18.脳筋少女、引きこもり魔女に依頼される。
「誰よコレ」
盗賊Cが叫んだ後、魔女が言いました。
盗賊Cは正気に返ります。慌てて自己紹介しようとしますが……。
「下僕よ」
「下僕!?」
「違うから!」
少女がさっくりと説明してしまいます。
盗賊Cは“何回目だよ?”と思いつつも自分は荷物持ちだと説明します。
どうやら魔女は少女の言葉が足りないのには慣れているのか、すぐに納得の表情になります。
「成る程ね……。苦労するわね」
“何に”とは言いませんが、お互いに通じあいました。
***
とりあえずここじゃなんだから、と言って魔女は家の中に2人を招きます。
ソファーに座り、魔女が入れてくれたお茶を飲みながら、少女は口を開きます。
「それで、ちょうどよかったって言ってたけど、薬の素材が足りないの?」
「そうなのよ。いつもこの町から西にある村から、定期的に素材を買い取っているんだけど、今回はほとんど手に入れられなかったのよね」
「? なんで? 採り尽くしたってこと?」
少女は首を傾げます。
しかし、魔女は少女の言葉に否と言います。
「どうやら素材の採れる山頂付近に、魔獣が出たらしくて、いつも採取してくれていた人が怪我したみたいなの」
「魔獣!?」
不穏な言葉に盗賊Cはつい口を挟んでしまいます。
だけど魔女は気にせずに話を続けます。
「そうよ。村人ではどうにもならなかったそうよ。素材を届けられないって謝罪の手紙がきたわ」
そこで魔女はお茶で口を潤し、一呼吸置いてから、また喋りだします。
「アナタにお願いしたいのは、その村に行って、可能そうなら素材を採取してほしいの」
「何だって!?」
盗賊Cはガタリと席を立ちます。
そんな危ない場所に、いくら強くても、ただの村人の少女を向かわせるなんて、と思ったのです。
魔女は少し目を伏せながら、なお言い募ります。
「もちろん、危険なのはわかっているわ。だから断ってくれてもいいわ」
しかし、少女は即答しました。
「行くわ」
「お嬢!?」
盗賊Cはびっくりしました。少女が全く躊躇しなかったからです。
「……いいの?」
魔女は少し不安そうです。自分でも無茶なことを頼んでいる自覚があるのでしょう。
だけど、少女はあっけらかんと言います。
「だって、薬に必要なんでしょ?」
「!」
「!!」
そうです。少女はわかっていました。
この魔女が作る薬は人を生かす薬。しかも市販の薬とは比べ物にならないくらいよく効きます。
特に重病人に対して優先的に薬を作っていることを、少女は知っているのです。
盗賊Cも少女の言葉で悟りました。
「もし、危なそうなら帰ってくるわ。だから、大丈夫よ」
「……ありがとう。お願いするわ」
こうして、少女は魔女からの依頼を受けました。




