第569話 退院したら
最終回まで、あと2話!
カトレア達がお見舞いに来て、国王が国民や諸外国に対して、ここ7年間の出来事を包み隠さず話した数日後。
絶対安静から魔力を体に馴染ませるリハビリまで回復したフリージアの退院が決まったある日。
「あ、あのメスト様。そろそろ離していただいても……」
「嫌だ」
「ううっ……」
フリージアが絶対安静から回復したタイミングで騎士団に復帰したメストは、毎日定時にきっちり仕事を終えると、足早にフリージアの病室を訪れ、面会時間ギリギリまで彼女を甘やかしていた。
今日も今日とてフリージアのところにお見舞いに来て、フリージアと他愛もない話をしたメストは、彼女が寝ているベッドに腰かけると、慣れた手つきで彼女を抱き上げて自分の膝の上に乗せる。
「は、恥ずかしいです!」
「そうやって可愛く照れているフリージアを見ていると尚更離したくなくなる」
「あうっ」
(ち、近い! というより、メスト様ってこんな甘やかす人だったかしら!?)
7年間ほぼ孤独だった今のフリージアに一番必要なのが他人からの愛情なのは、本人以外がよく分かっていた。
特にメストは、改竄魔法の影響下でフリージアを傷つけるような場面を彼女に見せていた自覚があるため、愛情に飢えていることを自覚していない彼女の心に愛情を注ぐ。
まるで、今まで傷つけた罪を償うように。
(あぁ、今日も俺のジアは可愛い。どうして俺は、こんな愛しい存在を忘れていたのだろうか? あんな女よりジアの方が比べるのもおこがましいくらいに可愛いのに!)
最も、メストはフリージアを忘れていたことに加え、ダリアから長い間、突き放されていたこともあり、フリージアに対して過剰に愛情を注いでいる。
それを知っているのは、本人とフリージア以外なのだが。
顔を真っ赤にして照れているフリージアを見て、ニヤニヤが収まらないメストは優しく彼女の頭を撫でる。
すると、恥ずかしくて俯いていたフリージアが、急に顔を上げてメストを至近距離で見つめる。
「あ、あの! メスト様!」
「何だ? 俺の可愛いジア」
「うっ!」
(顔が近いせいでメストがより格好良く見えて……で、でも言わないと!)
砂糖菓子のような甘い声で微笑むメストに、一瞬息を呑んだフリージアは小さく息を吐くと淡い緑色の瞳を揺らして口を開く。
「ほ、本当に私の婚約者で良いのですか? 今のメスト様なら、私じゃなくても良いのでは?」
メストが騎士団に復帰したその日、フリージアは病室を訪れた両親から『メストが『フリージアを自分の婚約者にして欲しい』と申し出たことを聞いて、咄嗟に『もしかしたら、メスト様は婚約者が私だと思い出して、仕方なく申し出たんじゃないか?』と考えた。
(確かに、改竄魔法がかけられる前のメスト様は私のことを、あ、愛してくださった。けれど、改竄魔法をかけらえた後、色んな女性を見てきた……というより、木こりとして活躍していた私を見て幻滅したはず。だとしたら、義務で婚約者になっている彼を解放しないと!)
無事に再会を果たして前みたいに……いや、それ以上に甘やかしてくるメストのことがますます好きになった。
でも、大好きな彼を不幸にしたくない。
だったら、自分から身を引かないと。
「フリージア」
「は、はい!」
痛む心を隠し、不安で微かに震える手でメストの制服を握るフリージアに、メストはフリージアの名前を呼ぶとそっと抱き締める。
「メスト、様?」
「フリージア、俺は昔も今もお前のことが好きだ」
「本当……ですか?」
(気を使っているわけではなく、本当に私のことが?)
不安げに見つめるフリージアの淡い緑色に、優しく笑みを零したメストは小さく頷く。
「あぁ、本当だ。だから、こうして毎日お前のところに来て、可愛いお前をとことん甘やかしている」
「っ!」
(確かに、好きじゃなかったら毎日お見舞いに来ることなんてないはず!)
「とは言え、俺としては可愛いジアを全然甘やせていないけどな」
「ええっ!?」
(これ以上甘やかされたら、私一体どうなるの!?)
耳まで顔を真っ赤にするフリージアに、笑みを深めたメストはふと笑みを潜める。
「ジア。退院したら、少しだけ俺に時間をくれないか?」
「え、あ……分かりましたわ」
いつになく真剣なメストに、フリージアは困惑しつつも頷いた。
それから数日後、フリージアは無事に退院した。
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます!
ドロドロにフリージアを甘やかすメスト!
『キャラ変した!?』と思いたくなる彼は、フリージアに約束をする。
その約束の意味とは……?
物語もクライマックス!
尚、明日は12時と21時に更新し、21時の更新をもって約3年間連載した『木こりと騎士』の物語を完結させていただきます。
木こりと騎士の物語を最後まで楽しんでいただけると幸いです。
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(作者が泣いて喜びますし、モチベが爆上がりします!)




