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神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移  作者: 龍央


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1954/1960

アマリーラさんの嘆き



 ちょっとした混乱、というよりモニカさんといい雰囲気になったのを見られたり、フィネさんが人生を悟りかけたりなどがあったけど、とにもかくにも無理矢理にでも落ち着かせて、訓練を再開させた。

 結界内の引き延ばされた時間のおかげで猶予があるから、一分一秒でも無駄にできない、という程切羽詰まってはいないとはいえ、それでも無為な時間を過ごすわけにはいかないからね。


 モニカさん達は、先程までよりさらに俺とレッタさんから距離を取り、広く場所を使うように訓練をするようだ。

 確か、ユノ達からは対多数と戦うための訓練をするって言われていたんだっけ。

 結界内は広大とは言えないから、中央付近を訓練場所とするモニカさん達に対し、俺達は端の方ってだけだけども。


 ただ結界のすぐそばには行かない。

 モニカさん達ならともかく、俺の魔力操作の訓練を結界のすぐ近くでやったら、変な絵影響を及ぼす可能性があるためらしい。


「そう、そのまま一つの場所に魔力を集めて。そうね、二つの拳のように魔力を可視化させなさい」

「はい……んん……ふぅ」

「一つはできたけど、二つはできなかったわね」

「別々に魔力を固める、練って濃くして可視化っていうのは、やっぱり難しいですね」


 魔力操作訓練を再開させてさらにしばらくしたけど、意図的に魔力を動かしたり可視化させたりするのはなんとかできるようになった。

 多くの魔力をただ放出して可視化させるのではなく、定めた場所に無駄な魔力を使わないようにしながらというのは、結構難易度が高かったけど。

 さらにレッタさんは、可視化する魔力を二つにというハードルを設定したけど、これがさらに難しい。

 ピアノで左右の手を別々に動かすようなものだろうか、可視化した一つの魔力の塊を大きくするとか、二つに分裂させるとかはできるんだけど、最初から二つを別に可視化させるのは、意識していても中々できない。


「慣れが重要かしら。こればっかりは反復で練習するしかないわね」

「そうですね……これまでやってこなかった事ですから」


 ピアノとか習った事がないし、コツを掴むまで何度も繰り返しやるしかないんだと思う。

 何か習得しやすい方法とかあるのかもしれないけど、レッタさんは魔力誘導があるからってのもあるけど、独学だしピアノとかないからちゃんとした教え方とかもないからね。


「これができるようになると、魔力を流す場所の指定だけでなく、魔力が薄くなっている場所に過不足なく魔力を補充する事もできるようになるわ」

「魔力を流す、次善の一手とかで使えそうですね」


 剣などに魔力を流して強化する次善の一手だけど、振るうごとに流した魔力は削れるというか霧散していく。

 そのため、継続して次善の一手を使うには魔力を補充する必要があるんだけど、全体の魔力が一律で消費されるのではなく、使い方によって部分的に薄くなったりしているらしい。

 まっさらな状態の武器などに魔力を流すのならともかく、使い続けていると魔力が濃い箇所と薄い箇所ができて、それが弱点のようになってしまう事もあるわけだ。

 他にも、二刀流のように複数の武器に魔力を流したり、手と足など体の離れた場所に魔力を循環させるなどもできるようになるとか。


「リクには関係ないでしょうけど、魔法を連続して放つのにも使えるわよ。本来なら、連続で魔法を使う際にはまた自然の魔力を集める必要があるけど、次に放つ魔法を前もって準備をしておいたりね。まぁ、最近はあのエルフ達の研究とかで、魔力操作をしなくても複数効果を持つ魔法の開発が進んでいるようだけど。連続使用と考え方などはほぼ変わらないわ」

