Dランク冒険者コルネリウス
「そちらは馬車を引き連れての移動らしいが、ここは危険だ。聞いていないのか、キマイラが襲って来るという話を」
不甲斐ない俺の代わりに、ソフィーが声を掛けて注意を促してくれた。
こういう時、慣れてるソフィーがいてくれると助かるね。
「キマイラか……話は聞いている」
「知っていたのか。だとしたらどうしてこんな場所に?」
この人達は、どうやらここにキマイラが出る事を知っていたようだ。
危険な魔物のはずなんだけど、だとしたらどうしてここにいるのだろう?
しかも、急いで走り抜けるとかではなく、ゆっくり移動してたし。
「私はそのキマイラを討伐するために来たのだ!」
「キマイラを……? 冒険者なのか?」
「あぁ、そうだ。僕こそ後に有名になる予定の冒険者、コルネリウス・ハーゼンクレーヴァである!」
そう名乗った冒険者……えっと、コルネリウスさん? は自信満々に胸をそらした。
コルネリウスさんは、見た感じ20代の優男で、整った顔立ちとサラサラな金髪を肩口まで伸ばしている。
金属鎧を身に着け、装飾の施された抜き身のロングソードを片手に持っている姿は、確かに見た目には強そうにも見え……るかもしれない。
「将来……今は違うのか?」
「僕がここでキマイラを討伐して、名をあげる予定なのだ!」
そう言って、高く剣を掲げるコルネリウスさん。
美形な分、確かに絵になる姿で、人によってはカリスマがあるように見えるかもしれないが、俺には何だか虚勢を張っているようにしか見えない……何でだろう……?
「失礼だが……冒険者ランクは?」
「Dランクだ!」
「「「「「え……」」」」」
俺達一同、コルネリウスさんが自信満々に言った冒険者ランクに絶句である。
ユノはキョトンとしているし、エルサは我関せずだけど。
「……Dランクの冒険者がキマイラを……? 無謀な事は止めた方が良い」
「何が無謀か! キマイラ如き、僕の敵ではない!」
ソフィーが頭を抑えつつ、コルネリウスさんに忠告をするけど、全く聞く耳を持たず、キマイラを討伐すると息巻いている。
「……どうする、リク?」
「ちょっと頭がかわいそうな人なのかしら?」
「……どうしよう? キマイラってDランクの実力じゃ無理な相手なんだよね?」
「Bランクでも無理な魔物だ。……時折ああいう輩がいるんだ……」
ソフィーが声を潜めて俺に聞くけど、俺だってどう対応して良いかわからない。
聞いてみると、やっぱりDランクどころか、Bランクでも討伐の難しい魔物らしい。
Dランク相応の実力なら、当然コルネリウスさんがキマイラに敵う事は無いだろう。
むしろ、餌にされる可能性の方が高い。
ソフィーが言うには、ああいう自信だけが溢れた冒険者も時折いるらしいけど……自分の実力を正確に把握してないとああなるのか……俺も気を付けよう。
「お、そこにいるのはエルフか? こんなところにいるのは珍しいな。どうだ? 将来有名になる僕に付いて来れば、安泰だぞ?」
「何を言ってるのかしら、この三流冒険者は……」
「変に自信過剰で勝手な所が、集落の長老達を思い出すな……」
俺達がひそひそと話している間に、コルネリウスさんはフィリーナをナンパし始めた。
確かにエルフらしく美形なフィリーナと、同じく美形なコルネリウスさんの二人が並ぶと絵になるだろうけど……。
自信満々に髪をかき上げながら、フィリーナを見ているのが少しだけ鼻につく。
フィリーナは戸惑うというより、むしろ嫌がるような反応、アルネの方は溜め息を吐く様子で、嫌な物を思い出したとでも言いたげだ。
……気持ちはわからないでもない。
「あのー、すみません。少し良いですか?」
「貴女は?」
コルネリウスさんの対応に俺達が困っていると、同じく馬車から降りて歩いていた一人の女性が声を掛けて来た。
