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神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移  作者: 龍央


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1960/1960

疲れた時の姉は厄介な生き物?

ブックマーク登録をしてくれた方々、評価を下さった方々、本当にありがとうございます。



「多分、向こうも同じように考えていると思うんです。貴族軍の方が手薄……俺達の数を考えると、それでも全然数が多くて、厚いと言えるんですけど」

「それはまぁ、そうでしょうな」

「ですので、あえて俺は国軍側から行ってみようかと。もちろん、国軍だけを相手にするわけではないんですけど……」


 意表を突く、というわけだ。


「総大将を最短で狙いに行く算段、というわけですか? リク様なら可能でしょうが……」

「いえ、そういうわけじゃありません。可能であれ、それだけだと演習として多くの人が参加している意味が少ないですから」


 最短でヴェンツェルさんを討ち取るだけでも、圧倒的な力の差とやらを見せつける事になるのかもしれないけど。

 でもそれだと、全体の演習の意味としては薄くなってしまうからね。

 俺だけでなく、冒険者、そして国軍と貴族軍の兵士さん達の動きの確認の意味なんかもあるわけだし。


「相手の数が多いので、距離を取られたらこちらは成す術がありませんよね? ですので、相手側深くに食い込んで、ちょっとかき回してみようかと」


 こうして提案する事は、俺だけでなく俺が率いる部隊にも承諾を得ている。

 俺が率いる部隊と言っても、俺、エルサ、モニカさん、ソフィーという元々のパーティに、フィネさん、アマリーラさん、リネルトさんを加えた七人だ。

 フィネさんは元々貴族軍、フランクさんのハーゼンンクレーヴァ子爵――現伯爵家の騎士だからそちらに組み込むのが正しいはずだけど、今回というか演習だけでなく戦争などでも俺達と一緒にいてくれるそうだ。

 まぁそれはいいとして、アマリーラさん達は戦力を均等に分散させるために、別部隊に組み込もうとしたんだけど、本人達に泣き崩れる勢いで拒否されたので、仕方なく俺達と一緒という事になった。


 場合によっては、別で動いてもらう事はあるかもしれないけど、今回は近くの予定だ。

 それからユノとロジーナ、レッタさんも参加するんだけど、そちらは完全な遊撃隊として自由に動いてもらう。

 その方が、本人達的にも良さそうだし、相手側にとっても神出鬼没な部隊として脅威になってくれそうだから。

 たった三人だけど、ユノとロジーナが破格過ぎて、他の誰よりも活躍しそうだけども。


「他の皆は、十人ちょっとくらいの部隊なので、少数精鋭でかき乱す役目が必要かなって。まともにぶつかっても、数に押されるだけですし」

「ふぅむ、確かに。国軍の装備を考えるに、リク様方以外では手を焼くのが目に見えております。その間に囲まれ、封殺されてしまえば実力を発揮する以前の問題になりかねませんからな」

「はい。それにちょっと、考えている事もありますので」

 

