少しだけ予定変更
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「……ふぅ。どう、かな?」
自分を中心に展開された結界、成功させるだけなら高い確率でできるようになったそれ、以前のようにほぼ完全な透明ではなく半透明な結界を見つつ、内側にいるユノとロジーナに問いかける。
「んー、もう少し強度が欲しいかも。今でも十分……なの?」
「強度に関してはリク次第ってところかしら。今でもやれるわね。まぁモニカ達の方はこれでいいでしょう」
「これまでリクさんの結界は何度も見てきた……いえ、ほとんど目に見えない事が多かったけど、でもそれとはまた違うのね」
「失敗作みたいなものだからね。硬さや柔軟さ、厚みもそうだし、以前の結界とは違うみたいだ」
話し合うようにしながら結界を確認するユノとロジーナとは別に、作られた結界に触れながら感想を言うモニカさんに答える。
ちゃんとした発動ではなく失敗させる、それが魂を損傷した状態での結界になるんだけど、初めて成功した時に半透明な物ができたから、もしかするとそれに引きずられているのかもしれない。
イメージに直結するから、無意識のうちに以前とは違う半透明な結界を思い浮かべていてもおかしくない。
一応、頭の中では透明なイメージにしているつもりだけどね……まぁモニカさんにも言ったように、本当に失敗作の結界だからかもしれないけど。
「フィリーナのプニプニした結界は、不透明でちょっと透けて向こう側が見えるくらいだから、もしかしたら何か別の要因があるのかもしれないけど……」
「ガラスとか氷と一緒なの。あれは純粋な魔力だけじゃなくて空気も圧縮しているから、リクのとは違う感触で、透明度も違うの」
ガラス、はどうしたら透明に近くなるのかとか詳しくないからよくわからないけど、俺の結界のイメージというか質感やらはガラスに似ているので、ユノは例に出したんだろう。
ただ氷は、空気が入る程白くなって透明じゃなくなるというのはなんとなく知っているから、そういう事なのか。
「ん、もう薄くなり始めたの。やっぱりこれくらいの場合はモニカ達用なの」
「そうね……長いと耐えられないだろうし。リクは、もっと長く強度の高い物の方がいいわ。――という事でリク、もっと練習して、強度と持続を伸ばすのよ」
「色々と気になる事を言っている気がするけど……はぁ。わかったよ」
半透明の結界が、徐々に薄くなっていくのを見て結論が出たらしい。
耐えられないとか、モニカさん達だとか気になる内容が聞こえて来たけど、説明してくれる様子のないロジーナを見て諦めた。
ここで色々聞こうとして問答しても、時間が無駄になるだけだし、むしろ俺が丸め込まれるだろうからね……。
そうして、結界を作っては強度を確認、消えるのを待ってから再び――というのを何度か繰り返す。
「リクさんリクさん、そろそろ休憩に入った方が良さそうよ」
「ん? あー、わかった、ありがとう。じゃあこれを最後に……っと!」
どれくらい経っただろうか、空を移動中な事を忘れるくらい繰り返し結界の作成を繰り返していた中で、モニカさんに声をかけられる。
その時途中だった結界作成はそのまま最後までやり遂げる。
やっぱり、魂の損傷とやらで修復がまだなために、作るたびに痛みなどを感じるけど、それにも慣れたね。
痛みに慣れると考えると、他の人達に混じってこちらを見ている冒険者さん、その中の「女王様と下僕」のパーティリーダー、フラムさんが半透明の結界の向こう側でこちらをみているのが気になってしまった。
……俺はワイバーンのような特殊な趣味はないし、女王様の下僕になるつもりはないから、あまりなr過ぎないように気を付けよう。
気を付けられるものかはわからないけど、今の所痛いのが好きだとかそういう感覚はないから、まだ大丈夫なはずだ。
「ふむふむ、なの」
「これなら、ギリギリ及第点かしら?」
等々、結界を確かめているユノやロジーナを余所に、タオルを差し出してくれるモニカさんにお礼を言いつつ受け取って噴き出していた汗を拭う。
「見ている限り動いていないのに、リクさんがそれだけの汗をかくってよっぽどなのね」
「訓練とか、実際に体を動かすのとはちょっと違うんだけどね。でも、少し前まではもっと酷かったから、マシになった方だよ」
成功するまでは、床に汗だまりができるくらいだったからね。
今は、服の内側がぐっしょり濡れて、顔からは汗の雫が落ちそうになっているくらいで収まっているけど。
コツを掴んでやり過ぎないようにできているから、これくらいで済むようになったんだろうと思う。
それでも、やっぱり多少の痛みは感じるんだけどね……でも無理に結界を作ろうとしてできなかった頃よりはかなりマシだ。
「さてと、それじゃあそろそろ結界も消滅してきたし、休憩しようか」
「そうね。私もユノちゃん達の提案に乗ったけど、リクさんはしっかり休んだ方がいいわ。私は、他の皆に休憩をするって伝えて来るわね」
「うん、お願い」
他の皆の所に行くモニカさんを見送って、一息吐きつつ、適当な所で地上に降りるようエルサにお願いする。
