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神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移  作者: 龍央


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1949/1960

エアラハールさんとベルンタさん



「なんにせよ、お疲れのご様子ですのであまり無理はなさらないで下さい。こうして、ゆっくり休むのも大事かと」

「疲れているほどんどの原因は、ユノとロジーナなんですけど、それも必要な事ですからね」


 心配してくれているヒルダさんに、苦笑しながら答える。

 訓練では一切手を抜かないユノ達だから、結界内で時間を遅らせてやった訓練のせいで、疲れているのは間違いないけど、俺にとっても必要な訓練だから怠るわけにもいかない。

 色んな相談を受けて、頭をフル回転させていたというのも精神的に疲れているのかもしれないけど。


「こうして、美味しいお茶を頂いて、ゆっくり話し相手になってくれるだけでも休まりますよ」

「私などがリク様のお役に立てているのなら、幸甚に存じます」


 そう言ってほほ笑むヒルダさんに助けられているのは本当の事だ。

 モニカさんは親身になって話してくれるし、ヒルダさんはこうして益体もない事や愚痴っぽい話も聞いてくれるから、助かっている。

 身の回りの世話をしてくれているのも大きいか。


「リク―なのだわー!」

「おっと!」


 ゆっくりヒルダさんと話していると、エルサが部屋に飛び込んできた。

 どうやら、のんびりする時間は終わったようだ。


「魔力を求めるのだわ! キューもだわ!」


 俺の頭にへばりついたエルサが、駄々っ子のように要求。

 獣王国で消費したミスリルの矢を補充するため、エルサは頑張っているようだから、当然な要求なのかもしれない。


「はいはい。ヒルダさん、すみませんけど」

「畏まりました。すぐにご用意いたします」


 お辞儀してキューの用意のためにヒルダさんが退室した後、へばりついているエルサを引っぺがして魔力を補充する。


「はぁぁ~だわ~」


 まるでお風呂に入った時のような声を漏らすエルサ。

 魔力を流すって、そんな感覚なのだろうか?


「エルサ様、ちょっとご相談が――」


 魔力を補充し、ヒルダさんが用意してくれたキューをエルサに食べさせていると、さらにフィリーナが部屋を訪ねて来た。

 そちらはシュットラウルさんとの話を経て、弓矢の強化というか矢動魔法についての相談がしたいらしい。

 矢動魔法……矢が的まで飛んで行く場所の事を矢道やみちというのは聞いた事があるけど、それとはまた違い、矢を射た後に動く軌道や威力を操るための魔法なので、矢動魔法と呼ぶ事にしたみたいだ。


「リクは私が魔法を誘導させるのを見ているわよね?」

「えーっと……うん。ツヴァイがいた地下研究所でだよね」


 ツヴァイの地下研究所に突入した際、フィリーナが放った風の魔法が相手に向かって追尾するように動いていた。

 確か、俺やエルサが使うドラゴンの魔法を参考に、これまでの魔法を改良したものだったはずだ。


「えぇ。あれを改良というか、補助にのみ特化させたのが矢動魔法なのよ」

「補助のみ? あぁ、つまり他の人が放った矢が誘導するようにってわけだね」

「そうよ。エルサ様の場合は、威力がとんでもない事になっていたけど、そこまでの事はできないから。ドラゴンの魔法を今の魔法理論で使おうとしたら、複雑になりすぎてエルフすら扱えないから。魔力消費量も高くて、無理をしても再現する事すら難しいわ」

「だから、誘導だけ?」

「威力増加、つまり矢の勢いを増す方でも考えたし、それ単体の効果ならできるわ。けど、実際矢の勢いが増してもそれだけなのよ。詳しく話すと――」


 エルサが使う矢動魔法は、敵に対して確実に命中するような誘導、それから矢の勢いを増すための威力上昇、そのうえで貫通力を増すために次善の一手のような魔力をまとわせ、さらに通常の矢でもいくつもの効果に耐えられるような効果も含まれているらしい。

