半死半生の不審者
「まぁ、そうだね。爆発事件が起こってから、引き起こす対象を早急に割り出す方法が必要だったし……」
王城に戻ってすぐ爆発事件の話を聞いてから、カイツさんは爆発する人間を判定するための魔法具の開発を急がされている……本人も喜んでやっているからいいんだけど。
助言にはロジーナの言葉があったからだろうけど、それにアルネも一緒に研究をしていたんだろう。
「そろそろ、開発の目途が立ったのもあるのだが、そこに爆発する可能性のある人間を捕まえたというじゃいか。これは調べねばと思ってな」
「それでアルネが。カイツさんも来たがったんじゃない?」
「そうだが、あいつはワイバーンあの相手と魔法具開発の最終調整に忙しいからな。他の者達もそうだが、手が離せん。カイツ一人ならなんとかならん事もないが……それだとここに来るのはもっと遅くなっていただろうからな」
「あー……そうかもね、ははは」
リネルトさんも兵士さんも、急いできたようだからカイツさんが置いて行かれる可能性もあったしね。
アルネみたいに、長期間研究室にこもっていたわけではなく、センテでは戦ってもくれたから、体力的には大丈夫だろうけど……もし途中で道を逸れたりしたら、城下町で迷子になってしまいそうだ。
できるだけ早くここに駆け付けるなら、カイツさんよりアルネが適任だったってわけだ。
「それで、その爆発すると思われる不審者だったか。そいつはどこに?」
「あぁうん、この家の中だよ。これから、地下に移動させるけど……」
話の流れもあったけど、アルネの興味が不審者へと向いたようだ。
疲れている様子はすでになく、目が爛々と輝いているのは研究への興味などからだろう。
とりあえず、初めて会うアマリーラさんにアルネを簡単に紹介しつつ、家の中へ入る。
ちなみに途中で聞いたけど、アルネは王城内で魔法具開発の報告を姉さんにしている時、アメリさんとリネルトさんが来たらしい。
それで話を聞いて、一応研究室の方やフィリーナには軽く話をしてから、ここまで来たってわけだ。
アルネの事だから、あまりちゃんと説明してそうにないけど……その辺りは、俺が返ってから皆に話した方がいいかな。
なんて考えつつ、不審者の状況やエルサが調べた事、結界で包む直前に起こった事などをアルネに話しつつ、不審者の所へ。
中隊長さんは、鍵を持ってきた兵士さんと一緒に地下への扉を開けるため、そちらへ行ってくれた……数が多いから、ただ空けるだけでもそれなりに時間がかかりそうだし、先に準備してくれるって事だろう。
鍵は全て違う物で、どの扉にどの鍵が合うのかなど確かめつつ開かないといけないっぽいし。
「ふむ……触れてはいけないのだったか?」
「そうだね。エルサ?」
「アルネが触れたら、その時点でドカンッ! なのだわ。多分」
「多分って……まぁ確証はないから仕方ないんだろうけど」
不審者は相変わらずの様子で、これまでと大きく変わったところはない。
結界に包まれてから、少しだけ目の開き加減が小さくなっているくらいだね。
こちらには届かないけど、おそらく濁った声は今も出し続けているんだろう……よく見ないとわからなないくらい、小さく呼吸もしていてまだ結界の酸素はあるようだ。
「なら、結界を解いて調べるのは難しいか……ふぅむ」
「何かわかる?」
「そうだな……半死半生といった状態なのだろう。細かな魔力に関しては、リクやエルサのような探知魔法だったか。あれを使えるわけでもないし、フィリーナのような目を持っているわけではないが。この状態を見ればそれくらいはわかる」
「半死半生……つまり、ほとんど生きていないというか死にかけている状態って事だよね」
まぁ不審者の様子を見れば、半死半生という状態というのもわからなくはない。
ただ怪我などはなく、呼吸もしている。
瞳孔が開いているけど、まだちゃんと生きてはいるとも言えるかな。
「もっと詳しく調べて見ないとわからないが……おそらく、体内の魔力がせめぎ合っているおかげで、かろうじて息をしている状態だろうか。外部から魔力を取り込ませる事で、生命維持をしているのか……それとも外部からの魔力が影響して、死にかけているのか……」
つまり、魔力がせめぎ合う原因になったのは、外部から入り込んだ魔力だろうという事。
これはまぁ、爆発する可能性なども含めてエルサが調べてくれた事で、ある程度分かっていた事だ。
ただし、今の状態になってもかろうじて生きている状態ではあるけど、元々ほとんど死んでいる状態の人間を使ったのか、生きている人間を使って死にかけになったのかという事。
どちらにしても、人道や倫理観なんて吹っ飛んでいるやり方ではあるけど。
「前者であれば厄介だな。いや、後者でも厄介だが……」
「前者の方が厄介というのは?」
「そうだな……外部の魔力が入り込み、せめぎ合っている状態でかろうじて生命維持をしているのだとしたらだが。そうなると、死体からでも作り出す事ができるかもしれない」
「という事は、死体を再利用できるって事になるんだ。確かに、それは厄介かも……」
「こいつがどういう経緯でこうなったかは知らないが、そうなると我々が注意しなければいけ似合事が増えるからな」
元が死んでいた人間を使うのであれば、あまり考えたくはないけど……何かを命を懸けてさせたうえで、もし死んでしまいそうだったら、もしくは死んでしまったら、その後爆発するようにされるわけだ。
それこそまさしく、生ける屍だとか、最初見た時のイメージ通りのゾンビみたいな事になる。
「まぁ、どちらにせよ向こうがどれだけの手間をかけて、仕掛けをするかにもよるがな。日数がかかるようなら、多くは作り出せないが……」
「簡単に作れるようなら、それこそ一度倒したはずの人がこの人のようになって戻ってくる可能性もあるってわけだね」
「あぁ。ともあれ、向こうは作り出す方法を確立したのは間違いないな」
「そうなの? 実験も兼ねて、とかの可能性もある気がするけど……」
爆発の実験なんて、簡単にはできないからね。
だったら、実益も兼ねてこちらにけしかければデータが取れて、相手にも打撃を与えられるから一石二鳥だとは思う。
「向こうが何を考えてこんな事をしているのかわからないし、わかりたくもないから断言はできんが……研究の成果を示すのであれば、完成してから外に出すはずだ。もし不発だった場合、こいつのように簡単に捕らえられてしまうし、相手に手の内を明かす事になる。こいつがリクに発見されたのは偶然だろうが……不発だった場合、今とは違って簡単に調べられもするだろうからな」
「成る程……」
研究者としての側面を持つアルネだからこその意見かもしれない。
でも考えてみると、研究をしている人からすれば完成した状態でお披露目したいという気持ちはなんとなくわかる。
それが人間を爆発させる事だというのは、考えれば考える程気分が悪くなるけども……。
ただまぁ、命令で無理矢理やらされているか、それとも望んで研究開発をしているかで、また違った推論ができそうではあるかな――。
仕掛けを施した人物次第で、どうとでも考えられる可能性があるのかもしれません。
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