その女性は、鉄で出来た部分鎧を着て、投擲武器に見える小さめの刃の斧を数本背中に持ち、いつ魔物が来ても良いようにだろう、右手にも同じく斧を持っている。
あれは確か……以前武具店で見て教えてもらった、フランキスカ……って斧かな。
投擲用に刃が小さく作ってあり、柄が太く湾曲しているのが特徴だとソフィーに聞いた。
その女性は申し訳なさそうな表情で、コルネリウスさんの横をすり抜けて俺達の方へ近づいて来た。
……物腰から、コルネリウスさんよりも戦闘慣れしてるように見える。
「私はフィネ。コルネリウス様の護衛兼従者です。コルネリウス様が失礼な事を、申し訳ありません」
「フィネさん。えーっと、ここは危険なのですぐに離れた方が良いですよ?」
コルネリウスさんとは違い、高圧的でも自信過剰でもない彼女は話が通じそうだ。
黒い短髪で、あどけなさの見え隠れする顔は綺麗というよりも可愛い。
ユノ程じゃないけど、小柄な体で斧を持っている姿は、ちょっと驚く。
……俺より年下かな?
「フィネ! 僕が話しているのに、勝手にしゃしゃり出て来るな!」
「コルネリウス様の言う事は無視するとして……申し訳ありません、もしかすると貴方達もキマイラ討伐を目的に?」
「そうです。俺はリク。こっちは……」
「モニカよ」
「ソフィーだ」
「フィリーナよ」
「アルネだ」
コルネリウスさんの従者でもあるはずのフィネさんは、後ろで叫んでいるのを無視し、俺達に話しかける。
……良いのだろうか……まぁ、良いか……こっちの方が話が通じそうだしね。
俺が名乗ると、皆もそれぞれ名乗って自己紹介。
「リク……もしかして、あのヘルサルの英雄リク様ですか!?」
「え、あぁ、うん。多分そのリクだと思う」
俺の名前を聞いたフィネさんの反応がすごい。
今まで半分くらい閉じられていた目が見開かれて驚いた表情だ。
ヘルサルの英雄かぁ……言われ慣れて来たけど、こんな所で、知らない人に会って言われるとは思わなかった……。
もしかして、結構広まっちゃってる?
「失礼しました。リク様とは知らず……ですがリク様は冒険者ランクBだときっき及びました。キマイラ討伐の依頼は受けられないのでは?」
「あー、先日Aランクになりまして……おかげで依頼を受けられたんですよ」
「そうだったのですか! 噂で聞くと、Aランクすら霞む程の実力を持っておられるとか。それならキマイラ討伐をされる事も不思議ではありませんね!」
さっきまで落ち着いた様子でコルネリウスさんの事を謝っていた様子はすでになく、今は興奮した状態で俺を持ち上げる。
Aランクも霞むって……噂ってやっぱり尾ひれとか付くものなんだなぁ。
「失礼だが、そちらは冒険者か? 見たところ、かなりできるようだが」
「あ、これは失礼を。私もコルネリウス様と同じく冒険者登録をしております。ランクはBです」
ソフィーさんはフィネさんの事が気になったのか、冒険者かどうかを聞く。
フィネさんのランクはBランクでマックスさん達と同じらしい。
身のこなしから、それなりにできるかもと思っていたけど、納得だね。
「Bランクか……しかしそれなら先程そちらも言っていたように、依頼は受けられないのでは?」
「その通りです。ギルドで依頼を確認した時にキマイラ討伐を見たのですが、勿論職員には止められました。けど……コルネリウス様が……」
そう言って、ちらりと後ろに視線をやるフィネさん。
コルネリウスさんの方は、まだ何か叫んでいるようだけど、こちらに話を集中しているため、何を言っているのか聞こえない……ような振りを皆していた。
……俺もだけどね。
自分のランクを弁えず、キマイラに挑戦しに来た人のようdす
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