物でした。

 魔物ですが、食べても問題はありません。

 むしろ、普通の猪より美味しいと評判です。

 しかし、体が頑丈なうえ、素早い突進と牙での攻撃が厄介で、この魔物を倒せるのは余程の強者のみです。


「どんだけ!? てか、怪我は!!?」


 盗賊Cは慌てて少女が怪我をしていないか調べます。

 だけど少女は無傷でピンピンしています。

 盗賊Cは何だかもう色々と常識を諦めました。

 ただし、1つだけ少女に言いました。



「怪我はしないように」

「わかったわ」



 こうして、これから先、食料は少女が調達してくることになりました。



***



 盗賊Cは道中のことを思い出してはぐったりします。

 確かに少女が村人とは思えないくらい規格外に強いのは知っていたし、わかっていたつもりですが、こんなにも存在自体が規格外だとは思っていませんでした。

 “俺、この先大丈夫かなぁ”としくしく痛む胃の上に手を置きました。


 ぼんやりとそんな考え事をしていた盗賊Cでしたが、ハッと我に返ります。

 慌てて周囲を見渡すと、少女は村の門の方へ歩いていっているところでした。

 もう夜と言っていい時間だったので、当然門は閉まっていました。


 盗賊Cは激しく嫌な予感がします。



ガタン!



「あら、開かないわ?」

「お嬢!? ちょっと待っ────」



バキャアアアアア!!!



「またこのパターンかよぉぉぉぉお!!!!!」



 もう絶対に少女からは目を離さない。

 盗賊Cは心に刻み込みました。


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