ヒルダさんからの提案
「うーん、交渉というかまとめ買いで値引きするのは、俺としても構わないと思うんだけど……どれくらいかとか、詳しい事はわからないなぁ。こればっかりは、どれだけ値引きするかとかを任せるわけにもいかないし」
「購入者にどれだけ値引きするかを任せる販売者なんて、いないしいてもそれは破綻しているわよ」
まぁ、消費者……商品を購入する側は基本的に安い方がいいんだから、極論タダでとか、ほぼ無料に近い値段にしようとしてもおかしくないしね。
お互いの妥協点を探るとかはあるだろうけど、完全に任せるっていうのはあり得ない。
どうしようか……と俺が頭を悩ませていると、部屋の隅で控えていたヒルダさんが進み出て、皆のお茶のおかわりをカップに注ぎながら、口を開いた。
「でしたら、ナラテリアとカヤに任せてみてはいかがでしょうか、リク様?」
「ナラテリアさんとカヤさんに、ですか?」
「はい。あの二人はリク様にもお話ししたように、商売の経験があります。本人達も言っていたように裏方だったという事は、仕入れなどの担当もしていたのでしょう」
「成る程……」
「リク様のクランに入るのであれば、ワイバーンもクランの所属とも言えますし……」
大きく見れば、ワイバーンもクランの一員とみなし、そこから得られる素材もクランの収入と考えられるとヒルダさんは言いたいらしい。
王城の敷地内にいてもらっているけど、ワイバーンの担当は俺って事だし。
つまり、クランとしての商売……という程じゃないかもしれないけど、管轄の一つとして見なせばクラン員になる予定のナラテリアさんやカヤさんの二人が、担当してもなんらおかしくないと。
「それに、あの二人であればリク様に決して損をさせるような交渉をしないでしょう。むしろ、リク様にとって最大の利益になるよう尽力するものと思われます」
「それ、私の方が安心できないんだけど……りっくんの利益を損なわせる気はないけどね。でもヒルダ、あなたはこちら側の所属のはずなのに……」
「私は、陛下の侍女ではありますがリク様のお世話役ですので。陛下は助言などを求めておりませんし、元々そう言ったお話は私の領分ではありませんから。ただし、今はリク様の方が求めておられるご様子でしたし、これもお世話のうちです」
「……間違っていないような、間違っているような……まぁ侍女が予算関係の話に首突っ込むのは、確かに違うわね」
予算とか、そういうのは侍女とかではなくて、別の役職の人が担当するんだろうから確かにヒルダさんが何か言うのは違うのか……。
文官さんとか、国のお金を計算したり色々考えたりする役職の人がいるだろうしね。
「ありがとうございます、ヒルダさん。でも……」
「何か懸念が?」
「えーっと、一応さっき色々話しましたけど。でもまだその二人って、確実にクランに所属してくれると決まったわけではありませんから……多分大丈夫だとは思いますけど、クランの方向性とか目的とか、話しておかないといけない事も、まだですし」
戦争をするとか、クランの目的を聞いてやっぱり所属するのはちょっと……みたいな事になったりしないか、少し不安だ。
ナラテリアさんもカヤさんも、二人も俺の役に立てるのならと言ってくれて、ほとんど承諾したようなものだけど。
それに、まだ確定していない二人に任せるといない所で決めるのはどうなんだろう? と思ったりもする。
「おそらく問題はないでしょう。あの二人……だけでなく、今日あった八人は全員リク様が言えば、どんな事でも聞き入れると思います。それこそ、戦場の最前線へ赴けと言われたとしても」
「それは……さすがに言い過ぎなんじゃ……?」
「あながち、そうでもないんじゃないかと私は見ているわよ、リクさん?」
「えぇ……?」
モニカさんからもそう言われて、ちょっと戸惑う。
ミラルカさんはまぁ、冒険者になって戦う術を身に着けては? という話になったから、クランに入るとい話しを承諾してくれれば、戦うという意味で行ってくれるかもしれないけども。
いやまぁ、そんないきなり最前線へ行けなんて、理由もなしに無謀な事を頼んだりはしない。
……理由があっても、最前線に誰かを送り込むなんて俺にできるかは微妙だけども。
「あの者達は、リク様に助けられるまで深い絶望にいましたから。扱いとしては酷くなくても、経緯が経緯ですので。リク様はおそらく、あの者達にとって差し込んだ希望の光とも言えます。そういった場合、どうなるかはあちらの方々を見ればよくわかるかと……」
「んぐんぐ……ん?」
ヒルダさんが視線で示したのは、エルサと競い合うようにして料理を食べているアマリーラさんだった。
一緒にいるリネルトさんも、ヒルダさんは同じように見ているみたいではあるけど……わかりやすいのは確かにアマリーラさんかもしれない。
というか、相変わらずよく食べるなぁ。
食が細いよりはいいと思うし、食費がーなんてケチな事は言わないうえ、ここは王城で全て用意されるから悪いわけじゃないんだけどね……でも、ユノとロジーナを除けばここにいる皆の中でも一番小柄なのに、どこにはいるんだろうという疑問は常に感じる。
「いやぁ、さすがにアマリーラさん達はちょっと違う話なんじゃ……」
ともあれ、ヒルダさんの話だ。
アマリーラさんの場合は、色々あったけど獣人の考えに基づいて、強さがあってこそだろうし……ナラテリアさん達とはまた違うと思うんだよなぁ。
「大きく違いはありません。聞きましたが、なんでもヒュドラーとの戦いの際には、命を助けたとか。強さへの渇望を持つ獣人であり、それを体現するリク様。そしてヒュドラーを前に絶望の状況から、救って見せた。それはあの八人と近いと言えるのではないかと」
「そう……ですかねぇ……」
というか、俺自身にアマリーラさんの命を助けた自覚がほとんどないんだけど。
まぁヒュドラーとレムレースを前にして、ユノやロジーナでさえ時間稼ぎくらいしかできなかった状況で、立ち向かおうとしたアマリーラさんを助けたのは確かだけど。
そういえばあの時、かなり酷い怪我をしたうえに毒も受けていたんだっけ……手っ取り早く魔法で治したけど。
考えてみれば、あの治癒魔法も今は使えないんだよなぁ。
誰かが大きな怪我をしても、何もできないのは辛いから、できる限り……少なくとも、ここにいる皆がそうならないようにくらいは頑張らないと。
なんて、ちょっと関係ない事に思考を巡らせた。
「改めて考えると、凄い状況よね。私は、報告や話を聞いただけだけど……ヒュドラーとレムレースが一緒に攻めて来るなんて。ほとんどこの世の終わりじゃない。それを、一人で全て倒すとか……」
「一人じゃなくて、皆が協力して耐えてくれたおかげだよ。本当に俺一人だったら、もっと大きな被害が出ていただろうし」
それに、三体目のヒュドラーの時はユノ達の協力があったから、レムレースと一緒に倒せたからね。
俺一人だったら……どうなっていただろう? 倒せないわけじゃないとは思うけど、もっと戦闘が長引いたり、俺自身も怪我をしていた可能性はあると思う――。
リクのセンテでの戦いには、女王陛下(姉)も呆れと驚きばかりのようです。
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