エルサがゆっくりと速度と高度を落とし始めたのを感る中、ユノとロジーナが俺に話しかけてきた。
「強度はギリギリ及第点なの。後は、もっと持続させるように要練習なの」
「他にする事がないんだから、休憩の後はそのための練習ね」
「まぁ確かに他にやる事はないけど……持続させるってどうやるんだ?」
いくらエルサの背中が広いからって、大勢乗っているうえに荷物まであるから、剣の鍛錬なんてできない。
のんびり空を飛ぶのを楽しみつつ、周囲の風景南下を眺められたら……と考えていたけど、それはユノ達にとっては甘い考えだったようだ。
まぁ必要な事らしいから、おとなしく練習するけど、その持続というのはどうやって伸ばせばいいのか。
通常の結界なら、魔力的な繋がりがあるから距離が離れすぎたり、自分で解除しようとしなければ魔力が流れて維持できる。
けど失敗作としての結界、つまり今やっている結界ではその繋がりがないため、維持しようとしてもできないし、消えればもう一度作るしかないんだけど。
「魔力を練って、濃く圧縮するの。その魔力をもっと効率よく結界のために変換させていけば、長く持続する結界になるはずなの」
「要は、慣れる必要があるって事よ。今のリクだと、そうするだけでも魂の損傷が影響して無理になっちゃうから」
「むぅ、とにかく練習するしかないって事か……」
「ちゃんと意識して、そうする事も大事なの」
「意識するかぁ、無意識も使ってなんとか結界を作っている状態だから、中々難しそうだなぁ。はぁ……」
溜め息を吐きつつも、ユノ達に従って練習するしかない。
無意識と意識をする部分を間違えないようにするのが、かなり難しそうだ。
とにかく、トライアンドエラーのように繰り返しやっていくしかないのか、ロジーナも慣れる必要があるって言っているわけだしね。
そんな事を話しつつ、ゆっくりとエルサが地上へと降りて食事休憩となった。
「うまうま、だわぁ」
「サンドイッチだけど、キューがあれば満足そうだなエルサは」
小さくなったエルサが、両手で抱えるように少し大きめのパンにはさまれたキューを食べて、ご満悦な様子。
エルサはキューがあればなんても美味しいって言うんじゃないだろうか?
俺も含め、他の皆もカーリンさんが作ってくれたお弁当に舌鼓を打っているから、あまり気にしないでおこう。
もちろん、エルサだけ特別メニューで、俺や他の人達のサンドイッチには野菜だけでなく肉なども入っていて、ちゃんと調理されている物だけど。
一部の人他達は、街の外でこんなに美味しい物が食べられるなんて――と、感動しているようだけど。
あと、一応焚火などもしていて、温かいスープなども提供されている。
これも、カーリンさんのお弁当に入っていた物を温め直したものだ。
カーリンさんありがとうございます。
ちなみに、エルサが小さくなっているけど背中に乗せていた荷物などは、一度降ろしている。
また出発する時に積み込みなおす必要があるけど、体を大きくしたままのエルサだと食べる量も増えてしまうので、仕方ない。
人手はあるから、大きな手間って程でもないからいいんだけどね。
ともあれそんな風に食事をしながら休憩していると、アマリーラさんとリネルトさんがこちらに近付いてきた。
「リク様、少々ご相談が」
「どうしましたか、アマリーラさん。リネルトさんも」
「このままですと、おそらく獣王国王都に到着するのは、夜も深くなった頃かと予想します」
「……そうですね。国境から獣王国の王都までどれくらいかはっきりとわかりませんが、大体それくらいだと思います」
実際に行った事がないから、体感として国境から王都までの距離はわからない部分が多い。
でも一応、話しとしてはこれくらい――みたいな事は聞いているけどね。
多分エルサだと体感で国境から二時間も飛ばないくらいで到着すると思う。
今は日が傾き始めて少し暗くなった頃で、ルジナウムを越えたあたりで、日が完全に沈む頃かもう少ししたくらいで国境の関所に行けるだろうと思う。
そこから二時間かからないと言っても、かなり深い時分になるのは間違いないと思う。
準備とかあったから、出発が少し遅めだったからね。
朝早く出発していたら日のあるうちに王都へ到着したんだろうけど、獣王国の情報を知ったのが蒜山語だったし、そこから急いで準備したんだから仕方ない。
「獣王国の状況もさる事ながら、暗い深夜に到着するのは少々問題が……」
「あるんですか?」
「アマリーラさんは問題と言っていますがぁ、暗いとエルサ様が判別できづらいと思うんですよぉ。人間より夜目が効く獣人などもいますけど、それにも限界がありますしぃ、エルサ様の飛ぶ高さまで、かがり火程度で照らす事はできませんからなぁ」
「考えてみればそうですね……暗いと、それから突然現れたようにも見えるかもしれません」
よくよく考えればそうだった。
空から突然エルサのような大きな何かが近付いて来るなんて、魔物と間違えられてもおかしくない。
獣人も当然そうだけど、基本的に空を飛ぶのは魔物ばかりの世界だからね。