 圧倒的過ぎる数の差を覆すには、俺達が局地的に暴れるだけじゃ不十分だろうからね。

 それすら覆すからこそ、力の差を示せるのかもしれないし、期待されているのかもしれないけど。

 ちょっと違う形で示すのも、悪くないと思うんだ。

 自由にやっていい、というお墨付きももらっていたりするからね。


「……考えている事、ですか」

「どうしたんだ、フラッド?」


 考え込む様子になるフラッドさんに、グントラムさんが窺う。


「いやな、俺は何度かマスター……リク様が戦う場面を、遠目ながらにだが見た事があるのは知っているな? 見るたびに、驚かされるので少々考えてしまったんだ」

「確かに」

「え、えっと……別に驚かせるつもりはないんですけど……」


 フラッドさんの言葉に、ラウリアさんなどの獣王国に連れて行った人や、トレジウスさんなどのセンテで一緒に戦った人達が、全員深く頷いた。

 驚かせるつもりで戦っているわけじゃないんだけどなぁ。


「……話には聞いているけど、そんなに、なの? 訓練をしているところなんかは見ているし、それでも散々驚かされてはいるのだけど」


 皆の様子を見てこめかみから汗を流しつつ聞くのは、ヴェラさん。

 クランの訓練場では、最近やり始めた結界内訓練は外から見えないからともかく、通常の訓練の時には皆見ているからね。

 でも、俺よりもユノやロジーナの方が尋常じゃない動きをするし、驚くならそっちな気がするんだけど。


「それがねヴェラ、獣王国に行ったときに私見ちゃったの。とんでもない大きさの化け物に向かって、魔法じゃないなにかで戦っていたのを。いえ、遠目どころか、本来なら見えないくらい離れていても見えるんだから、相当な大きさの化け物と、相当な力だったってくらいしかわからないんだけど」

「あぁ、あれか。全身が震える程の恐怖を覚える化け物だったが、リク様はそれ以上と実感した瞬間だったな」

「マギシュヴァンピーレ、だったかしら。その話は聞いているけど、え、なに、魔法じゃないなにかってなによ一体?」

「わからないわ。あんなもの見た事がないもの。マスター、一体あれはなんだったのですか?」

「あれは、魔力弾って呼んでますけど、確かに魔法とは言えないかもしれません。魔力を固めて射出するもので、俺自身もどういうものかよくわかっていない事も多くて……」


『女王様と下僕』パーティリーダーのフラムさんに詰め寄るように聞かれて、圧されながらもとりあえず答える。

 詰め寄るとはいっても、間にテーブルがあるので本当に詰め寄られているわけじゃないけど、気分的にはそんな感じだ。

 ともあれ魔力弾。

 魔力を固めて放つ、というのは感覚的にそう感じているけどそれ以外はよくわかっていない事が多い。


 なんてあれがマギシュヴァンピーレに有効だったのか、レムレースにもそうだったけど、さらに言えば別空間に閉じ込められた時にロジーナに向かって使った際にも、同じく有効だった。

 有効どころか、空間を割るとかロジーナの攻撃を吸収すらしていたし。

 本当、あれってなんなんだろう?


「魔力を固める……ですか? リク様の魔力量がとんでもないというのはわかりますが、魔力を固めるというのは。本来、触れる事すらできない魔力を固めてどうなるのか。密度が濃ければ、その性質に合わせて可視化され、色が付くというのは知識として知っていますが」


