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神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移  作者: 龍央


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1950/1954

エアラハールさんの過去



「ともかく、元々知り合いだったってわけですね。まぁ仲が悪いのを仲良くして下さいとは言えませんけど、他の人達に迷惑をかける事は止めて下さいね?」

「ふん、このジジイが殊勝な態度に改めたら、考えてやるわい。じゃがまぁ、周囲に迷惑をかけないようには気を付けよう」

「ワシはいつでも殊勝な心掛けなのじゃがのう。なんにせよ、リクがそう言うなら仕方ないわい」

「はぁ……」


 無理矢理仲良くさせるなんて事はできないけど、もう少しなんとかならないかなと思ってしまう二人のやりとり。

 とりあえずは、他の冒険者さん達が訓練する邪魔や迷惑をかけないようにはしてくれるみたいなので、今はそれでいいと思っておこう。

 ともあれ、言い合いのようになりながら一応エアラハールさんとベルンタさんの関係について聞いた。

 なんでも、エアラハールさんが現役冒険者だった頃、つまり数十年前にまで遡るけど、その頃まだギルド職員ではなく冒険者だったベルンタさん。


 Aランクのエアラハールさんは、名の知れた冒険者として活躍していたみたいなんだけど、昇格間近とは言われていたそうだけどまだBランクだったベルンタさんは、エアラハールさんとは別の意味で有名だったらしい。

 まぁなんというか、美形なうえ洗練された所作で男性ながら美しいと評判だったとか。

 エアラハールさん曰く、ただのナルシストじゃ、との事だったけど確かに言われてみれば、お爺さんとなった今でも美形だったんだろうな、と思うだけの面影はある気がする。

 それはともかく、女性に対しては今とそう変わらないエアラハールさんが、女性冒険者を追いかける事が多々あったらしいというのは何度か聞いて知っているけど、そんな中でも特に親しい女性ができたとか。


 付き合っているとは言わなかったけど、多分それに近い関係で友達以上恋人未満といったところかな。

 ……同衾するみたいな事はあったようだし、その辺りの価値観はひとそれぞれだから突っ込まないとしてだ。

 その女性が、Aランクに昇格したベルンタさんに一目惚れ、エアラハールさんから離れて行ってしまったのが、今のような原因だとか。

 なんというか、女性関係で男同士のいざこざが勃発するのは、どこの世界も変わらないようだね。


 女性を取り戻そうと、エアラハールさんがベルンタさんに突っかかった時、ベルンタさんが気取った態度で対応したのも、こじらせた原因だとは思うけど。

 何はともあれ、それ以来何かと突っかかるエアラハールさんに対し、棘を含ませながらものらりくらりとした対応をするベルンタさん、という関係が続き、いつしか腐れ縁のようになったと。

 同じAランクで、しかも同じような場所に留まる事が多かったとかで、依頼の取り合いなどもあったらしいけど。


 ……実は、意外と仲がいいんじゃ? 関わりたくないなら、離れた場所で活動すればいいわけだし。

 いや、自分からそうするのは負けた気がしてできなかった、とか意地の張り合いもあったのかもしれないけど。


「なんというか、お爺さん達の昔のモテ話を聞かされたって感じです」

「ひょ、リクも中々言うのう。実際に、ワシはそこのジイさんと違ってモテたからの。あっちは、女の尻を追いかけてばっかりじゃったが」

「女には、追われるより追う方が良かっただけじゃ。それなりに寄って来る女はいたんじゃ」

「……そういうのはいいですから」


 仲裁したはいいけど、何が悲しくてお爺さん達のモテ自慢を聞かなくてはならないのか。

 冒険者は高ランクになればより取り見取りとか、依頼のランクが高くなれば報酬が上がのに比例してモテるようになる、というのは聞いていた。

 クランでクランマスターとして仕事をしている時、ナラテリアさん達が合間に女性同士の会話が漏れ聞こえただけなんだけど。


 それなら俺は、とちょっと興味が出るのも男の子として仕方ないけど、俺は最年少最速のAランクで今はSランク、しかも国からは英雄と呼ばれ証明として勲章を授与されているという、出来過ぎた存在のため、気が引けて逆に女性が近づいて来ないとの事だ。

 その日の夜、俺は枕を涙で濡らした……いや、俺にはモニカさんがいればそれでいいし、悔しくも悲しくもないんだからね、ほんとだよ!