 それら全てを、ドラゴンの魔法以外で一度に再現するのは難しく、飛ぶ矢が敵を射抜くまで魔力をまとわせる、矢が壊れないようにする事などは個別でもまだ使える段階にはなっていないとか。

 ただ誘導と威力上昇はそれぞれで再現可能にはなっているらしい。


「でも、一つの効果だけを取り出すようにしても魔力消費が大きくてあまり乱発できる魔法ではなくなっているから、実用的だとは思っていなかったの。魔力を使うなら、他に回した方がいいから」

「成る程。それで劣化ってわけなんだ」


 一つの効果だけでも、エルサのと効果の大小があるかまではわからないけど、複数の効果と比べてしまうと劣化と言えるだろう。

 魔力は有限だから、クォンツァイタの補助があったとしても、通常の弓矢と魔法攻撃にした方が結果なども計算しやすいんだと思う。


「威力だけ上げて、魔力消費に見合うだけの結果が得られれば、まだ使えるのかな?」

「それはそれで難しいわ。元々、弓矢の攻撃なんて局地的にはともかく、開戦直後にしか一斉に放つ事は難しいのよね」


 開戦直後、まだ軍同士がぶつかっていない段階であれば、味方を巻き込まないからだろう。

 砦などで防衛するのを想定したとしても、壁に張り付いた敵に向かって放つ程の距離なら、わざわざ威力上昇をする必要もないだろうし。


「そもそも、勢いが増す速度上昇が加わっても、貫通力は上がっていないから矢としての効果は薄いのよ。ミスリルの矢なら、鎧ごと撃ち抜けて貫通力強化とかもいらないでしょうけど、あちらはあちらでまた別の問題があるわ」


 ミスリルの矢は、魔力を使って圧縮した土だから内部にはたっぷりと魔力が含まれている。

 だから、矢動魔法などで効果を得ようとしたら、さらに魔力消費を増やさないと効果は現れないとか。


「後の問題としては、結局当たらなければ意味がないわ。一斉に矢を放つ状況であれば相手は遠くに布陣しているはず。速度を上昇させても確かに避けたり払ったりしづらくはなるでしょうけど、誘導させて確実に命中させる方が効果が望めるのよね」

「成る程ね」


 近くだと、威力上昇はあまり意味をなさず、遠ければ誘導させた方が結果が出るだろうと。

 よく考えれば、エルサのとまったく同じわけじゃないだろうけど、発動させた矢動魔法をくぐらせるように矢を放たなくてはいけない。

 本来直進か山なりの軌道を描く矢だから、変な方向に向かっていくだけとかもありそうだ。


「ありがとう、フィリーナ。おかげで矢動魔法がどういうものかよくわかったよ。それで、エルサに相談って言うのは?」


 俺への説明で邪魔してしまったので、お礼を言って話を戻す。

 その間に、エルサはキューを平らげて机に仰向けで転がっていた。

 魔力とお腹が満たされて、ご満悦らしい。


「あぁそうね。リクにも、知っていて欲しかったし機会を見て話しておこうとしていたから、ちょうど良かったのだけど。えぇと、それでエルサ様。相談というのは矢動魔法の――」

「ふむ、だわ。それは範囲を広げるために薄く展開するように――だわ」


 本題に戻ったフィリーナの相談は、矢動魔法の発動範囲と効果の両立に関してだった。

 先程実用的じゃないという話もあったけど、それは俺がシュットラウルさんと話した魔法鎧の運用法の一つとして矢動魔法を組み込むようで、それならと改良のために相談しに来たという事みたいだ。

