エルサはキューの浅漬けを所望
ベッド横の机で、革袋から報酬の硬貨を出して分ける作業をしている間、ソフィーがソファーに座って真剣に話す皆の事が気になったようだ。
エルフの話から、寿命の話になり、年齢と美容の話に発展して白熱している事を説明した。
今では、ヒルダさんも一緒に座って話してるからね……アルネが居心地悪そうにしてるけど、俺には助けられそうにない。
「……若さ……んん! えっと、今回の報酬はこれね。はい、リクさん。ソフィーやユノちゃんも」
「あぁ、ありがとう」
「いつもありがとう、モニカさん」
「ありがとうなの!」
一瞬だけ、反応したモニカさんだけど、気を取り直して報酬を分けてくれた。
俺やソフィー、ユノに均等に分けて、それぞれに渡してくれる。
パーティは三人で、冒険者ギルドにも申請しているから、報酬は三等分されてるんだけど、ユノがいるからね。
王都に来てからは均等に分けるようにしてる。
一緒にいてくれる以上、ちゃんと分けないと。
俺とソフィーは、受け取ったお金を収め、ユノは首から下げているがま口財布へ、大事そうに入れた。
報酬は分けたけど、一人当たり金貨二十枚か……クレメン子爵、随分奮発したんだね。
大事な孫二人を護衛するためだし、攫われる事があった後だから、警戒するのはわかるけど……ちょっとどころか、かなり多い気がしなくもない。
貴族家の人を護衛する事自体が初めてで、相場というのを知らないけど、本来なら半分以下くらいだと思う。
まぁ、クレメン子爵からの気づかいだと思って、ありがたく受け取っておこう。
……使う先がないから、貯まるばかりだけどね。
何か使うあてがないかなぁ……?
「お腹減ったのー!」
「私もなのだわ!」
「はいはい。そろそろ夕食の時間だからね。えっと……」
「リク、あの場を止められるのか?」
「いや……俺には止められそうにないよ……」
「仕方ないわね……私が行くわ。……私のいない所で、あんな話をして。せめている所でして欲しかったわ……」
既に窓の外では完全に日が落ちて、夜の帳が下りている。
空腹が限界になったユノが騒ぎ始め、それに同調するようにエルサも騒ぐ。
報酬も分けたし、そろそろ夕食を……と思ってソファーの方を見るけど、まだまだ白熱している様子の美容話。
今は、お風呂で顔を洗う時の話みたいだけど、男の俺にはあの話を止める気にはなれない。
特にメイさんとヒルダさんが熱心で、フィリーナも結構乗ってるようだね……さっきはほとんど何もしてないとか言ってたのに……。
レナは、興味を惹かれる話だからか、全ては理解できないながらも、うんうん頷きながら話を聞いている。
アルネは……時折男の意見として聞かれてるようで、居心地が悪そうなのが気の毒だ……早く何とかしないと。
でもどうするか、と考えようとしたところで、モニカさんが溜め息を吐くように言いながら、皆の方へ動いた。
何やら小声で呟いていたけど……モニカさんもやっぱり、興味があるのかな?
はっきり聞こえなくとも、なんとなく自分が美容の話に加わってない事を、気にしてる感じだ。
モニカさんは、特に気にしなくてもいいと思うんだけどなぁ……。
マックスさんの料理とか、良い物を食べて育ったからか、肌艶は良いし……スタイルも……。
あ、他の女性陣もちゃんと、気にしなくてもいいくらいだと思うよ、うん。
「あっちのキューが恋しいのだわ……」
「あっちの?」
モニカさんが少々大きな声を出しながら、白熱していた議論を止めた事で、夕食を取る事になり、準備を待って皆で頂く。
白熱していた議論に割って入り、皆を止めた時のモニカさんは、マリーさんを彷彿とさせるものがあった。
親子だなぁ。
正気に戻ったヒルダさんが、皆に頭を下げつつ、メイさんを連れて一緒に夕食の準備。
準備が終わる直前で、姉さんとエフライムが合流し、皆で食べ始める。
そんな中、積まれたキューに体を埋めるようにしながら、手あたり次第食べていたエルサが、ポツリと漏らした。
あっちのキューって、キューに違いがあるのか?
「村で食べたキューなのだわ。しょっぱい味と、ポリポリした食感がたまらないのだわ。これはこれで、美味しいのだけど……だわ」
「あぁ、浅漬けの事か」
オシグ村や、クレメン子爵邸で食べたキューの事だろう。
塩等を使って漬けられたキューは、食感を残しながらも、しょっぱい事が特徴だ。
あれに唐辛子とかも入れて、ピリ辛にしたらおつまみとして最適なんだろうなぁ……お酒を飲まないからわからないけど、そんな事を聞いた事がある気がする。
エルサは何もしていないキューも好きだが、あっちの浅漬けも、随分気に入った様子だ。
同じキューばかりで飽きないかと思うけど、エルサにそんな気配はない。
ともかく、違う味があると知ったら、たまにはそちらも食べたい気分になるんだろう。
「すみません、ヒルダさん……えっと、子爵領で作られてた物なんですが……」
「はい」
キューの浅漬けの事を、ヒルダさんに説明して、作ってもらえるかを聞く。
漬物だから、今日中にはできないだろうけど、今すぐでなくとも明日にでも食べられれば、エルサも満足してくれるはずだ。
「それでしたら、すぐにご用意できます」
「そうなんですか?」
「はい。簡単な物なので、王都でも作る事があります。ただ、あまり量の方は……」
「あぁ、それは仕方ないです。エルサ用に作られた物じゃありませんからね。少しでもいいので、分けてもらえますか?」
「はい、もちろん大丈夫です。では、持って参ります」
これから用意して明日……と考えてたら、元々作られてたらしい。
多分、エルサが何も処理してないキューを食べるだけだから、出してなかっただけなんだろう。
エルサが食べると知っていたら、多くの量を出してくれてたかもしれないけど……知ったのはオシグ村に行ってからだからね、今量が少ないのは仕方ない。
「うまうま、なのだわぁ!」
「本当に、キューの浅漬けを食べるのね……」
「キューなら何でもいいのかもしれないね」
ヒルダさんが持って来てくれた、キューの浅漬けを食べ、ご満悦な様子のエルサ。
さすがに、量はキュー三、四本程度の量しかなかったけど、今日のところはそれでも満足そうだ。
その様子を見ながら、姉さんは感心してる様子。
「なら、漬物類をもっと増やそうかしら?」
「漬物類? もっと他にもあるの?」
「あるわよ。りっく……リクなら知っているでしょう? 私と漬物……」
「あぁ、そうだったね」
姉さんは漬物が好きだったね。
中々に、渋い好みをしてると、子供ながらに思ってた。
自分で作る事もあったくらいだから、当然作り方も知ってる。
もしかすると今、エルサが食べているキューの浅漬けも、姉さんが作り方を広めたのかもしれない。
というより、そもそも姉さんが食べるために、城で作られてたのかもしれないな。
エフライムとレナがいるから、以前の記憶だとかの部分はぼかしながらも、漬物の事を思い出させてくれる姉さん。
エルサが浅漬けを食べてるのを見て、漬物仲間ができたとでも考えてるのかもしれない。
……エルサは、キューだからだと思うよ?
漬物は良いご飯のお供です。
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