「……それで、あの子はどうしておるんじゃ?」

「なんとか平穏に暮らしておるよ」


 昔話を聞いた後、不意にベルンタさんがエアラハールさんに問いかけた。

 少しだけ、さっきまでのような喧嘩腰の雰囲気が薄れ、穏やかな口調だ。


「あの子っていうのは?」


 気になって質問する。

 エアラハールさんの答え方から、なんとなく子供とか……年齢的には孫かなと思うけど。

 そういえば、エアラハールさんの家族の話とかって聞いた事がなかったね。


「……リクは気にしなくていい」

「なんじゃ、話していなかったのかの?」

「わしが頼まれたのは、リク達の訓練じゃ。今はクランのにも教えておるが、関係ない事じゃからの」


 なんとなく、この流れは教えてくれない方向かな? まぁどんな事情があるにせよ、個人の事にあまり突っ込むものじゃないか。

 気になるけど仕方ない……と思って諦めようとしたら、ベルンタさんが話し始める。


「エアラハールの娘の事じゃよ。とは言っても、血は繋がっておらんがな」

「これ、ジジイ!」

「隠しているわけでもないのじゃから、これくらい話してもいいじゃろうて。それに、リクのような性格の者には、話しておいた方が後々のためにもなるはずじゃ」

「はぁ……仕方ないのう。厄介でお節介なジジイがいるでの」


 溜め息を吐いたエアラハールさんは、ベルンタさんに話されるくらいならと思ったのか、事情を説明してくれる。


「昔の事じゃ。それこそ、リクが生まれるより前くらいじゃの。ワシらがまだ現役の冒険者で数々の依頼をこなしていた事の事じゃ」

「このジイは、女の尻ばかり追いかけておったがの」

「茶々を入れるでないわ!」

「あはは……」


 お爺さん二人のやり取りに苦笑を返しつつ、エアラハールさんの話を聞く。

 ある時、エアラハールさんとベルンタさんのパーティが、Aランクの依頼を同時に受けて競う事になったらしい。

 ちなみにだけど、依頼は基本的に一組が受注すれば他の人は受けられないけど、その依頼は違ったらしい。

 緊急依頼とか、センテの時など複数の冒険者パーティに依頼するものもある。


 ともかくその依頼の途中、魔物達に襲われている旅をしていたらしい家族を発見したとか。

 競っているとはいえ、そういった事を見逃せない二人は、それぞれのパーティを引き連れて急行、協力して魔物討伐に当たったみたいだ。

 ただ、発見するのが遅かったためか、旅をしていた家族のほとんどが魔物にやられており、唯一馬車の奥に隠されていた赤ん坊だけが助かったとか。

 でもその赤ん坊も、魔物によって傷を負わされており、命は助かったけど多少の後遺症が残ってしまったらしい。


「ワシらが、もう少し早く発見し、駆け付けられていれば、全員助けられたかもしれん」

「確かにそう考える事もあるが、起こってしまった事は仕方ないじゃろうに」


 悔やむようなエアラハールさんと、慰めるベルンタさん。

 女性に対しての問題行動はあるけど、エアラハールさんは簡単に割り切れるような人じゃないんだろう。

 ベルンタさんの言っている事もわかるけど、個人的にはエアラハールさんの考え方は好感が持てる……まぁ、後悔ばかりではいけないとも思うけど。


「でじゃ、このジイは悔いるあまりに冒険者を引退してまで、その赤子を引き取る事にしたんじゃよ。後遺症のせいで、一人で生きていくには厳しすぎたからのう」

「幸い、それまでのワシの活躍で蓄えはあったからの。なんとかなると思ったんじゃ。そろそろ、限界も感じておったしの。Sランクは目指しておったが、昇格でできなんだでの」