「あれは確か、魔力を練って濃くするって話からだったけど、何か通じるものがあるんですね」


 俺は連続使用どころか、同時使用ができるからレッタさんの言う通り関係ないだろうし、今はちゃんと魔法が使えないからそれは置いておくとして。

 フィリーナ達が、俺の魔力を練るという言葉をヒントに研究開発した複数効果を持つ魔法。

 必ず一定の効果が出る魔法を改良したものだけど、まだエルフくらいしかまともに使えないらしいんだよね。

 魔力消費が多かったり、呪文を体に浸み込ませるのが難しかったりと、広めるためのハードルが高いとかなんとか……。


 とはいえ、クォンツァイタの魔力補助もあり、さらに改良を加えて少しずつ人間にも使えるようになっているみたいだけども。

 今は主に、対帝国のために軍関係の人達を優先している。

 なにはともあれ、エルフの魔法開発による戦力強化は重要なので、フィリーナ達だけでなくアテトリア王国のエルフが協力的になってくれたのは、良かったと思う。


「私はエルフじゃないし、研究などはしていないからどこがどう通じているのかはわからないけど。さぁ、休憩も終わりよ」

「はい……んっと……」


 何はともあれ、反復での練習が必要との言葉通り、また魔力操作の訓練に集中した――。



「はぁ……疲れた……精神的にも、肉体的にも。魔力も、結構少なくなっているのがはっきりわかるし」

「そうね……濃密な数日だったわ」

「たった数日とは思うが、それでも成果はあったと言えるな」

「えぇ」


 結界内で訓練をする事数日、そろそろ結界の魔力がなくなるため、今回の訓練を切り上げる事にした。

 モニカさん達はみっちりとユノ達からの訓練、さらに俺も、魔力操作だけでなく戦闘訓練なども行っていたので今すぐにでも寝たいくらい疲れている。

 もちろん、結界内で数日ずっと動きっぱなしというわけではなく、食事休憩や睡眠などもとっているけど、それでも密度が濃かった。

 その他のあれこれから離れて、ひたすら訓練のみに集中する……合宿に近いかもね。


「というか、結界の外に出る前に内側でゆっくり休んでから出た方が、効率的なんじゃないかな?」


 結界が解けるのを待ちながら、ふとそんな事を思う。

 結界内で引き延ばされた時間で休んで万全になってから出れば、外で数時間休むよりいいんじゃないかって考えだ。


「結界内で休んでも、十全に回復しないの。リクが自覚しているように、魔力もかなり少なくなっているでしょ?」

「それは確かにそうだけど……」


 魔力操作の訓練の成果もあり、自分の魔力の状態が以前よりわかるようになっているけど、今はかなり魔力残量が少ない。

 漏れ出した魔力によっていつも体を覆っているのもないくらいだし。


「結界内の特殊な環境のせいだけど、魔力回復があまりしないのよ。それに疲労回復も鈍いわ。全く回復しないわけじゃないけど、休むなら外でちゃんと休んだ方がいいわ」

「回復が遅いんだ……言われてみれば確かにそうかも」


 ロジーナの言葉で納得する。

 結界内では魔力操作の訓練をしたとはいえ、大量の魔力を使う事はなく継続的に少量の魔力を消費する事が多かった。

 だから、数日の訓練でこんなに魔力が減ったままになっているのか。

 疲労回復も鈍いのなら、結界の外でちゃんと休んだ方がいいのは確かにそうだ。


「っと、結界が解けるね……ふぅ」


 結界を維持する魔力がなくなり、解けるように消えていく。

 喧騒というか、訓練場で冒険者さん達が訓練をしている声や音の騒がしさが戻って来る。


「なんというか、最初は特に変わった感じはなかったのだけど、こうして数日訓練をして結界の外に出ると、空気が違う気がするわね」

「そうだね」


 元が訓練場だから、新鮮な空気というわけじゃないけど、なんとなく結界内と結界外では空気が違う気がした。

 数日間籠っていたからだろうけど、なんとなくようやく外に出た、という感覚があるね。