一応獣人の中には鳥獣、つまり鳥の羽を持つのもいるらしく、少しくらいは飛べるらしいけど、それでも人の頭の高さより少し上くらい……大体二、三メートルってところみたいだから。
あと、戦闘中だろうから巨大な何かが空から近付くだけでも、怪しまれたり刺激しちゃったりする可能性もあるしね。
「真っ暗な夜の闇の中から、突然エルサが来たら……間違えて攻撃されそうですね」
「エルサ様ならば、それくらいはなんともないでしょうが、獣人がエルサ様やリク様を攻撃するというのは、私には我慢ありません」
「そこは、自分ではないんですね……」
想像したのか、ちょっと悔しそうにするアマリーラさん。
ただ俺やエルサではなく、王女という身分であるアマリーラさんを攻撃した事に対して、とかではないのがらしい気がした。
「あとぉ、到着後すぐに魔物と戦うにしてもなんにしてもぉ、暗いとリク様やエルサ様の御威光を知らしめるのには不十分だと思うんですぅ」
「あぁ、それは由々しき事態だな!」
「えーっと……」
つまり、いくら夜目が効く獣人がいとしても夜に戦うと、暗くて俺達の戦いがよく見えないって事らしい。
まぁアマリーラさんやリネルトさん的には、獣人の国の人達に力を示したい、見せつけたい的な思惑があるらしいから、ちょっと納得。
エルサに乗って空から接近する事も、力を示す事で問題にならなくする、というのもあるらしいのでまぁ見えないというのは多少なりとも問題らしかった。
「じゃあ、どうします? 途中でもう一度休憩、夜を明かしてからの方がいいですかね?」
「そうですね、明るいうちに到着できればと思いますので」
「あとぉ、獣王国の状況なども確認したいのでぇ、国境の関所か、その付近の村や街あたりで泊まるのがいいかとぉ」
「ふむ……夜を明かすついでに情報も集めると」
「はい。アテトリア王国にまで来ていない情報なども、獣王国内ではある程度広がっているはずです。関所などは、特にそういった国内の情報も詳しいかと」
情報収集も兼ねて、どこかで夜を明かす方がいいという提案ってわけだね。
確かに、俺達は姉さんというかアテトリア王国に来た援軍要請の返答だけで行動しているから、情報に乏しい。
アマリーラさんもいる以上、こちらに情報を偽るなんて事はないだろうけど、それでも詳細などはほとんど記せなかっただろうし。
「いざ王都に到着したとしても、状況をある程度知っているかどうかで対処、動きが変わってきます」
「はいぃ、アマリーラさんの言う通りですぅ」
「……わかりました。予定ではこの休憩後は関所を経由して王都に直行するつもりでしたけど、その予定は変更ですね」
「申し訳ありません、リク様の予定を変更するような提案を」
「いえ、謝る程でもないですよ。アマリーラさんとリネルトさんの提案はもっともですし」
まぁアマリーラさんにとっては、暗いと俺達の力を知らしめられない、というのが大きいんだろうけど。
さっきもリネルトさんがそう言った時に、大きな反応をしていたから。
力を知らしめるかはともかく、夜間に空から近付いて不審な扱いはされたくないので、素直に従うよう決める。
明るくても、巨体のエルサが空を飛んでくるだけで不審だとは思うけど、暗いよりはマシだろうしね。
「それじゃあ、村や街だとエルサを知らない人達を驚かせるかもしれないですし、関所付近、もしくは関所で一泊するのがいいですかね。ただ、この人数で行ってすぐに泊まるような場所があるかどうか……」
提案の中に関所で、というのがあったからそれにしようと思ったけど、三十人の集団が泊まれるような場所があるかな、と話していて疑問に思った。
なければ、野営して夜を明かすのでもいいけどね。
そのための物は念のため持ってきているし。
ただ、確実に魔物との戦闘が待っているから、できればちゃんとした施設とかに泊まって、皆は疲れをしっかりとっていて欲しくはあるけど。
「問題ありません。関所は全てではありませんが基本的に宿泊施設なども併設されていますので」
「関所から村などが近いとは限りませんからねぇ。国境を越えて入国、または出国して一旦泊まってから、というのは結構多いんですよぉ。アテトリア王国と面している関所なら、友好関係にあって出入りが多いので、それなりの施設があったはずですねぇ」
「私やリネルトも、アテトリア王国へ向かう際に利用しました。街でそれなりの宿屋と同じくらいの宿泊施設があったはずです」
「それなら、安心ですね」
二人に言われてそれもそうかと納得する。
お互いの国の関所は、帝国だけでなく他の国々と面している所と同じように、緩衝地帯があるにはあるけど、それはともかく。
関所が村や街に隣接している事は少ないようで、場合によっては泊まってから翌日どこかの街や村を目指すというのが一般的なんだろう――。
一旦関所に泊まってから、改めて獣王国の王都へ向かう予定に変更されるようです。
別作品も連載投稿しております。
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