「Sランクに慣れなかったのは、問題行動のせいじゃろうに。実力は昇格してもおかしくなかった。事実、ギルドも冒険者も、Sランクに限りなく近い冒険者と評価しておったよ」

「そんな事が……」


 赤ん坊を育てるために冒険者を引退したのか……エアラハールさんは、訓練を付けてくれる時の動きなどを見ていれば、まだまだ現役で通じそうなものだし、怪我をしているようにも見えなかったから少し不思議だったんだ。

 もちろん、年齢的な衰えとか長く激しい動きができる体力がなくなってきている、とかはあるかもしれないけど。

 瞬間的になら、ユノやロジーナに通用するくらいにはまだ動けているしね。


「まぁそんなこんなで、このジイがいなくなってからはワシも張り合いがなくなっての。家庭を持つ機会に恵まれたのもあって、それをきっかけにワシも冒険者を引退したんじゃよ。その後は、これまでの経験を買われて冒険者ギルドで働いて、というわけじゃ」


 冒険者からの転身で、マティルデさんより前の統括ギルドマスターになったり、不正を暴く手練手管を備えたのは凄いと思う。

 というか、ベルンタさんは結婚して家族ができたのか。

 話の様子から、エアラハールさんは赤ん坊……娘さんを引き取ってからは、それ以外の家族を作ったりはしていないみたいだけど。

 人に歴史あり、だなぁ。


「そうじゃ、エアラハールに指導を求めているのじゃろ? 金をせびられんかったかの?」

「あー、まぁ。ただ、指導料と考えたら当然と思いますし、せびられたとまでは……」


 最初は俺が訓練を受ける、というだけの話だったけど、モニカさんやソフィーが加わるとなった時にそう言った話があったにはあった。

 とはいえ、タダで教えてもらうわけにはいかないし、正当な要求だったから気にはしていなかったけど。


「そうか。リク殿が気にしていなければよいのじゃよ。引き取った娘のために、という事じゃからの」

「余計な事は言わんでいい!」

「娘さんのためだったんですね。あれ? でもさっきは冒険者だった頃の蓄えがあったって……」


 Sランクに近いと言われる程の冒険者で、話を聞く限りではベルンタさんと競い合うように依頼をこなしていたと思われる。

 Aランクの冒険者がランク相応の依頼を受けているなら、報酬は相当な物になるはずだ。

 さらに言えば、その依頼に関連して討伐した魔物の素材報酬などもあるわけだし。

 それこそ、大きめの家を建てたうえで楽に暮らしていけるくらいには、なっていておかしくない。


「それなんじゃがの、このジイの悪いところじゃ。女に入れ込んだり、酒を浴びるように飲んだりと、激しく使ってしまっての。娘を育てているにも関わらず、無計画に蓄えを消費していったんじゃ」

「……仕方ないじゃろう、赤子を育てるなんぞ初めての事じゃ。依頼のない毎日は、退屈でもあったんじゃ」

「えーっと……まぁ、そう言う事もあります、かね?」


 うぅむ、フォローできないですエアラハールさん。

 冒険者としての日々を突然やめて、初めての子育てで苦労があってストレスがたまる事もあったんだろうけど、蓄えを食いつぶす程というのはさすがにね。

 身寄りがなくなった赤ん坊を引き取ったまでは格好よかったのに、色々と台無しだ。

 ともあれ、今では立派に成長した娘さんは、後遺症はあれど一応まともに生活できるようになっているとか。


 とはいえ一人だけというのは心配だし、何かあってはいけないので、知り合いに多少の面倒くらいは見てもらっておいて、エアラハールさん自身は昔取った杵柄で、指導する代わりに報酬を得て仕送りなどもしているらしい。