 魔法主体で戦うからか、ヴェラさんが前のめりだ。

 可視化された魔力か……あれは、魔力量の多いエルフならともかく、人間だと中々難しいらしい。

 できないわけじゃないけど、かなり希少だとか。


「その辺りはなんて言うか、説明が難しいんですけど――」


 ともあれ可視化された魔力とは、また違うんだよね。

 体の奥にある魔力を絞り出すというか、固めて射出するというのは、イメージ的に拳銃とかに近いかもしれない。

 火薬じゃなくて、魔力で魔力を打ち出す感じだけども。


「ちょっと詳しく説明できないので……と、とりあえず、今は演習の作戦会議に戻りましょう」

「……そうですか。リク様がそう仰るならわかりました。けれど、いずれ詳しい話を是非!」

「は、はい。上手く話せるかはわかりませんが」


 魔法や魔力関係の知識に対して興味があるんだろうね、ヴェラさんは。

 何はともあれ、逸れた話を無理矢理元に戻し、俺が考えている事というのに警戒をしているフラッドさん達と共に、作戦会議を続けた。

 とまれ、数が少なすぎる俺達が考えられる作戦らしい作戦って、あまり多くないんだけどね。

 演習予定地から、簡単に奇襲ができるような場所でもないし……軍に当たる方角や順番、後方からの援護法などを話し合うのが主だったりする。


 でも話し合い自体が無駄という事は全くなく、演習をするにあたって実りある話し合いだったと思う。

 最終的には、フラッドさん達のやる気というか士気も上がっていたようだしね。

 ……ヴェラさんだけは、ジッと俺の事を見ていたけども。

 魔力弾への興味が強いんだろうけど、機会があったらユノやロジーナに詳しく聞いておこう、それでわかるって確定しているわけじゃないけど。


 あ、そういえば魔力弾って、アルセイス様に会ってから使えるようになったんだっけ。

 あちらは気軽に会えるわけじゃないけど、もし会えたらアルセイス様に聞いた方がいいのかもしれないなぁ――。



「りっくぅぅぅん! 疲れたよぉぉぉ!」

「リクゥゥゥ! 魔力を所望するのだわぁぁぁ!」


 作戦会議を終え、その他諸々の準備や、再度結界内訓練を終えて日が沈んだ頃に王城に戻ると、先に部屋にいたらしい姉さんとエルサに熱烈歓迎された。

 いやこれ、歓迎って言っていいのかわからないけど、とりあえず体にしがみつくのはやめて欲しい。

 エルサのモフモフは癒されるからいいんだけど、姉さんはちょっと……この歳で姉に、しがみつかれるのはちょっとね。


「はぁ……俺も疲れているっちゃ疲れているんだけど……というか姉さん、エルサが真似するからもう少しシャキッとしてくれないかな?」

「無理! 疲れたもん!」


 もん! って……結構いい歳なのに――っと、変な事は考えないでおこう、姉さんに睨まれた。

 どうしてこう、俺が考えている事をわかってしまうのか。

 年齢に関する事に対して鋭いだけかもしれないけど。


「りっくん、反抗期かしら?」

「変な絡まれ方をしたら、そりゃ抵抗するよ。それに反抗期とかよくわかんないから」

「はわぁ~、リクの魔力なのだわ~」


 姉さんを引きはがし、エルサを頭にのっけながら少し俯く。

 反抗期、というのは実は俺はよくわからない。

 話には聞いた事があるけど。


 だってよく反抗期になると言われる年齢では、両親がいなくて姉さんだけしかいなかったし、さすがに反抗なんてしていられなかった。

 第二次って言われているんだっけ? 思春期と言えば今の俺の年齢くらいなんだろうけど、この世界に来るまではもう一人で反抗する相手もいなかったからね。


「あ、ごめんね。そうよね、お姉ちゃんずっとりっくんといられなかったから……」


 俺が少し沈んだ気持ちになったのを察したのか、姉さんが謝って来る。

 本当にずっと姉さんが一緒にいたら、もしかしたら反抗期とかあったのかもしれないけど、どうなんだろうな。


「うん、気にしないで。姉さんが悪いわけじゃないし、こうして会えているから」 

「やんもう、りっくんが可愛いわ」

「……姉さん、疲れているのはわかるけど、ちょっと幼くなっていない?」

「だってぇ、次から次に仕事が来るんだもの。こうなっちゃうのも仕方ないじゃない?」

「そりゃまぁ、仕方ないのかもしれないけどさすがに……」


 いつものリラックスモードの姉さん以上に、だらけて幼い印象、というか話し方になっている姉さん。

 それだけ忙しくて疲れたんだろうし、気を張っていたんだろう。

 女王様だし、演習や戦争の直前だし忙しくなるのも当然だ……姉さんの代わりになる人は他にいないしね。

 そう考えると、少しは甘えてもらうのもいいのかもしれない、それで姉さんがほんの少しでも楽になれるのなら……。


「各貴族の対応が面倒だった、というのはわかりますが、少々みっともないですよ陛下。――リク様、どうぞ」