 モニカさんだけでなく、ソフィーやフィネさんが深呼吸をするようにしていた。

 ……訓練場なので埃っぽいから、咳き込んでいたけど。


「さて、それじゃあ一旦部屋か王城に戻って休……」

「うっ、うぅ……!」


 休もう、と言い終わる前に泣き崩れている人を発見して言葉が止まった。


「あー、あれはきっとリクさん関係ね」

「そうだな。むしろ、リク以外にあぁなるのはあり得ない」

「なんでしょう、ちょっと安心感さえありますね」

「ちょ、ちょっと皆?」


 泣き崩れている人を見て、モニカさん達はそう言いながら訓練場のを去っていく。

 ユノ達も同様だ。

 疲れているから、とにかく休みたいんだろうけど……俺を一人にしないで……。

 まぁ、泣き崩れている人を見て俺が関係しているんだろうなと納得しちゃったけど。


「え、えっと……アマリーラ、さん? ど、どうして泣いているんですか?」


 訓練場には他の人達の目もあって、「あーあ、泣ーかしたー」みたいな雰囲気で見られている。

 小学生か、と突っ込みたいけど、とにかく泣いているアマリーラさんに聞いてみた。


「う、うぅ……酷いです、リク様。私も、ご一緒したかったのに……うぅ」

「つまり、結界内訓練をしたかったって事ですか?」

「もちろんですぅぅ! リク様のお役に立つため、私ももっと強くならなければ! それに、リク様のお傍で、ご活躍を見たかったのですぅ!」


 泣き叫ぶに近いアマリーラさんはもはや、初対面でのクールなイメージはかけらもない。

 ……まぁ今更だけど。


「活躍って……ただ訓練していただけなんですけど。かなり地味ですし、見て楽しいものじゃなかったと思いますよ?」


 戦闘訓練なら多少派手……ソフィー達が武器を投げたりとか、ユノ達の動きとかくらいで、俺に関してはそうでもないけど。

 結界内訓練の半分以上、俺は魔力操作の訓練をしていたからかなり地味だ。

 魔力が可視化されるくらいで、目に見える何かはほとんどなかったはずだし。


「というかアマリーラさん、他にもやる事があったはずですけど、そちらは?」


 アマリーラさんが訓練に参加、というのはモニカさん達と同じく予定にあった。

 けど今日は、獣王国との関係や演習などなどの話し合いを姉さん達としていたはず。

 獣王国の代表というか名代としてと、演習はセンテでの経験者として俺達クラン側の代表として予定を詰めるためだ。


 確か演習の方はヴェンツェルさんやシュットラウルさんとか、軍を指揮する人達が軒並み集まっていたはず。

 そちらで忙しいので、アマリーラさんが結界内訓練に参加する余裕はなかったし仕方がないと思う。


「ぐず……ずず……話し合いはまだ続いていますが、獣王国からの報告などは全て滞りなく。獣王国はリク様に恭順し、リク様のために動く事を間違いなく伝えました」

「俺のためっていうのはちょっと……」


 鼻をすすりながらそう言うアマリーラさん。

 獣王様であるハルさん達とは色々とあったけど、そこまでじゃなかったと思うんだけど……。

 アマリーラさんが大袈裟に言っているだけで、とりあえず獣王国とアテトリア王国のあれこれはちゃんと伝えて打ち合わせはできたと思っておこう。


 ……あとで念のため、姉さんに聞いておくのも忘れないでおく。

 国家間の事でもあるので、俺があれこれ言う筋じゃないかもだけど。


「そういえば、リネルトさんは……? というか、話し合いはまだ続いているんですよね? 獣王国の事は終わったのなら、演習の話ですか」

「そちらは、ずず……んく。リネルトに任せてきました。リネルトの方が適任ですので、私がいなくてもなんとかなるでしょうし……」


 鼻水をすするアマリーラさんだけど、ふいっと俺から視線を逸らした。

 要は全部押し付けてきたって事かな? そういえば以前、シュットラウルさんが兵士さんなどを兵士さんなどを指揮するなら、アマリーラさんよりリネルトさんの方が向いていると言っていたっけ。