 マックスさんやヴェンツェルさんが教えてもらったのも、お金を稼ぐ一環だったんだろうね。

 その繋がりで今こうして、俺達が教えてもらっているわけだし、蓄えを使い果たしたのも悪い事ばかりじゃないだろう。

 よく酒場などに繰り出してはいるけど、それで使い果たしているわけじゃないのは、少しだけ驚いた。


 カヤさんに怒られそうだから、同情してクランでの報酬を上げる事はできないだろうけど、何かあればエアラハールさんの助けになろうと思った。

 ……もしかして、俺がそう考えると思ってベルンタさんはこの話をしたんだろうか?

 俺の性格なら、とも言っていたし――。



 ――エアラハールさん達との話を終えて、訓練の監督役に戻るエアラハールさんと、王都にある他の冒険者ギルドに向かったベルンタさんを見送った。

 その後、少しだけクランマスタ―としての仕事をしたり、カヤさんからやっぱりのお小言を頂いたりしたけど。

 ……二人を止めようとしただけなのになぁ、力加減、もっとできるようにならないと。


「リクさん、連れて来たわ」

「ありがとう、モニカさん。――ユノ、ロジーナも。まだ眠そうだなぁ」

「んにんに……大丈夫、なの……ふわぁ」

「あふ……この体は不自由ね。もう少し体力のある体にした方が良かったかもしれないわ」

「そんな事はありませんよロジーナ様! ロジーナ様はその幼さだからこその良さがあるのです!」


 昼寝していたユノ達が起きるのを待って、連れて来てくれたモニカさん。

 訓練場に来たユノとロジーナは、目をこすり、欠伸をし、まだまだ寝足りないといった風だ。

 中身はともかく、体は子供だから成長のためにいっぱい睡眠が必要なのかもしれないね……成長するのかは知らないけど。


 それから、ユノ達に付いてきているレッタさんは、ちょっとおかしな趣味の方向に行っている気がするけど、髪の毛がボサボサだ。

 一緒に昼寝していたんだろうな。


「ソフィー、フィネさん!」


 俺達がいる訓練場で、ユノ達を待つ間他の冒険者さんと話しているソフィー達も呼んだ。

 皆を集めたのは、今日二度目の結界内訓練を行うためだ。

 俺がユノやロジーナの訓練を受けるだけなら、かなりの広さがあるクランの自室でいいんだけど、さらにモニカさんとソフィー、それにフィネさんを加えるならもっと広さが欲しいからね。

 まだモニカさん達が加わってのお試しなので、短時間だけ訓練場の一部を使ってやる事になっている。


 さっきのエアラハールさんとベルンタさんは、全体を使って戦っていたけど、訓練場自体は数十人が一斉に激しい訓練ができる広さがある。

 なので、俺達が訓練するくらいの広さを確保しても他の人達の邪魔にはならない。

 まぁ隅に結界という障害物がある程度だね。

 ……というか、それだけの広さを使って二人だけが戦っていたというのは、あのお爺さん達の元気さがよくわかるけど、それはともかく。


 ちなみに、結界内訓練のためユノ達が内部の位相をずらすというか、時間の流れを変えると透明なはずの結界なのに外から内部が見えなくなるようだ。

 センテでは外と中が磨りガラスのようではあっても、多少見えていたのんだけど、あれは不完全だったからとか。

 あと、丸一日結界内訓練をした時に体感したけど、内部からも外は景色くらいしか見えず、人などは一切見えなくなった。

 内外で時間のずれがあるため目に見えないようになっているんだ、と考える事にしている――。



結界の外の人がのろくみえたり、内部の人が外から早く見えたり、なんて事はないようです。


別作品も連載投稿しております。

作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。


面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はページ下部から評価の方をお願いします。

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