燃え盛る家への突入
「ちょっとすみません!」
「リク様!?」
兵士さんの一人が建物に放出している魔法の水を、間に飛び込んで全身に浴びる。
なんとなく、映像で見た事のある火事場に飛び込むための準備だ……防火着なんてないから、どれくらい役に立つかわからないけど。
「よし! ありがとうございました!」
「は、はぁ……」
俺が何をするのかわからない兵士さんは、ポカンとしているけど……まぁ説明している余裕はないので、とりあえずお礼だけ言ってその場を離れた。
「ん……と……よし、行くか!」
準備運動……が必要なのかはともかく、火の中に自分から飛び込むなんて当然初めての経験なので、適当な屈伸運動をしながら心構えだ。
気合を入れるため、ついでに両手で頬も軽く叩いておく……力加減を失敗して、ちょっと痛かったけどおかげで頭がはっきりした気がした。
「誰か! 誰か私の子供を……助けて……! 助けて下さい……う、うぅ……」
なおも叫び続ける女性だけど、ずっと抑えている人達を振り切ろうとしていたからか、体力が尽きかけて、力なくすすり泣きも始めていた。
「大丈夫です、俺が助け出しますから!」
「あ、あなたは……?」
「では!」
安心できるかはわからないけど、一応女性に声だけかけて、燃え盛る家へ向かって走る。
戸惑う声が背中から聞こえた気がするけど、細かく説明している暇はない……。
「おっと!……ラッキー、なのかな?」
走る俺の頭上から、弾けたのかなんなのか火のついたままの板が飛んで来る。
「つぅ……熱い……けど、まだ大丈夫っ!」
その板を避けるのではなく火のついていない部分を掴んで、受け止める。
厚めの板はまだ燃えていて、火がない部分もかなり熱く掴んだ手を通じて痛みと熱さが駆け上る……でも、まだ火傷にまでは至っていないはず!
そう言い聞かせるように考えながら、板を振りかぶる。
「どっせぇいっ!」
家の玄関と思われる場所は、轟々と激しく燃え盛っていたため、外壁の中で比較的火の手が弱い部分を見つけて、そこへ思いっきり板を打ち付ける!
ガラガラと、音を立てて崩れる壁と板。
「助かったよ! っと!」
必要はないかもしれないけど、とりあえずバラバラに砕けて地面に落ちて燃える板にお礼を言いつつ、壊した壁から内部へと突入。
「……あっついな。当然なんだけど」
家の中は、当たり前のように火が燃え盛っているうえ、煙が充満していて視界が悪い。
「んっ……!」
水で濡れたままの服の裾を少しだけ破って、ハンカチ代わりに口へと当てる。
さすがに魔力がどうのこうのと言ったって、煙を吸い込んで一酸化炭素中毒になったら、子供を助けるどころか俺まで危険だからね。
「集中して、魔力を放出するように……」
できるだけ姿勢を低くしつつ、突入した少し広めな部屋から移動。
床にも火が広がっているため、移動のための通路なんてないけど、なんとなく俺が纏っている魔力を意識して放出する。
すると、風でも巻き起こったかのように俺から離れるような動きをする炎。
それで道が開けるわけではないけど、火の上を歩いてもこちらに燃え移ったりしなかったので、そのまま進む。
魔法的な現象は、最初の爆発と爆炎だけだったと思うから、この家が燃えているのは関係ないだろうけど……それでも意外と役に立つもんだね。
なんて、魔力を意識して魔力弾とは違う放出の仕方を覚えるきっかけをくれたロジーナと、ユノに心の中で小さく感謝する。
「確か、エルサは……」
家の奥、一際激しく燃え盛って炎が噴き出している部屋を通過し、一番奥の部屋へ。
「こんな事がなければ、家族で笑って過ごしていた場所なんだろうなぁ……せい!」
なんて呟きながら、燃えている部屋の扉をけ破った。
「ひっ!」
「あぁぁぁぁぁぁ!」
「大丈夫、助けに来たから!」
部屋の中から、俺がけ破った扉に怯える声と幼い子供の泣く声が響く。
二人共、エルサの情報通り同じ場所にいてくれた。
探す手間が省けて大助かりだ。
「つぅ……」
「あぁぁぁぁぁぁぁ!」
炎を魔力と手でかきわけるように進む。
熱さと痛みに耐えながら、ようやく見えたのは泣き叫ぶ小さな子供を抱きしめ、火の手から守ろうとしている女の子だった。
「あぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「う、うぅ……」
ただひたすら泣き叫ぶだけの小さな子供の方は、女の子に抱きしめられているからか、パッと見では怪我などはしていない様子……単純に怖くて泣いているだけなんだろう。
それに対して、女の子の方は顔が煤で汚れ、服もあちこちが焼けて破れ、見えている肌は痛々しい火傷を負っているようだ。
「……女の子に火傷の跡が残ったら大変なんだぞ……まったく。大丈夫、助けに来たよ」
「ほ、ほんとに、助かるの……?」
「うん。俺が来たからには絶対に助かるよ」
呟きながら、上下左右、さらに後ろからも迫る炎を魔力放出で防ぎながら、手を差し伸べる。
女の子は、絶望していたんだろう……目の前に現れた俺に驚いているのもあるだろうけど、俺が声をかけてようやく目いっぱいに涙を浮かべた。
「泣いている暇はないよ? ここから抜け出したら、思いっきり泣けばいい。もう泣いている子もいるけど……」
「う、うん……ぐず……」
ずっと、声を枯らさんばかりに泣き続け散る小さな子供の方は、俺が来ているとかそう言うのは関係ないようだけど、女の子の方は意外と冷静に俺の言葉を受け止めてくれた。
まぁ小さい子供の方は、まだ幼稚園にも行かないくらいの幼さに見えるから、仕方ないけどね。
「よしよし、強い子だ」
気丈に頷き、泣きそうになるのを堪える女の子の頭を、優しく撫でる。
さて、二人の無事は確認したし、後は脱出するだけ……なんだけど。
「ちょっとごめんね。ちゃんと掴まっててね?」
「わ、わかった……」
幼い子供を抱きしめている女の子ごと、両手で抱え上げる。
捕まるように言うと女の子が俺の服をぎゅっと片手で掴み、もう片方の手は絶対に離さないという意思が感じられるように、幼い子供をさらに強く抱きしめた。
さて、どうするか……突入したのはいいけど、脱出方法を考えていなかった。
後先考えないと笑わば笑え。
周囲の状況的に、あと一分も俺が来るのが遅ければ、女の子も幼い子供も両方火に炙られていた可能性が高い。
それくらい、近くまで火の手が回って来ていた。
今は俺が魔力放出で少しだけ遠ざけているけど、部屋に入った時には女の子を火が囲んで足先にまで迫っていたようだからな……。
それにしても、どうやって脱出するかなぁ。
俺一人なら、魔力放出で何とでもなると思うけど……抱えた女の子と幼い子供は、そんな防御策はとれない。
多分、俺は燃えなくても女の子達には火が移ってしまうだろうし、考えている間にも天井の一部が崩れ落ちて来るわけで。
さらに退路が塞がれつつあるうえ、着実に家の倒壊が迫ってきている。
もうやるしかない、よね!
「……ん、よし。ちょっと目を閉じて、掴まっててねっ!!」
「わ、わか……ひゃあ!!」
「あぁぁぁぁぁぁぁ!!」
悲鳴と泣き声を聞きながら、絶対に落とさないよう抱き上げている手に力を込めつつ、外へ向かって一直線に燃え盛る炎へと駆けだした……!
これまで力任せに問題解決をしてきたリクの脱出法は一つ……!
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