 それをアマリーラさんも自覚しているから、任せて大丈夫って事なんだろうけど……。

 結界内訓練、リネルトさんに諸々を押し付けるくらい参加したかったのか……なんて考えていると、モニカさん達が出て行った訓練場の出入り口から、リネルトさんが入って来た。


「リネルトさん……?」

「アマリーラさん! どうせここだと思いましたが、いましたね! ほら、戻ってください!」

「リ、リネルト!? な、何故ここに!! 会議はどうした!?」

「その会議が、アマリーラさんがいないので進まないんですよ!」


 つかつかとアマリーラさんに歩み寄ったリネルトさんは、その襟首を掴み上げた。

 普段ののんびりした口調ではないので、割と真剣に怒っているようだ。

 それだけ、会議を押し付けられた事に対して、というより大事な役目を投げ出したのがいけなかったらしい。


「ほら、行きますよアマリーラさん!」

「……にゃーん」

「リク様、他の方々も、失礼しましたぁ。この大事な事を投げ出す小動物は、私が責任を持って連れて行きますねぇ」

「は、はい。お願いします……」


 襟首を掴まれ、持ち上げられたアマリーラさんは、猫のように体を丸めて悲し気な鳴き声を上げている。

 俺達の結界内訓練が既に終わっているからだろう、抵抗しないアマリーラさんを確認して元の口調に戻ったリネルトさんは、あっけにとられている俺や訓練している冒険者さんに一礼して、去っていった。

 嵐のようだったな……原因はアマリーラさんだけど。


 とりあえず、ポカンとしている冒険者さん達には訓練に戻ってもらって、俺もその場を後にすることにした。

 訓練よりも何かが疲れた気がするけど、ともかくようやく休めるよ――。



 ――ゆっくり休むために王城に戻り、俺を見捨てて逃げた皆に文句を言いつつ、エルサやクォンツァイタの魔力を補充して休むってなんだろう? なんて疑問が浮かんだ翌日。


「結局演習は明日になったんでしたっけ?」

「はい。クランの者達に準備をさせるためと、貴族軍の一部が前回の演習で損傷が激しかったようです」


 昨日は泣き崩れていたアマリーラさんから、演習予定の確認。

 損傷というのは、武具の損傷の事だ……多少の怪我とかはしている人もいるみたいだけど、先頭に影響が出る程ではないらしい。

 ヴェンツェルさん率いる国軍は、ワイバーンの鎧のおかげもあってすぐに演習に取り掛かれそうだけど、やっぱり貴族軍は王都に来るまでの移動の疲労や、国軍との演習でやり込められた心労を癒すため、もう一日休息を取るとの事だ。

 アマリーラさんが言うように、クランの冒険者さん達に準備をしてもらうための時間を、というのもあるけど。


 通達はすでにしていて、演習とはいえ国軍、貴族軍という国の正規軍を相手にする、数で圧倒的に不利な側なんだけど、多くの冒険者さん達が凄く乗り気だった。

 演習関係なく、戦争をすると考えると頼もしい味方だ。

 その代わり、マティルデさんの方で集めてもらっている冒険者さん達の方は、あまり芳しくなく集まりがかなり悪いらしいけど。


 軍を相手にするとか、圧倒的な人数差があると考えると、あくまで演習とはいえやりたいとはあまり思えないらしい。

 その辺りは冒険者ギルドからの特別依頼として報酬などを調整すると言っていたので、マティルデさんにお任せだ。


「演習が明日となると、今日は少し余裕ができたかな。さて……」


 時間があるなら結界内訓練をするだけなので、暇があるわけじゃないんだけどね。


「リク様、ヴェンツェル様がお見えになりました」

「ヴェンツェルさんが? どうしたんだろう……」


 ヒルダさんに、部屋を訪ねて来たヴェンツェルさんを通してもらった――。




ヴェンツェルさんはリクに何か話があるみたいです。


別作品も連載投稿しております。

作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。


面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はページ下部から評価の方をお願いします。

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