14.脳筋少女、魔女の家へ向かう。
「これから向かうのは白薬樹の魔女の家よ」
「白薬樹の魔女?」
朝食後のお茶を飲みながら、少女は言います。
盗賊Cは聞いたことがないようで、首を傾げます。
「ちょっと変わった子なんだけどね、魔女協会の正式な生薬術師なの」
「生薬術師……ってあの!?」
生薬術師とは、ありとあらゆる薬草、薬石、魔宝玉に精通し、この世に作れぬ薬なしと言われる程の存在です。特に人を生かす薬作りに特化している術師のことを言います。
正真正銘エリートです。
一般人はなかなかお目にかかることは無いでしょう。
「生薬術師がこの町にいるなんて、知らなかった」
「まぁ、色々事情があってね。……ぷはっ。さ、行くわよ!」
ゴッゴッとお茶を飲み終わった少女は、席を立ちます。
盗賊Cは慌てて付いていき、2人は宿屋を出ました。
ざわざわと町は朝から賑わっています。
仕事に行く人のためか、大通りには軽食などを売る露店が建ち並び、あちらこちらから食欲をそそるいい匂いがします。
早くも目が釘付けになっている少女を巧く誘導しながら、盗賊Cは疑問に思っていることを聞きます。
「そういえば、魔女のところにどんな仕事があるんだ?」
「あの子人見知りで引きこもりだから、薬の素材が足りなくなるギリギリまで外に出ないのよね」
「……引きこもり?」
「ええ。腕はいいんだけどね。それで、私が代わりに素材採集に出たりするのよ。経費はあちら持ち、素材も普通より高く買い取ってくれるわ」
「……そうか」
どうやら少々変わった魔女のようです。
盗賊Cは納得し、これ以上は訊ねませんでした。
「あ! あそこに5色だんごが売ってるわ! 買ってくる!」
「おいおい、さっき朝食を食べたばかりなんだから、1本にしろよ?」
「5……いえ、3本くらいなら……」
「食い過ぎだ。……太るぞ」
「1本買ってくるわ。ちょっとここで待ってて」
ぼそりと呟いた言葉は少女にも効果的だったようです。
盗賊Cは呆れながらもここで待つことにします。
少女は、無事に手に入れた5色だんごをほくほく顔で手に持ちます。
さて、戻ろうかというときに──
「お、そこのキミ可愛いーね! ちょっといい?」
少女に声をかける謎の人物。
果たして、この人物は何者なのでしょうか?




