表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/17

終末のダンジョン・第二話『稼ぎ行為は許されない』




ダンジョンには稼ぎ場というものが存在する。

経験値やカネを稼ぐ上で、効率のよい狩場のことである。


稼ぎ場に必要な条件は3つだ。

敵の強さが手頃であること、割の良いドロップアイテムを落とす敵がいること、そして体勢を整えるための休憩ポイントが存在することである。

比較的少ない労力で、安全に大きなリターンを得ることができる。それがダンジョンにおける稼ぎ場である。


では、稼ぎ場だけで魔物を狩ればよいではないかと思う人間もでてくるかもしれないが、世の中そうそううまい話はない。


稼ぎ場を狙っているのは1パーティーだけではない。

ダンジョン内に存在する稼ぎ場は冒険者達の競争となり、諍いの元となってしまう為、冒険者ギルドによって立ち入りの許可や、狩りの時間が厳しく管理されている。

制限された短い時間内だけでの狩りとなると、結局は普通に迷宮探索をするほうが稼ぎが良かったりする。


もっとも、ギルドに管理されていない迷宮であれば話は別である。ギルドなどでは到底管理不可能な超級の迷宮にも、稼ぎ場はある。

例えばここ、ラストダンジョンである終末の迷宮にも。



「勇者様! 今度は右から来ます!」



探知魔法サーチによって敵の接近を探り当てた僧侶が前衛の勇者に警告を発する。

今、勇者達がいるのは終末のダンジョンの地下20階。通称、ゴーレム坑道と呼ばれる階層である。

様々な鉱石ゴーレムが出現するこの階層では、倒したゴーレムの元となった鉱物をドロップアイテムとして手に入れることができる。魔素を十分に吸い込んだ、丈夫で上質な素材を手に入れられる場所であり、ここの素材は高値で取引される。


終末の迷宮に挑む冒険者など勇者達の他にはいない。誰にも邪魔されず、かれらは存分に稼ぐことができるはずだった。



「…ゲッ、またアイアンゴーレムかよ。とっとと倒して次行くか」



坑道の壁から湧き上がってきたアイアンゴーレムを見て、勇者の口から愚痴が零れた。



「鉄や青銅ばっかり集めてもねえ。ミスリルか金でも出ないものかしら」



魔法使いがため息混じりに同意を示した。

しかし、愚痴や不平を言いながらも、彼等は戦いの手を休めることはしない。勇者の剣が、魔法使いの光の魔法が、アイアンゴーレムの鉄の体を切り裂いた。

核を断たれたアイアンゴーレムはドロップアイテムである黒い鉄の塊だけを残して消え去った。



「俺にはありがたいがな。これだけ集めれば装備を全て新調できるというものだ」



愚痴をこぼす勇者や魔法使いとは反対に、戦士はドロップアイテムである黒鋼を満足気に拾い上げた。


ここ、終末の迷宮におけるアイアンゴーレムのドロップアイテム・黒鋼は通常の鉄よりも遥かに硬く。魔法への抵抗も高い。重戦士の鎧の素材としては最高の物であろう。

戦士が手にする黒鋼は、戦士の大きな手よりもさらに一回りは大きかった。道具袋に黒鋼を放り込むと、金属同士がぶつかるギンッという音がなった。

ベースキャンプにおいてきた分もあわせると、黒鋼の数は30個を超える。



「すみません勇者様、そろそろ魔力が切れそうです。泉に一度戻ってもらってもよろしいでしょうか?」



僧侶の提案を合図に、そろそろ夕食にしようと勇者たちは一度ベースキャンプに引き返すことにした。


彼らが地下20階で稼ぎを始めて二日が立つ。


勇者たちがこの終末の迷宮において『稼ぎ』ができていることには理由がある。20階層にある命の泉。体力と魔力を回復する不思議な泉がこの階層には存在している。

命の泉から湧き出る、無料で、無尽蔵の回復のアイテムによって、彼等は強力なゴーレムを相手に全力で闘い続けることが出来ているのだ。

彼等程の実力があれば、ここほど効率の良い稼ぎ場はないだろう。


しかし、命の泉へと戻った勇者達は、愕然とすることになる。



「泉が‥ない?」



広間の中央にあった命の泉。つい2時間ほど前まで滾々と水が湧いていたはずのその場所が更地になっていた。

水も、水を湛えていた窪みも、全てが消えていた。



「どういう原理なのかはわからないけど、これじゃあジリ貧だわ。ここは撤退するべきね」



魔法使いが辺りを丁寧に調べた後、首を左右に振った。

終末の迷宮は謎の多い迷宮である。何が起こっても不思議ではない。突然地形が変わる事もあり得る。

命の泉という補給線を絶たれた以上、これ以上ここで無茶な稼ぎはできない。帰還魔法で王都へと撤退することを彼等は決めた。



「待って下さい、敵が来ます。ゴールドゴーレム!!」



帰還の魔法陣の準備をしていた魔法使いの手がピタリと止まる。僧侶の探知魔法に引っかかったのは巨大なゴールドゴーレム。「最後にいい手土産になったわね」と、魔法使いが不敵に笑った。


4人はゴールドゴーレムへと駆け出した。ゴールドゴーレムのドロップアイテム金塊を手に入れる為に。

ゴールドゴーレムの巨大な腕が振り下ろされる。ドロップアイテムが破格な分、ゴーレムの強さもアイアンゴーレムなどとは比べ物にならない。



ゴールドゴーレムのドロップアイテム・金塊。ドロップ率100パーセントのはずのそのアイテムが、何故か今回に限りドロップされない事は彼等は未だ知らない。









ステータス(二話時点)

魔法使い(24歳)

レベル     57

力       88

素早さ    128

身の守り    78

魔力     246

精神力    228

賢さ     218

運の良さ    42

HP     288

MP     589

攻撃力    128

魔法攻撃力  366

防御力    148

魔抵抗    358

装備 クリスタルワンド  攻撃力+40 魔法攻撃力+120

   光のローブ     防御力+50 魔抵抗+80

   魂のサークレット  防御力+20 魔抵抗+50





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