危険を察知して避けるモニカさんとソフィー
「王城か……記憶にあるよりは、小さく見える気もするが、以前来た時に子供だったからか」
「これが王城なんですね。凄く、大きいです……」
「レナーテ様、口を開けて見上げるのは、見栄えが悪いですよ?」
荷物に顔を突っ込んだエルサを抱き上げ、キューを食べようと抵抗するエルサを頭に乗せながら、仕方なく鞄からおやつのキューを上げていると、俺達から遅れてエフライム達が馬車から降りて来た。
エフライムやレナも、王城を見上げて感心している様子だね。
エフライムのように、子供の頃見た大きい物って、成長したら小さく見える事ってあるよね。
身長が伸びるからなのか、知識が付いたからなのかはわからないけど、懐かしい場所を見た時、エフライムのような感覚になる人って、結構いるんじゃないかな。
レナの方は、口を開けて王城を見上げていたのを、メイさんに注意されている。
お上りさんに見えなくもないから、確かに貴族の子女としては、あまり良くない事なのかもしれない。
そんなメイさんは王城を見ても、今までと変わらないすまし顔だ。
王都に来た事があるんだろうか?
「リク様、私はこれで。馬と馬車を兵士に任せた後、エフライム様達を城へ案内致します」
「長い間、色々と助かりました。ありがとうございます」
「いえ、リク様とご一緒できて、光栄でした。学ぶ事の多い時間でしたよ」
エフライム達とは、一旦ここでお別れとなる。
城の中まで顔パス状態になってしまった俺と違い、貴族家の人間であっても、ちゃんと受付をしないといけないからだ。
俺が一緒に連れて行ってもいいんだけど、それじゃ子爵家としての面目とかがあるみたいだからね。
エフライム達の案内は、マルクスさんが担当してくれる。
王都を出る時から、お世話になりっぱなしだから、頭を下げてお礼を伝えた。
マルクスさんにとっても、何かしらの経験になってくれたようで、良かった。
「それでは、リク様」
「はい」
「リク、後で会おう」
「リク様、また後でー!」
「失礼致します」
数人の兵士を呼び、馬と馬車を任せた後、マルクスさんがエフライムとレナ、護衛兼お世話係のメイさんと別れる。
エフライム達とは、受付が終わったら合流する事になる……のかな?
まぁ、俺に用意されている部屋まで、誰かが案内してくれるだろう。
城内には、兵士さんやメイドさんがいるしね。
「それじゃ、リクさん。私達も宿に戻るわ。荷物も整理しないといけないし」
「そう? 一緒に部屋までくると思ってたけど……仕方ないか」
「まぁ、宿の方も確認しないといけないからな。さすがに、私達がいない間も宿の部屋を開けておく事はないだろう?」
「言われればそうか。それじゃ、また明日……かな」
「そうね。明日にはまたリクさんの部屋に行くわ」
城へと入って行くエフライム達を見送った後、モニカさんが宿に戻ると言って、荷物を持った。
確かに、持って行った荷物を整理したり、ソフィーの言う通り、宿の部屋を取らないといけないだろう。
宿だって、十日以上も離れてる人のために、部屋開けておくのは損失だしね。
空を見上げれば、気の早い星が見え始めている。
王都へ来た時はまだ多少明るかったけど、今はもうほとんど日が沈んで暗い。
城門を出るくらいには、完全に暗くなるだろうから、町に出ても早々顔を見られそうにない。
「私は、リクと一緒に行くの!」
「……ユノちゃんはこっちね。エルサちゃんは……リクさんから離れそうにないから、仕方ないか」
「えー、なんでなのー?」
モニカさんとソフィーの二人と別れようとした時、ユノが俺と一緒に城へ来ようと主張した。
だけど、それはモニカさんに止められ、宿に行く組に入れられてしまう。
ユノが俺と一緒に来ちゃいけない理由でもあるのかな?
エルサは、キューを食べるのに夢中だから、諦めたようだけど。
「モニカさん、どうしてユノはこっちじゃいけないの?」
「だって……ねぇ?」
ユノと一緒に、俺もモニカさんに問いかけた。
モニカさんは、顔をソフィーへ向け、首を傾げる。
「そうだな。リクは恐らく、部屋に戻ったら何か言われる事になるだろうからな」
「何か……誰に?」
「アルネとフィリーナ」
「あ……」
忘れていた、と考えると二人に失礼かもしれないけど、アルネとフィリーナに何も言わず、王都を離れたんだった。
「まぁ、あの二人の事だ。暇な時は王城に来て、リクが帰ってないか確認していたのではないか?」
「目立つから、街中を散策もできないしねぇ。……そこで、陛下に捕まって、リクさんの部屋にいて、夜まで時間を潰す……と」
「あー、簡単に想像できるね」
二人が城へ、俺が帰ってる確認ってところじゃなく、姉さんが二人を捕まえて、とりとめのない話に付き合わされてる様子の事だ。
ヒルダさんが溜め息を吐きながら、お茶を淹れてる姿も目に浮かぶようだ。
「もし今いなくとも、明日の朝にでもリクさんが帰って来た事が知れて、すぐに城へ来るだろうしね」
「つまり、俺が怒られるのを予想して、ユノと一緒に避難しようと……?」
モニカさん達の言う事を理解して、問いかけると、二人は俺から視線を逸らした。
むぅ……アルネとフィリーナを置いて行くと決めたのは俺だし、パーティのリーダーでもあるから、怒られるのは俺の役目なのかもしれないけど……少し納得がいかない。
荷物の整理だとか、部屋を取るためってのは言い訳で、実は逃げるためだったりするのかもね……。
女の人って、なんでこんなに危機察知能力が高いんだろうか?
いや、俺がのんびりし過ぎで、忘れてたのがいけないんだけど。
「それじゃ、リクさん。頑張って!」
「それではな」
「また明日なの!」
「……おやすみ~。……はぁ、仕方ないか」
そそくさと、この場を去って行くモニカさん達に挨拶をして、溜め息を吐く。
最初は理由がわからなかったユノも、去って行く直前には、俺を哀れんだ目をして見てたし……。
まぁ、何はともあれ、帰らないという選択はないんだから、城に入らないといけない。
さすがにエルフの二人が暴力に訴えることはないだろうから、甘んじて怒られるようと覚悟を決め、城へと入った。
……エルサに飛んでもらって、ヘルサル辺りまで逃げられないだろうか?
マックスさん辺りに怒られるだけか……はぁ……。
「リク様、お帰りなさいませ。無事のお帰り、何よりでございます」
「ただいま帰りました、ヒルダさん。……で、これは一体?」
もう慣れてしまった城内を歩き、部屋へと入る。
中では、ヒルダさんが待っていて、迎えてくれる。
お互い挨拶をして、ホッと一息入れようと思ったんだけど……。
ソファーに姉さんやアルネとフィリーナが座っており、何も喋らない。
アルネとフィリーナは、俺に視線を向けて、帰って来た事を認識したみたいだけど、声を出せないようだ。
原因は……向かいに座っている姉さんか……機嫌が悪い?
眉間に皺を寄せ、険しい顔で不機嫌な様子を隠すでもなく、ソファーに座って腕を組み、右手の人差し指を左腕にトントンと当てている。
久しぶりに見たけど、昔からある姉さんの癖だ。
機嫌が悪くなると、あぁするんだよなぁ……と、懐かしむ余裕はほとんどない。
姉さんが不機嫌とか、何があったんだ?
部屋に戻って一息と思ったら、姉が機嫌を悪くしていました。
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