便利な探査魔法
「ようやく街を出られましたか……先程のは、バルテル配下の者達なのでしょうか?」
「どうなんですかね? まぁ、俺達の方を狙ったわけではなく、クレメン子爵のいる馬車を狙ってたので、その可能性が高そうですけど」
「少なくとも、無差別ではないでしょうね。明確な意志を感じられました」
「ですね。馬車を見て、クレメン子爵が乗っていると考えたんでしょう。潜んでいたバルテル配下の人達……と考えるのが自然かもしれませんね」
「そのようです」
男達は俺達には目もくれず、真っ直ぐにクレメン子爵達の馬車を狙おうとした。
それだけでただの物取りとか、ならず者が襲って来たという線はないと思う。
というより、街中での物取りなら、騎士さんもいて警戒してる俺達に襲い掛かるなんて、リスクが高すぎるからね。
クレメン子爵の馬車が目当てなら、後ろや横から襲い掛かれば……とも思ったけど、それは街の建物が邪魔をして近づけなかったのかもしれない。
騎士さん達も警戒していたしね。
さっきの男達がバルテル配下と仮定した場合、街にいるのはほとんどが捕まってるうえ、トップのバルテルがもういない。
的確な指示をする人がいない状況で、突然クレメン子爵の馬車が街に来たから、突発的に襲い掛かったという可能性の方が大きいような気がした。
そもそも、クレメン子爵が馬車で移動するなんて情報、騎士さんや兵士さん達から隠れてる身で、すぐに知れるわけないしね……直接見る以外は。
ま、そこらの事は、引き渡した兵士さん達が取り調べてくれるだろうから、俺が考える必要もあまりないか。
「リク様、それではお願いします」
「わかりました……」
「何をするんですか?」
街を離れた後、少しだけ街道を進んだあたりで、マルクスさんにお願いされる。
それを受けて、少しだけ集中した後、魔力を薄く周囲に広げ、探査魔法を発動させた。
御者台の後ろにある小窓から、レナがこちらを興味深そうに覗いて、俺が何をするのか知りたそうにしてるね。
「えっとね、俺が魔法で周囲を調べるんだよ。そうすれば、何か危険な魔物が近付いて来るのかわかるからね」
「そうなんですね。でも、騎士達が周囲を見ているはずですよ?」
「念のためだね」
「リク様の魔法は、素晴らしいの一言に尽きます。騎士の警戒がなくとも……」
簡単に探査魔法の事を、レナに教える。
あまり想像ができないのか、レナは騎士達が警戒しているのに何故そんな事をするのか、不思議そうだったけど、マルクスさんが補足で説明してくれた。
多少大袈裟のようにも感じるけど、マルクスさんは俺の探査魔法があれば、見渡す以上の範囲で周囲を探れる事や、魔物と人間を調べる事で、こちらに近付く者がいないかの確認ができ、騎士の警戒はむしろ必要ないくらいだと、説明していた。
マルクスさんの説明を聞いても、レナはまだピンと来ないのか、不思議そうな顔をしていたままだったけど、その隣から顔を覗かせていたメイさんの方は、大いに驚いた様子だった。
ちなみに、馬車内の方は、御者台側にレナとメイさんが座っていて、その向かい側でモニカさんとユノが座ってる。
馬に近付けないエルサは、御者台まで来る事ができないので、今はメイさんの膝の上で撫でられていた。
魔法の説明で驚いているはずなのに、モフモフを撫でる手は止まってない……やっぱりエルサのモフモフは癖になるよなぁ。
「そんな魔法、聞いた事がありません」
「まぁ、俺の魔法はちょっと特別みたいですからね」
「メイド、リク様は凄いのですか?」
「……はい、レナーテお嬢様。今の説明の通りなら……リク様がいらっしゃるだけで、他の者が周囲を警戒する必要はないように思われます。こちらを狙って来る者を、全て調べる事ができるので、隠密行動で命を狙う……という事もできなくなります」
「へぇ~、そうなんですね。やっぱりリク様は凄いんですね!」
「ふふふ……お嬢様、あまり内容をわかっていらっしゃらないでしょう?」
「それは、そうですけど……でも、リク様が凄い事だけは、なんとなくわかります!」
「まぁ、確かに凄い事は間違いありませんね」
「ははは、そんなに褒めるような事ではないですよ」
護衛も兼ねるメイさんだからか、魔法の事もある程度知っているんだろう。
マルクスさんから説明された、探査魔法がどういう物なのかちゃんと理解している様子だ。
まだよくわかっていない様子のレナにも説明しているけど、やっぱりピンとは来ていないようだ。
まぁ、レナくらいの年頃なら、魔法を詳しく知らなかったり、どれだけの事か理解できなくても仕方ないのかな、と思う。
わからないながらも、俺が凄い事をしていると考えて褒めてくれるレナは、ちょっと可愛い。
同じ意見なのか、メイさんは微笑み、優しい表情でレナを見ていた。
「ふむ、成る程な。リク殿が周囲を警戒してくれていたのか。それならば、何も心配はいらんな。……あぁ、それくらいは騎士達にやらせよう。おい!」
「「はっ!」」
「畏まりました!」
しばらく街道を進み、そろそろお昼時というあたりで、エルサがお腹が空いたと主張し始めた。
ユノも、騒いだりする事はないが、お腹を押さえてるので、空腹なようだった。
丁度いい頃合いだと、馬車を止め、休憩をする事にした。
騎士さん達もそうだけど、レナやエフライム、クレメン子爵も食事をしてもらわないといけないからね。
木陰を見つけて馬を休憩させ、馬車を降りて来たクレメン子爵と話す。
街を出てから、俺の魔法探査で周囲を警戒していた事を説明すると、驚きながらも安心した様子だ。
ついでに、焚き火をするための枝集めを始めようとしていたモニカさんを止め、騎士達に命じて枝を集めさせる。
「すみません、手間をかけるようで」
「なに、これくらいはさせんとな。それに、周囲の把握も含まれているからな」
騎士さん達がすぐに散らばる様子を見ながら、クレメン子爵に頭を下げる。
でも確かに、クレメン子爵が言うように、周囲の探索も含まれると考えると、枝集めもただの雑用ではないのかもね。
魔物が近くにいないかを確認したり、川を見つける事や木の実なんかを見つける事もあるから、決して不必要な事じゃない。
まぁ、木の実とかは、詳しい人がいないと食べられるのかどうかすら、わからないんだけどね。
「リク……レナーテをどうにかしてくれ。さっきからリクの事を褒めてばかりだ」
「あははは、馬車に乗っている間、探査魔法の事を教えたからね」
「ふむ、あの地下通路でも使っていた魔法か……」
「お兄様、リク様は凄いんですよ!」
「わかったわかった。リクが凄いのは十分わかってるから……」
クレメン子爵と話していると、横から近づいたエフライムに、やれやれと言った様子で声をかけられた。
レナはよくわからないながらも、自分が認めた凄い事を誰かに伝えたくて仕方がなかったんだろう。
ここ数日見ている限りでも、エフライムがレナに対し、過保護に接して邪険にされるような事はあったけど、レナの方から兄に詰め寄る姿は珍しい。
少し離れた所では、メイさんが二人の様子を朗らかに微笑んで眺めていた。
そのメイさんだけど、こちらに顔を向けながらも、手で落ちている枝を拾いながら移動してる。
地面を見ていないのにどうやって……謎の多い人だ……というか、そっちの方が探査魔法より凄くないかな?
地面を見なくとも、焚き火に最適な枝を見つけられるメイさんでした。
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