「ぶー、ヒルダが厳しい」

「ありがとうございます、ヒルダさん」


 お茶を出してくれるヒルダさんは、いつも姉さんには厳しめな気がするけど。

 でもそうか、全員じゃないようだけど、多くの貴族が集まっているから、忙しさのうえにさらに気疲れとかもあるのか。

 姉さんの方が立場が上とはいえ、集まった貴族を雑に扱うとかもできないだろうしね。


「ほら姉さん、他の皆も見ているから。もう少し、できればいつもくらいで」


 部屋にいるのは、というか俺は一人で戻ってきたわけじゃなく、モニカさんもいる。

 フィネさんはフランク子爵の所に顔を出しているし、ソフィーもそれに付き合っているようだけど、他にはユノやロジーナ、レッタさんもいるからね。


「あ、あはは……」


 だらけている姉さんはある程度見慣れてきているとは思うけど、さすがにここまでのは初めてだからどう反応すればいいのかわからず、モニカさんは苦笑している。

 ユノやロジーナ、それからレッタさんは姉さんの方に関心がないようだけど。


「んー、モニカちゃんなら別に?」

「別にって……」

「だって、これからもずっと長い付き合いになるでしょ? だからいーの」

「だからって……はぁ」

「リ、リクさん。私なら気にしないから、ね?」

「う、うん」


 見た目は変わっても、姉さんは姉さんでちょっとだけ懐かしさを感じつつも、やっぱり身内という意識が強くて、そんな姉さんを見られるのは恥ずかしい気がするんだけど、仕方ないか。

 昔もこうやって、特別疲れた時は同じように甘えてくる事があったし。

 というかモニカさんはともかく、ユノ達の方は気にしないんだ……向こうも気にせず、ヒルダさんに夕食の事を聞いていたりするからいいんだけど。


「はぁ~、ちょっと落ち着いたわ」

「落ち着いてそれなんだ」


 夕食後、だら~っとソファーに持たれながら息を漏らす姉さん。

 さっきまでの幼児退行っぽいのはなくなって話しやすくなったけど、この部屋では必要がなければ女王様モードにはならないんだろうね。


「ところでりっくん、明日、楽しみにしているからね?」

「明日、っていうと演習の事?」

「えぇ。りっくんの蹂躙する姿を目に焼き付けるわ!」

「蹂躙って」


 人聞きが悪いからやめて欲しい。

 結界内訓練にて、レッタさんの協力もあって魔力操作がある程度形になってきているから、それを試す意味合いもあって、姉さんの言う蹂躙なんて事をするつもりはない。

 ワイバーンの鎧があっても、それごと両断しそうな白い剣とかは使わないし、絶対に命を奪わないよう細心の注意を払うつもりだから。


「というか、姉さんが見に来るの?」

「もちろん。だって、全軍とは言い難いけど、大規模な演習だもの。私が見なくちゃ始まらないわ」


 始まらないって事はないだろうけど、女王様としてはちゃんと見る事に意味があるんだろう。


「それにね、今更りっくんの事を侮っている奴もいるのよ。だから、そいつらに目に物を見せつけてあげて」

「目に物って。まぁ侮ってくれるなら、逆にやりやすいくらいだからいいんだけど」


 警戒されるだけより、侮られている方がやりようがあるからね。

 俺自身あんまり気にならないし。


「りっくんが良くても、私が良くないのよ!」

「まだそのような者がいるとは……」


 強く言う姉さんに対し、静かに呟くヒルダさんの声。

 ヒルダさんの方を見てみると、表情はいつもと変わらないのに何故かそこだけ冷たい空気が漂って、ズズズ……と黒い何かが漏れ出しているように感じた。

 感じるだけで、実際にそうなっているわけじゃないけども。


「国軍には、りっくんを侮るようなのはいないんだけどね。兵士達はりっくんの訓練風景を見ているのが多いし、王都に魔物が押し寄せた際には実際に見てもいる。けど、貴族軍の一部がねぇ」


 兵士さん達とは日頃、王城内とかで接する機会が多いからね。

 そんな事する必要はないんだけど、俺が歩いているのを見ると横に避けて頭を下げる人とかも多くいるくらいだし。

 でも貴族軍の兵士さん達とは、会った事がない人の方が多い。

 シュットラウルさんの侯爵軍とか、一部の機会があった人達くらいか――。



リクの事を伝聞でしか知らない人には、懐疑的な人もいるのかもしれません。


別作品も連載投稿しております。

作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。


面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はページ下部から評価の方をお願いします。

また、ブックマークも是非お願い致します。

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