 俺にはよくわからない魔法の改良方法について、どうやら広く矢動魔法を展開したら、誘導効果が弱くなるし、誘導効果を強めれば展開範囲が狭くなるという問題があるらしい。

 範囲が狭ければ、いざ使うにしても通せる矢が少なくなるし、効果が狭ければ命中率に問題が出てしまい、意味がなくなるとか。


 話は聞いていたけど、俺にはどうすればいいのかわからないので、エルサとフィリーナの話を聞くだけだった。

 うぅむ、戦力向上が見込めるから喜ぶ事なんだろうけど、フィリーナ達の仕事を増やしてしまった感があるなぁ。

 というか、主に改良や研究をするのはアルネ達らしいけど――。



「リク様。お呼び立てして申し訳ございません」


 エルサとフィリーナの相談後、呼び出しがあったため本日二度目のクランへ。

 訓練場に入ると、俺の知っているお爺さん二人が、剣を交えているところだった。

 ……剣と言っても木剣だし、主に片方のお爺さんが、もう片方のお爺さんに目にもとまらぬ速度で木剣を繰り出しているようだけど。


「これは一体何事ですか?」


 何故か筋肉をアピールするポーズで俺を迎えてくれた、『むくつけき男達の宴』パーティリーダーのフラッドさん。

 俺に筋肉をアピールするためなのか、それともそうせざるを得ない何かがあるのだろうか? エルサがここにいたら、むさくるしいとかで睨んでいたかもしれない。

 言葉はともかくポーズは全然申し訳なさそうじゃない……もしかして、フレッドさんなりの謝罪のポーズだったりするのかな?

 それはそれとしてだ。


「エアラハールさんと……ベルンタさんですよね?」

「はい。少し前に、ブハギムノングの冒険者ギルドマスタ―でしたか、あのベルンタという爺様が尋ねてきまして――」


 ベルンタさんがクランを訪ねて来ていたのは少し驚いたけど、マティルデさんも交えて話をしていた際にクランの話にもなって興味深そうだったので、疑問に思う程じゃないか。

 マティルデさんの話やベルンタさんの経歴を思い出せば、何か怪しんで調べるために来たんじゃないかと邪推したくなるけど。

 そのベルンタさんは、訓練場に来てすぐエアラハールさんと何故か突然こうして戦い始めたらしい。

 木剣を使っているから、訓練の延長みたいな事なんだろうけど、何故この二人は……戦っているんだろう?


 激しく打ち合っているように見えるけど、実際はこれまで見た事がないくらいの速度でエアラハールさんが木剣を繰り出し、ベルンタさんがそれを打ち払い、受け止め、避けている。

 つまり、エアラハールさんが一方的に攻めていると言えるかな、時折ベルンタさんもやり返しているけど。

 とてもお爺さん二人がとは思えないような、尋常じゃない戦いになっているため、フラッドさん達は止めるに止められず、どうしようと困ってしまっているとか。

 困ったら俺を頼れば、という事で呼び出されたらしい……俺なら、止められるだろうと思ったのもあるみたいだ。


「もう長い事、二人は打ち合っておりまして。このままにしてもいいものかと……」

「二人共、疲れて止まる様子もありませんね。元々、用事を済ませたらまたここに来る予定だったのでいいんですけど」


 というか、ユノとロジーナはどこに行ったんだろう? 今日はもう一度結界内訓練を試すはずだし、ユノ達なら止められるだろうに、と思って聞いてみたら、絶対に起こすなと言い残してクランにある部屋で寝ているとか。

