マティルデさんの推測
「ま、そんなわけで。今回国から問い合わせが来た帝国側の冒険者の事、組織としては問題だけど、驚く事でもないのよ」
「話を聞いてからだと、確かにそうなりますね」
「だから、その辺りの話を解答にして、納得してもらおうと考えてるわ。……というより帝国側のギルドが隠している事が多くて、そうとしか答えられないというのが現状ね」
「何か企てているというのは?」
「それが何かわからないからね。国に対して曖昧すぎる予想で答えるわけにはいかないわ。……私は、国から働きかけて良いように使われてるんじゃないかと考えてるんだけどね。……それか……全体の組織から独立して別の組織になろうとしているか……ね」
「別の組織……?」
今回のバルテルの行動を、ハーロルトさんや姉さん達と話した内容に帝国が関わっているだろう、というのがあったから、帝国が何かしら冒険者ギルドを利用しようとしている……というのはわかるけど……組織から独立っていうのは何だろう?
大きな組織だから、それに属している事で利点も大きいだろうに……と考えてしまうけどなぁ。
「冒険者ギルドという組織に所属していると、報告義務が生じるわ。まぁこれは組織として当然なんだけどね、健全に運営してるかの指針にもなるから。でも、帝国のギルドはそこから独立して別の組織となりたがってるんじゃないかと考えてるの」
「別の組織になる事に何か利点はあるんですか?」
「組織に報告する事で健全な運営がなされているかの審査が入るの。ならず者を冒険者にしているからね……当然隠しているけど、それがバレたら組織からの干渉があるのは間違いないわ」
本来やってはいけない事をしているのだから、上からの干渉があるのは当然だね。
「だから、組織から独立して別の組織に……ですか?」
「私の想像だけれどね。でもそうなると……どうなるかわかるかしら?」
「どうなるか……組織が変わる事でならず者の集団と見られなくなる……? いや、違うな……所属する組織から抜けたからと言って、すぐにそのイメージが無くなるわけじゃないし……」
「ふふふ、悩んでいるわね。でも、思ったより考えられるのね」
俺が悩んでマティルデさんに問いかけられた事を考えていると、それを微笑みながら見られている。
ちょっと恥ずかしいけど、答えがわからないからそれに構わずそのまま考えてしまう。
でも、はっきりとした答えが出ないまま時間切れとなったようだ。
「答えは……思い切り好きな事ができる……という事よ」
「好きな事?」
「今は組織が見ているからね。表向きは犯罪に加担していないけど、それが組織から外れて独立したら? ならず者の集団を抱えているところがどうなるか……」
「……犯罪者集団……ですか?」
「そう。必ずそうなると決まったわけじゃないけど、そうなるんじゃないかと私は見ているわ。裏ギルド……と呼ばれる組織ね」
「裏ギルド……」
マティルデさんのいる今のギルドを表のギルドとするなら、裏ギルドは人に言えないような依頼や犯罪を犯す集団……という事かな?
「人の暗殺を依頼したりと、表には出せない事を実行するギルドと冒険者ね」
裏ギルド……そんな組織ができてしまったら、恐ろしい事になるかもしれない。
人を殺す事をいとわない犯罪者の集団……考えれば怖いね……地球にも似たような組織があったけど、それを取り締まるのは難しい部分もあったようだから、それと似た感じなのかも。
「まぁ、これらはまだ私の予想だからね。あんまり人には言わないでね?」
「それは良いんですけど、何でそんな話まで俺に?」
俺がAランクだとか、英雄と呼ばれてるのが信用になっているとは思うんだけど、それがあってもここまでの事を話してくれる事に、マティルデさんにはあまり有利な事は無いんじゃないかと思う。
表沙汰にできないというか、広まると不味い話でもあるからね。
「それは……わかってるんでしょう……?」
「……え?」
「もう、つれないわね。……なんなら詳しく教えてあげましょうか……?」
妙にしなを作って、向かいのソファーに座っている俺に迫って来るマティルデさん。
さすがにここまで来ると、俺にも何をしようとしているのかわかってしまう。
でも、経験が足りなさすぎるのか、マティルデさんを魅力的だと感じ、見入ってしまったために身動きを取ることができず、近づいて来る顔を避ける事が出来ない……。
「駄目なの! リクにはモニカがいるの!」
「……んんっ! マスター……さすがにこの場所でそう言った事は……」
マティルデさんを見て身動きが取れない俺に代わって、ユノが間に入って体でガードしてくれた。
それと同時に、ずっと同じ部屋にいた受付の女性の方も、静止の声を掛ける……溜め息を吐くような言い方だけど。
「……ちっ……邪魔者が多いわね……」
「駄目なの!」
「邪魔者扱いは酷いですね……ギルドマスターとして、相応の態度を取ってもらわないと困ります」
「仕方ないわね。リク君、また今度楽しみましょう? えーと、私に聞きたい事はもうないかしら?」
「え、えっと……は、はい」
「そう。それじゃ、邪魔者に怒られないうちに退散するわ。それじゃあね」
「……はい……ありがとうございました」
威嚇するようにマティルデさんを見るユノや、苦言を呈する女性に止められたマティルデさんは諦めてくれたようだ。
……まだ完全に……というわけではなさそうだけど。
経験の少なさから、どぎまぎしている俺は、しどろもどろに答え、何故かお礼を言ってしまった……恥ずかしい。
「申し訳ありません、リク様。マスターが失礼な事を」
「あぁいえ……」
受付の女性に謝られるけど、何と答えて良いのかわからない。
そうこうしているうちに、一礼して先に部屋を出たマティルデさんを追いかけて女性も部屋から退室した。
ちょっと落ち着くために深呼吸をしておこう。
……こういう事に慣れるのってどうすればいいんだろ……?
「……すぅー……はぁー……すぅー……はぁー」
「モニカの言った通りなの。見ていて良かったの」
隣でユノが何か呟いている。
モニカさんの名前が出たような気がするから、もしかするとこの事を予想してユノに忠告していたのかもしれない……そういえば、別れる前に何か言い含めていたようだからね。
やっぱり、女性同士……マティルデさんの事をなんとなくわかっていたのかもしれない……。
……俺にはわからなかったけど……。
「……よし! そろそろ出ようか、ユノ」
「落ち着いたの?」
「あぁ、もう大丈夫だ」
深呼吸の効果があったのか、数分もしないうちに落ち着いた。
ユノを連れて部屋を出て、ギルド内の廊下を歩いてカウンターのある場所まで戻って来た。
「これからどうするかなぁ、まだ帰るのも早いだろうし……」
マティルデさんに話を聞くという用は終わったけど、まだ帰るには少し早い。
部屋でゆっくりしていても良いんだけど、帰るとパレードの事を思い出して憂鬱になりそうだしなぁ。
モニカさんやソフィーさんが来るのは夕方頃だから、今からゆっくり城へ戻っても大分余裕がある。
「ん? ……ちょっと聞いてみるか」
ふとカウンターの方を見て思いついた。
モニカさんがギルドを回って依頼の確認をしているのなら、俺もここで聞いておいても良いと思う。
モニカさんの手間が省けるしね。
そう考えて、ユノを連れたままカウンターに近付く。
「やっぱり王都は、人が多いんだなぁ」
カウンターには、冒険者達が集って埋まっている状態だ。
依頼を受けるためか、報告のためかはわからないけど、人が多い分依頼も多いからこうなるものよくわかる。
ヘルサルやセンテでは、こうなってるのを見た事は無い。
少しだけ列に並んで順番を待ち、空いた受付に向かった。
王都だけあって、他の街と比べて冒険者の数が多いようです。
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