助けた女性達の近況確認
「汗とか埃を付けた状態で食べるのは、キューに失礼なのだわ」
「いつからエルサは、キューにそんな敬意を払うようになったんだ……今までそんな事を気にせずバクバクと食べていたのに」
「そんな事ないのだわ。私はいつも、キューに対してだけは感謝の念を忘れず、尊敬を込めて丁寧に食べているのだわ」
「だけって、他にも色々あるだろうに……」
あれだけいつも大量に食べているエルサの姿には、そんな気持ちがあるようには見えなかったんだけど。
キューが好物になって、食べるのが楽しいとか嬉しいって気持ちはもちろんあるだろうけど。
「そんな細かい事はどうでもいいのだわ」
「どうでもいいって……」
「早く部屋に戻ってお昼を食べるのだわー。お腹が空いたのだわー」
「急いで戻っても、モニカさん達がまだだろうからそれを待たないといけないぞ?」
「むぅ、モニカ達は長風呂なのだわ……」
これから昼食だけど、モニカさん達はまだ大浴場から出てきていないだろうからなぁ、いつもの事だけど。
汗を流すだけで、打ち身の影響もあって湯船には浸かれなくとも、やっぱり女性のお風呂は長い……まぁ、カラスの行水という程じゃなくとも俺みたいにザっと洗い流すだけでなく、髪のお手入れとかあるだろうしね。
それにやっぱり食事は、皆が揃ってからがいい。
ともあれエルサと適当な話をしつつ、自分の部屋へと戻った。
「早くキューが食べたいのだわ~」
部屋に戻って、ヒルダさんにお茶を出してもらいつつ、お腹が減ったからかぼやくエルサ。
毎回数本どころか数十本は食べているのに、それでもまだ食べたいようだ。
「いつもあれだけ食べまくってるのに、飽きないのは凄いとは思うよ」
「キューに飽きるなんてとんでもないのだわ。いつも、食べるたびに新しい発見があるのだわ」
「新しい発見があるような物かなぁ?」
キュー、つまりキュウリが美味しいのはまぁわかるし、ポリポリとした食感が好きというのもわかる。
ただ毎日毎食食べ続けて、飽きないだけでなく新しい何かを知る事ができるような物とは思えないんだけど……。
「とりあえずもう少しでモニカさん達が戻ってくると思うから、おとなしく待ってて……と。そうだヒルダさん」
「はい、なんでございましょう?」
「ヴァルニアさん達は、どんな感じですか?」
世間話というか、少し気になったけど……俺のかなり漠然とした質問に、それでもヒルダさんは考えを察してくれたようで明確に答えてくれる。
「そうですね……まだまだ足りない部分はございますが、モニカ様方のために一生懸命動いているようです。粗相の回数は、リク様とお会いしてからグンと減りましたね」
「俺とですか?」
「はい。やはり、リク様のお役に立てるかどうかという事が重要なようで、あれ以来これまでにない程お世話に打ち込んでいるようですから。今までは、本当にリク様のお役に立てるのか、自分達がこの王城で働いていてもいいのかなど、迷いがありました」
「迷い、ですか」
無理矢理さらわれて、本人達には直接酷い事はあまりされていなかったとしても、色々とあっただろうし……そこから、そんな自分が国の中枢、王城内で働いていてもいいのかとか考えていたのかもしれない。
俺と会った事で、というのはよくわからない部分があるけど、でもその迷いとかがなくなった、もしくは小さくなってくれたのなら良かったと思う。
粗相がどういう事を指して言っているのかわからないけど、要は失敗も減ったという事だろうし。
「とりあえず、心配はなさそうですね」
「えぇ。もし不足する事があれば、私が厳しく指導いたしますので」
「ははは……」
目を細めてそう言うヒルダさんに、妙な怖さを感じて乾いた笑いになる。
実際にはないけど、眼鏡をクイッと上げて厳しい雰囲気を出しているような感じだ……。
俺のお世話をしている時は別だけど、姉さんに注意している時や、ヴァルニアさん達と接している時のヒルダさんはなんだか、細めの眼鏡が似合いそうだな、なんてどうでもいい事を考える。
まぁヒルダさんはまだまだ無縁だろうけど、老眼はあれど、後天的な近眼が少ないらしいこの世界には、加工技術が未熟なのもあってまだ眼鏡という物は作られておらず、完全な俺の妄想になるんだけどね。
ちなみに、近眼が少ないのは液晶などを含めて、近くでジッと物を見る事が少ないからだと思っている。
地平線とか、遠くを見る機会が逆に多くて目に負担が少ないんだろうなって。
あれだ、広大な自然の中で生活する遊牧民だから、驚異的な視力を持つとして知られる民族みたいな感じかな。
さすがに、あそこまで極端な事じゃないと思うけど……まぁ結局これも、俺の想像だけどね。
「ヴァルニアさん達は頑張っているとして……それじゃあ、ナラテリアさんとカヤさん。それからミラルカさんはどうですか?
「そちらの三人、特にナラテリアさんとカヤさんに関しましては現在、必要な教養を身に着けさせております」
「教養ですか?」
「リク様のクランに所属し、運営するための職員となりますから。冒険者のように外に出て魔物と戦う、というわけではありませんが、それとは別に必要な知識などもございます。もちろん、リク様のクラン員になる以上、不足しないよう徹底して教育しております」
「……えっと、程々にお願いしますね?」
「はい。元々、ある程度の計算などはできていますから、数日中には問題なく仕上がるかと。こちらも、リク様と直接お会いして話した事により、以前には見られなかったやる気を見せております。もしかするとヴァルニア達よりもですね。あちらのように間接的にではなく、直接リク様のお役に立てるというのが良かったようです」
眼鏡クイッの教育ヒルダさん再びだ。
ナラテリアさんとカヤさんは、事務員としてクラン員になる事になっているから、色々学ぶ事があるんだろう。
あまり詰め込むのもどうかと思うけど、数日中という事ならクランが開始するまでには間に合わせてくれそうだ……その分、ナラテリアさん達は辛いかもしれないけど。
本人達にやる気が溢れているようなら、乗り切ってくれるだろう。
ちなみに、ヒルダさんがナラテリアさん達にはさん付けで、ヴァルニアさんの方は呼び捨てなのは所属の問題だろう。
ナラテリアさん達は一応俺の部下……みたいなもので、ヴァルニアさんは王城所属、ヒルダさんの部下見たなものだろうから。
「な、成る程。えっとそれじゃあ、ミラルカさんは……」
「ミラルカさんは、兵士の訓練に混じって毎日血を吐いております」
「え、血を!?」
怪我くらいはともかく血を吐くなんて、よっぽどの事だけど……どれだけ過酷な訓練をしているんだ?
俺だけでなく、モニカさん達も訓練場にいる他の兵士さんに、訓練しているところを見られてむしろ引かれてしまうくらい厳しいのに、それでも血を吐くなんて事は当然ない。
なんて考えつつ、驚いて大きな声を出してしまう俺に、ヒルダさんは頭を下げて言い直すのだった――。
血を吐く、というのは本当にそうではなく比喩的な表現なのかもしれません。
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