 おそらく結界内で丸一日分の訓練をしたため、疲れて寝ているんだろう。

 ちなみに、起こすなというのはレッタさんからのようで、ロジーナの眠りを妨げたら許さない、といった雰囲気だったらしい。

 だから俺を頼らざるを得なかったと……。


「わかりました。どうして二人が争うように打ち合っているのかも気になりますし」

「力不足で申し訳ありません。お願いします」


 謝るフレッドさんは、他の『むくつけき男達の宴』パーティのメンバーと共に、筋肉アピールポーズをした。

 ……やっぱりそれ、フレッドさん達なりの謝罪のポーズだったんだ。

 近くにいたラウリアさんやフラムさんなどの女性達が、顔をしかめているのは仕方ないと思う。


「さて……と」

「ふぅ! むっ!」

「ほっ! はっ!」


 俺が止めるのを期待して静まる訓練場。

 お爺さん二人が打ち合う木剣と、呼気が響く。

 そんな二人の様子を窺い、機を見極めて――。


「ここっ! っと。エアラハールさん、ベルンタさん。そこまでです!」 

「むっ!?」

「なんと!?」


 一瞬だけ、二人の間に空間ができた刹那を見極め、体を滑り込ませて二つの木剣を掴んで止める。

 よし、上手くいった。

 これまでの訓練と、結界内で丸一日の間みっちりとユノ達に絞られた甲斐があったかな。


「二人共、他の皆が困っていましたよ」

「む、ぬぅ。こうして止められたら、仕方ないの。少々血がたぎってしまったわい」

「全く、年甲斐のない事じゃて」

「お主がのうのうとワシの前に現れたからじゃろうが! なぁにが、ようやく更生したか? じゃ!」

「そんな事を言ったかのう?」

「……喧嘩しないで下さいよ」


 言い合う、というよりエアラハールさんがベルンタさんに突っかかっているようではあるけど、ベルンタさんの方もそれなりに言い返している。

 この二人、仲が悪いのかな?

 ブハギムノングであった時は、そんな事なかったはずなんだけど。


「しかしリクよ、まだまだ加減が甘いようじゃの?」

「ひょっひょ。まさか木剣を握り潰すとはのう。噂はよく聞いておるが、目の当たりにした気持ちじゃて」

「え、あ……」


 言われて気付く、止めるために受け止めて握った二人の木剣は、俺が握った部分が潰れてぽっきりと折れていた。

 力を入れすぎたみたいだね。

 上手くいったと思ったけど、まだまだだったみたいだ。


「はぁ、後で叱られるだろうけど仕方ないか」


 訓練用の木剣などの武器は、自前で持ってきている人もいるけど、誰でも使えるようにクランで用意している物もある。

 エアラハールさん達の持っているそれは、クランの印が入っていてまぎれもなくこちらで用意した物だった。

 余裕はあるけど、クランのお金を使って用意した物だから、後で事務方……カヤさんに叱られそうだ。


 あの人、金勘定には細かい人で、最近も訓練で物の消費が激しすぎると文句を言われたくらいだ。

 それだけ真面目に経理に関して取り組んでくれている事でもあるので、信頼はしているんだけど、結構怖いんだよなぁ。


「それで、二人はどうしてあんな事になっていたんですか? 聞けば、長い間戦っていたみたいですけど」


 何はともあれ、二人を引き離す事には成功したので、訓練に戻るフラッドさん達を見守りながら、俺が間に入って事情を聞く。

 二人が戦っていた間は、訓練場を広く使っていたせいで他の人が訓練できなかったからね。

 訓練場、十組くらいがそれぞれに訓練ができるくらい広いのに。


「あまり語りたくないのう。ただの腐れ縁のようなものじゃ」

「腐れ縁って……ブハギムノングであった際には、こんな事なかったですよね?」


 ベルンタさんの方は、エアラハールさんの噂というか現役時代の事を知っていて、話も少し聞いたけど、それだけだった。

 特にエアラハールさん方がベルンタさんを見て、知り合いとかそういう反応はしていなかったと思う。


「このジイさん、ワシじゃと気付いていなかったんじゃよ。それで、さっきここに来た際、ようやく気付いてあの様というわけじゃ」

「うるさい! ジジイは貴様もじゃろうが! はぁ、年老いて以前の面影が一切なくなっておったから、気付かなかっただけじゃ!」

「それで元Aランク冒険者とはのう。洞察鋭く、相手を見抜く目がなければいかんというのに、嘆かわしい」

「ぐぬぅ……!」

「まぁまぁ。ベルンタさんも、あまり煽らないで下さい」


 どちらかというと、エアラハールさんが一方的にベルンタさんに突っかかっているようではあるけど、ベルンタさんの方も言葉の端々に棘を含ませている。

 犬猿の仲、というのはこういう事を言うのだろうか? 二人共、俺を挟んで背中を向けていて、決して向かい合おうとしないし――。



二人の間には何か因縁のようなものがあったようです。


別作品も連載投稿しております。

作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。


面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はページ下部から評価の方をお願いします。

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