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神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移  作者: 龍央


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1955/1960

ヴェンツェルさんの探し人



「すまないな、リク殿」

「いえ。それでどうしたんですか? 演習は明日と聞きましたけど」

「あぁそちらはいいんだ。予定はずれてしまったが、確実に明日のために準備をさせている。それとは別にだな、リク殿に相談というか聞きたい事があるのだ」

「俺にですか?」

「うむ。リク殿だけでなく、この王城、王都にいる者達にも聞いているのだが、人を探しているのだ。リク殿にはワイバーンの素材を融通してもらっているだろう?」

「えぇ、はい。ワイバーン達が喜んで提供している皮とかですね」

「おかげで、多くの兵達にその素材を使った強力な装備を配備させられている。だが、さすがに全てにというわけにはいかなくてな。素材があったとしても作成が間に合っていないのだ」


 素材があります、はいそれを使って装備を作りました、なんて行かないからそれは仕方ない。

 兵士さんの数は貴族軍まで合わせると数万なわけで、全てに行き渡らせるのは中々難しいだろう。

 だから最初にワイバーンの素材を姉さん、というか国に売った時は生存率などを上げるため、新兵を中心にって話があったわけだし。

 あの時は、素材自体も限られていたからだけども。


 再生できる竜騎隊のワイバーンは、皮を採取というどう考えても痛い事を喜ぶ特殊な趣味を持っている。

 趣味どうのはいいとして、皮を採取してもすぐ再生するので、いくらでもと言っていい程取れるわけなんだけど。


「素材ばかりあっても有効に使えないわけですね。あ、そうだ。センテでは、緊急的な措置でしたけど、加工というより皮を張り付けてとかして使っていました。あれならすぐにできるんじゃないですか?」

「その報告は受けている。というより、実際に見たしある程度の物はできていたが……見栄えがな。まぁ、見栄えを気にしている場合ではないのは当然なのだが、多少は統一をしないとそれはそれでな――」


 採取した皮をほとんどそのまま張り付けただけだから、確かに見栄えは悪い。

 さすがに多少形や大きさを揃えたり、毛皮とは違うけどなめすような事もやっていたけども。

 ただヴェンツェルさんが言うには、軍としてはある程度統一させる必要があるのだとか。

 人と魔物の戦いだけでなく、人が入り乱れる戦場では敵味方の区別が曖昧になる事がある。


 同士討ちなんて絶対に避けたい事だし、それをはっきりさせるためにわかりやすく統一する事は、決して無駄な事ではないみたいだ。

 皮を張り付けても敵軍との違いで多少わかりやすくなるけど、ちゃんと加工したワイバーンの装備は青い輝きを金属に持たせる事ができるため、目立たせられると。

 戦場で目立つのはどうなのか、と思う部分もあるけど地球の現代戦とは違うからね。

 銃を使って遠距離での戦闘ではなく、剣や槍を使っての近距離戦が主体なためだろう……戦国時代の戦いに少し似ているのかもしれない、魔法とかはあるけど。


「話はわかりましたけど、人を探しているというのは? その人に、ワイバーンの素材を加工してもらうにしても、結局全員に行き渡らせるのは難しいんじゃ……」

「もちろん、それだけで全ての者達にワイバーンの装備を行き渡らせるのは不可能だ。それはわかっている。だが、私が探している者は手が早い、というと多少語弊があるかもしれんが、特殊な素材……魔物の素材を主にした物だが、その素材の扱いに長けているのだ。一人で数十人、とは言わんが数人分の働きをしてくれる」

「そんな人が……」


 魔物由来の素材というのは、ワイバーン以外にも色々扱った事がある。

 加工するとかじゃなく、倒した魔物から採取して納品するとかだけど……食料にもなるし。

 この世界、そういった魔物の素材を多く扱って有効に使われているからね。

 加工できる人、した事のある人は多くいるんだろうけど、ヴェンツェルさんが探している人はそのの中でも特に魔物素材の加工に向いているという事らしい。


「昔馴染みの鍛冶職人でな。マックス達も、冒険者としての装備を整えるのに頼りにしていたくらいだ。まぁ趣味が合ったというのもあるがな。以前はよく会っていたのだが、随分前に鍛冶職人を辞めてそれ以来会っていない。王都にいる事は確かだし、目立つはずだからすぐに見つかると思ったのだが……」

「見つからなくて、今に至るってわけですか」

「うむ。兵達にできるだけ多く万全な装備をさせたいし、その者に頼めば特別高品質な装備も頼める。例えば、軍として重要な位置にいる者を守るためにも、必要なのだ」


 将軍であるヴェンツェルさんは当然ながら、女王陛下である姉さんとか、それこそ大隊長さんとか中隊長さんとか。

 指揮系統を担っている人達は戦争において重要だし、優先的に狙われる可能性が高い。

 その人達を守るためにも、特別な装備を作っておく事も必要なんだろうね。

 姉さんは勲章授与の時とかに見た、金ぴかの……場合によっては趣味が悪いと見られそうだけど、姉さんには似合っていて嫌味な感じは一切なかった、あの鎧とかがあるから、必要かはわからないけど。


