やる事いっぱい
帝国の現皇帝の事はともかくとして……姉さんの言葉通りに、常に正しい事を考えてそれが選択できれば苦労はしないだろう。
国全体の事を考えれば、国民の一部にとっては良くない事、正しくないと思う施策だってあるだろうしね。
つくづく、貴族にならないかという誘いを断って正解だったと、姉さんの話を聞いていて思う。
俺が貴族になって領地をもらったとしても、そこで暮らす人達のためにと考えるのは難しいだろうから。
できるとしたら、俺なら魔物の脅威をできる限り取り除くとかそのくらいで、結局は武力行使でしか領民にできる事はなさそうだ。
それはそれで魔物の脅威にさらされないという意味ではいいのかもしれないけど……その他の事が確実におろそかになるだろうからね。
クランでもどうしようと思うばかりなのに、俺が人の上に立って領地と領民を治めるなんて、できそうにはない。
忙しそうにあれこれやったり考えたりしている、姉さんを始めとして、これまで関わった貴族の人達を見て、面倒そうだ……というのも大きな理由ではあるけどね。
何はともあれ、雰囲気が暗くなりがちだったので深い話はなしにして、それからは和やかになるように努めて、しばらく俺の部屋で皆と話した。
今更だけど、もう俺の部屋ってたまり場のようになっているよね? 姉さんが安心してのんびりできる場所が、王城内で少ないからって言うのもあるんだろうけど……まぁ皆と話すのは好きだから、別にいいか。
「……貴族は面倒そう、なんて考えていたけど……俺は俺で面倒な事を色々と抱えちゃっているよなぁ」
夜も更け、エルサとお風呂に入ってモフモフの手入れをした後、寝入ったエルサのモフモフを撫でつつ、ベッドに横になったままで呟く。
貴族とか偉い人達はそれはそれであれこれと忙しいんだけど、俺もあまり人の事は言えない状況だからね。
戦争が迫っているからその準備、と考えればまぁ当然でもあるし、今がそうなだけでいずれ落ち着くとは思うけど……。
「明日は、クランの建物が落成間近だから確認しに行って……あぁ、訓練もあるし、結界の方も練習しないといけないか」
クランで使う建物、新しく準備してもらっているんだけど、それがそろそろという連絡をマティルデさんから、王城に戻った後に受けていた。
基本的に、向こうからの要請で作るクランなのもあって、建物やその中身の事は主にモニカさんが交渉して、マティルデさんの方の任せっきりになっているけど、確認くらいはしないといけない。
ちょうど、王都周辺に点在していた魔物の集団もある程度落ち着いたようだし、緊急性は少なくなっているし……というわけで、明日は魔物の討伐はお休みだ。
モニカさん達も、王都に戻って来てからはそちらで動く事が多かったし、休息も兼ねて同じくお休みだけどもちろん訓練はある。
その訓練、強度を上げると言ったエアラハールさんの言葉通り、かなり辛いというか痛い方面に発展してしまっているから、考えるだけで今から億劫だ。
それでも、やらなきゃいけない事だとエアラハールさんを信じて、訓練を受けるだけなんだけどね。
結界の方も、まだ張れるようにはなっていないけど、そろそろかも? とユノやロジーナが言っていた。
無理をすると、魂の傷だとかが原因で強度の上がった訓練並みかそれ以上に、体へ負担がかかってしまうようだから、そうするつもりはないけど……そろそろ結界を使えるくらいにはなりたい。
「まぁ、その結界も必要ではあるだろうけど、戦争の準備としてはもっと他の事ができるようになった方がいいと思うんだけどなぁ」
味方を守るため、結界はかなり有用だと思う。
けど戦争と考えた時に絶対必要かと問われると、少し疑問があったりもする。
それよりも、他の事ができるようになるために頑張った方がと思ったりもね。
なぜユノ達がまず結界を、と言うのかはわからないけど……まぁ何かに必要なんだろうと自分を無理やりにでも納得させておく。
別に戦争でこちらを不利にしようだなんて考えてはいないだろうし、無駄な事じゃないんだろう。
できればもっと、攻撃に使えるような魔法が使えるようになったり、それこそ魔力弾は使えるんだから、そちらの練習とかの方が良さそうではあるけど。
「そういえば、魔力弾は使えるんだよなぁ。あれは魔力をそのまま放つ感じで、魔力を変換して事象を起こす魔法とは別物って事なんだろうけど」
もしかしたら、それがあるからユノ達は結界の方に注力しているのかも。
攻撃という意味では、威力その他の問題はあれど、魔力弾があればなんとかなるだろうし……そもそも、攻撃性の強い魔法を使うと規模が大きくなりすぎて失敗するのが俺だし。
あと他にも、魂が完全に修復していない状態で使えそうなのが、そもそも結界くらいしかないだけ、というかのうせいもあるけどね。
「なにはともあれ、やる事がいっぱいだなぁ。あぁそうだ、クランに入る冒険者さん達の方も確認しなきゃいけないし……ルギネさん達とか、連れて来るだけ連れて来て放ったらかしになっているっけ。他にも……」
「だわぁ……リク、うるさいのだわぁ」
ブツブツと呟いて、やる事を列挙しているとエルサが寝言のように抗議された。
小さな声であっても寝ている傍であれこれ言っていたら、確かにうるさいだろうし、夢見も悪くなりそうだね。
そう思い、寝ているのか起きているのかわからないながら、口をモゴモゴさせているエルサに小さく謝って、俺も寝る事にした。
やる事がいっぱいあるんだから、寝不足にならないように気を付けないとね――。
「いちち……まったくユノとロジーナはなんの恨みがあるのか、遠慮なしにかかって来るから大変だぁ」
翌日、昨日と同じくくいょうどを上げた訓練後、汗を流すための大浴場にて、お湯が打ち身にしみる痛みに顔をしかめる。
昨日から残っていた打ち身の痛みも相俟って、さらに全身が痛むから、相変わらず湯船には浸かれないね。
でも俺は治りが早いようで、昨日の打ち身の方は微かに痛みはあっても見た目的にはほぼ治っている。
けどモニカさん達は……ちょっと見せてもらったけど、腕とかにもくっきりと昨日のが残っている状態で、今日もさらに新しい打ち身が増えているようだった。
大浴場で大きな湯船に浸かるのを楽しみの一つにしている女性陣にとっては、打ち身のせいで浸かれないのは、痛み以上に辛い事かもしれない。
いやまぁ、痛みも俺以上に感じているんだろうけど。
「ふぅ、さっぱりした」
汗を流し終わり、大浴場から出て一息。
これから昼食だし、やっぱり食事は身ぎれいにしていた方が美味しいよね。
打ち身の痛みは強かったけど……。
あと、満足にお風呂に入れない状態での食事というのも、冒険者になってからある程度慣れているけど、やっぱりそこはね。
まぁ俺達はエルサがいてくれるから、長期間の移動なりでずっと野営を続けるなんて事もほとんどないから、他と比べるとかなりマシな方なんだろうけどね――。
リクはご飯とお風呂だと先にお風呂に入る派なのかもしれません。
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