リクを利用しようと考える者は許されない?
「リクとの話、獣人の国との協力。獣人に関しては、余の勇み足だったのは皆に謝ろう。アマリエーレの事もあって、気が急いてしまった」
私の言葉に、この部屋にいる者達はそれぞれ多少渋い表情になりはしたけど、獣人の国への協力要請が受けてもらえそうだと、概ね良い方向で受け止められてはいるようだ。
結果良ければ全て良し、に近いかしら? いえ、終わり良ければ総て良しだったからしら? まぁどっちでもいいわね。
あれは、りっくんの決意を聞いた事で触発されて、私も何かできないか……というより、りっくんに格好いい所を見せたい一心だったから。
一応、議題としては獣人の国へ協力を要請するという話は出ていたのは間違いないけど、それもまだ検討段階で、実際に使者を送るなどの話にすらなっていなかったものなのに。
友好関係を築いている国と協力して防衛するっていうだけならまだしも、攻勢に出る可能性も高くなっていたから、躊躇していたのよね。
帝国にはアテトリア王国程ではなくとも、獣人が入って暮らしている……さすがに、友好的ではないし多少の差別があるようで、傭兵になる獣人はいないし、暮らしている数もかなり少ないけど。
でも、アマリーラはりっくんに王女である事を話していたなかったようだし、ちょっとだけ悪い事をしてしまったかもしれないわ。
りっくんを慕って、忠誠を誓う者に悪い子はいないのに……。
「いえ。陛下の判断は正しかったかと。いつ帝国と衝突が起こるかわからない現状、ティアラティア獣王国の協力要請は早い方が良いでしょう」
「えぇ。あちらに使者を送るにしても、日数がかかりますからな。王女殿下がいらっしゃるとは思ってもいませんでしたが、協力を約束していただけたのも大きいかと」
「うむ、そうだな。向こうとは細かなやり取りをする必要があるだろうが、大きく手間を省略できた」
片方は、国内の農業を管理する者、もう片方は国内流通を管理する者、その二人が他の者よりも早く口を開き、獣人の国……ティアラティア獣王国への協力要請を肯定する。
私の勇み足な部分もあったけど、この二人は元々肯定的だったからってのもあるだろうけどね。
戦争が長引く程に被害が大きくなり、農業や流通に影響が出る事が懸念されるため、早期決着を望んでいたから。
とはいっても、他の者達も概ね肯定的であり、戦後に獣王国に対してこちらが不利になるのでは、と懸念していた者からも反対意見などは出なかったわ。
それはおそらく、我がアテトリア王国が戦争を有利に進める事の利点を理解しているだけでなく、先程のりっくんの圧力に押されて、という部分があったからだと思うの。
あれだけ圧倒的な魔力を目の前で見せられて、反対なんてできないわよね。
さすがりっくんだわ、意図していない事だろうけど、その場にいなくなっても私に有利になるような事をしてくれるわ。
後で、思いっきり頭を撫でてあげないと……嫌がるかしら? 年頃の男の子は色々と難しいし。
「しかしさすがリク様ですな。救国の英雄だけあり、あの方が味方に付いて下さるだけで、我が国の勝利は約束されたようなもの。勝利後も是非、我が国に留まっていただき多大な利をもたらして欲しいものです」
獣王国に対する協力要請の否定派だった一人が、そういった。
帝国との繋がりはなかったけど、凶行を起こしたバルテルとの繋がりに関する疑いが、完全に晴れていない者だったわね……。
まったく、りっくんが凄いからってそれを利用して、自分達にも利益をもたらしてくれるなんて、短絡的な……黙らせておく必要があるわね。
他の者も、一部で似たような事を考えてそうなのもいるから。
りっくんが素直で可愛いからかしら? 男女比でいうと女の方が多いようだけど。
冒険者ギルドのマティルデと言い、どうにもりっくんは女から見ると取り込みやすく見えるのかしら?
まぁ、マティルデは割と本気な様子で、利用とはちょっと違うみたいだけど……あちらは、モニカちゃんがいるから手遅れよね。
私も、さすがに義妹がマティルデになるのはちょっと微妙だし。
「……ふぅ。お前達は、本当にリクが自分達の利になるだけの存在と考えているのかしら?」
「い、いえ、そんな事は……」
思わず鋭くなってしまう私の目を見て、たじろぐ者達。
この部屋にいる私以外の十五人程、そのうち数人程度だけれど……それ以外は、バルテルの凶行後に私が直々に選んだ精錬潔白な者達だから、問題はないのだけれど。
むしろ、私に同意するように頷いているわね。
「リクは冒険者だ、それを決して忘れてはならない。国のために働かせるなどもっての外だ」
「し、しかし……帝国の事がなかったとしても、リク様は国を良くしようと考えて下さっています」
「それは、直接リクから聞いた事ではないだろう? 利害の一致のようなものだ。偶然我々だけでなくアテトリア王国にとって、利になる行動であっただけにすぎない」
りっくんが頼まれたら断れないとか、困っている人を見過ごせない優しい子だから、っていうのもあるわね。
まぁ私自身、それがあるから前世で姉だった事もあって色々頼んじゃうけど。
でも私はいいの、りっくんを決して悲しませない、決して裏切るような事はしないのだから。
宰相やヒルダからは狂気だの矛盾だのと、りっくんのいないところで直接言われていたりするけど、狂気だろうと矛盾していようと、一度死んで生まれ変わり、目の前に何より大切な、自分の命より大事な弟が現れたんだから。
私と一緒にいてくれる、りっくんの近くにいられる事が全てなの。
そんな私が、ここにいる者達がりっくんを利用して甘い汁を吸おうだなんて事、許せるわけないじゃない。
「それに考えてもみろ。もしリクが気分を害して、我々の敵になった時どうなるか……」
「そ、それは……」
「もちろん、今ここでお前達に注意をしている以上、私はリクの側に付くがな。それがなかったとしても、誰があのリクを止められると思う? お前達は,街どころか国すら滅ぼしかねない魔物を倒せるリクを、どうにかできると本気で思うのか?」
「い、いえ……」
どうやらこやつらはようやくりっくんの凄さを思い出したらしく、先程りっくんが可視化された魔力をお漏らししていた時以上に、体を震えさせ始める。
まったく、遅いのよ……のど元過ぎれば熱さ忘れる、だったかしら? りっくんが見えなくなったら、すぐにそれがそこらの誰かに御せる力ではないという事を忘れるのだから。
基本的に、りっくんが物腰柔らかで素直なのも、欲を刺激するのかもしれないわね……言葉巧みに誘導すれば、なんとでもなると思うのかも。
「私が手を下さなくても、リクの反感を買えば、それだけで多くの者を敵に回すわよ。どれだけ、リクがこの国の多くの民に慕われているか。それに、先程の様子……下手をしたら、ティアラティア獣王国もそこに加わるでしょうね。獣王国を敵に回す事がどういう事か、わからない貴方値ではないだろう」
「は、はい……」
リク大好き女王陛下は、前もって利用しようと欲深い考えを刈り取ります。
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