 いや、あれが本当に金なら見た目だけで鎧としては脆いだろうから、実用性には欠けて実際の戦場では着れないか。

 ……姉さんは戦場にまで出ず、安全な場所にいて欲しいし、当然厳重に守られるんだろうけど。


「じゃあ、俺にその人を探して欲しいってわけですか?」

「うむ。王都内で捜索はしているのだが、中々見つからずにいる。そちらに多くの者を割くわけにもいかずな。まぁ、もし知っていたら、というのもあってこうして尋ねたわけだ」

「成る程」


 戦争に備えた準備、貴族軍の迎え入れかから演習、さらには帝国の工作員への対処等々、ヴェンツェルさんだけでなく兵士さんは今大忙しだからね。

 王城内でも、兵士さんが慌ただしく行きかっているのをよく見かけるし……王城という事もあってか、走らず早歩きでって感じだけど、それでも忙しない。

 ちなみに、帝国の工作員による爆発工作だけど、拠点とみられる場所は俺が獣王国に行っている間に全て潰したらしく、王都にいる人達を魔法具で調べるのも完了しているそうだ。

 それでも残党がいないかとか、潜入経路などを調べるためにまだ完全解決と言っていい段階じゃないみたいだけど。


「工作員を調べる際とかに、その人が見つかったりしなかったんですか? 王都にはいるんですよね?」

「うむ。王都に住まう者達は、兵や冒険者も含め全て調べた。私が探している者も当然調べているはずだし、そういった事を拒否したりはしないはずだが……すべての兵がその者を知っているわけではなくてな」

「まぁ、それはそうですね」


 調べる人の数は膨大だし、魔法具で調べた人達がヴェンツェルさんの探している人を知っているとは限らないから、仕方ないか。


「リク殿は王都に来て日が浅く、しかも忙しくいろんな場所を文字通り飛び回っているからな。私が探している者を知っている可能性は低いとは思うのだが」

「そう、ですね。城下町に行く事はありますけど、最近はクランと王城の往復が多いですし、全部を見て回っているわけではありません。それに、特殊な素材の加工を得意とする元鍛冶職人なんて……ん?」

「何か心当たりが?」

「心当たり、という程ではないんですけど……」


 元鍛冶職人、という部分でそういえばと思い出した。

 カーリンさんが使っている料理道具を、アルケニーの素材などから加工して作ってくれた人がいた。

 その人はワイバーンの素材を使った物も作っていたし、確かに元々は鍛冶職人だったとも聞いている。

 さらに言えば、現役と言えるかはわからないけど、鍛冶師の人からも頼りにされていて手伝う事もあるらしい。


「その人って、もしかしてララっていう人じゃないですか?」


 特徴的な口調、ヴェンツェルさんやマックスさんとも旧知の仲、という事だからというのも微妙だけど、体格などもヴェンツェルさん達に近い。

 いや、体格が近いからってその人とは限らないけど、趣味が合うと先程ヴェンツェルさんが言っていたのもあったからね。


「む? ララというとリク殿の心当たりは女性ではないか? 私が探している者は男……いや待ってくれ、そういえばあいつは――」


 ララというのが女性名だからだろう、首を振って否定したヴェンツェルさんだけど、途中で何かに気付いたように考え込む。

 これって、やっぱり……?


「えーっと、本人からはそう呼んでくれって言われていまして。確か本名はゲオルグとかって……」

「ゲオルグ! そうだ、私が探しているのはゲオルグだぞリク殿! そうか、あいつ……偽名を使って隠れていたのか……」

「いえその、隠れるための偽名というわけではないと思うんですけど……」


 やっぱり、ヴェンツェルさんの探している人はララさん……ゲオルグさんだったようだ。

 加工技術という意味で手が早いというのはわからないけど、魔物の素材を扱う事に慣れているのは間違いない。


「ララさん……ゲオルグさんとは偶然知り合いまして。仲良くされてもらっているんです」

「まさか、リク殿と知り合いだったとは。いや待てよ、あいつは昔からマックスや私のように、自分の筋肉は鍛えつつも、全く逆の男を……気に入られたのか、成る程な」


 俺の全身を見て何か納得した様子のヴェンツェルさん。

 ララさんを知っているので、納得した理由などはわかってしまうのがちょっと微妙な気分になる。


「ゲオル……いえ、ララさんは城下町で偶然ですね」


 本人はゲオルグと呼ばれるのを嫌がっていたので、一応ここでもララさんと言い直しておく。

 ヴェンツェルさんには、ララさんと知り合った経緯などを簡単に説明。


「ふむ、鞄などを商品とした店か。素材加工などは続けているようだな」

「そうですね。変わった鞄なんかもあって、見ていて楽しかったです。あ、あと、アメリさんと仲がいいみたいです」

「アメリと言うと、ハーロルトのところのか。なんというか、探し物は意外と近くにあるというのは本当なのだな。あいつは物ではないが。ハーロルトにも探させていたのだが、まさかその妻……まだそうなってはいないが、その候補が知っているとは思ってもみなかった」


 灯台下暗し、みたいなものだろうか。

 俺に聞かなくても、ハーロルトさん経由でアメリさんに聞けばもっと早くララさんがどこにいるかを知れただろうからね。

 そのハーロルトさんは、ヴェンツェルさんの部下でもあるわけだし。

 ちなみに、アメリさんはハーロルトさんと同じ村出身で幼馴染というのもあって、ハーロルトさんの所で一緒に住んでいる。


 まぁ、使用人さん達もいるようなお屋敷なので二人っきりの同棲と言うわけじゃないみたいだけど、似たようなものかもしれない。

 それもあって、王城内ではハーロルトさんとアメリさんは付き合っているとか、いずれ結婚するだろうとか、そういった見方が強いしヴェンツェルさんそのような認識みたいだね。

 ……姉さんが率先して外堀を埋めていたりするけど、本人達も満更じゃなさそうだ。


「ではそのアメリに頼むか……いや、機密と言う程ではないが、軍に関係する事だからハーロルトが怒るかもしれんな。リク殿、そのゲオルグ……ララと名乗っているのだったか。ララと渡りをつけてくれないか? できれば、ワイバーン素材の加工などの協力を取り付けたい」

「わかりました。説得とかはできるかわかりませんけど、お願いするくらいでしたら」


 軍に関わる事だから、ハーロルトさんやララさんと親しいアメリさんであっても部外者みたいなものだからね。

 俺も軍属とかではないけど……今回に限らず色々と深く関わっているから今更だ。

 何はともあれ、ララさんが協力してくれるかは話してからになるけど、忙しくて王城を出られないらしいヴェンツェルさん――出ようとしてもハーロルトさんや他の部下さん達に連れ戻されるため、代わりに俺がお願いに行く事になった――。



 ――ヴェンツェルさんと話した少し後、ララさんへの書状などを用意するらしく、待つ間にクランで結界内訓練。

 前回よりさらに伸びて、今回は一時間を一週間くらいに伸ばして密度の濃い訓練をした。

 訓練用の結界を作るのにも、結構慣れて来たなぁ……辛口のロジーナ曰く、まだ及第点の域を出ないらしく、満点を取れる結界なら倍以上の日数にできるって事だったけども。


「ふぅ……疲れた」

「私もよ。でも、それだけの成果はあったと思うわ」

「まぁね。俺も、結構魔力操作ができるようになってきたし」


 クランを離れ、一度王城に戻ってヴェンツェルさんからララさん宛ての書状を受け取り、モニカさんと二人で城下町に出る。

 結界内訓練には、また昨日のように泣かれたらいけないのでアマリーラさんとリネルトさんも参加。

 二人共、張り切りすぎて激しい訓練になったけど、それだけの実入りはあったと思う。

 モニカさんも俺と同じように感じているみたいだ……その分、疲労は濃いけど。


 あと、魔力操作に関してはそれなりにできるようになったと思うけど、レッタさんから見るとまだまだらしい。

 魔力誘導の能力を持つレッタさんと比べ内で欲しいと思うけど、そのレッタさんが悲鳴を上げるような事にはならなくなってきたので、俺としては自分を褒めたい。

 まだ魔法は使えないけど、そろそろ以前のような失敗はしなくなってきているんじゃないかな?


「それにしても、ララさんがそんなにすごい人だとは思わなかったわ。父さんとも知り合いだったなんて」 

「うん、俺も驚いたよ」


 モニカさんには、ララさんの事を話してある。

 それもあって、モニカさんと一緒にララさんのお店に向かっているわけだけど。

 ちなみに、ソフィーとフィネさんはクランに戻って他の冒険者さんと一緒に、まだ訓練を続けている……元気だなぁ。


 アマリーラさんは俺と一緒に来たがったけど、まだ姉さん達と獣王国の事に関してや、演習の段取りなどを話す必要があるらしく、昨日と同じくリネルトさんに連れていかれた。

 最初は、のんびり屋なリネルトさんをいさめるアマリーラさんと言う構図だったのに、今では立場が逆転しちゃってるね。


「あ、モニカさん。あれ美味しそうだよ。食べてみる?」

「そうね。ふふ、エルサちゃんに見られたら、怒られちゃいそうだけど」


 相変わらずの賑わいを見せる城下町で、ララさんの所に向かいつつも途中にあるお店で買い食いなどを楽しむ。

 いつもなら率先して食べ物の匂いなどに惹かれるエルサやユノ達がいないため、少しだけ不思議な気分。

 というか……。


「なんだかこれって、デートみたいだなぁ」

「ん、リクさんどうしたの?」

「いや、エルサをくっ付けずに散策……ってわけじゃないけど、城下町を歩くのってあまりなかったなって。いや、初めてかも?」


 俺の呟きは、行きかう人々の喧騒に紛れてモニカさんには聞こえなかったみたいだけど、恥ずかしいので誤魔化した。

 実際にエルサを頭にくっ付けずに行動するのは、最近ではよくある事になっているけど、こうして買い食いなどをしながらというのは初めてのはず。

 王城の外に出ても、ほぼクランとの往復くらいだったからね――。



別作品も連載投稿しております。

作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。


面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はページ下部から評価の方をお願いします。

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